4月30日、明日のポイント振込を前に、クラスの大半が浮き足立つ中―――
珍しく通常授業で星之宮先生がやってきた。
「は〜い、みんな席について―、今からちょっと真面目に授業を受けてもらうわよ〜」
「星之宮先生?どうかされたんですか?」
「今からちょっとした小テストを受けてもらうわ」
「えぇ〜!」「聞いてないって!」「嘘でしょ、抜き打ち?」
「はいはい、静かにしなさい。安心して、これは成績には入れないから」
(ん?成績に”は”?てことは他になにかには入れるってこと?)
「でも、カンニングは厳禁よ、もししたら退学だからね」
そう言って先生はテスト問題を配り始めた。
「それじゃあ試験時間は45分ね。始めっ」
合図とともにプリントを表にした私はまず一通り問題に目を通していく。
(全体的な難易度はそこまで高くなさそうだけど、最後の三問は難しすぎない?)
(とりあえずそれ以外を解いてからかな…)
そうして私は時間ギリギリで三問の中の一問を解き、抜き打ちの小テストは終わった。
〜テスト後〜
「愛ちゃん、さっきのテストどうだった?」
「私はいつもよりはできたと思うよ、一之瀬さんは?」
「私は取れて8割かな…、ちょっとわかんないとこがあったから」
特に最後の三問とかねっと続けて言う。
「珍しいな一之瀬が自信があまりないなんて」
最近、話すようになった神崎くんが話しかけてくる。
どうして仲良くなったかというと、先日決まったクラス委員の関係で、神崎くんと一之瀬さんが関わることが増えて、その流れで私も彼と仲良くなったって感じ。
「神崎くんはどうだったの?」
「俺は一之瀬と同じだな、最後の三問以外はできたと思っている」
「そう!あの三問だけ難しすぎなかった?」
「うん」「俺もそう感じた」
「一問解くのに五分以上かかっちゃったよ。あの三問だけレベルが違うね」
そう私が答えると驚いたような目で私を見てくる二人。
「愛ちゃんあれ解けたの!?」
「凄いな…俺は考えてもわからなかったぞ」
「愛ちゃんって頭いいよね、運動もできるし凄いな〜」
「そんなことないって!でもありがとっ」
「それより、この後どうするか決めない?」
私が会話の流れを変えようと話題を提案したが
「悪いが、俺は朝、先生に呼ばれたから今日は用事がある。すまないな」
「私は生徒会にもう一回行ってみるよ、どうにか堀北生徒会長に認めてもらうためにね」
「そっか、りょーかい。一之瀬さん私もついて行っていい?」
「え、あ、うーんいいと思うよ」
「やった♪じゃぁついて行くね!」
そうして授業が終わり、放課後、生徒会室
「失礼します」
「入れ」
「生徒会入会希望で来ました一年Bクラスの一之瀬帆波です。本日は時間を取っていただき、ありがとうございます。会長」
「何度来ても同じことだが…隣のやつは?」
急に話を振られ鋭い眼差しで睨みつけられる私。慌てて自己紹介をする。
「私は、同じく一年Bクラス所属の早坂愛です。今日は一之瀬さんが入会したいと考えている生徒会について知りたいな、と思い同行しました」
事前に決めておいた返しで会長の疑問に答える。
「そうか、お前も入会希望者というわけではないのだな」
「はい、現状その意志は有りません」
「そろそろ許可してもいいんじゃないですか?堀北先輩」
私達の会話に割って入ってきたのは金髪のちゃらそうな男子、確か二年生の南雲雅副生徒会長だったはず。
「南雲!堀北先輩の決定にケチを付けるつもりか?」
「あぁそうだとも桐山、俺は帆波は生徒会にふさわしい人材だと考えている。先日のAクラスのやつよりもだ」
「……南雲がなんと言おうと俺が許可を出さなければ生徒会入りは認められない。そして一之瀬、お前は不適格だ。帰るといい」
南雲先輩は呆れた顔で両手を頭の後ろで組み、桐山と呼ばれていた先輩はメガネを持ち上げ、紫髪をまとめた女子生徒は少し残念そうな顔をしたあとすぐに切り替えキリッとした顔になっていた。
「……わかりました。失礼します」
そういって肩を僅かに落としながら退出する一之瀬さん。
「それじゃあ私も失礼しました」
それについていくように私も退出する。
「良かったんですか、堀北先輩。俺は本気でAクラスのやつより良いと思いましたよ」
「あぁ現状は彼女を生徒会に入れるつもりはない」
(現状はねぇ…)
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「大丈夫?一之瀬さん?」
「うん…正直そう言われるだろうなって思ってたから、平気だよ」
「平気なはずないじゃん!一之瀬さんの顔見たら苦しんでるの誰でも分かるよ!」
「ううん、大丈夫なの。ホントに平気だから…」
(ここで動かないと、潰れちゃうかも)
「一之瀬さん!」
彼女の手を取って私は俯いている彼女の目をこっちに向かせ続ける。
「カラオケ行こ!」
「え?どうしてカラオケに…?」
「こういうときは思いっきり叫んだり歌ったりしてストレスを無くすんだよ!ほら!行こ!」
「ちょ、ちょ、ちょ、愛ちゃん!?」
一之瀬さんの返事も聞かないまま手を引いて行く私。
でもこれでいいと思う、だって彼女の顔から悲しみが消えたのだから。
そうしてカラオケでひたすら歌いストレスを飛ばした帰り道
「ねぇ、一之瀬さん」
「この先、いつかまた、落ち込んでしまうときもあるかもしれない、でもどんなときでもあなたにはBクラスの仲間が付いてるんだってこと忘れないでほしいんだ!」
「私とかね」そう言って優しくでもどこか力強く微笑む。
「ありがとう!愛ちゃん!」
すっかり元気を取り戻した一之瀬さんは感謝と一緒に私に抱きついてきた。
彼女の顔にはもう悲しみはない。私はそのことに嬉しさと微かな達成感を覚えながら、エレベーターで別れ、4月を終えた。
朝、ランニングを終えた私のスマホが鳴る。
ポイントの配布か、そう思いスマホを手に取るとそこに表示されていたのは10万ポイントではなく6万五千ポイントだった。
(減ってる!?)
こうして真に実力至上主義の学校生活が幕を開けた。
本編では一之瀬の生徒会入りをした時期が大まかにしかわかっていない+4月中に一之瀬が星之宮先生と生徒会について話していたことからこの時期から生徒会入りを望んでおり、実際にかなったのが南雲の協力を得た、須藤の喧嘩事件後〜クルージング前後までと仮定して動かしていきますのでご了承ください。