学校に着くともうすでに来ていた生徒たちがざわめいていたが、話の大本はだいたい同じだった。
それは、5月になって振り込まれるはずの10万ポイントが6万5千ポイントになっていたことである。
「おはよう、一之瀬さん」
私は席について隣の席である一之瀬さんに話しかける。
「おはよう、愛ちゃん。…ねぇなんでもらえるポイント減ったんだと思う?」
「分からない、家で少し考えてから来たけど、思いつかなかった」
「一之瀬、早坂」
「あ、神崎くん、おはよ」
「あぁ、おはよう、お前たちもポイントの話か?」
「うん、どうしてポイントが減ったんだろって話してた」
「それについて別の角度からの情報がある」
「情報?どんな?」
「Dクラスは今月ポイントが一切振り込まれていないらしい」
「え!」「どういうこと!?」
「分からない、だがDクラスのやつに聞いた情報だ。おそらく本当だろう」
「待った、その情報先って?」
「櫛田だ、嘘をついているように見えるか?」
「櫛田さんか…確かに、嘘をついてる可能性は低そうだね」
(もらえるポイントが減っただけでなく、クラスによって”差”がある......?)
「は〜いみんな席について〜、今から大事な話があるからね」
「先生、私達の配布されるポイントが10万ポイントじゃなくなったのはなぜですか?」
一之瀬さんがクラスを代表して先生に質問する。
「それも含めて今から説明するから、ちょっとまってて」
そう言って先生は黒板に持ってきていた大きなプリントを貼った。そこには―――
Aクラス940クラスポイント
Bクラス650クラスポイント
Cクラス490クラスポイント
Dクラス0クラスポイント
と書かれていた。
「な、なんだよこれ」「どいうこと?」「0って何だ?」「クラス...ポイント?」
「はいはい、静かに静かに、今から説明するって言ったでしょ」
「まず前提として私は入学式の日に『あなた達はこの学校に入学した、そのことは十万プライベートポイントに値するものだ』と言ったことを覚えているかしら」
ごく一部の生徒が首を縦に振るのをみて話を続ける先生。
「その発言に嘘はないわ、その時点ではあなた達は1000クラスポイントを持っていたの」
「そしてこの学校ではクラスの成績がポイントに反映される。その結果あなたたちにに振り込まれるはずの10万ポイントを減らしてしまった、ということよ」
「先生!なぜポイントが減ったのでしょうか?説明をお願いします」
(そう、そこだ。なぜクラスポイントが減ったのか、それがいちばん大事なこと、それを知れれば対策ができる)
「授業中の私語:285回、授業中の居眠り:6回、授業中のスマートフォンの使用:4回」
「これがあなた達Bクラスが4月の間にした減点内容の大きなものね」
「特に私語、これは他クラスと比べてもかなり多かったわ。仲がいいことはいいのだけれどね」
「これで分かったでしょう?この一ヶ月間はあなた達生徒を測るための時間だったの」
「そしてあなた達は350クラスポイントを失ったってわけ」
「それともう一つ」
「クラスのポイントは毎月振り込まれる金と連動しているだけじゃないの。このポイント数値がそのままクラスのランクに反映されるということ。」
「そして、この学校が掲げている卒業生は進路を自由に選択できるという権利、あれはAクラスで卒業した時だけ得られる権利よ」
「はぁ!?」「なにそれ!」「ふざけんなよ!」
「いい?今まであなた達は他クラスの子たちとも仲良くやってきたことは分かっているわ。でも最後にAクラスで卒業するためには他者を蹴落とし、勝ち上がるしかないのよ」
騒ぎ出す生徒たちを諭し、ヒートアップするのを防ぐ先生。
「これで私からの説明は終わりだけど、なにか質問はあるかしら?」
スッと手を上げ私は問う
「どのようにしたらクラスポイントを増やすことができるのですか?」
「そうね、一概にこれと言えるもので言ったら、部活動で入賞すること、生徒会役員として働くこと、テストで点を取ること、つまりもうすぐある中間テスト。これが最初のクラスポイントを増やせる場でしょうね」
ただし、と顔を少し強張らせ僅かに低い声で続ける。
「中間テストなどの定期試験で赤点を一つでも取ったら退学よ」
「は?」「え?」「なんて?」「嘘でしょ?」
「安心しなさい、こないだの小テストで赤点はいなかったから、みんなが後3週間真面目に勉強し続けたら退学なんてそうそうないわ」
そう言い切ったところで、こちらを向いてくる先生。
「こんなところでいいかしら?」
「ありがとうございます」
「それじゃ他には――」
そういって星之宮先生は質問を取ったがいくつか聞いてもこれ以上有効そうな情報は得られなかった。
「それじゃ、これでHRは終わりね。」
先生が出ていき、クラス中が騒ぎ出したタイミングで私が隣の一之瀬さんを見ると、そこには真剣な表情で何かを考えている姿があった。
(一之瀬さん?)
話しかけようか迷ったが、やめておくことにした私は今日の話を自分の中でまとめることにした。
(今日の話でわかったことは、この学校は―――ずっと見ている)
(この学校でしたことは常に監視され、そのすべてを”ポイント”という名の評価に変えて)
(そしてそのポイントが他クラスより多くなれば、クラスが上がり、Aクラスで卒業した生徒だけが自由な進路を得られる)
(そして、Aクラスとのポイント差は290、大きな差だけど、まずは中間テストからかな)
そうこう考えていると、次の授業が始まる時間になっていた事に気づいた私は慌てて準備をした。
ちなみにさっき言われたばかりからか、授業中の私語は一切なく、まるで別のクラスのように、静まり返った一日だった。