今朝、星之宮先生からの強烈な学校のシステムについての説明があった放課後、私は神崎くんとカフェの個室にいた。二人きりで。
「もしかして、神崎くんと2人きりって今回が初めて?」
「そうかもな」
運ばれてきた飲み物を一口飲んで話を振る。
「それで?話したいことってなーに?」
「あぁ、今後のクラスの方針について話し合いたくてな。早坂、お前の意見を聞きたかったんだ」
「ん?なんで私?方針決めとかなら一之瀬さんや他の私より賢い人のほうが良いでしょ?実際私の点はクラスで10位ぐらいだったわけだし」
「たしかにそうかも知れない、だが一之瀬含めこないだの小テストでお前より成績が良かった人たちは誰一人例の三問を正解していなかった。」
「その後に問題について調べてみたが、あの問題は俺が想像もしなかった解法だった。そしてお前はそれを解けた。このことから、俺は指針に斬新な案をくれるんじゃないかと思ってお前を誘った、というわけだ。」
「もちろんこのクラスのリーダーは一之瀬だ。一之瀬にも確認するつもりだったが、どうやら今日は用事があるらしくてな。それで早坂を呼んだってことだ。」
そこまで言い切ると、彼は自分の飲み物を一口のみ、喉を潤してから続けた。
「そういうわけだ、これからどうしていくかの案を出してほしい」
「オッケー、分かったよ」
「まず一番最初に対処すべきなのはやっぱり中間テストだよね」
「あぁ、ポイントを増やせるのもあるが、赤点だったら退学だからな。対策は欠かせない」
「どういった対策を取るか、だね」
「そうだな、そこを詰めていく必要があるな」
「まずパッと思いつくのは勉強会だよね」
「勉強できるやつが教える勉強の基本だな」
うーん、と首をひねって考えてみるけどこれ以上いい案は浮かばなかった。
「でも、正直このぐらいしか思いつかないよ」
「俺も同じだ、やっぱりテスト勉強には抜け道はなさそうだな」
「うん、今のとこはね」
「他になにか話したいことある?」
「あぁ、クラスポイントの増やし方について話したいと思っている」
「先生が言っていたのは部活、生徒会、テスト、だったよね?」
「俺の認識とあっているな」
「でも正直、これだけじゃ足りないよね」
「足りないとは?」
「私達がAクラスに上がるためにAとの差をつける機会が」
「この学校は真の実力主義を掲げている。そんな学校が日頃の生活態度とテストや部活で終わらせると思う?」
「つまり早坂は他にも特別な試験があると考えてるということだな?」
「うん、そうじゃないと、学校の方針に違和感が残るしね」
「なるほどな、やっぱりお前を相談役にして良かったよ早坂」
「だが、特別な試験があると仮定しても、結局はその試験のルールが発表されるまでできることは無いか…」
「そうでもないよっ」
突如降り注いできた聞き慣れた明るい女の子の声。
見上げるとそこには私達のリーダー一之瀬帆波の姿があった。
「一之瀬か、用事があると言っていたが終わったのか?」
「うん、星之宮先生に聞いてきたら答えてくれたから」
「?なに聞いてきたの?」
「ポイントの使い道と、他人への譲渡の仕方だよ」
「使い道?ものを買うだけじゃないのか?」
「どうやらそうだったみたい」
そう言って彼女は説明してくれた。
プライベートポイントは買い物だけではなく学校との取引にも使えること。
そして退学を取り消すには2000万ポイントが必要だということを。
「そんな使い方があったのか…」
「うん、だから私はクラス全体でプライベートポイントの貯金をするべきだと思うんだ」
「確かにいい案かもね、でもどうやって管理するの?個人個人に任せてたら使っちゃう人もいるだろうし」
「それなんだけど、、、」
そこまで言って口ごもる一之瀬さん、その頬はどこか赤く微かに恥ずかしがってるように見えた。
「わ、私なんてどうかなって…」
最後の方には小さな声になっていたが、その提案を聞いた私達は驚いて少しの間固まってしまった。
「ど、どうかな、ふたりとも?」
反応がなかったのが不安だったのか再び聞く一之瀬さん。慌てて意識を切り替え私達は返事をする。
「いいと思うよ!」「あぁ、一之瀬になら任せられるだろう」
「そっか、二人にそう言ってもらえてよかった〜」
さっきまでの不安そうな表情はどこへ行ったのかホッとした顔で気を緩ませる一之瀬さん。
「それで?明日みんなに説明する感じ?」
「うん、朝のHRの時間をもらって呼びかけようかなって思ってるよ」
「りょーかい、一人当たりいくら回収するの?」
「あんまり多くとりすぎても批判が来るだけだし、三万ポイントかなって思ってるよ」
「まて、それでは一年かけても二千万ポイントに届かないぞ一之瀬せっかく貯めるのなら年に一回の切り札として切れるように、一年で二千万たまるように調節すべきだ。」
「そっか、確かに。それじゃ神崎くんはいくらがいと思うの?」
「俺は毎月一万五千ポイントを残してそれ以外は回収する、でいいと考えている」
「えぇ!それは回収しすぎだよ!流石にみんなに悪いよ…」
「いや、これはクラスのために使うつもりで貯めるんだ。だからより多く貯める必要がある」
「クラスとしてはそうかもしれないね。でもそれって、”クラスメイト”のことを考えれて無いんじゃないかな?」
「な!それはっ…」
神崎くんは口ごもると、二人は同時に私の方を向いてきた。
「早坂、お前の意見はどうだ?」「愛ちゃんはどう思ってるのかな?」
全く同じタイミングで二人は私に聞いてきた。
助けを求める神崎くん。
譲れない想いを宿す一之瀬さん。
二人の視線が突き刺さるなか私は―――。
「私は神崎くんと同じ一万五千ポイント残すでいいと思うよ」
一切迷うことなく答えを口にしたのであった。
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