A Cup with Love 作:white flower
少しだけ肌寒い、とある土曜日の早朝。
郊外にある個人経営の喫茶店に、綾紬姉妹と彩葉、かぐやはいた。
「「えっ、やーねぇ(椰花さん)会社やめんの!?」」
「おん!」
「「えぇぇぇぇええええ!?!?」」
「遂にか~前から隠居したいっていってたもんね~」
オレンジジュースを飲みながら、首からヤチヨが映されたタブレットを提げた、かぐやがいう。
「やっと、私無しでも回るようになってね、野心家の部下に伝えたら大喜びで全部引き受けてくれたわ~」
「やーねぇ、それパパたちには伝えたの?」
大丈夫だとは思うけど、不安がる芦花。
「いったよー」
「でも会社やめちゃったら、色々と拗れません?」
スポンサーしてもらっていた身の彩葉としては、引継ぎの部分等での心配が残った。
「ああ、それに関しては大丈夫」
と、2人に名刺を渡す。
「会社辞めて、改めて独立するの。今こじれてるものを、私に属する部分、会社に属する部分に整理するのも目的だから。まぁ、辞める会社の創業者だけどね!」
「「そんな事態、聞いたことねー…」」
前代未聞の出来事に頭を抱える。
「会社がデカくなりすぎちゃって、私がやりたかったこと出来なくなってさ。それなら、最初みたいに仲いい人達と細々と活動して行きたいんだよね」
あとで、家族で旅行中の真実ちゃんにも伝えおいて貰える?と、面倒ごとが減るとルンルン気分の椰花はいう。
あ、でも。とゆで卵を剥きながら芦花が口を開く。
「生活はどうするの?」
「お金はあるからなんとでもなるさ~」
「まぁ、企業のCEO兼、投資家ですもんね…」
それなりの成金発言に引く芦花と彩葉。
「椰花、お金についてはいいとして、辞めたら何するの?」
これウマ~!と、かぐやがモーニングのイチゴジャムが塗られたトーストを頬張りながら聞く。
そんなかぐやを見ながら椰花は手元のアイスレモンティーをストローでくるくる混ぜた。
「この前のかぐやちゃんの復活ライブ見たらさ、ツクヨミに投資した時のこと思いだしてね~」
「ヤチヨのお部屋の時代の話?」
「もしかして、 “誰も孤独にならず、いつでも返事が貰える場所” のことですか?」
かぐやの言葉に続き、彩葉が答える。
「そう、それ」
懐かしいなぁ~と目を瞑る椰花。
「 “途轍もないロマンだ”、と思った時には、沢山投資してたんだよね~」
「「「へ~」」」
そんなことがあったんだな、と関心する三人。
あれ、と芦花の頭に疑問符が浮かぶ。
「でも、結局なにやるの?」
そうそうと続けて。
「今まで通りの仕事はするけど、量をめちゃ減らして、配信をはじめます!」
お~といいつつも、大手配信者の三人はなんとも言い難い反応をした。
「ほんとに今更だね」
「椰花、その心は?」
「ん~なんていうかな」
携帯で何か検索し始め、一つの画像が出される。
「うわ、ラジカセじゃん、なっつ~」
「「ラジカセ?」」
「そう。昔はとりあえず、で流してたもの」
今は、趣味趣向の骨董品だね。と。
「テレビやネットほど情報はないし、ハチャメチャ面白い訳じゃない」
「今でこそ、ネットが発達したから、何でもできる。けれど、ラジオは聞けても、音楽を聴くにはカセッテが必要で、今からしたら大分不便だ」
「見たい、楽しみたい、何かしたい。じゃなくて、これをつけておく。これでよしとする」
「何かが優れているわけでもないのに、結局、最後はこれに決めてしまう」
「現代のラジカセ、そんなものを創りたい」
グラスを美しいものを慈しむような目で見ながら、椰花はそういった。
「なんか、難しいなー」
「それだと、やーねぇ、中々人集まらないと思うよ?」
やりたいことを否定するわけじゃないけど、とやんわり心配をする。
「もう、人を統べるのには疲れたから、人気ないほうが嬉しいんだよね」
今迄の苦労を思い出して、肩を落とす。
それはそれとして兎も角と一息ついて言う。
「皆の前に美味しいモーニングがあった、同じ様に、朝日が昇った時」
「一杯のレモンティーがあったら、少しだけ、幸せじゃない?」
・最後の蛇足
『愛してるんだぁ!君たちをぉお!!!』