A Cup with Love 作:white flower
_体調管理は全ての基本や、ここで躓くやつはどんな阿呆よりも下や_
そんな、母の声が聞こえた。
私は、体調を崩してなんかいないのに。
反骨の意思が浮かんでくると同時に、自身が眠っていた事に気がついた。
あれ、私なんで寝てるんだろ、起きなきゃ。
「…う~ん」
「いろは!?」
いつの間にか伸びた、かぐやの髪の毛が、私の顔にかかってくすぐったい。
「かぐや、くすぐったい…」
「椰花!椰花、いろはおきた!」
いつも、飛びついてくるのに、何故か椰花さんを呼びながら離れていった。
…なんか、寂しいな。
って、なんで椰花さん?
「や、彩葉ちゃん」
いつもの作業服の椰花さんが真剣な表情をして、視界に入ってきた。
「あれ、椰花さんどうしてここに」
「ああ、彩葉ちゃん動かないで。そのままでいて、すぐ先生たちくるから」
「そういうわけにも…」
ダメ動かないで。と強く制止しながら、私の横にある何かを押した。
「い“ろ”は“、い”ろ“は”あ“ぁ”~~!!!」
「かぐやちゃん、悪いけど少し静かにして」
抱きついて来ようとするかぐやを椰花さんは片手で止める。
「彩葉ちゃん、一回深呼吸しようか。」
「は、はぁ」
取り敢えず、言われた通り、深呼吸した。
一体なにがなんだか…
混乱していた頭が少し落着きを取り戻した。
「状況を伝えるね、ここはクリニック。これからお医者さんたちがくる。」
「…クリニック、え、病院!?」
うそ、嘘うそ、なんで!?
「そう、病院。路上で座り込んだの憶えてる?」
「そうそう!いろはアチチで急に座り込んだの…」
「えっと…」
そうだ、かぐやが住みたいって言った物件みて、眩暈がして…
立ち上がれないくらい気分が悪くなったんだっけ
「…思い、出しました」
「よし、意識はハッキリしてるね。すぐにお医者さんくるから、正直に話しをしてね」
意識は確かにハッキリとしているが、混乱は悪化した。
不定形の様々な不安が脳内を駆け巡った。
コンコンとドアを叩く音がすると、看護師さんと白衣を着た女性の医師が入ってきた。
「失礼しますね~酒寄さん、気分はどうですか?すこし起き上がれます?」
「あ、はい…大丈夫です」
頭の中を整理する暇もなく、検査が始まった。
「はい、お疲れ様でした。この様子でしたら帰宅して頂いて構いません。お帰りの際はカウンターにお越しください。」
「あ、ありがとうございます…」
「いろはよかった~!!」
「こら、静かにしな。かぐやちゃん」
では、失礼します。とお医者さんは病室を去っていった。
安心した、入院しなきゃいけないかと思った。そうなってたら、私は勉強どれだけ遅れていたんだろう。
もしものことを想像したら、嫌な汗が出て来たのが分かった。
「ヒック…よかった、死んじゃうかと思った…」
「そんな、大袈裟な…」
かぐやの瞳は決壊寸前のダムのように、涙がたまっていた。
…心配かけちゃったな。
「…よし、彩葉ちゃん。歩けそう?」
「あ、はい。歩けます」
「気を付けてね」
靴をはいて、ベットから立とうした時、まだ疲労が残っていたのかバランスを崩した。
「おっと、と…」
「っ、危ない!」
「うわっ…!」
一瞬視界が見えなくなったあと、気が付いた時には椰花さんにお姫様抱っこされていた。
「へ?」
「こーら、気を付けて。っていったでしょうが」
グイっと顔を近づけて、忠告された。
椰花さんって、ホントに芦花に似てるな。たれ目で優しさがあるのに、力強さも感じる。
それは、それとして。
「ひゅー、いろはお姫様みたい~!
「す、すみません…そろそろ降ろして頂いても…」
「まったく…」
同性にされたとしても…この格好は、恥ずかしい!
そんなこんなで、お世話になったクリニックに礼をいい。
椰花さんの車に乗って帰路についた。
「いや、本当にご迷惑をおかけしました…」
「椰花ありがとー!!」
「いいのよ、やるべき事をしただけよ」
気にしないで、と椰花さんはいう。
「お仕事の方は大丈夫だったんですか?」
「全然大丈夫、ウチの部下は困る位、超優秀でね~はよ行けって言われたくらいよ~私が上司なのに」
「椰花なめられてるね~!」
「ホントにね~困っちゃうわ」
そんな話に笑いあう。
「かぐやちゃんがいてくれて良かったわ、本日のMVPね」
「それって、どういう」
「かぐやが椰花に連絡したの、この前車もってたから…」
そうだったんだ…
「あ、そうそう、彩葉ちゃんに謝っておくことがあるの」
「何かありましたか?」
「えっとね、財布の中身勝手に触らせてもらったの、保険証必要だったから。勝手なことしてごめんなさい。赤の他人なのに、色々個人情報見ちゃったから」
「いやいや!保険証くらい全然気にしないですよ!むしろ私がお礼をいうばかりです」
「そうそう、椰花はなーんにも悪いことしてない!」
「…ありがとう」
謝った私がいうのもなんだけどと、続けて椰花さんが口を開いた。
「それはそれとして、二人とも、少しお説教!」
「「え?」」
車内の空気が真剣な場へと一変した。
「先にかぐやちゃん、彩葉ちゃんが寝てる時ぐらい静かにしてあげなさい。かぐやちゃん自身の話を聞く限りだと、今回の件はかぐやちゃんにも責任があります。彩葉ちゃんの睡眠不足に影響してるわ。反省しなさい。」
説教とは言ったものの、母とは違って、声を張って叱るというより、柔らかく正確に伝え、諭す。そんな言い方だった。
「…はーい。ごめんなさい。」
「謝るのは彩葉ちゃんに向けてよ」
「いろは…ごめんなさい」
となりに座っている、かぐやが面を合わせて謝ってきた。ここまでしおれているのはなかった気がする。
「いいよ、かぐや。」
「いいの?」
「うん、でも少しは静かにしてね」
「わかった!夜は静かにする!」
本当にかなぁ、許したのはいいものの不安になる。
「よし、じゃ彩葉ちゃん」
「え、あ、はい…」
そうだった、二人ともって言ってたっけ…
「彩葉ちゃん、前にお姉さん無理をしないでっていったよね。」
「…はい。」
「彩葉ちゃんの目標が高い事は知ってるけど、だからといってエナジードリンクで無理矢理限界突破させる勉強だけは辞めなさい。」
なんで私の生活を!?…あ、いや、かぐやが全部喋ったのか…
「…気を付けます」
はぁ、と明らかな溜息が聞こえた。
「はい、説教終わり!」
「え、なんかいろはには甘くない!?」
「そう?なら後は、かぐやちゃんが叱ってあげて」
「分かった!後でいろはを叱る!」
「何をいってるの…」
そんな掛け合いに椰花さんが、笑いをこぼした。
「じゃぁ、かぐやちゃん、これあげるから彩葉ちゃんをしっかりみててね」
「わぁ~!」
そう言って、沢山のものが入ったレジ袋を渡された。
袋の中にはゼリー、スイーツ、スポーツドリンクなど熱中症対策のものに加え、食べやすさを重視した食べ物が入っていた。
覗き込んでいると、かぐやがじとっとした目でこちらを見ていた。
「これはかぐやが管理するから!」
「いやいや、おかしいでしょ」
「ま、有効に使ってね。さて着いたよ」
いつの間にか家に着いたようだ。
「じゃ、お姉さん仕事戻るから、安静にしとくのよ」
「何から何まで、ありがとうございました」
「椰花ありがとー!!!」
うむ、と満足そうに頷くと、いつものように車は街へと消えてしまった。
「たっだいま~!」
「ただいま」
かぐやが買ったもので溢れかえっているとは言えど、流石に安心感は病室を遥かに上回る。
手洗いうがいをして、ふと息をつくと急激に眠気が襲ってきた。
「あれ、また寝ちゃってた…?」
「あ、おはよ、いろは。ふかふか周りに置いといたから、いっぱいふかふかしてね」
コンロの前でそう言って、料理を続けるかぐや。
ふかふか?ああ、ほんとだクッション性の高いぬいぐるみたちが私を囲っていた。
ここまで気を回してくれるなんて…
「ありがと、かぐや」
「どういたしまして!」
花の暖かさを感じるような笑顔でそういった。
キュー!!!鍋が鳴った。
「あ、やっべ吹きこぼれる!」
「もう、気を付けてよ~」
「やっべ、やっべ」
せわしく手元を動かすかぐやをみて、笑ってしまった。
かぐや特製の超美味しいご飯を食べた後、椰花さんから貰ったスイーツを2人で食べながら、私が一人暮らしを始めた話をした。
病室では涙こらえてたのに、かぐやは大泣きして看護する側が入れ替わったりした。
そうして、話して内に夕方は過ぎていった___
「ん?ツクヨミに彩葉ちゃんからメッセージ?珍しいな…」
「…卒業ライブ。…あ~この前、絵を描てた時の…謎の通信エラーでデータ吹っ飛んだ日のアイツらか…」
「予定は~っと、げぇマジ?間に合うかな…いや、間に合わせるか」