A Cup with Love   作:white flower

5 / 10
第五話 Stargazer

 

  _体調管理は全ての基本や、ここで躓くやつはどんな阿呆よりも下や_

  そんな、母の声が聞こえた。

  私は、体調を崩してなんかいないのに。

  反骨の意思が浮かんでくると同時に、自身が眠っていた事に気がついた。

  あれ、私なんで寝てるんだろ、起きなきゃ。

 

「…う~ん」

「いろは!?」

 

 いつの間にか伸びた、かぐやの髪の毛が、私の顔にかかってくすぐったい。

 

「かぐや、くすぐったい…」

「椰花!椰花、いろはおきた!」

 

 いつも、飛びついてくるのに、何故か椰花さんを呼びながら離れていった。

 …なんか、寂しいな。

 って、なんで椰花さん?

 

「や、彩葉ちゃん」

 

 いつもの作業服の椰花さんが真剣な表情をして、視界に入ってきた。

 

「あれ、椰花さんどうしてここに」

「ああ、彩葉ちゃん動かないで。そのままでいて、すぐ先生たちくるから」

「そういうわけにも…」

 

 ダメ動かないで。と強く制止しながら、私の横にある何かを押した。

 

「い“ろ”は“、い”ろ“は”あ“ぁ”~~!!!」

「かぐやちゃん、悪いけど少し静かにして」

 

 抱きついて来ようとするかぐやを椰花さんは片手で止める。

 

「彩葉ちゃん、一回深呼吸しようか。」

「は、はぁ」

 

 取り敢えず、言われた通り、深呼吸した。

 一体なにがなんだか…

 混乱していた頭が少し落着きを取り戻した。

 

「状況を伝えるね、ここはクリニック。これからお医者さんたちがくる。」

「…クリニック、え、病院!?」

 

 うそ、嘘うそ、なんで!?

 

「そう、病院。路上で座り込んだの憶えてる?」

「そうそう!いろはアチチで急に座り込んだの…」

「えっと…」

 

 そうだ、かぐやが住みたいって言った物件みて、眩暈がして…

 立ち上がれないくらい気分が悪くなったんだっけ

 

「…思い、出しました」

「よし、意識はハッキリしてるね。すぐにお医者さんくるから、正直に話しをしてね」

 

 意識は確かにハッキリとしているが、混乱は悪化した。

 不定形の様々な不安が脳内を駆け巡った。

 コンコンとドアを叩く音がすると、看護師さんと白衣を着た女性の医師が入ってきた。

 

「失礼しますね~酒寄さん、気分はどうですか?すこし起き上がれます?」

「あ、はい…大丈夫です」

 

 頭の中を整理する暇もなく、検査が始まった。

 

 

 

「はい、お疲れ様でした。この様子でしたら帰宅して頂いて構いません。お帰りの際はカウンターにお越しください。」

「あ、ありがとうございます…」

「いろはよかった~!!」

「こら、静かにしな。かぐやちゃん」

 

 では、失礼します。とお医者さんは病室を去っていった。

 安心した、入院しなきゃいけないかと思った。そうなってたら、私は勉強どれだけ遅れていたんだろう。

 もしものことを想像したら、嫌な汗が出て来たのが分かった。

 

「ヒック…よかった、死んじゃうかと思った…」

「そんな、大袈裟な…」

 

 かぐやの瞳は決壊寸前のダムのように、涙がたまっていた。

 …心配かけちゃったな。

 

「…よし、彩葉ちゃん。歩けそう?」

「あ、はい。歩けます」

「気を付けてね」

 

 靴をはいて、ベットから立とうした時、まだ疲労が残っていたのかバランスを崩した。

 

「おっと、と…」

「っ、危ない!」

「うわっ…!」

 

 一瞬視界が見えなくなったあと、気が付いた時には椰花さんにお姫様抱っこされていた。

 

「へ?」

「こーら、気を付けて。っていったでしょうが」

 

 グイっと顔を近づけて、忠告された。

 椰花さんって、ホントに芦花に似てるな。たれ目で優しさがあるのに、力強さも感じる。

 それは、それとして。

 

「ひゅー、いろはお姫様みたい~!

「す、すみません…そろそろ降ろして頂いても…」

「まったく…」

 

 同性にされたとしても…この格好は、恥ずかしい!

 

 

 

 そんなこんなで、お世話になったクリニックに礼をいい。

 椰花さんの車に乗って帰路についた。

 

「いや、本当にご迷惑をおかけしました…」

「椰花ありがとー!!」

「いいのよ、やるべき事をしただけよ」

 

 気にしないで、と椰花さんはいう。

 

「お仕事の方は大丈夫だったんですか?」

「全然大丈夫、ウチの部下は困る位、超優秀でね~はよ行けって言われたくらいよ~私が上司なのに」

「椰花なめられてるね~!」

「ホントにね~困っちゃうわ」

 

 そんな話に笑いあう。

 

「かぐやちゃんがいてくれて良かったわ、本日のMVPね」

「それって、どういう」

「かぐやが椰花に連絡したの、この前車もってたから…」

 

 そうだったんだ…

 

「あ、そうそう、彩葉ちゃんに謝っておくことがあるの」

「何かありましたか?」

「えっとね、財布の中身勝手に触らせてもらったの、保険証必要だったから。勝手なことしてごめんなさい。赤の他人なのに、色々個人情報見ちゃったから」

「いやいや!保険証くらい全然気にしないですよ!むしろ私がお礼をいうばかりです」

「そうそう、椰花はなーんにも悪いことしてない!」

「…ありがとう」

 

 謝った私がいうのもなんだけどと、続けて椰花さんが口を開いた。

 

「それはそれとして、二人とも、少しお説教!」

「「え?」」

 

 車内の空気が真剣な場へと一変した。

 

「先にかぐやちゃん、彩葉ちゃんが寝てる時ぐらい静かにしてあげなさい。かぐやちゃん自身の話を聞く限りだと、今回の件はかぐやちゃんにも責任があります。彩葉ちゃんの睡眠不足に影響してるわ。反省しなさい。」

 

 説教とは言ったものの、母とは違って、声を張って叱るというより、柔らかく正確に伝え、諭す。そんな言い方だった。

 

「…はーい。ごめんなさい。」

「謝るのは彩葉ちゃんに向けてよ」

「いろは…ごめんなさい」

 

 となりに座っている、かぐやが面を合わせて謝ってきた。ここまでしおれているのはなかった気がする。

 

「いいよ、かぐや。」

「いいの?」

「うん、でも少しは静かにしてね」

「わかった!夜は静かにする!」

 

 本当にかなぁ、許したのはいいものの不安になる。

 

「よし、じゃ彩葉ちゃん」

「え、あ、はい…」

 

 そうだった、二人ともって言ってたっけ…

 

「彩葉ちゃん、前にお姉さん無理をしないでっていったよね。」

「…はい。」

「彩葉ちゃんの目標が高い事は知ってるけど、だからといってエナジードリンクで無理矢理限界突破させる勉強だけは辞めなさい。」

 

 なんで私の生活を!?…あ、いや、かぐやが全部喋ったのか…

 

「…気を付けます」

 

 はぁ、と明らかな溜息が聞こえた。

 

「はい、説教終わり!」

「え、なんかいろはには甘くない!?」

「そう?なら後は、かぐやちゃんが叱ってあげて」

「分かった!後でいろはを叱る!」

「何をいってるの…」

 

 そんな掛け合いに椰花さんが、笑いをこぼした。

 

「じゃぁ、かぐやちゃん、これあげるから彩葉ちゃんをしっかりみててね」

「わぁ~!」

 

 そう言って、沢山のものが入ったレジ袋を渡された。

 袋の中にはゼリー、スイーツ、スポーツドリンクなど熱中症対策のものに加え、食べやすさを重視した食べ物が入っていた。

 覗き込んでいると、かぐやがじとっとした目でこちらを見ていた。

 

「これはかぐやが管理するから!」

「いやいや、おかしいでしょ」

「ま、有効に使ってね。さて着いたよ」

 

 いつの間にか家に着いたようだ。

 

「じゃ、お姉さん仕事戻るから、安静にしとくのよ」

「何から何まで、ありがとうございました」

「椰花ありがとー!!!」

 

 うむ、と満足そうに頷くと、いつものように車は街へと消えてしまった。

 

 

 

「たっだいま~!」

「ただいま」

 

 かぐやが買ったもので溢れかえっているとは言えど、流石に安心感は病室を遥かに上回る。

 手洗いうがいをして、ふと息をつくと急激に眠気が襲ってきた。

 

「あれ、また寝ちゃってた…?」

「あ、おはよ、いろは。ふかふか周りに置いといたから、いっぱいふかふかしてね」

 

 コンロの前でそう言って、料理を続けるかぐや。

 ふかふか?ああ、ほんとだクッション性の高いぬいぐるみたちが私を囲っていた。

 ここまで気を回してくれるなんて…

 

「ありがと、かぐや」

「どういたしまして!」

 

 花の暖かさを感じるような笑顔でそういった。

 キュー!!!鍋が鳴った。

 

「あ、やっべ吹きこぼれる!」

「もう、気を付けてよ~」

「やっべ、やっべ」

 

 せわしく手元を動かすかぐやをみて、笑ってしまった。

 

 かぐや特製の超美味しいご飯を食べた後、椰花さんから貰ったスイーツを2人で食べながら、私が一人暮らしを始めた話をした。

 病室では涙こらえてたのに、かぐやは大泣きして看護する側が入れ替わったりした。

 そうして、話して内に夕方は過ぎていった___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?ツクヨミに彩葉ちゃんからメッセージ?珍しいな…」

 

「…卒業ライブ。…あ~この前、絵を描てた時の…謎の通信エラーでデータ吹っ飛んだ日のアイツらか…」

 

「予定は~っと、げぇマジ?間に合うかな…いや、間に合わせるか」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。