A Cup with Love 作:white flower
[※オリジナル設定があります。正確な情報についてはご自身でよくお調べください]
超新星ライバーかぐやの卒業ライブ開始前の余興。
KASSWNのステージにて、月人に立ちはだかるように落下する六つの桃。
ブラックオニキスの参加に会場が湧く中、予定にない七つ目の桃が落ちてきた。
「あれ?七個目?誰か呼んだっけ?」
そこから出てきたのは、黒色の軍服を基調とし、白亜のマントを羽織り、丸いグラサンをつけたROKA似の高身長の女性。
「や!こんばんは彩葉ちゃん。よかった、ギリギリ間に合った!」
コンソールを操作して名前を見ると〔HN:HANAYA〕
『おおっと!珍しい人の登場だぁー!ROKAの実の姉で、やけに強いネタプレイヤーのHANAYAの登場だぁー!』
「オイコラァ!誰ぁれがネタプレヤーだ!? “ロマン”プレイヤーHANAYAとよべや!」
「え、もしかして椰花さん?」
「そうよ~今はHANAYAって呼んでね!」
最近はマッチングしてなかったけど、HANAYAには何度か当たったことがある。KASSEN屈指の不人気職、投擲師の上位5本の指に入る変なプレイヤーだ。LMGと投擲物を利用した耐久戦術が厄介だった記憶がある。負けた記憶はない。
「HANAYAさんじゃん」
お兄ちゃんから珍しそうな声がでる。
「げえっ、ブラックオニキス…」
明らかに敵対心がでる椰花。
「…ねぇ、芦花、椰花さん、お兄ちゃんたちと何かあったの」
「あ~、なんかもう少しでランカーになれそうな時に何度も当たって、その度にボコボコにされたみたいで」
嫌だこいつら~!と芦花に泣きつくHANAYA。
「ねぇ~ROKA、ブラックオニキスいるの知らなかったんだけど…」
「まぁ、言ってなかったし」
「おしえてよ!?」
ぎゃーこらと話す姉妹喧嘩?をする2人。
「もう、やーねぇ、もう時間だから」
「あ、それもそうね」
諭されたHANAYAはマントを消して、火縄銃を魔改造したようなLMGを顕現させるとグレネードや火炎瓶、トマホーク(投げる手斧)などの投擲物も腰に顕現させた。
「なには兎も角あのゴミカスどもを花火にしてやる」
なんか、個人的な怨み入ってない?
ヤる気たっぷりのようで何よりです。
まぁ、なにはともあれ。
「かぐや、私たちは私たちで全力を尽くすから。ドンキで買い出しして全部乗せのパンケーキつくろ」
「そっか…そっか…みんな自由だ!」
向日葵のような笑顔でかぐやはそういった。
観音姿の月人が出現した後、大小様々な月人が現れ始めた。
「ウチの妹たちは、可愛いねぇ…」
そう言ってコンソールを高速でいじり始めるHANAYA。
明らかなノイズ音を鳴らすと、HANAYAはブラックオニキス達に声をかけた。
「ブラックオニキスさん、はいこれどうぞ。」
「ん…は?HANAYA、お前これどうやって?」
帝が驚くのも無理はない。投擲師のULT“三種の兵器”をそれぞれに渡し始めた。
一つ“石鉢の一投”、一発限りの、相手を瀕死までもっていく超火力のライフル。
一つ“龍頸の火炎”、火力は低いがミニオンの一掃に長けた超範囲の爆発物。
一つ“蓬莱の秘薬”、自身を犠牲に一人の味方を完全回復、かつ持続回復に様々なバフを付与するポーション。
三種どれか一つを選んで使う、特殊なULT。他の職業が扱うとゲームバランスが壊れかねない、弱い職業にのみ許された専用装備である。これを複数個用意していたのだ。
「グリッジ、報告中の奴。使え。」
「報告中!?お前、これ使ったら…」
「グリッチって知らなかったってシラを切れ。このグリッチを知っているのは調べた結果、私だけ。だから、BANされるのも私だけ。」
呆気に取られながらも、ブラックオニキスの各々は、出された武器を手に取りしまった。
それを見届けると、HANAYAは伝えることは伝えた。と、再度コンソールを操作して、ぼとぼとと三種の兵器を足元に落としていく。自身で使う用だ。
「うわ、ヤッバ…」
「…詳しくことは知らないが、かぐやちゃん守るんだろ。使えるものは全部使う。ちがうか。」
コンソールから目を逸らすことなく作業を続け、グリッジで複製された兵器は山を築き始めた。
その横顔はプレイヤーではなく、子を守る母熊のような獰猛さだった。
「…ハッ、違いねぇ!」
そして、ライブが始まった。
帝とHANAYAの指揮、これに加えてグリッジやチートを駆使し、機敏かつ柔軟に鬼神如く戦った。HANAYAは体力が尽きそうな味方を犠牲にさせながら、敵を確実に減らしていった。この戦法に、これは外道の戦い方だ!とプレイの汚さに罵られながらも、全員が死力を使い戦った。
しかし、無尽蔵の軍勢の前には結局どうしようもなかった。
「彩葉、…大好き」
小さな月人に囲まれる中、立ち尽くすしかできなかった。
突如、後ろから何か投げつけられた。周囲の月人は消えていた。
そこにはボロボロですら生易しい、戦いの痕を残すHANAYAが立っていた。
「彩葉ちゃん、それで後悔しないのか」
「だって…」
どうしようも、ないじゃないか…
「上を見ろ、かぐやちゃんはあそこに、まだ居る」
「でも…」
「可能性がまだある。全力を尽くすといったろ」
何が出来るっていうんだ、もう体温も…
そこに、ないのに…
「…後悔はないのか?」
「…そんなの、一杯のありますよ!!!」
HANAYAに怒鳴り散らかし、勢いそのまま顔を殴った。
椰花さんは何も言わなかった。
感情ぐちゃぐちゃで、もう何もわからなかった。
「なら、いってこい。君になら出来る。最後まで悪足掻きしな」
腕をつかまれ、手に何か持たされる。
そして投げ飛ばされ、何か乗った。
「うわっ!椰花さん!!!えっ…」
突然の出来事に振り向くと、彼女は多数の赤い警告に囲まれて、顔は見えなかった。
証明して見せろ。
彼女はそう言って散った。
その様子に驚くと同時に、手には投擲師のULTの一つ“蓬莱の秘薬“がある事に気がついた。
まだ、終わりじゃない。
現実になくても、電子の夜空には確かに、まだ居る。
出来る事が、あるはずだ。
秘薬を一気に飲み干して、体力は完全に回復、色んなバフもついた。
強制的に一息つかされると、自分が何に乗せられたのかようやく気が付いた。
「ってこれ、かぐやが乗ってたあの魚!?」
言葉や物がなくとも、何をすべきかは魚もわかっている様だった。電子の風を強く感じる程に、魚はステージに向かって速く泳ぐ。
それでも、かぐやが乗っている、あのステージには全然届きそうにない。
でも、ここから出来る事を__!!!
「かぐやあああああ!!!わたし________
豪華絢爛な神輿に対して放たれたのに、それは遠く遠くで消えていく儚い流れ星への祈りの様で、届いたのかもわからない。
かぐやは、“想い”に振り返らずに月へと帰っていった。
参加した全員に様々な、悔いが生まれた。
彩葉の後悔は、一つだけ、少なかった。
「…両想い、だけじゃなかったんだ」
_____卒業ライブの数日後。
「このまま…終われるかああああああああ!!!!」
新たな決意が芽生えた。それは、思ってたよりも、少しだけ早くて、とても強かった。
それから、彩葉は怒涛の日々を過ごした、想いを創り上げるため、使えるものを使い、向き合うものと向き合った。
全力、総力戦であった。
食べ物?お姉さんに任せな。彩葉、これあげるから頑張って!プリント?まっかせて〜全部貰っとくから!それなら、お兄ちゃんに任せな!
___ええよ、やってみ。
様々な人に頼り、支えられた。
一回り、大きくなった気がした。
決意は、自身の壁を超えた。
出来た“歌”は、次元を超えた。
八千年、“痛み”を超えた。
そして、“想い”は時を超えて届いた。
「「全てを超えて、ハッピーエンドに!!!」」
未来という、宇宙へ、放たれた。