A Cup with Love   作:white flower

6 / 10

[※オリジナル設定があります。正確な情報についてはご自身でよくお調べください]




第六話 Blackout

 超新星ライバーかぐやの卒業ライブ開始前の余興。

 KASSWNのステージにて、月人に立ちはだかるように落下する六つの桃。

ブラックオニキスの参加に会場が湧く中、予定にない七つ目の桃が落ちてきた。

 

「あれ?七個目?誰か呼んだっけ?」

 

 そこから出てきたのは、黒色の軍服を基調とし、白亜のマントを羽織り、丸いグラサンをつけたROKA似の高身長の女性。

 

「や!こんばんは彩葉ちゃん。よかった、ギリギリ間に合った!」

 

 コンソールを操作して名前を見ると〔HN:HANAYA〕

 

『おおっと!珍しい人の登場だぁー!ROKAの実の姉で、やけに強いネタプレイヤーのHANAYAの登場だぁー!』

「オイコラァ!誰ぁれがネタプレヤーだ!? “ロマン”プレイヤーHANAYAとよべや!」

「え、もしかして椰花さん?」

「そうよ~今はHANAYAって呼んでね!」

 

 最近はマッチングしてなかったけど、HANAYAには何度か当たったことがある。KASSEN屈指の不人気職、投擲師の上位5本の指に入る変なプレイヤーだ。LMGと投擲物を利用した耐久戦術が厄介だった記憶がある。負けた記憶はない。

 

「HANAYAさんじゃん」

 

 お兄ちゃんから珍しそうな声がでる。

 

「げえっ、ブラックオニキス…」

 

 明らかに敵対心がでる椰花。

 

「…ねぇ、芦花、椰花さん、お兄ちゃんたちと何かあったの」

「あ~、なんかもう少しでランカーになれそうな時に何度も当たって、その度にボコボコにされたみたいで」

 

 嫌だこいつら~!と芦花に泣きつくHANAYA。

 

「ねぇ~ROKA、ブラックオニキスいるの知らなかったんだけど…」

「まぁ、言ってなかったし」

「おしえてよ!?」

 

 ぎゃーこらと話す姉妹喧嘩?をする2人。

 

「もう、やーねぇ、もう時間だから」

「あ、それもそうね」

 

 諭されたHANAYAはマントを消して、火縄銃を魔改造したようなLMGを顕現させるとグレネードや火炎瓶、トマホーク(投げる手斧)などの投擲物も腰に顕現させた。

 

「なには兎も角あのゴミカスどもを花火にしてやる」

 

 なんか、個人的な怨み入ってない?

 ヤる気たっぷりのようで何よりです。

 まぁ、なにはともあれ。

 

「かぐや、私たちは私たちで全力を尽くすから。ドンキで買い出しして全部乗せのパンケーキつくろ」

「そっか…そっか…みんな自由だ!」

 

 向日葵のような笑顔でかぐやはそういった。

 

 

 観音姿の月人が出現した後、大小様々な月人が現れ始めた。

 

「ウチの妹たちは、可愛いねぇ…」

 

 そう言ってコンソールを高速でいじり始めるHANAYA。

 明らかなノイズ音を鳴らすと、HANAYAはブラックオニキス達に声をかけた。

 

「ブラックオニキスさん、はいこれどうぞ。」

「ん…は?HANAYA、お前これどうやって?」

 

 帝が驚くのも無理はない。投擲師のULT“三種の兵器”をそれぞれに渡し始めた。

 一つ“石鉢の一投”、一発限りの、相手を瀕死までもっていく超火力のライフル。

 一つ“龍頸の火炎”、火力は低いがミニオンの一掃に長けた超範囲の爆発物。

 一つ“蓬莱の秘薬”、自身を犠牲に一人の味方を完全回復、かつ持続回復に様々なバフを付与するポーション。

 三種どれか一つを選んで使う、特殊なULT。他の職業が扱うとゲームバランスが壊れかねない、弱い職業にのみ許された専用装備である。これを複数個用意していたのだ。

 

「グリッジ、報告中の奴。使え。」

「報告中!?お前、これ使ったら…」

「グリッチって知らなかったってシラを切れ。このグリッチを知っているのは調べた結果、私だけ。だから、BANされるのも私だけ。」

 

 呆気に取られながらも、ブラックオニキスの各々は、出された武器を手に取りしまった。

 それを見届けると、HANAYAは伝えることは伝えた。と、再度コンソールを操作して、ぼとぼとと三種の兵器を足元に落としていく。自身で使う用だ。

 

「うわ、ヤッバ…」

「…詳しくことは知らないが、かぐやちゃん守るんだろ。使えるものは全部使う。ちがうか。」

 

 コンソールから目を逸らすことなく作業を続け、グリッジで複製された兵器は山を築き始めた。

 その横顔はプレイヤーではなく、子を守る母熊のような獰猛さだった。

 

「…ハッ、違いねぇ!」

 

 そして、ライブが始まった。

 

 帝とHANAYAの指揮、これに加えてグリッジやチートを駆使し、機敏かつ柔軟に鬼神如く戦った。HANAYAは体力が尽きそうな味方を犠牲にさせながら、敵を確実に減らしていった。この戦法に、これは外道の戦い方だ!とプレイの汚さに罵られながらも、全員が死力を使い戦った。

 しかし、無尽蔵の軍勢の前には結局どうしようもなかった。

 

 

 

 

 

「彩葉、…大好き」

 小さな月人に囲まれる中、立ち尽くすしかできなかった。

 

 突如、後ろから何か投げつけられた。周囲の月人は消えていた。

 そこにはボロボロですら生易しい、戦いの痕を残すHANAYAが立っていた。

 

「彩葉ちゃん、それで後悔しないのか」

「だって…」

 

 どうしようも、ないじゃないか…

 

「上を見ろ、かぐやちゃんはあそこに、まだ居る」

「でも…」

「可能性がまだある。全力を尽くすといったろ」

 

 何が出来るっていうんだ、もう体温も…

 そこに、ないのに…

 

「…後悔はないのか?」

「…そんなの、一杯のありますよ!!!」

 

 HANAYAに怒鳴り散らかし、勢いそのまま顔を殴った。

 椰花さんは何も言わなかった。

 感情ぐちゃぐちゃで、もう何もわからなかった。

 

「なら、いってこい。君になら出来る。最後まで悪足掻きしな」

 

 腕をつかまれ、手に何か持たされる。

 そして投げ飛ばされ、何か乗った。

 

「うわっ!椰花さん!!!えっ…」

 

 突然の出来事に振り向くと、彼女は多数の赤い警告に囲まれて、顔は見えなかった。

 証明して見せろ。

 彼女はそう言って散った。

 

 その様子に驚くと同時に、手には投擲師のULTの一つ“蓬莱の秘薬“がある事に気がついた。

 

 まだ、終わりじゃない。

 

 現実になくても、電子の夜空には確かに、まだ居る。

 出来る事が、あるはずだ。

 秘薬を一気に飲み干して、体力は完全に回復、色んなバフもついた。

 強制的に一息つかされると、自分が何に乗せられたのかようやく気が付いた。

 

「ってこれ、かぐやが乗ってたあの魚!?」

 

 言葉や物がなくとも、何をすべきかは魚もわかっている様だった。電子の風を強く感じる程に、魚はステージに向かって速く泳ぐ。

 それでも、かぐやが乗っている、あのステージには全然届きそうにない。

 でも、ここから出来る事を__!!!

 

「かぐやあああああ!!!わたし________

 

 

 

 豪華絢爛な神輿に対して放たれたのに、それは遠く遠くで消えていく儚い流れ星への祈りの様で、届いたのかもわからない。

 

 かぐやは、“想い”に振り返らずに月へと帰っていった。

 

 参加した全員に様々な、悔いが生まれた。

 彩葉の後悔は、一つだけ、少なかった。

 

 

「…両想い、だけじゃなかったんだ」

 

 

 

 

_____卒業ライブの数日後。

 

「このまま…終われるかああああああああ!!!!」

 

 新たな決意が芽生えた。それは、思ってたよりも、少しだけ早くて、とても強かった。

 

 それから、彩葉は怒涛の日々を過ごした、想いを創り上げるため、使えるものを使い、向き合うものと向き合った。

 全力、総力戦であった。

 食べ物?お姉さんに任せな。彩葉、これあげるから頑張って!プリント?まっかせて〜全部貰っとくから!それなら、お兄ちゃんに任せな!

 

___ええよ、やってみ。

 

 様々な人に頼り、支えられた。

 一回り、大きくなった気がした。

 

 決意は、自身の壁を超えた。

 

 出来た“歌”は、次元を超えた。

 

 八千年、“痛み”を超えた。

 

 そして、“想い”は時を超えて届いた。

 

「「全てを超えて、ハッピーエンドに!!!」」

 

 未来という、宇宙へ、放たれた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。