A Cup with Love   作:white flower

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第七話 The Encounter World

 かぐやの卒業ライブから5年後。

 お昼の暖かな日差しが差し込む研究室の中、ヤチヨが映されたタブレット端末の前で蠢く彩葉がいた。

 

「あああぁぁぁ…金が、金が足りないぃ…」

『彩葉、予算はまだまだあるでしょ?そんなになの?』

「予算はあるんだけど…」

 

 はぁ、と大きくため息をつけて続ける。

 

「構想や理論はほとんど完成してて、後は実機を作成して何度も調整を繰り返していくだけ、もっと予算があればその分実機をつくれるから、応じて研究も進むの」

 

 指を顎にあててヤチヨはいう。

 

『でも、ゆっくりでも進むなら、いいんじゃない?』

 

 それはそうなんだけど…

 

「例えば、少し離れた所にパンケーキ屋さんがあって、お腹ペコペコな時、徒歩で行けるけど、タクシー使えば直ぐに食べられる!ってなったらヤチヨはどうしたい?」

『それは…タクシー使いたくなるねぇ…』

「でしょ?」

 

 あーお金が欲しい~と2人で天井を仰いだ。

 突如、研究室の扉がコンコンと叩かれる。

 

「所長、お客様様です。」

「あっ、もうそんな時間!?」

 

 今日は研究に出資して貰っている。GCF社ことGrand Color Flower社とのミーティングがあるのだ。

 

「ごめん、ヤチヨいってきます」

『いってらっしゃい、彩葉』

 

 画面の中で手を振っていた。

 

 

 

 年上の部下と廊下を歩きながら、情報を交換する。

 

「確認なんですが、今日、いらっしゃるのはGCF社の方でしたよね。」

「はい、それが…」

「何かありましたか?」

 

 何か面倒ごとが起きたか、と身構えた。

 

「いつもの方が体調崩された様で、その代わりに急遽CEOがいらっしゃるとのことで…」

 

 どうしたらいいのかわからないといった様子で、紙を渡された。

 

「えっ、嘘。本当に代りにくるのがCEO!?」

「つい先ほど、到着と同時に伝えられまして…」

 

 思わず眉間を抑えた。

 

「…わかりました。連絡ありがとうございます。」

 

 予想していなかった出来事に、身を引き締めた。

 この研究を続ける為にも。

 

 

 

 GCF社のCEOが待つ扉を開け、いつも通り挨拶をする。

 

「失礼します。大変お待たせいたしました。当研究所の所長、酒寄彩葉で、す…?」

 

 そこには、馴染みある作業服の女性が一人で座っていた。

 

「や!彩葉ちゃん久しぶり」

「え、椰花さん!?」

 

 キッパリ整ったスーツを身につけ、部下を引き連れていると思っていたCEOの代りにいたのは、馴染みある親友のお姉さんだった。

 

「研究服の彩葉ちゃん、芦花の写真ではみたけど、実物見ると一層カッコいいわね~!」

「ありがとうございます。そうだ、いつも美味しいお野菜ありがとうございます」

「いいのよ~」

 

 はっ、いけない、いけない。偶に会う時そのままで接してしまった。今は勤務中なのに。

 

「それはそうとして、椰花さんはどうしてここに?」

「あっ、そうそう、いつもいってもらってた社員がね、子供の風邪移されちゃったみたいで、調整面倒だったから私がきたの!急な連絡になってごめんね。」

「そうだったんですね、わざわざ来て下さって、ありがとうございます。…ん?」

 

 担当者の代わりにきたって事は

 

「あっ、そうだ、名刺まだ渡してなかったね」

 

 ゴソゴソと椰花は持参した鞄から、立派な皮の名刺入れを取り出した。

 

「はいこれ」

「あ、ご丁寧にどうも…」

「さて、改めて、申し遅れました、担当者に代わりミーティングに参加させていただきます。GCF社CEOの綾紬椰花です。本日はよろしくお願いします。」

「え…えええええ!?!?!?!」

 

 貰った名刺には間違いなく、GCF社CEO綾紬椰花と刻まれていた。

 

「あれ、言ってなかったっけ?」

 

 椰花は首をかしげていた。

 

 

 

「いや、ほんっと、いつもお世話になっております!!!」

「いーのいーの、そんな畏まらないで」

 

 土下座する勢いでお辞儀をする彩葉。

 

「なんだ、彩葉ちゃん、ほんとにいつも通りでいいから、逆にお姉さんが対応しづらいから」

 

 気恥ずかしそうに、椰花は頭を掻きながらいう。

 そこまでいうならと。態度を和らげる。

 

「ありがとうございます。椰花さん。」

「うむ、彩葉ちゃんはそれでいいのよ」

 

 胸をなでおろす椰花。

 

「これに関しては、伝えてなかった私が悪いわ」

「いやいや、スポンサーなのに、調べてなかった私が悪いですよ」

「…いや、調べても出てこなかったと思うわよ」

 

 ほら、と椰花は自身の携帯でGCF社のHPを開いてみせてきた、シンプルというより、悪い意味で簡素なものだった。

 そういえば、結構前にCEOが芦花と苗字一緒だけど、下の名前だしてなくて、諦めたんだっけ。書面はすべて担当者に向けてだしてくれって言われて、結局調べるの辞めたんだっけ、忘れてたな。

 

 そんなこんなで二人で、もう少し世間話をして空気が和らいだところで、そろそろミーティングしますか、と柔らかくも真面目な場となった。

 

「さて、担当者から話は引き継いでいます。が、急遽というところもあり、まずは確認からさせてもらっていい?」

「はい。」

 

 先日、送信した資料を机に広げながら話を進めていく両者。

 

「そこで、気になったんだけど、この予定って、研究数増えたら早く進む?」

「はい、そうです。このページにある通りなんですけど、理論などは殆ど完成していて、実験を繰り返す段階に来ていると我々は判断しています。」

 

 机の上のスライドを指して説明を続ける。

 

「次のページにある通り、我々に足りていないのは、実験数です。得られたデータの数だけ、研究は加速的に進むのではないかと予想しています。」

「なるほど。」

 

 示された部分を改めて読みなおす椰花。

 

「じゃぁ、彩葉ちゃん、研究増やさない理由は?」

「それに関しては、このページで、一つの義体の制作対してかかる費用を考慮すると、現状の予算ではこの回数しか出来ないと判断しました。」

「それは本当に予算の都合だけ?」

「はい。」

「あぁ、書いてあるわね。製作する分には本当に問題ないのね。」

「そうですね、この部分だけは予算で解決出来ないんですけど___

 

 こうして細かな部分を詰めていくうちに日は沈んでいった。

 

「____だから、この予定になっていると。なるほどね、よくわかったわ。ありがとう彩葉ちゃん。」

「いえ、いつも支援して頂いてるおかげです。」

 

 お互い話疲れ、お茶を飲んで、小休止をいれる。

 私は不要となった資料を整理し、まとめて話を終える準備をしていた。

 椰花さんはこの間にタブレット端末を出して、何か色々と確認していた。そうか、限度額に達してるのか。など、呟いていたが、どういう事なんだろうか。

 

「よし、決めた。彩葉ちゃん。これ、投資するわ。」

「…え?それ、はどういう。」

 

 もう企業として、相当な金額投資してるのにこれ以上ってどうやって。

 

「いつどおり、企業としての投資も継続する。けど、会社として、これ以上は出せないから。ここからは、私個人が出す。」

「個人…?」

「はいこれ」

 

 手渡された、さっきとは異なる名刺。投資家、と書かれていた。

 

「こっち名義なら、もっと出せる。彩葉ちゃんがもつ“ロマン”、もっと教えて。」

 

 先ほどまではなかった、何かを見定める目。

 少しだけ、空気が冷えた気する。

 

 直感が告げる。これはチャンスだと。

 

 椰花の目がいう、本当の力、本当の想いを見せてみろと。

 

「っ!わかりました!椰花さん。この研究の未来は____

 

 それからは無我夢中で語った、唇を噛んでも気にせず話を続けた。

 気がついた時には日を跨いでいた。

 

「___というわけです。だから、投資してください!!!」

 

 最後は勢いだった。

 心の中でヤチヨに祈った。

 最後の言葉がでてから数刻の沈黙があった。それは永遠のようだった。

 椰花の開いた口からでた言葉は、

 

「最っ高の浪漫だ」

 

 だった。

 椰花の顔を見た、それは慈愛のようで、満足そうな顔で、祭りの始まりを待っている。そんな表情だった。

 

 

「彩葉ちゃん、その想い証明して見せろ」

 

 そう言って椰花が渡してきた紙には

 

「ん?…えっと、一、十、百、千…!?!?…ヒェッ」

 

 ひゅるひゅるぱたり。

 そこには、意識も疲れも記憶も、研究にかかる年月すら吹っ飛ぶ金額が書かれてたそうな。

 

 

 

_______2年後

 

「やっぱこっちの方が安定するかな。9型目はどう?かぐや」

「ん〜もぐもぐ、やっぱクソ不味ぃ…めっちゃいいね!味も綺麗に感じる、これだよ、コレ!」

「それは良かった。…大変お待たせしました、お姫様」

「…卒業ライブから、ぴったり7年と7日…かぐやたち、織姫と彦星だったのかな?」

「7しかあってないじゃない…でも、その2人とは違って、私達はずっと、一緒にいられる。二人で美味しいパンケーキ食べて、好きなところに行ける」

「確かに!…ねぇ、ありがとう、いろは…やっと、本当に…」

「もう……おかえり、かぐや…」

「っ…ただいま、いろは…!!!」

 

 溢れる流星群は、願いを叶え終えた。

 

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