――いつからか、あなたを見ていた。
――そしていつからか、きっと私は"恋"をしていた。
内容は、現在書いているオリジナルの小説を題材にしているため、意味が分からない部分が多いと思いますが、悪しからずご容赦ください。
雰囲気だけでも感じ取っていただければ幸いです。
瞼を閉じているというのに、景色が目の前を駆け抜けていく。
例えるなら、真っ暗な部屋で映画を見ているような、そんな感覚に近いのかもしれない。
これは、
初めて「ママ」と口にした時?初めてランドセルを背負った時?もしかすると、ママのおなかにいる時だったかもしれない。
もう、よく覚えていない。だけど、この
私の家は少し、いや、かなり変わっている。何せ、パパは鬼の王様で、ママもほとんど鬼で、叔母さん――普段はこんな呼び方しないけど――は鬼のお姫様(元)なのだから、一般の家庭だなんて口が裂けても言えない。だけど、パパもママも元々は人間だったから、半人半妖。うん。それが私たち家族にピッタリな言葉な気がする。
初めて自分に鬼の血が流れていると告げられた時、私は全く驚かなかった。だって、それは
パパとママが、生まれた日を覚えている。
パパとママが、出会った日を覚えている。
パパとママが、鬼になった日を覚えている。
パパがママに、告白した日を覚えている。
全部、何度も何度も見た
夢という映写機は、過去のパパとママを瞼というスクリーンに映し出していたのだ。
擦り切れることのないフィルムは、終わりを知らない。私が眠れば再生されるし、終わればまた最初から始まる。
初めて見た
結局、
言い忘れていたのだけれど、私はこの
空虚で、退屈で、窮屈で、そのくせ残酷で儚いこの
目を開けていても、閉じていても、私は現実から目を背けることができない。それって、非道いと思わない?
――でも、ある日を境に私の世界は色付いて見え始めたのッ!!
黒一色だと思っていた私の家が実は色鮮やかだと、季節の移ろいがこんなにも心を震わすのだと知ったときは涙を流した。
切欠は、
あの人は、ママの幼馴染だった。何度も見た、見飽きたはずのあの人。
最初は、強い人だと思った。
次に、哀れな人だと思った。
ある時、不器用な人だと思った。
最後に、愛しい人だと思った。
何故?と聞かれても、私にも分からない。ただ、色あせた世界で彼だけが唯一、淡い光を宿していた。最初はそんな理由だった気がする。
最初に気になってからは、あっという間だった。
彼の強さ。彼の考え。彼の行動。彼の……ママへの気持ち。
そのすべてを知りたくて、知りたくて、知りたくて知りたくて知りたくて…………。
彼のことを考えている間だけ、私は現実ではなく夢を見ることができていた。
それからは、夢を見るのが楽しみになった。ある意味、彼は私の恩人なのだ。
相変わらず、退屈で変わり映えのない夢だったけど、彼が出てくるだけで私の胸はひどく高鳴った。
この場面を、彼の姿をずっと、永遠に見続けることができたら良いのにと、何度考えたか分からない。
私はきっと、誘蛾灯に誘われる蛾なのだ。彼の光は強烈で、触れれば身を焦がしてしまうに違いないけれど、故に私は強く、強く引き寄せられるのだ。
――だけど、あなたは私を見てくれない。
当然だ。私が見ているのは
あなたの目に私が映ることはない。映っているのはいつも、ママばかり。
|あなたの、ママと話しているときの横顔が眩しかった。《どうして、こんなに妬ましいの?》
|あなたの、ママを想って泣く姿に心打たれた。《どうして、こんなに胸が苦しいの?》
どうして、どうして、どうして……。
まだ幼かった私には、分からなかった。私はママを好きなのに、どうしてこんな気持ちになるのだろう。
ある時、ママに――もちろん、内容はぼかしたが――この気持ちは何なのかを尋ねてみた。
そしたらママはこう言った。「それは恋だよ」って。
恋……。恋、恋、恋!
ああ、なんて魅惑的な言葉なんだろう。
そうか、この切なく、苦しく、されど温かいこの感情は、恋なのか。
それを自覚したとき、私はその場で飛び上がりそうになった。
私はその日、初めて恋に堕ちたのだ。
そして、私はママへと問いかけたの。「ママは恋をしたことがあるの?」と。答えはもちろん、知っていた。
その時のママの顔は今でも覚えている。恥ずかしそうで、嬉しそうで、どこか悲しそうだった。
綺麗だと思った。あなたとパパがママを好きになった理由がその時、なんとなく理解できた。
そんな、二人の男性に想われていたママは、結局、パパを選んだ。
あなたには悪いけど、私はそれがとっても嬉しかった。だって、ママがパパを選んでくれたからこそ、私はこうして生きていて、あなたを想うことができている。
これって、……運命、だよね。
私が生まれたのも、私が
きっと、私は、あなたに出会うために生まれてきた。
いつか、夢か現か、誰かがこんなことを言っていた。
――並行世界、つまりIFというのは存在するが、存在しないのだ。
並行世界は無数に存在する、可能性の世界。
朝ごはんに何を食べるか。右を行くか左を行くか。誰を人生の相棒として選ぶのか。
そんな、大小様々な選択を行うまで、可能性の世界は確かに存在しているのだそうだ。
けれど一度選択してしまえば、他の道は消えてなくなる。
可能性とは、観測されていないからこそ可能性足りうるのだと、その人は言っていた。
これは過去も同じだ。
過去は誰にも見ることができない。だからこそ、無限に近い可能性に満ち溢れている。
例えばそう、ママとパパの子供が私ではない世界や、考えたくもないけれど、ママがあなたを選んだ世界。
そういった、あったかもしれない世界が生まれては消えていく。
――でも、そんなの、許せないよね。
だって、私とあなたが出会うのは運命。絶対の理なのだから。
そんな可能性など、認めないし、許しはしない。
そして私には、それを可能にする力があった。
……ふふッ、今、改めて実感できた。やっぱりこれは運命なのだと。
私のこの、
これがあれば、誰も見ることができないはずの過去を、私だけが観測できる。
私が見るのは、私がパパとママの娘として生まれてくる世界だけ。ほかの可能性など、断じて生じさせない。
もし、
私が私であるために、退屈で見飽きた
だって、あなたを誰かに盗られてしまう方が、ずっと、ずっと怖いのだから。
きっと、私は歪んでいるのだろう。
会ったこともないあなたに、こんなにも惹かれ、夢中になっている。
だけど、仕方ないの。あなたに対する想いが、とめどなく溢れ、零れ、滲みだすのだから。
――あなたに会いたい。
――あなたと話したい。
――あなたに想われたい。
――あなたに愛していると言いたい。
――あなたに愛していると言われたい。
――あなたの腕に抱かれたい。
――あなたの傍に居たい。
――――あなたとの未来が見たい。
それが私の願いであり、夢なのだ。