☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜   作:人見小夜子腹パン部

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死滅願望のシステム考えるのに手間取ってるので2時間だけお待ちください。


■■■■

 【原初の火】。

 【原初の火】。

 

 ダンジョンの入口で、俺は二回そう唱えた。

 

 それで終わりだった。

 

 膜の向こうに広がっていたはずの庭園は、咲き乱れる雷花も、群れていた雑魚も、奥で待ち構えていたボスも、まとめて光の向こうへ消えた。

 焼ける、という表現では少し足りない。

 業火の奔流が地形ごと押し潰し、構造ごと世界から抉り取った、という方が近い。

 

 雷鳴じみた破裂音が一拍遅れて響き、直後、B級ダンジョン【雷獄華の庭園】そのものがひび割れたように揺れた。

 

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『――B級ダンジョン【雷獄華の庭園】を踏破しました』

『ボス個体【巨大雷電蠍ケラウノス】を討伐しました』

『【召喚石:ペインチェイサー】を獲得しました』

『高位素材を獲得しました』

『初回踏破報酬を獲得しました』

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「はい、お疲れさまでした」

 

 誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。

 ボスか。

 ダンジョンか。

 それとも、このクソみたいな相性ゲーを律儀にやるつもりだった過去のプレイヤー達にか。

 

 【巨大雷電蠍ケラウノス】。

 原作でも、かなり不快なクソボスだった。

 

 感電でスキルを封じ、重装甲で半端な打点を無意味にし、足を止めた相手へ理不尽な特攻を叩き込む。

 低レア殺しの思想が煮詰まりすぎたような、戦っていて気分が悪くなるタイプのボスだ。

 

 ……まあ。

 

 今、接敵すらしていないまま、ダンジョンごと焼き払われて死んだが。

 

     ◇

 

 十日。

 

 ダンジョンが導入された、あの日から十日が経っていた。

 

 二日目に安里真由と接触。

 三日目に攻略サイト立ち上げ。

 五日目に大伴円と接触。

 そこから更に五日。

 

 まだ十日だ。

 たった十日しか経っていない。

 なのに世界は、もう元の形へ戻る気が無さそうだった。

 

 電力会社は魔石変換設備の導入で地獄を見ている。

 病院は魔石医療の倫理と優先順位で揉めている。

 警察と自衛隊はダンジョン封鎖と民間探索者の扱いで死にかけている。

 企業は探索者手当と魔石備蓄で求人票を書き換え、政府はそれを既存法へ押し込もうとして胃をやっている。

 

 学生は休講だの遠隔授業だのと言われた翌日に、実家の鉱石加工を手伝って小遣いどころか月収を超えた。

 ホームレスがF級ダンジョン【水晶洞窟】でカカライトを掘って日銭を稼ぎ、元旋盤工のおっさんが加工スキルで英雄みたいな顔をしている。

 配信者は「検証」と称して穴へ飛び込み、コメント欄で死ぬな帰れと罵倒され、それでも再生数は伸びる。

 

 かつての勝ち組が☆1で沈み、昨日まで社会の底にいた人間が加工や採掘で急に食えるようになる。

 旧来の序列は、もうあちこちでひっくり返り始めていた。

 

 物流は細り、だが止まっていない。

 学校は揺れ、だが潰れてはいない。

 会社は悲鳴を上げ、だが金の匂いには敏感だった。

 

 社会全体が、みっともなくも必死に、新しいルールへ形を変えようとしていた。

 

 見苦しい。

 そして、妙にたくましい。

 

 人間社会は、思っていたよりずっと醜く、思っていたよりずっとしぶとい。

 

 そして俺は、相変わらず周回している。

 

     ◇

 

 今の俺は、たぶん一番気持ちいい時期にいる。

 

 九日目。

 俺のレベルは100に到達した。

 クラスはキャスターV。

 

 クラスⅣで、CT短縮とバフ補助を兼ねた【魔杖作成】を習得。

 クラスⅤでは、正体不明の【■■■■】を得た。

 

 後者はまだよく分からない。

 取得時、通知だけが一瞬ノイズ混じりに潰れた。guide-GPTに確認しても、まともな説明が返ってこない。

 たぶん後半の鍵だ。

 気にはなるが、スキル強化や転生、スキル修飾を筆頭に、まだまだやれることは山ほどある。

 

 それでも、“ひとまずの育成完了”と呼ぶには十分な地点まで来た。

 

 装備も揃えた。

 

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【覇道の双点杖】

分類:杖

補正:INT+500

効果:ダンジョン侵入後、最初に使用した攻撃スキルを二連射する

解説:覇を唱える者は、初手で躊躇わない。

世界へ最初に叩きつける一撃のみを、露骨なまでに重くする双極の魔杖。

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【万能の典衣】

分類:ローブ

補正:VIT+300 INT+200

効果:あらゆる基礎ステータスを通常枠で400%上昇させる

解説:器を問わず、雑に強くするための衣。

洗練とは程遠いが、完成していない存在へ着せた時だけ、凶悪な効率を発揮する。

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【死神の片眼飾】

分類:アクセサリ

効果:攻撃系バフに500%の乗算補正を付与する/被弾時1%で即死

解説:死を恐れる者には勧めない。

だが、当たらなければどうということはない、という発想にだけは異常な親和性を示す。

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 通常枠。

 もともとの100に、万能の400。合計500。

 そこへ死神の500%乗算。

 さらに【覇道】で初撃二連射。

 そして安里真由の【天刻拍動】で完全別枠100%アップが二回。

 

 結果、ざっくり百倍。

 

 雑だが、周回火力としては十分すぎる。

 B級の二千クラスのモンスターを、ボスもろとも一掃するくらいには。

 

 原作の数式を丁寧に分解して説明すれば、もっと正確な話もできる。

 だが、周回に必要なのは厳密さより結論だ。

 

 入口で詠唱する。

 真由が合わせる。

 ダンジョンが死ぬ。

 それでいい。

 

 今の俺は、間違いなく世界最強の探索者だ。

 少なくとも、裏側の効率と育成深度まで含めれば、そう言い切っていい。

 

 だが同時に、これがだいたい俺の限界でもある。

 

 ☆1の低ステータス故に、ひとまず育成が終わっても、A級以上のソロは普通にきつい。

 火力は足りても、地力と対応力が足りない。

 

 B級までは周回の暴力でねじ伏せられる。

 だがそれより上は、“戦う”必要が出てくる。

 

 まともに殴り合う。

 ギミックを受ける。

 継戦する。

 長期戦に付き合う。

 

 そういう戦闘は、俺の仕事じゃない。

 

 それで良い。

 

 俺は戦闘要員じゃない。

 周回要員だ。

 

 入口から焼く。

 雑魚もボスもまとめて吹き飛ばす。

 ドロップと種火と素材と装備を根こそぎ回収する。

 

 そのためのビルドだ。

 そのための人生だ。

 

 使い捨てドロップアイテム、装備、種火、強化素材が、インベントリの中で溢れ返っている。

 

 この一日だけで、俺は日本中を回った。

 政府から許されたダンジョンと、原作知識でしか辿れない隠しダンジョンを片っ端から回った。

 某方法で転移用アイテムを得たおかげで、それが成立している。

 

 普通の探索者なら移動だけで死ぬ行程を、俺は焼いて、跳んで、また焼いている。

 新幹線も飛行機もいらない。

 魔石と転移と原作知識があれば、国内程度なら周回ルートの一つに過ぎない。

 

     ◇

 

 あと、安里真由は復帰した。

 

 正直、戻ってくるとは思わなかった。

 

 魔石五十個。

 あれを相当適当な売り方でもしない限り、二兆円前後にはなる。

 俺も千個持ってるので、理屈の上では四十兆円。インベントリに国家予算が入っているようなものだ。

 育成に使いたいので実質換金不能だが。

 

 それより真由が戻ってきた理由の方が面白かった。

 

 何でも最初の三日は、贅の限りを尽くしたらしい。

 

 一泊五百万の最高級ホテル。

 キャビアフォアグラトリュフ丼。

 パリコレのおしゃれさが一周回った服。

 エステだのスパだのアフタヌーンティーだの、よく分からないが高そうなものも一通りやったと言っていた。

 

 まともな寝具。

 まともな風呂。

 まともな部屋。

 まともな食事。

 まともな温度。

 まともな静けさ。

 

 金の力で、「成金セット」と「まともな人間っぽい生活」を一気に買い戻してみたそうだ。

 

 それ自体は正しい。

 大金を手にした元無職女が、最初にやる行動としてかなり健全な部類だと思う。

 少なくとも、全部変な男に貢ぐとか、怪しい投資に突っ込むとか、そういう最悪の展開ではない。

 

 だが、途中で思うところがあったらしい。

 

 面倒くさい性格ゆえ遠回しにしか言わなかったが、要約するとこうだ。

 

 こいつの夢は、たくさんの人たちに看取られながら死ぬこと。

 

 ただ孤独に野垂れ死ぬんじゃない。

 誰かに惜しまれて、ああ、この人がいて良かったと思われながら終わりたい。

 そのために、もっと世界へ恩を売りたい。

 

 だいぶ重い。

 だが真由らしいとも思う。

 

 豪遊して、金の威力を知って、生活は立て直せると理解した。

 その上で、それでも足りなかったのだろう。

 

 結局こいつは、金そのものが欲しかったんじゃない。

 金で得られる「普通」と、その先の「誰かに必要とされる感じ」が欲しかった。

 そして後者は、ホテルのスイートルームでは手に入らなかった。

 

 だから戻ってきた。

 

 最初に再会した時、真由は前よりずっとまともな服を着ていた。

 髪も整っていた。

 肌も睡眠も、明らかに前よりマシだった。

 

 そして戦闘に入ると、さらに分かりやすかった。

 

 【天刻拍動】のタイミングが前より鋭い。

 寝不足と低血糖でブレていた反応が、ちゃんと一線を越えた。

 回復判断も早くなった。

 戦闘中はスマホを仕舞う、という当たり前の切り替えまで、少しずつ出来るようになっていた。

 

 金と睡眠は偉大である。

 

 なのに口を開いた瞬間、

「……やっぱり、高等遊民ぬくぬくお布団生活が恋しくなってきたわ」

とか言い出したので、社会復帰とは何か、少し考えさせられた。

 

「【天刻拍動】!」

 

 今は、俺の横で【天刻拍動】を合わせるのにも慣れ始めている。

 社不とスマホ中毒は相変わらずだが、回復の手つきはだいぶ人間らしくなった。

 

 こいつも、金だけでは満足しないらしい。

 面倒な生き物だ。

 

     ◇

 

 そして面倒なのは、真由だけじゃない。

 

 攻略サイトの方も、七日でかなり様変わりした。

 

 最初は「クラスの違い」「レアリティ格差」「種火の使い方」みたいな基礎記事が中心だったのに、今では、

 

 【初心者向け固定値HPビルド】

 【B級までの周回向け職別装備】

 【加工職の相場】

 【回復職の過労を防ぐローテーション例】

 【探索者向け税務Q&A】

 

 みたいな、だいぶ世知辛いページまで増えている。

 

 コメント欄も地獄だった。

 

> うちの兄がサイト見て装備揃えて生還した

火賀って人、口悪いけど助かる

生命のペンダント配布マジで神

鉱石シリーズ値上がりしすぎ

加工職に転職したい

探索者手当つくなら会社やめない方が得?

プリーストがブラック職すぎる

アサシン差別やめろ

☆1でも生き残れるってマジ?

魔石変換設備の求人出てるんだけどこれ罠?

うちの親父が鉱石加工で人生の春来てる

学生だけど単位よりカカライトが大事になってきた

税務Q&Aの「まず生き残ってから納税を考えろ」で笑った

回復職ローテ記事なかったらうちの妹つぶれてた

低レアでも役割あるって分かっただけで助かった

 

 

 

 十日前には存在しなかった悩みが、もう当たり前の顔で飛び交っている。

 世界の壊れ方が早すぎて、逆に人間の順応速度が怖い。

 

 病院では、

 「末期患者へ先に魔石を回すべきか、現場維持のため医療従事者を優先すべきか」

 なんて話で本気の喧嘩が起きているらしい。

 

 企業は企業で、

 「探索者手当 月20万円」

 「加工系スキル保持者歓迎」

 とかいう、十日前には頭がおかしいとしか思えない求人を平然と出している。

 

 大学は休講だのオンラインだのと言いながら、工学部と医学部が魔石と遺物へ群がっている。

 自治体は自治体で、避難所の横に探索者登録窓口と鉱石買取所が並んでいる。

 もはや災害対応なのか新産業なのか分からない。

 

 攻略サイトは、もうただの攻略サイトじゃなかった。

 初心者の生存率を上げる窓口であり、

 職と相場と装備を繋ぐ掲示板であり、

 世界が新しいルールへ移行するための雑なインフラになりつつあった。

 

 表の世界がそんな調子でぐちゃぐちゃに再編される一方で、裏の周回効率はむしろ洗練されていた。

 

 政府が許可した攻略案件。

 攻略サイト経由で回ってくる相談。

 隠しダンジョン。

 素材集め。

 装備更新。

 人材発掘。

 

 それら全部が、俺の中ではもう一本の周回ルートとして繋がっている。

 

     ■■■■

 

 ただし、それはあくまで裏の話だ。

 

 俺が仮初とは言え“最強の探索者”であることは、今のところ表には出ていない。

 

 理由は簡単で、俺の戦いは絵面が終わっているからだ。

 

 入口で立ち止まる。

 詠唱する。

 光る。

 ダンジョンが吹き飛ぶ。

 その後、灰まみれになって崩れる。

 

 派手ではある。

 だが派手すぎて、逆に個人の戦果として認識されにくい。

 映像に残っても「何かやばい災害が起きた」寄りの見え方になるし、政府案件と隠しダンジョン中心で動いている以上、表のニュースには乗りづらい。

 

 その点、表の探索者最強は、大伴円だ。

 

 改造スマホのニュース欄を開く。

 

 そこには、ここ数日で一気に伸びた見出しが並んでいた。

 

『都内C級ダンジョンでボス撃破、謎の若年探索者』

『通常攻撃だけで削り切った“【死滅願望】”とは』

『☆0探索者、配信切り抜きで話題に』

『会心が止まらない、異常手数の近接戦闘』

『低レア逆転の象徴か 大伴円という探索者』

 

 口元が少しだけ上がる。

 

 

 そう。

 そろそろだ。

 

 俺が裏で鍛え上げ、最低限の形まで持っていった☆0アサシン。

 大伴円が、表舞台で暴れ始めていた。

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