☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜   作:ちんこ良い肉

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金剛龍帝

  金剛龍帝という生物がいた。

 

 生物、という呼び方すら、たぶん本来は生ぬるい。

 

 最強の捕食性生物。

 全てを喰らい、力を取り込み、能力を掛け合わせ、爆発的に強くなる。

 食ったものの半分を得る、だとか、一部を継承する、だとか、そういう可愛らしい段階の話ではない。

 存在そのものを嚙み砕き、概念ごと胃へ落とし込み、消化吸収の果てに「相手が持っていたものは最初から自分のものだった」と言い張る側の怪物。

 

 獣を喰えば牙と爪を得る。

 魔物を喰えば魔力回路と異能を得る。

 竜を喰えば鱗とブレスと膨大な生命力を得る。

 精霊を喰えば属性を得る。

 英雄を喰えば技術を得る。

 王を喰えば支配の器を得る。

 賢者を喰えば知を得る。

 神を喰えば神性を得る。

 全能の死体を喰えば全能へ達する。

 そして全能へ達した後は、全能たちを片っ端からむさぼり、最後には世界の管理者すら喰った。

 

 多元宇宙を、一口で噛み砕く。

 

 比喩ではない。

 詩的表現でもない。

 実際にそれができる段階まで育った。

 金剛龍帝という終末機構は、そういうところまで到達した。

 

 どれだけ硬い殻も。

 どれだけ深い理も。

 どれだけ高位の神秘も。

 結果的に捕食の最適解になるなら、全部嚙み砕く。

 社会性への擬態も、会話も、取引も、忠誠も、愛も、慈悲も、全部やる。

 それが最終的に相手を喰うための最短距離なら、何だってやる。

 諦めることを知らず、飢えることだけを知っている、終末の捕食機構。

 

 合理的で、無機質で、狡猾で、執念深い。

 エクセルの上へ「お腹が空いた」と地獄を濃縮したインクで書き殴ったみたいな思考の怪物だ、と、どこかの資料にはあった。

 言い得て妙だと思う。

 人格だの精神だの哲学だの、そういうものは全部、最後に喰うための工程表へ回収されている感じがする。

 

 オリジナルは、別世界にて、オーエン・ホークウィンドという名の冒険者と、その仲間達に討たれた――らしい。

 らしい、というのは、そこまでの詳細を俺が知らないからだ。

 アーデルハイド本編へ断片的に流れ込んでくる資料では、そこが既に伝説の領域に入っていた。

 

 【黄金の剣】。

 【賢者】。

 【龍帝】。

 【月光殲滅】。

 そういう単語だけが、断片的に、しかもどれも規模がおかしすぎるまま記録へ残っている。

 まともに追おうとすると頭が痛くなるので、俺は途中で考えるのをやめた。

 

 重要なのはそこじゃない。

 

 重要なのは、その金剛龍帝の同位体が、アーデルハイド世界へ複製されていたことだ。

 

 七大魔王。

 その一柱。

 

 【暴食】。

 異典・金剛龍帝。

 

 アーデルハイド原作のストーリーが滅びた最大の原因。

 七大魔王の中でも、放置した場合の被害規模と取り返しのつかなさで言えば、間違いなくこいつが一番ヤバい。

 

 他の魔王は、強い。

 厄介だ。

 理不尽だ。

 でも、理不尽にも一応かたちはある。

 領域を持つ。

 軍勢を持つ。

 権能を持つ。

 攻略法も、最悪、後から探れる。

 

 だが、金剛龍帝だけは違う。

 

 こいつは「放置した時間」そのものが最悪の育成素材になる。

 

 食えば食うほど、強くなる。

 しかも、その成長に上限がない。

 食った相手の能力と能力が掛け合わさり、爆発的な複合進化を起こし、次に食う相手の格を一段上げる。

 それを繰り返す。

 しかもその繰り返しが、後半に行くほど加速する。

 昨日まで獣を喰っていたトカゲが、明日には英雄を喰う資格を得ている。

 そういう類の、成長曲線が悪意でできている怪物だ。

 

 金剛龍帝の恐ろしさは、今の強さではない。

 今この瞬間に処理しなかった場合、明日にはもう別の生き物になっていることだ。

 

 最初は獣。

 次に魔物。

 その次に人間。

 その次に英雄。

 その次に王。

 その次に神秘種。

 そうやって、喰うに足るものの階段を一段ずつ上がっていく。

 

 原作では、そうだった。

 

 最初は誰も脅威だと思わなかった。

 当たり前だ。

 出現直後の金剛龍帝は、ただのトカゲだったからだ。

 

 黒い。

 小さい。

 腹が減っている。

 それだけ。

 

 低級ダンジョンの片隅で、雑魚魔物の死骸を齧っているだけの、みすぼらしい捕食者。

 見た目も強そうじゃない。

 ステータスも最初は大したことがない。

 スキル欄も地味だ。

 強いて言えば【捕食】と【金剛】と【暴食】みたいな、後から見ると嫌な単語が並んでいるくらいで、その段階では「まあ、伸びしろはありそうですね」程度の感想で済んでしまう。

 

 そして、それが最悪だった。

 

 誰も本気で処理しない。

 高難度攻略で忙しい連中はスルーする。

 初心者は面倒だから後回しにする。

 配信者は映えないから放っておく。

 国家も軍も、もっと分かりやすい脅威へ戦力を回す。

 勇者を名乗る連中も、魔王っぽくないから横を通り過ぎる。

 英雄願望を持つ連中ほど、こういう地味な終末機構を見落とす。

 

 その間に、食う。

 食って、食って、食って、増える。

 能力を取り込み、能力同士を掛け合わせ、あり得ない速度で質が変わる。

 まずは探索者の死体と低級迷宮のボスを喰う。

 それだけで人里近くへ出る資格を得る。

 次に中級を狩る。

 中級を喰って上級へ届く。

 上級を喰って英雄級へ届く。

 英雄級を喰って神話へ手をかける。

 そして神話へ届いたあとは、もう誰も処理できない。

 

 気づいた時には遅い。

 

 最初は地方の配信切り抜きで終わるだろう。

 妙にしぶとい黒トカゲがいる、くらいの話で済む。

 次に、低級探索者の失踪が出る。

 その次に、中級迷宮のボスが何故か消えている。

 国家がようやく「何かおかしい」と腰を上げた時には、もう低級兵器も低級探索者も意味をなさない段階へ入っている。

 その頃には、もう「倒す」ではなく「どこまで楽に人類が滅ぶか」の会議しかできない。

 

 原作が滅んだのは、そういう意味だった。

 いずれ世界を滅ぼす魔王がいた、のではない。

 世界が「いずれ終末になるトカゲ」を後回しにした結果、終末機構へ育ってしまった。

 

 悪龍の帝王。

 終末機構。

 金剛龍帝。

 

 その産声が上がった。

 終末機構が、目を見開いた。

 

【原初の火】

 

 次の瞬間、灼火が全てを焼いた。

 

     ◇

 

 中国国内、山中。

 中央と地方と軍の利害が変な形でねじれていて、しかもそういう場所に限って妙に面倒なダンジョン反応が湧く。

 国家の胃と現場の胃と俺の育成欲が、だいたい同時に刺激されるタイプの立地である。

 

 俺は迷宮の前へ立っていた。

 横には真由も円も久連もいない。

 今回は、いらない。

 

 必要なのは、知識だけだった。

 

 アーデルハイド原作において、金剛龍帝が最悪だった理由は一つ。

 

 放置すると際限なく強くなること。

 

 つまり、逆に言えば、知っていれば大したことない。

 

 育つ前に焼けばいい。

 それだけだ。

 

 迷宮の膜の向こうで、何か小さいものが這う気配がした。

 まだ遠い。

 まだ浅い。

 まだ“魔王”ではなく、ただの幼体。

 腹を空かせた黒トカゲ。

 

 だが、知っている俺から見れば、それで十分だった。

 

 こいつの恐ろしさは、今この瞬間の強さじゃない。

 未来の強さだ。

 未来が恐ろしいだけなら、その未来ごと焼けば済む。

 攻略情報を持っている側の暴力とは、そういうものだ。

 

 膜の前で、俺は人差し指と中指を揃えた。

 

「原初の火」

 

 白く飛ぶ。

 

 轟音。

 熱。

 衝撃。

 ダンジョンの入口から先、その迷宮構造ごと、まとめて焼け落ちる。

 

 ただの高火力じゃない。

 構造否定。

 地形ごと焼き潰し、空間ごと押し流し、「そこにいた何か」が存在した履歴ごと黒く塗り潰す、雑で最悪な殲滅。

 

 悲鳴も、断末魔も、成長も、覚醒も、何も無い。

 あったのは、焼失だけだ。

 終末機構の開幕演出は、開始十秒で閉じた。

 

==================

『――七大魔王【暴食】の発生反応を確認しました』

『個体名:【異典・金剛龍帝】を撃破しました』

『高熱反応による個体消失を確認』

『異典魔王の核反応、消失』

『迷宮構造の崩壊を確認』

==================

 

「はい、お疲れさまでした」

 

 誰に向けた言葉なのか、自分でもよく分からない。

 トカゲか。

 シナリオライターか。

 あるいは、本来この世界を滅ぼすはずだった終末機構そのものか。

 

 あっけなかった。

 

 いや、あっけないのが正しい。

 最強最悪の捕食生物だろうが、多元宇宙を一口で噛み砕く化け物だろうが、初期は単なるトカゲなのだ。

 育つ前なら、そりゃ焼ける。

 

 原作が滅んだ最大の危機は、出落ちした。

 

 情報を持って先回りしている側からすると、そういうことも起きる。

 悲壮な最終決戦も、仲間との絆も、命を賭けた総力戦も、全部スキップして焼却で終わる。

 シナリオの都合としては最悪だろうが、攻略としては満点である。

 

 しばらくして、焼けた迷宮の残滓の中から、ひとつだけ残ったものが転がり出てきた。

 

 召喚石。

 

 黒い。

 いや、黒というより、食い尽くした後の胃袋みたいな色だった。

 表面に薄く走る紋様は、鱗にも、骨にも、牙にも見える。

 持った瞬間、嫌な冷たさが指先へ絡みつく。

 明らかに、善良な用途だけを想定して設計された石ではない。

 

==================

【召喚石:胃典・飢餓龍帝姫】

分類:七大魔王ドロップ/召喚系アーティファクト

効果:異界の食屍鬼系統最上位種を一時召喚する

解説:

愛あるものに、優しきものに、歯車に擬態する、愛薄き暴食の権化

その異典

哀れな怪物、人間のクズ、遠目から見るぶんには面白い珍獣を召喚する

==================

 

「うわっ、嫌な石」

 

 率直な感想が漏れた。

 

 七大魔王のドロップとしては、だいぶそれっぽい。

 だが、金剛龍帝本体の格を考えると、報酬はむしろだいぶ“扱える”方向へ寄っている。

 世界を一口で噛み砕く龍そのものが落ちるんじゃなく、そこから抽出された“食う側の異界存在”になるあたり、アーデルハイドの報酬設計はたまに意味が分からない。

 

 ただ、嫌な予感しかしない。

 

 こういう「だいぶ気持ち悪いが、攻略効率としては優秀」なアイテム、本当にこの世界は大好きだな。

 

 だが、それでいい。

 

 最悪を、最悪になる前に焼いた。

 その結果手に入るのが、また別方向に嫌なアーティファクト。

 いかにもアーデルハイドらしい。

 

 灰化が全身へ回る。

 

「っ、ぁ、が……!」

 

 膝が落ちる。

 喉が焼ける。

 肺の奥がざらつく。

 指先からひびが広がり、皮膚が灰色へ割れていく。

 

 痛い。

 当然痛い。

 だが、さっきまでの話を思えば、これくらいで済むなら安い。

 

 多元宇宙を一口で噛み砕く最強最悪の捕食生物。

 世界を滅ぼす原因。

 全能すら喰らう終末機構。

 

 それが今、ただの一撃で焼けた。

 

 滑稽だ。

 そして、かなり気持ちがいい。

 

「知ってれば、大したことないんだよな……」

 

 息を整えながら呟く。

 

 原作知識の暴力。

 先行者利益。

 育つ前に潰す。

 シナリオブレイク。

 言い方はいくらでもある。

 

 だが、実際そうなのだから仕方ない。

 

 放置したら宇宙を噛む龍でも、産声の直後なら喉を焼かれて終わる。

 この世界は、そういう残酷さでできている。

 強くなった後の格や尊厳や物語性なんて、知ったことではない。

 育つ前に焼けるなら焼く。

 終末機構にも、ちゃんと幼年期がある。

 そして幼年期のトカゲは、火に弱い。

 

 俺は召喚石【喰界屍姫】をインベントリへ放り込み、焼け跡を見下ろした。

 そこにはもう、何もない。

 竹も、骨も、牙も、暴食も、終末も、全部まとめて灰になっていた。

 

 本来ここから始まるはずだった破滅のルートは、開始十秒で閉じた。

 原作で人類が泣きながら対策会議をしていた最悪のシナリオ分岐が、俺の都合で雑に消された。

 

 悪くない。

 

 いや、かなり良い。

 

 多元宇宙を一口で噛み砕く怪物?

 全能を喰らう終末機構?

 世界の管理者すらむさぼる悪龍の帝王?

 

 知るか。

 

 今のこいつは、ただのトカゲだった。

 

 そして、トカゲは焼ける。

 

 それだけの話だ。

 

 ……まあ、世界を滅ぼす最悪の分岐を一本雑にへし折ったところで、俺の優先順位は結局いつも通りである。

 終末機構の処理が済んだなら、次は育成だ。

 次に強くするべき個体。

 次に拾うべき当たり。

 次に回すべき環境。

 

 次の行動は日本にて。

 エリュシオンの第一プロジェクト、円、真由、久連に次ぐ逸材を発掘するオーディションだ

 

 




もし良ければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

死に戻り能力持った諦めが悪いだけのクズ盗賊が世界を救う話(金剛龍帝&盗賊オーエン・ホークウィンドの話)
https://syosetu.org/novel/334377/

無能かつ飯だけは常人の十倍は食うクソ社不女が怪物になる話
(クソ無能無職引きこもり26歳児喰界屍姫の話)
https://syosetu.org/novel/405785/
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