☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜   作:ちんこ良い肉

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原初の贄のアイデアありがとうございました


堕落心臓

命より大事なもの

 

 しかし、彼らは一つだけ見落としている。

 

 俺が世界へ与えたものは、低レアリティの固有スキルから未知の可能性を見つけ出す育成思想だけでもなければ、世界中の探索者が参照する攻略WIKIだけでもない。もちろん、それらが無価値だったという話ではない。役割がないと切り捨てられていた人間へ居場所を与え、能力単体ではなく装備や仲間との組み合わせによって評価するという考え方は、間違いなく世界の育成速度を底上げした。

 

 知識の優位も、確かにあった。

 

 俺はこの世界と酷似したソーシャルゲーム、【天上のアーデルハイド】をサービス終了まで遊び込み、普通なら検証に数か月、場合によっては数年を要する仕様を、最初からある程度知っていた。その差が小さいはずはないし、現実で命を賭けながら一つずつ仕様を確認しなければならなかった他の探索者と比べれば、反則に近い先行情報だったと思う。

 

 ただ、攻略WIKIについては、ぶっちゃけた話、仕様を知っているゲーマーなら誰でも作れる。

 

 俺が作らなくても、世界中の廃人と検証班と暇人と企業が寄ってたかって情報を集め、多少の犠牲と遠回りを挟みながら、いずれ同じような場所へ辿り着いていただろう。攻略手順は模倣できるし、ビルド思想も普及する。知識の差は、時間が経てば少しずつ縮まっていく。

 

 だが、既に回収された初回報酬を、後から取り直すことはできない。

 

 俺が本当に世界へ与えたものは、時間さえあれば自然に埋まる種類の差ではなく、初期の個人資源アドバンテージを、世界規模の育成資源へ変換したことだった。

 

 【原初の火】による異常な広域殲滅能力、【覇道の双点杖】による初撃二連射、灰化を踏み倒す治療手段、そして迷宮間を渡り歩く転移能力。それらを使い、俺は世界中の探索者が一つのダンジョンを恐る恐る進んでいる間に、数十、数百という迷宮を焼き払い、本来なら各国や企業や探索者クランへ分散するはずだった初回報酬を、一人で回収し続けた。

 

 育成が異常に渋いこのゲームにおいて、本来なら現在も、実際にダンジョンへ入る現役探索者の平均レベルは五前後に留まっていたはずだ。治安維持組織の上澄みですら十に届くかどうかで、高レアリティ探索者だけを国家が囲い込み、低レアはレベル一から三のまま採掘や荷運びへ回されていただろう。

 

 俺が種火をばら撒いた結果、主要国で実戦、治安維持、救助へ従事する探索者層の平均は、二十前後まで引き上げられた。

 

 平均で、およそ十五レベル。

 

 たった十五ではない。このゲームにおいて、自然周回だけでその差を埋めようとすれば、どれだけの時間と死者と装備破損が必要になるか分かったものではない。レベルが低い時期ほど一度の事故で死にやすく、死人が増えれば育成対象も減り、探索速度も落ち、次の種火と魔石の入手まで遅れる。その悪循環が始まれば、国家の治安維持能力が育つより先に犯罪探索者が台頭し、救助組織が強くなる前に災害現場で人員が失われ、世界全体の育成曲線はさらに鈍化する。

 

 その悪循環を、俺は初期物量で踏み潰した。

 

 大量の種火を得て、実働層へ配った。大量の魔石を得て、治療、電力、装備、通信へ変えた。そこから生まれた資金とアーティファクトを、次の人材を育てるために再び社会へ吐き出した。

 

 世界が俺の思想を学んだから育ったのではない。

 

 まず俺が、本来なら存在しなかった量の育成資源を世界へ叩き込み、育つための最低ラインまで無理やり押し上げた。そのうえで、生き残った人間が俺の方法を模倣し、次の人間を育て始めたのだ。

 

 ゲーム知識を持っていた者なら、いずれ俺と似た攻略情報は書けたかもしれない。しかし、先行者が得た魔石で強くなり、強くなった力によってさらに高位の魔石を取り、その報酬を使って次の育成速度を上げていく連鎖は、最初の雪玉を転がし始めた者にしか作れない。

 

 この世界で最も重要なのは、正しい知識そのものではなく、その知識を使って最初の雪玉をどれだけ早く転がし、そこで得た資源を独占せず、次の育成へ再投資できるかだった。

 

 その点で、俺は世界より何段階も先にいた。

 

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 

「どうでもよくないわよ」

 

 向かいのソファで菓子を食べていた真由が、呆れたように言った。

 

「今、世界規模の歴史修正みたいなことを一人で説明しておいて、どうでもいいで流したわよね」

 

「もう終わった話ですから」

 

「現在進行形で世界中が振り回されてるのよ」

 

 俺は真由の抗議を聞き流し、テーブルの上へ置かれた本を手に取った。

 

 ただの本ではない。

 

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【笛吹、書読、小成】

 

分類:SS級通信アーティファクト

 

遠く隔たった上位観測者へ問いを送り、返答を受信する。

 

観測者は物語を読み、世界を眺め、ときに登場人物より正確に状況を把握する。

 

ただし、返答のすべてが善意、正解、真実である保証はない。

 

それでもなお、彼らの視点は、世界内部の知性へ得難い示唆を与える。

 

――笛を吹く者が問い、書を読む者が答え、その答えが小さき果と成る。

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 上位存在。

 

 より正確に表現するなら、俺たちの世界を外側から観測している神様たちである。

 

 このアーティファクトを使えば、俺たちからは認識できない高次の視点へ問いかけ、一定範囲の返答を受け取れる。メタ情報の取得手段としては破格だが、上位存在にもそれぞれ趣味嗜好や冗談や悪意があるらしく、何でも無条件に信じればいいというものではない。

 

 もっとも、俺たちより広い範囲を観測している彼らは、少なくとも世界内部の人間より俯瞰的で、非常にロジカルだ。

 

 以前、試しに「火賀灯真の正気度を百点満点で評価してください」というアンケートを取ったところ、百点が最上位になった。それどころか、百では足りないという意見まで複数届いている。

 

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【guide-GPT補足】

 

設問の「正気度」が、一部観測者によって「狂気度」として解釈された可能性があります。

 

回答欄に付随した自由記述では、以下の表現が高頻度で確認されました。

 

・満点では不足

・上限突破済み

・採点対象が正気であるという前提に誤り

・正気度を測定しようとした観測者側の正気を疑うべき

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 つまり、ロジカルな上位存在から満点のお墨付きをいただいた以上、俺がどこにでもいる一般的な元サラリーマンであることは、もはや客観的事実と言ってよい。

 

「どうしてそうなるのよ」

 

「統計的根拠があります」

 

「補足を読んだうえで、その結論に行くのが怖いのよ」

 

 真由はそう言ったが、上位存在の意図を勝手に歪めて解釈するのはよくない。観測者の回答は回答として、素直に受け取るべきだ。

 

 そのロジカルな上位存在たちから、今回、【原初の贄】について追加検証を行った方がいいのではないかという提案が届いた。

 

 特に多かった質問は一つ。

 

 人間以外の生物を、贄弾として射出できるのか。

 

 なるほど。

 

 世界配信では俺の頭部以外を弾にしたが、【原初の贄】の説明文には人間限定とは書かれていない。対象条件は、使用者より著しく弱い存在、瀕死状態、あるいは同意を得た対象であり、生物種についての指定はなかった。

 

 そこで俺は、鹿野航平と三幹部を集め、guide-GPTによるシミュレーション検証を行った。

 

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【guide-GPT:原初の贄・追加解析】

 

検証項目一:人間以外の生物を贄弾として指定可能か。

 

結論:可能。

 

対象例:哺乳類/鳥類/爬虫類/魚類/昆虫/その他、システム上で一個体の生命として判定される存在。

 

基礎処理:

 

システム上、一個の生命は、種族、体格、知能、寿命、社会的価値にかかわらず、最低一単位の贄として等しく処理されます。

 

追加補正:

 

対象のレベル、生命力、魔力、保有能力、魂的強度、存在規模に応じて、贄弾出力へ追加補正が加算されます。

 

備考:

 

一般的な昆虫一個体と、レベル一〇〇の火賀灯真では、最終出力に極めて大きな差が発生します。

==================

 

「一個の生命としての最低保証は、人だろうと虫だろうと変わらないようです」

 

 俺が結果を読み上げると、鹿野の顔が引きつった。

 

「でも、実際の威力は違うんですよね」

 

「はい。最低出力の部分では平等ですが、生命力や存在強度による追加補正があります。低出力の挙動確認なら虫でも可能ですが、俺を撃った時と同じ威力にはなりません」

 

「システムの前では、すべての命に最低限の価値が等しく認められている、ということですね」

 

 実に美しい仕様だ。

 

 人間だから最低価値が高く、虫だからゼロに近いという差別を行わず、一個体の生命を一個の生命として認めたうえで、育成量や存在強度だけを追加評価する。倫理的に素晴らしい平等主義と言ってよい。

 

「そういう綺麗な言葉でまとめていい仕様じゃないと思うわ」

 

 真由が言った。

 

「でも、低出力とは言え、火賀さんを撃つ必要はなくなるわよね」

 

「普通に戦うだけなら、そこらへんの虫でもいいんじゃないっすか」

 

 円も同意する。

 

 二人の意見は、実務面だけを見れば正しい。毎回俺の身体を弾にすれば治療が必要になるうえ、撃つ側の鹿野にも精神的負担がかかる。より小さな生物を使う方が効率はいい。

 

 ただ、久連は露骨に顔をしかめた。

 

「命を奪うことには変わりません」

 

 鹿野も、すぐに頷く。

 

「僕も嫌です。虫なら平気だとは思えません。爆発させるためだけに捕まえて、命を一発分へ変えるんですよね」

 

「俺も反対です」

 

 俺がそう言うと、四人が一斉にこちらを見た。

 

 なぜだろう。

 

 俺が不殺を主張するのは、それほど意外だっただろうか。

 

「火賀さんが?」

 

 真由の声には、あからさまな疑いが混じっている。

 

「はい。そもそも、この世に存在するあらゆる生物は、俺の育成用おも――」

 

 危ない。

 

「……愛すべき隣人です」

 

「今、おもちゃって言いかけたわよね」

 

「言ってたっすね」

 

「明確に言い直しました」

 

「言い直せば消えるものではありません」

 

 久連まで冷たい。

 

 俺は咳払いをしてから、誤解を解くために説明を続けた。

 

「自分のおもちゃを、たった一発の爆発へ変えるためだけに壊す子供はいないでしょう。ゲフンゲフン。愛すべき隣人を使い捨ての弾丸へ変える善良な社会人はいないと言っているんです」

 

 人間にも、犬にも、猫にも、鳥にも、魚にも、昆虫にも、それぞれ育つ可能性がある。今は何の能力も持っていない普通の虫であっても、魔石やダンジョンの影響によって将来的に変異し、珍しい能力を獲得する可能性が絶対にないとは限らない。

 

 進化、突然変異、種族変化、従魔化、あるいは、まだ世界へ実装されていない育成システムとの接続。可能性が一パーセントでも存在するなら、検証もせずに捨てるべきではない。

 

「つまり、価値のない生き物なんていないんです」

 

 俺は胸を張った。

 

「俺は善良な不殺主義者ですから」

 

 真由、円、久連、鹿野の四人が、揃って少しだけ俺から距離を取った。

 

 なぜだ。

 

 生命の価値を語ったのに。

 

「不殺の理由が、全部『将来使えるかもしれない』なのが怖いのよ」

 

「命を平等に見てるんじゃなくて、全生物を育成候補として見てるだけじゃないっすか」

 

「愛ではなく、所有欲に近いと思います」

 

「僕、悪魔より倫理観が怖い人にスキルを管理されている気がしてきました」

 

 鹿野まで失礼なことを言う。

 

 俺はダンジョンの魔物については普通に焼き払っているが、あれらは過去に存在した魔物が世界へ残した残響であり、厳密には生物ではない。現在のところ、自我を獲得する可能性も極めて低い。

 

 もし将来的に自我を持つ個体が発生したなら、その時点で対応を考えればいい。

 

 今は素材と経験値である。

 

 続いて、身体部位単位の出力検証結果が表示された。

 

==================

【guide-GPT:原初の贄・追加解析】

 

検証項目二:一個体の一部分のみを贄弾として指定した場合、出力は何によって決定されるか。

 

結論:対象の生命維持に対する重要度に比例。

 

例:

 

毛髪、爪、表皮の一部:極低出力

指、耳、眼球:低出力

四肢:中出力

肺、肝臓、腎臓等:高出力

心臓、脳幹等:極高出力

 

備考:

 

質量よりも、対象個体が生命活動を維持するうえでの機能的重要性が優先されます。

==================

 

「四肢を撃つより、心臓を撃った方が高火力ということですね」

 

「実用例みたいに言わないでください」

 

 鹿野が即座に拒絶した。

 

「でも、頭以外をまとめて飛ばした前回の出力が高かった理由は分かりましたね」

 

「分かりたくなかったわ」

 

 真由が額を押さえる。

 

 俺としても、毎回心臓や脳幹を弾にする運用は治療負荷が高すぎるので、積極的には採用したくない。俺の身体以外を使うつもりはないが、それでも効率と回復時間を考えれば、部位射出は緊急時の選択肢に留めるべきだろう。

 

 そこで、guide-GPTが三つ目の解析結果を表示した。

 

==================

【guide-GPT:原初の贄・追加解析】

 

検証項目三:生命以外を贄弾として指定可能か。

 

結論:条件付きで可能。

 

成立条件:

 

一、対象が特定個人へ心理的、継続的に帰属していること。

二、帰属者が対象を、自身の所有物、成果、記憶、または自己の一部として認識していること。

三、帰属者本人が、対象の永久的喪失へ自由意思に基づいて同意していること。

四、贄への変換後、対象が復元不能な形で失われること。

 

無効条件:

 

法的所有権のみを目的とした短期譲渡、代理所有、虚偽申告、精神操作、脅迫、社会的強制下における同意では成立しません。

 

出力算出:

 

帰属者が対象へ費やした時間、労力、感情、自己同一性、人生上の役割、喪失時の精神的損害等を総合して算出します。

 

生命を贄とする場合より基礎変換効率は低下します。

 

ただし、対象への執着および自己同一性との結合が極端に強い場合、戦略級以上の出力へ到達する可能性があります。

 

情報資産に関する補足:

 

対象が情報資産である場合、贄への変換は端末内データに限定されません。

 

対象の同一性を維持するサーバーデータ、バックアップ、復旧記録、認証情報、購入履歴、再構成可能な派生情報へ遡及し、対象を復元不能な状態へ変換します。

==================

 

 俺は、その表示を三度読み返した。

 

 非生物でもいい。

 

 法的に誰の所有物かではなく、ある人間がそれを自分のもの、自分の成果、自分の記憶、あるいは自分の一部として認識し、本気で喪失へ同意するなら、その対象を贄弾へ変えられる。

 

 市場価格ではない。希少価値でもない。その人間が対象へ注ぎ込んだ時間、労力、感情、そして失った時にどれだけ傷つくかが、爆発の出力へ変換される。

 

 その仕様を理解した瞬間、俺の頭の中で、これまで攻略不能だった一つのダンジョンへ道が通った。

 

「攻略できますね」

 

「何をですか」

 

 久連が訊く。

 

 俺は改造スマートフォンを操作し、世界地図上で非公開設定になっている迷宮を表示した。

 

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【SSS級ダンジョン:失心天蓋】

 

推奨レベル:測定不能

推奨人数:測定不能

推奨戦力:現行世界基準では攻略非推奨

 

最深部守護個体:

 

【フォールンハート】

 

封鎖状態:

 

迷宮外殻の崩壊進行を確認。

 

推定完全崩壊まで:九十三日。

 

外殻崩壊時、守護個体【フォールンハート】が現実領域へ流出する可能性:極めて高い。

==================

 

 現時点における最高難度。

 

 俺、真由、円、久連、久連の叔父、そしてエリュシオンの戦力をすべて投入したとしても、通常攻略による勝率はゼロだった。

 

 誤差ではないし、限りなく低いのでもない。

 

 ゼロだ。

 

ただし、【原初の贄】が無いのであれば

 

 

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