☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜   作:人見小夜子腹パン部

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炯眼明察

その後も、俺たちは荒らし回った。

 

 政府や警察による封鎖など知らない。

 いや、正確には知っている。知っていて、別方向に行った

 

 政府が既に把握しているダンジョン。

 SNSや動画配信で拡散されたダンジョン。

 警察や自治体が分かりやすく規制線を張ったダンジョン。

 そういう“表に出た穴”は、もう野次馬と公権力の取り合いになりつつある。面倒なだけだ。

 

 だから狙うのは別だ。

 地図には出ない。

 報告も上がっていない。

 原作知識がなければまず辿り着けないような、隠しダンジョン群。

 

 路地裏の行き止まり。

 廃ビルの非常階段裏。

 河川敷の崩れたコンクリ片の下。

 放置された配電設備の地下。

 

 そういう“現実に埋もれていた入口”を、俺は記憶だけを頼りに片っ端から踏み抜いていった。

 

 特にうまかったのは、D級ダンジョン【迷いの森】だ。都内のど真ん中にあるくせに、入口は旧華族の邸宅跡地に残された防火水槽の底にある。普通なら絶対に見つからないし、見つけても、まさかそこがダンジョンだとは思わないだろう。

 

 だが、俺は知っている。

 

 あそこは木属性寄りの地形構成で、出現モンスターも樹木系・胞子系・獣系に偏る。つまり、火属性弱点の宝庫だ。

 俺と【原初の火】にとって、あまりにも都合が良すぎた。

 原作知識を持つ俺から見れば、あそこはほとんど“燃やしてください”と書いてあるようなダンジョンだった。

 

「行きます」 「ええ……」

 

 薄暗い穴の底で、真由の返事は回数を重ねるごとに乾き、掠れていった。

 

 俺が短い詠唱をし、真由が完璧なタイミングで【天刻拍動】のバフを合わせる。

 

 その直後、文字通り森ごとダンジョンが吹き飛ぶ。

 焼ける。燃える。爆ぜる。

 

 断末魔の悲鳴が上がり、ダンジョンそのものが悲鳴を上げるように揺れる。

 そして、その直後。

 

「――ッ、が、ァ……ッ、あああああああッ!!」

 俺の全身を、内側から焼き尽くされるような激痛が貫き、悶え苦しむ。

 

 その場に崩れ落ち、膝をつく。喉が裂けるみたいな醜い悲鳴が勝手に漏れる。皮膚が灰色にひび割れ、腕が、首が、頬が、灰化してボロボロと崩れかける。

 

 真由は毎回きっちり引いた。

 

 毎回引いて、それでも毎回、きっちり心配もしてくれていた。

 

「いや、ほんとに、これ大丈夫じゃないでしょう!?」

 

「……大丈夫、です」

 

「大丈夫な人間、そんな全身燃えながら笑わないのよ!」

 

 半狂乱で叫びながら、それでも真由は反射的に手をかざす。

 【小癒魔術】が効かないと分かっていても、どうしても撃ってしまうらしい。

 

 変なとこで真面目なのか、捨てきれない倫理観があるのか、それとも育成途中の僧侶としての本能なのかは知らない。

 

 たぶん、その全部だろう。

 

 俺は震える手で魔石を握り潰して灰化を即座に解除し、ドロップアイテムを素早く回収し、次の穴へ向かう。

その繰り返しだ。

 

 五十。

 

 隠しF級、隠しE級、そして条件のいいD級を混ぜて、俺たちは合計五十のダンジョンをノンストップで踏み荒らした。

 

 正直、やりすぎだとは思う。

 だが、ここで歩みを止める理由がない。

 重要なのは魔石だ。

 

 低級ダンジョン産のその他素材――種火、低位素材、初歩装備、ピース類。あの辺は、後からでもどうとでもなる。効率は落ちるが、いずれ回収可能だ。

 

 だが、魔石は違う。

 

 初回踏破報酬。

 未踏破の穴。

 誰にも見つかっていない入口。

 それらを一方的に蹂躙できる、争奪戦が本格化する前の

「今」。

 

 この瞬間だけが、俺が富を独占できる時間なのだ。

 魔石の本当の価値が割れた瞬間、このボーナスタイムは終わる。

 あとは国も企業も反社も、奪い合うだけだ。

 だから今、俺は走る。

 

そして真由も、道中で俺の狂気的な焦燥感に当てられたのか、途中から薄々その真理を理解し始めていた。

 

「……これ、ほんとに売れるのよね?」 「後で価値が完全に割れたら、かなり上がります」 「かなり、って?」 「十個もあれば、宝くじ一等よりよほど人生が良くなります」 「……思ったより夢がある数字ね」

 

 その声は少し震えていた。

 

 現実味が、出てきたのだろう。

 ダンジョン。レベル。スキル。育成。

 そういう浮世離れしたゲームみたいな単語の向こう側に、ようやく“自分の底辺の人生がひっくり返るかもしれない”という生々しい実感が滲み始めたのだ。

 

 五十個目の隠し穴を潰し終えた頃には、日もだいぶ傾き、街は夕闇に包まれ始めていた。

 

 回収した魔石は、合計百個。

 俺は人気のない路地裏で足を止め、その半分を真由の前へ無造作に置いた。

 

「五十。山分けです」 「……いいの?」 「ええ」 「こんなに?」 「こんなに、です」

真由はしばらく黙って、地面に積まれた青白く脈打つ結晶の山を見下ろしていた。

 

 さすがに数が数だ。

 すぐには手を伸ばさない。

 欲しいとか嬉しいとか、そういう感情より先に、「これを持って帰っていいのか」という戸惑いが顔に出ていた。

 それから、ゆっくりとしゃがみ込む。

 魔石へ触れかけた指先が、ほんの少しだけ震えた。

 

「……ほんとに、人生変わるかもしれないのね」

 

 ぽつりと、自分自身に言い聞かせるようにそんなことを言う。

 生活保護申請の書類。

 安アパート。

 ボロい財布。

 親に返せていないもの。

 

 そういう現実的すぎる単語が、たぶん今の真由の頭の中には一気に押し寄せている。

 一個でも確実に人生が変わる。

 五十もあれば、なおさらだ。

 

 真由はたぶん、この魔石を後で売る。

 現金に換える。

 生活を立て直す。

 

 もっとまともな家に住むかもしれない。親に金を返すかもしれない。

 

 少なくとも、“生活保護申請の書類を抱えたまま公園のベンチで呆ける無職の女”からは、だいぶ遠ざかれる。

 それでいい。

 

 俺のプレイスタイルとしては、できれば極限まで彼女を育成したい。

 

 【天刻拍動】は、もっと性能が上がる。スキルレベルも、クラスも、装備も、改造も、俺の知識で本気で噛み合わせれば終盤の強敵相手にも十分通る。

 

 だが、彼女には彼女の人生がある。

 俺の都合で、全部をダンジョンへ捧げさせる理由はない。

 それに、ここで無理に縛っても意味がない。

 残るなら、自分で残ると決めた方がいい。

 

 そうでなければ、真由のスキルはたぶん鈍る。

 

 五十個の魔石を前にした真由の顔には、安堵と、それでもまだダンジョンを見てしまう未練が半々で浮かんでいた。

 

 たぶん、会うのはこれきりだろう。

 

 真由はこれで「上がり」だ。魔石を換金し、生活を立て直し、普通の社会へ戻る道を選ぶ可能性の方が高い。

 

 だから俺は、別れ際にそれだけ言った「まだ探索者を続けたいなら、連絡してください」

 

 真由は五十個の魔石を両手で大事そうに抱えたまま、数秒、黙って俺の目を見ていた。

 

「……そんな言い方するのね」 「押し売りはしません」 「ええ」

 

 真由はふっと息を吐き、今度は自然な笑みを浮かべた。

 

「でも、ちょっとだけ助かったわ」

 

 その言葉を言うときの笑みだけは、引きつっていなかった。

 

「また会うかは分からないけど」 「それで構いません」 「……じゃあ、一応。ありがとう、火賀さん」

 

 そう言って、真由は夕暮れの街へと去っていった。

 不自然にまっすぐな背筋。

 両腕で大事に抱えられた魔石。

 不格好な笑み。

 でも、さっき協会の裏で見た時よりは、ずっと人間らしい、力強い足取りだった。

 

 俺はその後ろ姿を見送り、すぐに自分の育成へ意識を切り替えた。

 

 真由に振った分を差し引いても、手元のリソースは十分にある。今、止まる理由はない。俺は人気のない場所に移動すると、回収した素材をその場で展開し、二度目のクラスアップを叩き込む。

まずは、素材。

 

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【キャスターピース】×4

杖と詠唱と魔力循環、そのどれかに人生を賭けた者たちの残滓。

術者系クラスの階梯を押し上げる基礎媒質。

ありふれているようで、必要数だけ集めようとすると妙に足りない。

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【世界樹の種】×3

極小ながら、世界樹の系譜へ連なる生命核。

未熟な身に埋め込めば、成長限界へ無理やり余白を作る。説明文の格に対して要求個数が重すぎるやつ。

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 いい。ちゃんとゲームのままだ。

 俺は迷わず投入した。

 

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【クラスアップ】

キャスターⅡ → キャスターⅢ

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 レベルも上げる。

 さっさと上げる。

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【種火を使用しました】

対象:火賀灯真

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【レベルアップ】

Lv40 → Lv46

Lv46 → Lv51

Lv51 → Lv56

Lv56 → Lv60

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「よし」

 だが、まだ足りない。全然足りない。

 仮にレベル100まで行ってもゴールじゃない。

 原作で本当に狂っていたのは、その先の育成深度だ。

 

 限界突破。

ドーピング。

 スキルレベル上げ。

 【改造】。

 専用装備。

 

 レベルだけ高い雑魚なんて、あの世界にはいくらでもいた。

 本当に強いのは、そこから更にイカれたように手を入れた個体だけだ。

 

 だが今は、ひとまずその入口に立てたことを喜ぶべきだろう。

 クラスアップで解放された新機能が、視界の端に並ぶ。

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【新機能解放】

・好感度システム

・成長拡張補助

・新規スキル

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 好感度システムはさらっと流した。

 あれは知っている。条件を満たせば強い時は強いが、今すぐ必要なものじゃない。

 重要なのは、こっちだ。

 

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【新規スキルを習得しました】

【炯眼明察】

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【炯眼明察】

自身の急所把握能力と戦況解像度を一時的に高め、クリティカル率を上昇させる。

副次効果として、格下対象に対する看破・鑑定・違和感知覚が強化される場合がある。

「見える者には、余計なものまで見えてしまう」

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「……クソスキル」

 説明文を読んだ俺は、即断した。

 少なくとも、原作で【原初の火】へ火力の全てを賭けたキャスターのビルドにとっては、これは完全に外れ寄りだ。

 聞こえだけならクリティカル率上昇は悪くない。だが、俺の主砲にとってはほぼ噛み合わない。

 

 ……少なくとも原作のゲーム内では

 

 だが、現実で発動した時は違った。

 スキルを意識した瞬間、視界が、ふっと澄む。

 地形の微細な凹凸。

 遠くで揺らめく魔力の濃淡。

 素材の微弱な反応。

 それから、雑に置かれた人工物の違和感。

 

 探知。

 鑑定。

 看破。

 

 少なくとも低級領域に限って言えば、それらの便利機能が雑にくっついているような状態だった。

 

「……なるほどね」

 

 ゲームだと腐っていた理由も分かる。

 数値上は「クリティカル率アップ」しか見えないからだ。

 だが、解像度の高い現実世界では、“よく見える”こと自体がそのまま強力な機能になる。

 

 ダンジョンの隠し入口。

 トラップ。

 偽装壁。

 素材の質。

 魔石の反応。

 そういうものを視覚的に拾えるなら、話は別だ。

 

「使えるな。少なくとも思ったより」

 

 明日はD級を全部潰す。

 世界は遅かれ早かれ、魔石――要するにガチャ石の有用性へ気づく。気づいた瞬間から争奪戦だ。ゼロサムゲーム。誰かが取ったぶん、こっちの取り分は永遠に減る。

 

 現実的な範囲で、自力で回れて、なおかつ旨味が大きい上限はB級まで。そこから先は今の俺一人では重い

だからこそ、一刻も早く回る必要がある。

     ◇

 次の日の朝。

 俺は魔石で改造済みのスマホの画面を見て、少しだけ眉を上げた。

 

 政府から、直接コンタクトが来ていたのだ。

 まあ、来るだろうとは思っていた。

 D級含めた100を超すダンジョンを焼いた。しかも永田町という政治の中枢周辺でだ。見つからない方がおかしい。

 

 問題は、この接触要請を受けるかどうかだ。

 正直、ガチャ石争奪戦から一分一秒でも遅れるのは痛い。

 だが政府との接触は、遅れてでも受ける価値がある。

 登録者の情報。

 

 ダンジョンの封鎖予定。

 新たな出現報告。

 そして組織の動き。

 使い方次第では、魔石数個ぶん以上の価値になる。

 俺が少し考え込んでいると、改造スマホが勝手に補助ウィンドウを開いた。

 

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【guide-GPT】

提案:接触要請には応じるべきです。

理由:国家規模情報網へのアクセス可能性、移動制限回避交渉、対外的立場の獲得。

現時点の利益期待値は、単純な低級ダンジョン追加踏破数を上回ります。

==================

 

 guide-GPT。

 

 それが、この端末に勝手についた補助知能名だった。

 たぶん、俺が普段使っていたアプリ群や補助設定を魔石が雑に最適化した結果、こういう人格つきの案内役として再構成されたのだろう。

「……お前、そういう進言もするのか」

 

==================

【guide-GPT】

はい。

使用者の長期的利益を優先し、必要に応じて戦略提案を行います。

なお、現在の行動傾向は「短期利得へやや偏重」と判定されています。

==================

 

「うるさいな」

 図星を突かれて悪態をつく。

 でも、こいつの言うことは正しい。

 俺は受信メッセージを開いた

 

《ご連絡ありがとうございます。内閣府ダンジョン対策暫定室所属、鈴木碧と申します》

 

 鈴木碧。

 名前を見て、少しだけ記憶が繋がる。

 今朝のニュースで、ダンジョン発生直後の政府対応についてインタビューを受けていた男だ。こういう事態で、真っ先に矢面へ立たされそうな役職の人間だったはずである。

 ああ、なるほど。

 

 ちゃんと“表”の顔が来たな、と思った。

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