☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜 作:人見小夜子腹パン部
俺は次の日、庁舎での会議に呼ばれた。
正確には、「協力要請を含む事情聴取および情報交換の場へご足労いただきたい」と、たいそう柔らかい文面で通知が飛んできた。
やんわりしているが、断れる雰囲気ではない。
まあ、断る気も最初からそこまで無かったが。
国家規模の情報網。
封鎖予定。
未公表ダンジョンの発生報告。
登録探索者の情報。
そういうものは、魔石数百個どころじゃない価値を持つ。
俺は時間通りに指定された庁舎へ向かった。
永田町周辺は、昨日よりさらに空気が重くなっていた。
車道には警備車両。
庁舎前には制服警官と私服の警備要員。
出入りする人間は皆、早足で、顔色が悪い。
世界が終わるかもしれない時に、官僚や警察や自衛隊だけが平然としている、なんてことはないらしい。
全員ちゃんと疲れているし、ちゃんと追い込まれている。
入口前で名前を告げると、即座に別室へ通された。
空港の保安検査をさらに面倒にしたような機械の前で立ち止まらされ、金属探知、所持品確認、端末確認、簡易の身体スキャンまでやられる。
ダンジョンが出現して二日目でここまでシステムが整っているのは素直に偉い。
いや、たぶん整っているんじゃない。
既存の設備を無理やり流用してるだけだ。現場の人間は地獄を見ている。
改造済みスマホを検査台に置いた時、担当職員の眉が一瞬だけ動いた。
しかし外装だけ見ても、どう考えても市販品の範疇にしか見えない。
「こちらの端末ですが」
「私物です」
「少々、特殊な反応が出ています」
「便利ですよ」
「……」
困った顔をされた。
分かる。俺でも困る。
だが結局、没収はされなかった。
現時点で、俺を拘束して本格的に敵に回すメリットは向こうに無い。
それくらいの判断はしているらしい。
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【guide-GPT】
補足:現在、相手側は「協力可能な危険人物」として使用者を評価している可能性が高いです。
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テレパシーだか骨伝導だか分からないが、脳内にそんな声が出たので、俺は改造スマホを見た。
分かってる。
案内された先は、地下ではなく上の階にある小会議室だった。
大きな窓にはブラインド。
長机。
壁際にポットと紙コップ。
ホワイトボードには雑に消された地図の跡。
臨時使用の部屋なのが丸分かりだ。
その部屋には、すでに三人いた。
一人は、ニュースで見た顔。
若めの男。三十前後か。スーツ姿で、疲れているのに身なりは崩していない。
顔立ちは整っているが、それ以上に目が印象的だった。眠そうなのに、まったく鈍っていない。
内閣府ダンジョン対策暫定室所属、鈴木碧。
インタビューで「国民の安全確保を最優先に」といった類のことを言っていた、今この国でわりと本気で胃を痛めていそうな役職の男だ。
もう一人は、年配の官僚っぽい男。
たぶん調整役。偉いけど現場で殴り合うタイプではない。
もう一人は、自衛隊か警察の実務側。短髪で、言葉数が少なそうな男だった。
部屋へ入ると、三人の視線が一斉にこちらへ向いた。
値踏み。
警戒。
好奇心。
それから、疲労。
いい顔だ。
徹夜明けのソシャゲイベント最終日みたいな顔をしている。少し親近感が湧く。
「火賀灯真さん、ですね」
最初に口を開いたのは鈴木碧だった。
「そうです」
「本日はお時間をいただきありがとうございます。内閣府ダンジョン対策暫定室の鈴木碧です」
「どうも」
「おかけください」
座った。
向こうも座る。
水が出されたので、一応口をつける。毒を盛られるとは思っていないが、逆にこっちが極度の警戒を見せても話が進まない。
数秒の沈黙。
最初に崩したのは、鈴木だった。
「率直に申し上げます」
声は落ち着いていた。ニュースで聞いた声と同じだ。
カメラ前より少し低い。たぶんこっちが地だろう。
「火賀さんは、現在こちらが把握している探索者の中でも、かなり異常な動きをされています」
「そうですか」
「はい。永田町周辺でのF級ダンジョンの連続踏破。E級相当ダンジョンの大規模焼却。加えて、把握済みの封鎖地点を避けるような移動経路」
そこで一度、鈴木は机の上にタブレットを置いた。
画面には地図。
赤い点がいくつも打たれている。
俺が潰した穴だ。全部ではないが、かなり正確に追えている。
「こちらとしては、まず確認したいことが三つあります。第一に、あなたが人間であるかどうか。第二に、敵対意思があるかどうか。第三に、どこまでダンジョンの情報を把握しているか」
ストレートだ。
嫌いじゃない。
「一つ目は答えます。人間です」 「証明できますか」 「難しいですね」 「でしょうね」
鈴木はそこで少しだけ口元を緩めた。
笑った、というより、答えを予想していた顔だ。
「二つ目。敵対意思はありません」 「条件付きですか」 「当然」 「その条件を伺っても?」 「俺の利益を潰さないことです」
部屋の空気が少しだけ張る。
年配の官僚が、わずかに眉を動かした。
横の実務側も無言のまま姿勢を変える。
だが鈴木だけは、頷いただけだった。
「率直で助かります」 「お互い時間が惜しいでしょう」 「まったくその通りです」
話が早い。
この男、処理が先に来るタイプだ。感情で反射しない。だいぶ助かる。
「では三つ目に移ります」
鈴木はタブレットを操作し、今度は別の資料を表示した。
昨日から今朝にかけて確認されたダンジョン発生地点、魔物被害、覚醒者登録数、死傷者数。全部が暫定値だが、それでも今の国の全体像としては十分な量だった。
「こちらとしては、火賀さんが“偶然にしては出来すぎた攻略効率”を示していると判断しています」 「それで?」 「ダンジョンの発生位置や特性に関する、何らかの事前知識をお持ちではありませんか」
来た。
俺は少しだけ考えるふりをした。
本当は、この問いにどう返すかは来る前からある程度決めている。
全部は渡さない。
だが、全拒否もしない。
「あります」
年配の官僚が息を呑んだ。
実務側の男の目が細くなる。
鈴木だけが、静かに次を待った。
「どの程度、と聞かれると困りますが、少なくとも一般に公開されている以上のことは知っています」 「情報源は?」 「言えません」 「言えない理由は?」 「言っても信用されないし、今はまだ説明コストに見合わない」
沈黙。
普通なら、ここで揉める。
だが鈴木は揉めなかった。
「では、信頼の置ける形でその知識を部分的に検証させていただくことは可能ですか」 「対価次第です」 「何を望みますか」
待ってました、という話だ。
そこで初めて、年配の官僚が口を挟んだ。
「火賀さん。あなたは魔石を、どこまで理解しているのですか」
視線だけをそちらへ向ける。
「少なくとも“新資源”なんて生ぬるい理解じゃ足りない、という程度には」
年配官僚の顔がわずかに強張る。
正解を言われた、という顔だった。どうやら向こうも、もう薄々は掴み始めているらしい。
なら話は早い。
俺がそう思ったのと、年配の官僚が小さく咳払いしたのはほぼ同時だった。
「その前に、一点だけ共有させてください」
机上の資料が一枚、こちらへ滑ってくる。
そこに並んでいたのは、この二日で突貫工事みたいに継ぎ接ぎされた法整備の概要だった。
ダンジョン災害への暫定対処。
探索者登録と行動管理。
魔石や遺物の接収と運用。
既存法の隙間を埋めるように、政令、通達、臨時運用、各省庁の覚書が何重にも重なっていた。
超人。
ダンジョンという危険地帯。
アーティファクトという訳の分からない遺物。
それら全部を、既存の国家秩序へ無理やり押し込もうとしている。
正直、読んでるだけで頭が痛くなる代物だった。
「現時点で、我々は法律も制度も現場も、すべてを走りながら組み立てています」
年配官僚は疲れ切った顔で言った。
「探索者をどう扱うか。ダンジョンをどこまで封鎖し、どこから許可制にするか。魔石や遺物を誰の権限で管理し、どの段階で接収し、どこまで民間利用を認めるか。何一つ定まっていません」 「でしょうね」 「その上で、火賀さん。あなたが何を知っていて、何を望んでいるのか。我々はそこを知りたい」
俺は資料を机へ戻した。
「単刀直入に頼みます」
そう言って、足元に置いていたリュックを机の横へ引き寄せる。
チャックを開き、中身をそのまま机上へ流した。
青白い光が、一気に会議室を照らした。
ざわり、と空気が鳴る。
百個。
百個の【魔石】が、無造作に長机の上へ転がった。