☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜   作:人見小夜子腹パン部

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ここまで読んでいただけて嬉しいです。


死滅願望

 

 【原初の火】。

 

 対価として政府から渡された、いくつかのE級ダンジョン指定案件を、俺は改造スマホで攻略サイトを組みながら片手間に焼いていた。

 

 青白い端末は、地獄の業火の中でも平然と耐えた。

 炎の濁流の中を、まるで俺専用の使い魔みたいにふわりと浮かび、少し後ろを追従する。

 俺が言葉足らずな音声指示を投げれば、AIがその意図を勝手に補完し、記事を整形し、質問を分類し、政府側の反映窓口へ送りつける。

 送信された内容は、向こうで最低限の確認だけ通され、ほとんどリアルタイムでサイトへ反映されていった。

 

 最初のうちは、政府側もかなり怯えていたらしい。

 そりゃそうだ。素性の怪しい☆1キャスターが、いきなり国家協力の名目で攻略サイトを立ち上げると言い出したのだから。

 

 だが、背に腹は代えられない。

 ダンジョン出現から数日で、SNSは悲鳴とデマと承認欲求で完全に煮詰まっていた。

 

『このスキルって当たりですか!?』 『☆1引いたので人生終了しました』 『うちの兄がダンジョン行って帰ってきません』 『魔石って売っていいの?』 『探索者協会ってクソだな』 『自衛隊が来るまで待てばいいんじゃない?』 『ヒーラーいないと無理ゲー』 『いやナイト最強だろ』 『配信者がD級凸って死んだってマジ?』

 

 まともな情報が、まともに流通していなかった。

 だから、とにかく作るしかなかった。

 

 あれから三日。

 

 【@日本ダンジョン攻略wiki】とかいう、センスの欠片もないサイトだったが、評判はなかなか悪くなかった。

 

 いや、正確には、最初はかなり怪しまれていた。

 

『また情報商材屋か?』 『政府案件って書いてあるけどほんとかよ』 『広告ないの逆に怖い』 『火賀灯真って誰だよ』 『なんでこんな細かいこと知ってんの?』 『死ぬよりマシだから読む』

 

 そんな反応が並んだ。

 当然だと思う。俺でも知らない男の攻略サイトをいきなり信じろと言われたら嫌だ。

 

 だが、検証勢と、藁にも縋る初心者と、実際に死にかけた連中の反応は早かった。

 

『書いてある通りに生命ペンダント+鉱石シリーズ揃えたらマジで死ななくなった』 『F級の雑魚にワンパンされなくなったんだけど』 『これ書いた奴ぜったいゲーム脳だけど有能』 『探索者協会で配られた紙にサイトURL載ってて草』 『政府公認ってマジなんだ』 『最低限の装備情報だけでも助かる』 『母親に読ませたらダンジョン行くなじゃなく装備揃えてから行けって言われた』

 

 中々楽しい。

 攻略サイトを作るのは。

 

 元々、ゴミみたいな企業系攻略サイトに有志攻略サイトが駆逐されていくのを、俺は結構うんざりしながら見ていた。

 検索すれば上に出てくるのは、誰が書いたかも分からないコピペ記事と、肝心な数字が抜けたふわっとした説明と、無駄に縦長な広告だらけのページばかり。

 だが今回は、guide-GPTのお力もあって、少なくとも見るに堪えるものが出来上がっている。

 

 最初に載せたのは、基礎中の基礎だ。

 

 探索者のクラスは、【ファイター】【ナイト】【アサシン】【プリースト】【キャスター】【アーチャー】の六種。

 レアリティは☆1から☆6まで存在し、特に☆3と☆4の間にはかなり大きい壁がある。

 そして強力な初期スキル群には、固有スキル、あるいは半固有スキルと呼ばれるものがある。強い探索者はだいたい、その段階で既に片鱗を持っている。

 

 そういう、最初に知っているかどうかで差がつく情報を、とにかく雑に、だが死なない程度には丁寧に貼っていく。

 

 ついでに、「よくある勘違い」も潰した。

 

 たとえば、

 

 

・プリースト=必ず回復役、ではない

・アサシン=対人専用、ではない

・ナイト=タンク以外できない、ではない

 

 

 そういうやつだ。

 

 質問欄も回した。

 投稿された相談へ返答し、その返答自体をguide-GPTに取り込ませて、Q&A記事として整備していく。

 その流れが思った以上にうまく回った。

 

 例えば、こんな質問が来る。

 

> 質問です。☆5【アサシン】クラスに就いたのですが、攻撃も防御力も☆5【ファイター】に劣ります。外れ職でしょうか

 

 

 

 それに対して、俺はこう返す。

 

> ぶっちゃけた話、☆と固有スキルには明確に格差こそありますが、職業に格差はほぼありません。

アサシンは暗殺、索敵、撤退、奇襲といった正面戦闘外の技能に長けています。

また、スキル同士のシナジーを生かした大器晩成型になるよう能力が編成されているので、☆5であればいつかはファイターに十分並び立てます。

 

 

 

 するとその下に、すぐコメントがつく。

 

『救われた。ありがとう』 『いやでも序盤ファイターの方が楽なのは事実でしょ』 『アサシン引いた弟が泣いてたから見せる』 『撤退と奇襲が強いの、今の現代だと普通にありがたいな』

 

 あるいは、こういうのもあった。

 

> ☆6キャスターだったんですけど、固有スキルが【愚神礼賛】という、仕留めた相手の死体に拍手させるだけの外れスキルだったんですけど……探索者向いてませんか?

 

 

 

 それにはこう返す。

 

> クラスアップで四回までは追加でスキルを得られるので、そこに期待してみてはいかがでしょうか。

何より☆6であれば、固有抜きでもステータスの暴力で何とかなります。

まだ探索者向きでないと決めるには早いです。

 

 

 

 コメント欄は少し荒れた。

 

『いや拍手は外れだろ』 『死体に拍手って何だよ』 『強敵倒した時に悲壮感薄れてよさそう』 『☆6で泣き言は贅沢』 『でも固有がそれは普通にへこむ』

 

 さらに定番なのがこれだ。

 

> 育成メニュー多すぎて分かりません。

 

 

 

 これには、ほぼ定型で答えた。

 

> 基本的にレベルアップとクラスアップと装備だけ考えていてください。

レベル100に行くまでは、それが最高コスパです。

他の育成メニューは基本的に重いので、後回しで構いません。

ただし状況によっては、好感度上昇、スキルレベルアップくらいはありです。その場合は相談に乗ります。

 

 

 

 これが一番ウケた。

 

『分かりやすい』 『助かる』 『好感度って何だよ現実だぞ』 『現実のくせに好感度あるの終わってる』 『恋愛ゲームやらされてんのかと思った』 『後回しでいいって言われるだけでだいぶ気が楽』

 

 中には、もっと切実な投稿もある。

 

> 父が☆1ナイトで落ち込んでいます。

もう歳だし、探索者なんて無理だと言っています。

どう言えばいいですか。

 

 

 

 それには、少しだけ真面目に返した。

 

> ☆1でもナイトなら序盤の壁役適性は十分あります。

レアリティだけで諦めるのは早いです。

まず生命ペンダントと鉱石シリーズを揃え、F級で安全に慣れるところから始めてください。

無理に前へ出る必要はありません。生きて帰ることが最優先です。

 

 

 

 その返信には、珍しく煽りも少なかった。

 

『こういうの読むとちょっと泣く』 『うちの親も☆2だったから見せる』 『生きて帰ることが最優先、ほんとそれ』

 

 そういうのを見ると、少しだけ、会議で種火を配ると言った時の政府側の顔を思い出す。

 俺は別に聖人じゃない。むしろかなり性格が悪い方だ。

 でも、初心者が仕様を知らないまま雑に死んでいく環境は、本当に気に入らない。

 死んだら終わりで、しかも死ぬ理由の大半が「知らなかったから」なんて、ゲームとしても現実としてもクソすぎる。

 

 だから、せめて知識くらいは配る。

 

 それで助かる命があるなら、それはそれでいい。

 ついでに、将来的に使える低レアや便利中レアが埋もれにくくなるなら、なお良い。

 

 世の中の変化も、思った以上に早かった。

 

 まず探索者協会の空気が変わった。

 最初は高レア引いた連中が神輿みたいに担がれていたのに、サイトで装備情報と種火情報が回り始めてからは、低レアでも「とりあえず装備とレベルを整えろ」という空気が生まれた。

 

『☆1だから終わり、じゃなくて、☆1だから死なないビルドから入れって協会で言われた』 『前より対応まともになってない?』 『窓口の人が日本ダンジョン攻略wiki読んでる前提で話してくるんだが』 『役所の人も現場も大変そうだな』

 

 配信者界隈も妙に変わった。

 最初は「初見D級凸!」「高レアで無双!」みたいなサムネばかりだったのに、三日もすると「初心者向け装備揃えてみた」「サイト情報でどこまで生き残れるか検証」「生命ペンダント配布所行ってみた」とかいう、急に地味な動画が伸び始める。

 

 まあ、そっちの方が再現性があるし、視聴者が真似しやすいのだから当然だ。

 派手な無双より、「自分も死なずにやれそう」という情報の方が今は価値がある。

 

 社会の底辺寄りの変化も、生々しかった。

 

 特にうまく回ったのが、オークション機能だった。

 

 【鉱石】シリーズは、特定ダンジョンで採掘できる素材――【カカライト鉱石】を、生産系統スキル持ちが加工することで完成する。

 採掘要員、加工持ち、一般探索者。

 この三者を必然的に経由する構造になっていて、しかも需要がめちゃくちゃ高い。

 

 戦えない人間でも、【カカライト】を掘って持ち込むだけで、日収二万程度まで行く。

 そのせいで、俺が魔物を殲滅したF級ダンジョン【水晶洞窟】では、学生やホームレスが肩を並べてカカライトを取りに行く光景が見られるようになった。

 

 最初は混沌としていた。

 

 高校生っぽい連中がスマホ片手に群れる。

 日雇い崩れみたいな男たちが、採掘ポイントの位置を聞き回る。

 ホームレス風の老人が、若い探索者から安い手袋を譲ってもらっている。

 その横で、警察と自治体職員が「深追いするな」「中に入りすぎるな」とメガホンで怒鳴っている。

 

 ひどい光景だ。

 でも、完全に悪いとも言い切れない。

 

 少なくとも、あそこでは「何もできない人間」が金に換えられる行動を持てている。

 今まで切り捨てられていた層に、ようやく“参加可能な労働”が生まれたわけだ。

 

 サイトの掲示板には、そんな書き込みも増えた。

 

『失業してたけどカカライト掘りでとりあえず食えてる』 『探索者じゃない母親が採掘班やってて草』 『親父が加工スキル当てたから家計が急に回り始めた』 『ホームレスのおっちゃんが採掘ルート最適化してて普通に有能』 『プチ石油王じゃなくてプチ鉱山労働者バブル来てる』

 

 guide-GPTは、【鉱石】シリーズでプチバブルが起きている、と評した。

 知ってる。

 鈴木も似たようなことを言っていた。

 

 加工持ちはもっと楽だ。

 

 書き込みを見る限り、二万円で鉱石を仕入れて、システムに従った一分程度の加工をするだけで、四万円で売れる【鉱石】シリーズ防具が完成するらしい。

 濡れ手で粟だ、と歓喜している投稿がずらりと並んでいた。

 

『加工持ち当たりすぎる』 『一分で二万増えるの草』 『生産系スキルを馬鹿にしてた奴ら息してる?』 『でも材料の仕入れ競争が激しい』 『職人ギルドみたいなの作ろうとしてる奴いて笑う』 『笑ってたら本当に立ち上がってるのもっと笑う』

 

 世界が少しずつ、ゲームではなく“社会としてのダンジョン適応”を始めていた。

 

 その結果、【鉱石】シリーズのおかげで探索者の死亡率は目に見えて下がった。

 定価四万円。

 安いと言い切れる額ではない。だが、死なないための保険としては安すぎる部類だ。

 

 ニュースでも、さすがに無視しきれなくなったらしい。

 

『初心者探索者向け防具、品薄続く』 『ダンジョン素材加工業に注目集まる』 『政府協力サイトの情報で死亡率低下か』 『鉱石シリーズに“命の値段”との声も』

 

 命の値段。

 嫌な言い方だが、間違ってはいない。

 

 あと、俺の懐事情も大幅に改善された。

 

 【鉱石】シリーズは採掘と加工が絡むせいで、殲滅しかしていない俺は持っていない。

 その代わり、同じく初心者向けで、討伐で大量に手に入る【焼け残り】シリーズを、五千本ほど一つ五千円で流した。

 

 一瞬で売り切れた。

 

 社畜時代の合計収入を超す金が、本当に一瞬で手に入った。

 何とも言えない。

 

 

 まあ、序盤はとにかく【鉱石】【焼け残り】シリーズ装備だ、とサイトで煽りまくったのも大きいとは思う。

 でも、煽りじゃない。

 マジで最適解なんだよな。

 

 防御優先の方は、半分嘘で半分本当だが。

 

 射程で捌けるとか、スキルで無敵化できるとか、防御を別の手段で処理できるなら、そりゃ攻撃型の方が強いに決まっている。

 だが、そんなのは分かってる奴だけがやればいい。

 初心者に必要なのは、まず死なないことだ。

 

 俺は片手間にE級指定案件を焼きながら、そんな文章を何本も書いた。

 

『火力厨だけど今回ばっかりは防具先に揃えた』 『結局生きて帰れる奴が強い』 『高レア引いて浮かれてた兄がD級で死にかけて泣いてた』 『例の管理人、性格悪そうだけど言ってることは正しい』

 

 ああそうだ。攻略サイトを立てて驚いたのは、全体的な探索者のレベルの低さだった。

 

 あの日帰って攻略サイトを作り、種火システムを教えて三時間経っても、世界最高レベルの探索者――俺と真由と、あの実務側の男を除けば――ですら、レベル7だった。

 

 三時間とはいえ、マスコミもトレンドもSNSも種火の話題で埋まっていたのに、探索者は大概種火を「いつか何かに使えるかも」と持っていたのにも関わらず、だ。

 

 コメント欄も、最初は半信半疑だった。

 

『これほんとに経験値アイテム?』 『売った方がよくない?』 『なんか後でクラフトに使いそうで怖い』 『一個使ってみたけど何か身体軽い』 『マジだった』 『マジじゃん』 『先に言えよ!!』 『いや言ってたけど信用してなかった』

 

 んで奴らも使い始めたが、超高効率稼ぎばっかしていて忘れていたが、アーデルハイドの育成は激渋だった。

 

 そりゃ上がらない。

 種火の絶対量そのものが、全然足りていない。

 

 F級を一、二個踏破した程度じゃ、せいぜい数レベル。

 まともにクラスアップまで持っていくには、知識とルートと初回報酬の使い方がいる。

 何も知らない状態で自然成長だけに任せていたら、探索者の平均レベルが一桁台に張り付くのも当然だった。

 

 なので、余った種火は粗方二束三文でばら撒いた。

 何とかポツポツと、クラスアップにこぎつける奴が出てくるように。

 

『安く売ってくれた人ありがとう』 『クラスアップしたら世界変わった』 『プリーストにやっと回復来た』 『☆1ナイトだけどまだやれそう』 『今まで外れだと思ってたスキルが急に意味持ってきた』

 

 この辺を見ると、やっぱり楽しい。

 他人の育成が。

 

 それと並行して、俺は探していた。

 

 育成相談カテゴリ。

 その中へ流れ込んでくる相談者たちの中から、新しい育成対象を。

 

 当たり前だが、サイトへ相談してくる連中の多くは困っている。

 高レアを引いた勝ち組は、基本的に自力で何とかしようとするか、政府や企業が先に囲う。

 わざわざ匿名掲示板めいた相談欄へ流れ着いてくるのは、だいたい扱いに困るスキル持ち、低レア、あるいは人生が終わりかけているやつだ。

 

 だからこそ、掘り出し物がいる。

 

 見つけた。

 

 SNSでのコンタクトはシカトされ、会えなかった。

 育成相談欄にも一度だけ書き込んで、その後は消えた。

 だが、ログは残っている。

 

 こそ泥の青年。

 大伴円(おおともまどか)。

 

 相談内容は、ひどく短かった。

 

> ☆0アサシン。助けてくれ。

 

原作最強スキルの一角。

 【死滅願望】を持つ【アサシン】。

 

効果はシンプルだ。通常攻撃会心時追加で通常攻撃を出す。それだけだ。

 

 

 

 




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死滅願望の強みは

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