異能力者、それは普通じゃ有り得ない事が出来る人間の総称だ。雷落としたしたり、ワープしたり、とか持っている力は様々。ついでに身体能力も能力者じゃない一般人と比べるとかなり高い。ただそもそも異能力者の数は少なめだ。学校に二、三人居る程度。それに耐久面は一般人とそう変わらないから異能力者の犯罪者が出てきても一応鎮圧は出来る。そんな感じでまだギリギリ大きな社会問題になっていないオーバースペックな奴らを異能力者と言う訳だ。
とどのつまり何が言いたいかって言うと–––––––
幼馴染の親友が逆行系異能力者だった。
違和感を持ち始めたのは大体一週間前、学年が変わってから一ヶ月が経った辺りの事だ。俺こと『
ただ大親友たる俺には筒抜けだった訳だ。表情筋を1mmも動かしてたのに気付かない訳が無い。
で、その後当然問い詰めてもみたがはぐらかされた。何が「ほ、ほら、急がないと学校遅れちゃうよ!」だ。いつも余裕で間に合ってるだろ言い訳下手か。まあそれに流されてる風花も風花だったが……
あいつら大丈夫か? 将来悪い奴らに騙されないか心配なんだけど。
まあ二人を騙そうとしている奴が居たら俺は全力でそいつに生まれてきた事を後悔させるだけだが。
……違う、そう言う話がしたい訳じゃない。いや滞斗と風花の事は永遠に誰かに語り聞かせてたいが今はそんな事考えてる場合じゃない。
ともかく滞斗に言う気がないって事がわかったから俺はどうにか暴いてやろうと奮闘した。時には昼休みに二人と一緒にご飯を食べ、時には放課後に遊びに行ったりもした。……いつもと変わらないな。
それなのにわかったのは今日の昼休みに俺と風花の話が少し盛り上がっている時にかなり小さくではあるが「風花、次こそは守るから……」と聴こえてきたからだ。ちなみにこれも本人は気付かれたと思ってなさそうだった。あの距離ならどんなに小声でも可聴域の範囲なら聞こえるに決まってるのにな。
という事で滞斗が異能力に覚醒して、その異能力が逆行系なのはほぼ間違い無いと思う。突然表情が変わったり次は守るとか言ってるしな。
最終確認として今が体育の時間という事を利用して滞斗の動きを見ているが意識して見てみると一週間前と比べて動きが少し違う。やっぱり異能力者になったのがバレないよう力を抑えてるんだろうな。
さて、滞斗が異能力者、種類はまず間違いなく逆行系で風花を何かから守ってるのはこれでほぼ確定だとして次は滞斗が逆行する条件だ。
滞斗が自分の意思で逆行しているのか、それとも何か条件があって逆行するのか。
どっちかはわからないが考えるまでも無く風花が関係しているだろう。滞斗の発言的にも。
なら俺も風花を守れば良い訳だがどうやって、というか何から風花を守るかだ。
一応俺の予想としては風花はいつもと変わった所はなかったし多分風花に本人も知らない何か秘密があってそれが原因で狙われているんじゃないかと思っている。単純に事故等の可能性もあるが滞斗を見る限り一週間で逆行するような事が起こった日は昨日までで3日だ。その全てが事故なんて事あり得るか? 普通はあり得ないだろ。
仮に事故だとしても間違い無く作為的な物だろう。とすると間違いなく誰かの介入がある訳だ。しかもほぼ毎日だから多分組織的なもの。
ただこんな考察した所で一番の問題はそもそも俺は風花がどこで襲われるかがわからないし、仮にわかったとしても相手が異能力者だったら真正面からやりあうのはほぼ不可能という事だ。
しかも具体的に何したのかはわからないが風花に危害を食わせる奴だからな、邪魔する俺の事を普通に殺したり捕まえて拷問したりとかする可能性もある。そんな奴と異能力無しの一般人の俺が真正面からやりあって勝てる可能性は無い。いや、異能力が戦闘に関係無くただ身体能力が高いだけの奴ならどうにかなるか……? 流石に異能力者程ではないが俺も身体能力にはそこそこ自信があるし技術的な面ならかなり上澄みだと思ってる。やりようによっては勝てない事も無い気がする。でもやっぱ確率は低い、そんなものにかけるのは無しだ、普通に死にかねない。流石に死ぬのは嫌だし何より俺が死ぬと滞斗と風花は間違い無く泣いて悲しむからな、二人にそんな顔させるのは親友失格だ。
それに相手は推定組織だ。一回の襲撃で来るのが一人と決まったわけじゃない。
異能力者複数人に一般人の俺が勝てるだろうか? 絶対無理、秒で死ぬ。でも気付いた以上無視は出来ないからどうにかするしかない、親友を見捨てるのは論外だ。
じゃあどうするかって話なるんだが碌な情報ないのに対策考えるのとか無理だわ。もう考えるだけ無駄。
とりあえず滞斗と風花をどっか人多い所に行かせてその間に俺がアドリブでどうにかするしか思いつかないわ。
「という事で風花、滞斗が最近元気無いから放課後一緒に何処か行ってきてくれね? 学校から直で、あと家の反対方向で人多い所とかで」
「いきなりという事とか言われても私からしたら何の事か分からないわよ。 ……まあ、滞斗と出掛けるのは全然良いわよ。でもアンタは?」
「悪いけど俺は今日用事あるからパス! てことで頼んだ! ついでに滞斗との距離ももう少し近付けて来いよ?」
「ぜ、善処はするわ……」
俺の言葉に痛いところを突かれたと言わんばかりに風花が顔を顰める。
いやおかしいからな? 俺は小学生の頃からお前の恋愛相談受けて何度も場を整えてやってるんだぞ。ついでに言うなら3年前に滞斗からも風花が好きって事と恋愛相談受けてるから場を設ける機会はもっとだ。それなのに全く進展してないのは単にお前らが臆病だからだぞ。
「うっ……で、でも今日こそはやってみせるわ!」
そう風花は俺の視線から言いたい事を察したのか啖呵を切る。でもお前さぁ
「それ何回目だよ。でもまあ俺は友達は信用する男だからな、きっと明日には見た奴が砂糖吐いて倒れるくらいになってるって期待しとくぞ! じゃ、俺もう行くから!」
「えっ! ちょ、ちょっとっ!」
大親友の言ってる事だ、ここは信じるべきだろう。まあ恋愛方面の進展は無かったとしても俺が言った条件に合った場所を適当に見繕って滞斗を連れて行ってはしてくれるだろうし。それなら俺も安心して行動出来る。
「じゃあ俺は先に帰るから滞斗の事は任せたぞ! ついでに明日めっちゃ楽しみにしとくわ!」
「待って! 圧力かけて行くのやめなさいよ!」
風花が何か言っているが聞こえない、急がないといけないからな。
それに圧力くらいかけるだろ。何年待ってると思ってんだよ。
☆☆☆
場所は変わって住宅街、下校中である。
とりあえず風花と滞斗はこっちとは真逆の大型のショッピングモールとかがある方向に歩いて行ったのを確認したので俺は安心して通常の下校ルートを周りに気を配りながら歩いていた。事件の報道とかされてない辺り敵も人が大勢いる所で何かするとも思えないし二人の予定変えたからな。まあ学校からずっと狙われてたらどうにもならないんだが……
今回は俺の意図通りになったらしい。
左側の家の屋根上から視線を感じる。確認の為に画面のついていないスマホを左上に向けると反射でこっちの事ガン見してる暗殺者みたいな格好しためちゃくちゃ怪しい奴がいた。
うん。間違い無くコイツだわ。だってどう見ても普通じゃないもん。
「あいつは確かターゲットの友人だったか? 何であいつだけがここに居る?」
しかも自白したし。お前言ってる事丸聞こえだからな? 近くの家の屋根上くらいなら小声でも一応聞こえる。 なんか滞斗といい独り言で情報漏らす奴多すぎないか……?
まあいい、そんなに二人の場所を知りたいなら言ってやろう。
俺は暗殺者を確認する為に出してたスマホを何度かタップし耳に当てあたかも電話してるかのようにそこそこの声で話し始めた。
「よ、風花。そっちは大丈夫か? ほう、今から映画館か。りょーかい、恋愛映画でも見て距離縮めて来いよ。じゃあな」
「フッ、俺の異能『地獄耳』の前ではどんなに離れていようが小声だろうが全て筒抜けだ。ターゲットは映画館か、この辺りだとショッピングモールの中のか? それにしても、見られてるとは思ってはいないだろうがそれを抜きにしても大声で友人の場所を言うとは……バカな男だ」
見られてるのも気付いてるし場所も嘘に決まってるだろバカ。そもそも風花に滞斗を映画見に行こうと誘えるような根性は無いんだよ!
二人が行ってるのは間違い無くモール近くのカフェだ。俺がこの前連れて行ったら相当気に入ってたからな。
というか他にもツッコミ所が多過ぎる。
暗殺者みたいな見た目してるのにこいつ独り言めちゃくちゃ言うじゃん。お前隠れて風花の場所探ってるんなら黙っとけよ。
それに異能力が地獄耳ってどうなの? それ本当に異能力なの? ただ単に耳が良くて身体能力高い一般人じゃないの?
「さて、場所もわかった事だし後はあの女に死んでもらうだけか。これでボスの悲願も叶うだろう。フッ、それにしてもこの男が自分のせいで友人が死んだと知った時の顔を見てみたいな、しかしもうお前とは会うことは無いだろうな。まあこれも聞こえてはいないだろうがお別れを言っておこう。さらブヘェッ!!!」
とりあえず長ったらしい独り言を言って逃げようとした暗殺者男は俺が投げたスマホが顔面にクリーンヒットして庭の方に落ちていった。我ながら完璧なスローイングだ。
ただ意識がまだありそうだよな、勝手に他人の敷地に入るのは気が引けるが仕方ない。
「く、くそっ! 一体何「良くも風花に死んでもらうとか言いやがったな!!!! お前が死ねえええええええ!!!!」ハッ!? な、なnガッッ!!」
庭に向かったら暗殺者男が丁度立とうと膝立ちの状態だったのですかさず怒りと共に顔面に膝蹴りを叩き込む。
うん、中々良い入り方した気がする。いや人に膝蹴りとかしたの初めてだから本当に気がするだけだけど。
でも見る限り完全に気絶してるし大丈夫だろ。
……大丈夫だよな? 一応確認してみるか。
「おーい、起きてるか?」
「…………」
返事は無い。つま先で軽く突いてみる、反応は無い。良く観察してみる、息はある。
……つまり俺の勝ちだな?
「よし! 滞斗と風花に危害加えようとするからこうなるんだよ! ざまぁみ––––ろっ!?」
勝鬨をあげてたら背後から気配がしたから咄嗟に暗殺者男を飛び越えるように距離をとる。この状況で咄嗟に暗殺者男を踏まないように飛び越えた自分を褒めたいね。
で、振り向くとそこには身長2m弱くらいで金髪に無精髭生やしてサングラスをかけた男。右手を出してるとこ見るに多分俺の肩に触れようとしてたんだろうな。
それにしてもコイツはヤバい、触れられる寸前まで全く気が付かなかった。
どうしよ、暗殺者男に楽に勝てたのは不意打ちが成功したからだ。対して正面の金髪にはもうバレてる。ぶっちゃけどうしようも無い。
……こいつも異能力者だろうしとりあえず様子見だな。後手に回るのは間違い無く悪手だが仕方無い。
そうやって様子見してると最初は避けられるとは思ってなかったのか少し驚いた顔をしていたがすぐさま余裕からか不敵な笑みを浮かべ–––––
「いやマジですまん! そんな警戒しないでくれ、ちょっと驚かそうと思っただけなんだよ、な?」
両手合わせて軽い調子で謝ってきた。
…………はぁ???