逆行系能力の親友を逆行させない為に   作:光ファイバー

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 ここからTS要素が入るので初投稿です。


碌でもねぇ……

「一応……どうやって思い出したかを聞かせて貰えるか?」

 

 俺は昨日の部屋に連れられてまた愛守さん達と話していた。

 

「起きて滞斗達のお弁当用意しようと思ったんですよ。そしたら何も用意してないからおかしいなって思って。そこから昨日の自分の違和感を探してって感じですね」

「解除される程大きな違和感が、出ないように変えたつもりだったんだが」

「滞斗の動きに違和感があったんですよ。で、滞斗が異能力者になった事を思い出して流れで全部思い出しました」

「滞斗君の動きか、それは……無理だな。違和感の無い動きなんて私には分からないし昨日滞斗君を見ていないと書き換えたら更に違和感が出るだろう。私じゃあどうしようも無い。はは……君は化け物だな……」

 

 愛守さんは疲れたように笑った。少し申し訳無さを感じる。でも大事なのはこれからだ。

 

「改めて、俺も一緒に戦わせてください」

「……君が、一部とは言え異能力者にも勝ち得るポテンシャルを持っているのは分かった。私自身が異能力を破られてるから」

 

 愛守さんは深く、考え込むように目を瞑って言った。昨日とは違ってちゃんと考えてくれている。

 

「でもそれだけじゃダメだ。分かっているとは思うが私達は命をかけて戦っている。当然の事ながら戦闘能力が必要だ。だから、テストをさせてくれ」

「分かりました。何すれば良いんですか?」

「動きを見たい。頑張ってくれ」

 

 そう言ってソファに深く腰を落としこちらをじっと見てくる。

 ハッとして部屋を見渡す。這潜さんが居ない! いや見えない! この人とやるの!? テストの難易度高すぎじゃない!? 

 

 ……ふぅ、落ち着け。とりあえず見えないなら視界は要らないから目を瞑る。というかシャットアウト出来ないだけで聴覚とかも要らないけど。

 集中しろ。信じられるのは自分の勘だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 いつもは感じない程の空気の揺れを肌に感じた──

 

「そこ!!」

 

 咄嗟に俺は薙ぎ払うように蹴りを出す。具体的な位置はわかんないが当たる範囲に居るのは間違い無い! この戦い俺の勝ちだ!

 

 

 

「あれ?」

 

 知ってる天井だ。蹴ったと思ったら身体が浮いて床に叩き付けられてた。背中と後頭部が痛い。

 

「悪い、そっちから先に攻撃されると思わなくて咄嗟に反撃しちまった。大丈夫か?」

「多少は痛いけど大丈夫」

 

 謝りながら出された這潜さんの手を掴み立ち上がる。見えないのってやっぱずるいわ。攻撃前の体勢も分からなければどういう動きで反撃されたも分からない。圧倒的不利だ。今回はそもそも目瞑ってたけども。

 

「で、お前どうやって俺の位置が分かった」

「見えなくなっても質量は残るだろ?だから動くと空気が押し出されて少なからず風が生じる。それで」

 

 あれ、また引かれるだろうなって思いながら言ったのに這潜さんは真面目な表情で思案し始めた。

 

………一応、考慮はした方がいいか。愛守、俺もう要らないだろうから外すぞ」

 

 そう言って俺と愛守さんを残して部屋を出て行ってしまった。

 

「あ、愛守さん、どうでしたか?」

「本当は這潜に勝てないならダメだ。というつもりだったんだがな……」

「だったって事は……?」

「這潜は接近戦だけならうちで1番強い。正直君じゃあ手も足も出ないと思っていたが、あんな事をされるとな……認めざるを得ない。よろしく天与君。君はこれからは守るべき一般人ではなく私達の仲間だ。とはいえ、君が子供で無能力者である事は変わらない。……正直、異能力者よりよっぽど怪物な気もするが。ともかく無理はしないで欲しい。何かあったらすぐに言ってくれ」

「怪物って……」

 

 笑みを浮かべて出して来た愛守さんの手を握る。正直また記憶を書き換えられるんじゃいかって怖かったけど。ていうかさらっと酷くないか。あなた達の方がよっぽど理不尽で怪物なんだが。

 

「そういえば滞斗もここも来たりするんですか?」

「ああ。まだ一週間だが君達との予定がない日は毎日ここに来ている」

「て事は二日に一回くらいは来てるのか……愛守さん、一時的に他者の姿変える異能力者とか居ませんか?」

「そんなピンポイントな奴居るはず無いだろう……そんなに滞斗君に知られたく無いのか?」

「はい。だって知られたら絶対に止められるじゃないですか。それだけなら俺が説得すれば良いんですけどそうしてもずっと悩むだろうし俺が怪我なんてしたら罪悪感で苦しむと思うんですよね」

 

 愛守さんはそこまでピンと来てなさそうだけどめちゃくちゃ大事な事である。まず滞斗は絶対俺が戦う事を嫌がるし止めようとする。それは別に良いのだ。いや良くは無いけどそれなら俺が話せばどうにでもなる。説得は絶対に出来るから。問題はその後、俺が戦ってると知ったら滞斗は絶対にその事を考え悩み続ける。そんな状態になったら更に危険になる。助ける為に行動してるのに足を引っ張るとか論外だ。しかもきっと俺が怪我したらどんな軽い怪我でも滞斗は「僕がしっかり止めなかったから……」って罪悪感に押し潰されるだろう。ちなみそんな事になった場合滞斗をそんな気持ちにさせてしまった俺の方が罪悪感で押し潰されるのは言うまでもない。考えるだけで死にたくなる。

 

「そんな訳でプロテクターに俺が所属してるって知られるのは絶対にダメです。何かないですか?」

「ある……事はあるが……」

 

 渋々と言った感じで言った。……なんかやばい事だったりする?流石に変なリスクは負いたくないんだけど。

 

「うちに桜瑠 明玖(おうる めいく)という奴が居る。一応問題は解決出来るだろう」

「なんか既に不穏な気配を感じるんですけど」

「付き合いは長いし悪い奴ではない……ないんだけど…まあ、うん……」

「何ですか!? 怖いんですけど!?」

 

 何!? 最後の方、愛守さんのキャラから外れてたけど!?

 

「……とりあえず連れて行こう。君なら大丈夫だろう多分」

 

 そう言って愛守さんは立ち上がって歩きだす。この人俺に変な信頼向けてないだろうか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 愛守さんに連れられて入った部屋は……何だこれ? 一応研究室みたいな感じなんだろうか。それっぽい機械とか良く分からない物が多い。でも視線を動かせば大量の漫画が置かれた本棚や色々なグッズが飾られた棚。果てにはR-18と書かれた暖簾で仕切られてる区域まである。いや……何だこれ?

 

「桜瑠。仕事だ」

「はいはーい。今日は何が欲しいのかな?」

 

 愛守さんが呼びかけると暖簾の中から下着の上に白衣を羽織った人が出てきた……えぇ……

 

「あ、彩葉くんじゃーん。どうしたの? 愛守ちゃん記憶消したって言ってなかったっけ? 解除されたの?」

 

 俺の事は知ってるらしい、笑顔で手を振ってきた。その前にに服を着ろよ……目を向けづらい。

 

「そうだ。が、まずはちゃんと服を着ろ……」

「おっと失敬失敬」

 

 愛守さんも同じ事を思っていたらしい。頭に手を当てながら注意をすると白衣の人、桜瑠さんは暖簾の中に入って行き、数十秒ですぐにまた出てきた。しっかりと見ると見た目は結構幼い。中学生くらいの外見だ。でも部屋に18禁コーナーあるんだよな……

 

「はいお待たせ。それで? 今日はどんな要件?」

「天与君は仲間として戦ってくれる事になった。でも滞斗君には正体を知られたくないらしい」

「なるほどなるほど。それで私ね。あれどこに仕舞ったっけなー」

「…あれ以外の物は」

「無いよー。勿論作れはするけど時間かかるかな」

 

 そんな会話の後桜瑠さんは部屋の中を漁り始めた。あれって何だよ。愛守さんの反応からして碌でもなさそうなんだが……

 

「あの……あれって何なんですか?」

「…………」

「…………」

「…………」

「……愛守さん?」

「……あれは「あった! これこれ、性転換薬!」……あれだ」

 

 結構長めな沈黙の後愛守さんが口を開いたタイミングで見つけたらしい桜瑠さんが被せて声を上げた。っていうか、え? 性転換?

 桜瑠さんが見せてきたのは瓶の中に入った錠剤。これで性転換出来るの?

 

「技術力どうなってんだよ」

「ああ、愛守ちゃんから聞いてないんだね。じゃあ自己紹介しようか。私の名前は桜瑠 明玖(おうる めいく)。異能力は理屈とか常識とかそういうの全部無視して何でも作る事が出来る。」

「ズルじゃん!」

 

 ズルじゃん! もうこの人一人で良いじゃん! ディスラプター全員殺すボタンとか作れば終わりじゃん!

 

「とはいえ普通じゃあり得ない物を作ろうと思ったら相応にその物に対する熱量が要る。私が作りたいって思ってそれ相応の時間や素材を使わないと凄い物は出来ない。もしくは出来ても効果が不十分とか」

「そのせいで基本的にろくな物は作らない」

「そりゃあ実用性高い物を迂闊に作って何かがきっかけで世に出たら社会が崩壊しかねないし」

 

 あっけらかんとした態度で言ってるがこの人やば過ぎるだろ。這潜さんや愛守さんとかと比べて異能力で出来る事の範囲が広すぎる。その気になれば一人で世界どうにでも出来るじゃん。この人が悪い思想持ってたら今頃世界終わってたまである。

 

「それで性転換薬の事なんだけど、渡す前に彩葉くんと二人で話したいから愛守ちゃん席外してくれる?」

「分かった。終わったら呼んでくれ」

 

「……えっ」

 

 そんな事考えてたら愛守さんが部屋から出ていってしまった。返事の早さや出ていく早さといいあの人実は早く離れたがってただろ。分かりやすい人だ。

 さて、前に向き直る。この人の事はまだよく分からない。第一印象、異能力の凄さ、態度の軽さ、節々に少し感じる責任感、外見。チグハグでいまいち掴みどころが無い。

 

「愛守ちゃん仕事モードだとノリ悪いからなぁ」

「愛守さん常にああじゃ無いんですか」

「そうそう。オフの時はもうちょっと柔らかくてね。あとアルコール入ると凄い可愛いんだよ。ちょっとポンコツ気味だし透くんにでれ」

 

ドンッ!

 

「……よし、彩葉くんの事を話そっか」

「……はい」

 

 普通に大丈夫な人かもしれない。「後で愛守ちゃんに怒られるなぁ」と冷や汗をかきながら呟いている桜瑠さんを見てそう思った。

 

「よしじゃあまずは聞きたい事がいつくか」

「……はい何ですか?」

 

 それも束の間、桜瑠さんは真面目ない顔付きに変わった。やっぱりこの人は「滞斗くんって風花ちゃんの事好きだよね? いつからなの?」

 

 

 ………………

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「で、お祭りで二人きりで花火見てる時にさ、凄い良い雰囲気で滞斗は風花に「綺麗だね」って言ったんだよ」

「おお!」

「でもあいつすぐに日和やがってさ! すぐに「あ、は、花火がね」って馬鹿か! 風花もテンパって「そ、そうね」って普通に返しやがって! 少しでも悲しい表情してたら滞斗でも勇気出しただろうに」

「でもそれはそれで良いじゃん。私はそういう雰囲気も好きだよ?」

「わかるけどさぁ、昔っからずっとこんな感じだからもどかしさが…!」

「確かにずっと近くで見続けてるとそうなっちゃうかなぁ……ん? その時は滞斗くんと風花ちゃんの二人きりだったんだよね? まるで見てたかの様な話し方だったけど」

「俺は家の2階から見てたから。話してる内容も口の動き読んだから間違いないぞ」

「……そっか。彩葉くんならそれくらいはするよね!」

 

 あの質問の後、俺と明玖さんはめちゃくちゃ仲良くなっていた。明玖さん的に滞斗と風花は現在最推しカップリングらしい。ナマモノを推すなとは言いたいが自分にも跳ね返ってくるので言えなかった。ちなみに前までの最推しは女体化這潜さんとその時這潜さんが護衛してたショタらしい。めちゃくちゃ気になるのだがまた今度ねと言われてしまった。

 ともかくこの人は同志だ。疑うなんてとんでもない。

 

「……ふぅ。言ったん滞斗くん達の話は終わりにしよっか」

「まだまだあるよ?」

「聞きたいけど喋り始めてから六時間経ってるからね。そろそろ本題に入らないと」

 

 少し疲れた様子で言ってきた。スマホを見たらもう十二時である。そういえばスマホ直ってる、いや新品に変わってる元々あった微妙な傷も無いわ。

 

「それで彩葉くん。滞斗くんに知られずに戦いたいんだね?」

「うん、滞斗に心配とかかけられないから」

「じゃあ選択肢は二つ。この性転換薬を使うか、私が新しい姿を変える何かを作るか。でも多分出来るまでに相当時間がかかる」

「やっぱり姿を変えるみたいな普通じゃないのは作るの難しいのか」

「いやモチベの問題。私女の子になった彩葉くん見たいもん」

「碌でもねぇ……」

 

 この人明け透けに言いやがった。

 

「じゃあもう性転換薬しか無いじゃん」

「そうだね、でも一個注意点。これで性別変えると副作用として考えとか性格が性別に引っ張られるんだよ」

「這潜さんがおねショタしたのはそういう事か……その副作用無しで作れないの?」

「無理。あった方が面白いから」

「ほんとに碌でもない……」

「欲を言えばこれで彩葉くんも滞斗くんを好きになって三角関係「殺すぞ」ごめんって!」

 

 いけない殺意を抑えられなかった。明玖さんが結構本気で怖がってる。でもこれ明玖さんが悪いだろ。滞斗と風花の間に俺が入ろうとした日には俺は迷わず腹を切るぞ。

 

「ま、まあそういう副作用があるんだけどどうする?」

「他の作るの待ってられないしそれで」

 

 メンタル面だったら気合いで何とかなるだろう。それよりも女になって身体能力とかが下がりそうなのが怖い。

 

「即決だね。まあ戻ろうと思えばすぐに戻れるしそんな気にする必要もないよ。じゃあ早速飲もうか!」

 

 若干興奮気味で早口になった明玖さんに瓶を手渡される。

 

「一錠飲めば変わってもう一錠飲めば戻るからね」

 

 そう説明して明玖さんは期待の眼差しを向けてくる。……飲むか。怖がっても仕方ないしな。

 瓶から錠剤を一つ取り出し飲み込む。

 

 

 

 あれ。少し目眩がしたと思ったら視線が低いし服のサイズが合わなくなっていた。

 

「薬飲んでどれくらい経った?」

 

 声可愛いな。

 

「五秒くらいかな」

「そんな一瞬で変わるんだ……」

 

 身体の形変わる訳だし時間かかったり痛そうって思ってたけどそんな事は無いらしい。ていうか五秒で性別変わるとか側から見てどうなってんだろ。

 

「はい鏡」

 

 明玖さんが持ってきてくれた姿見を見ると中には美少女が居た。身長は視点の位置と写った姿的に157cmくらいか。感覚的にはそこまで身体能力が落ちたって感じはしない。髪はショートボブ。……何で薬で髪型まで変わるんだ? 顔立ちは綺麗ってよりは可愛い感じだな。あとおっきい。凄いおっきい。間違いなく平均より上だろうし風花が見たら羨ましがる感じのおっきさだ。

 

「思ったより落ち着いてるね。もっと驚いたり興奮すると思ったのに」

 

 明玖さんが少しつまらなそうに言った。

 そうなんだよな。なんかめちゃくちゃ落ち着いてるんだよな。今の俺の姿は客観的に見て可愛いだろうし、元の服が大きくなったせいでズボンはやパンツは落ち上も片側の肩と胸の上の方が見えてたりでエロくはあるんだがいかんせん自分の身体である。

 俺は健全な男子高生ではあるが流石に自分のは……って感じだ。

 

「いや、自分で興奮は出来ないよ俺」

「そっかぁ。あれ、喋り方も変わってない。思考とかにも違和感無い?」

「そういえば特に無いな」

「うーん、彩葉くんの精神が強すぎて副作用が出てない感じかな……ちょっと流石としか言い様がない」

 

 ほんとに気合いで何とかなるらしい。逆に今まで使った人達の精神が弱かったんじゃないだろうか。

 

「とはいえ効果が無い訳は無いからね。多分長期的に変わったままだとどんどん引っ張られると思うからちゃんと戻りつつ生活しなよ。勿論私としては彩葉くんが内面まで女の子に染まっていっても良いと思うけどね!」

「いや、学校もあるんでここに居る時にしか女体化しないけど」

「それもそっか。じゃあ私は彩葉くんの服作ろっかな! 今なら一時間あれば出来そう!」

 

 そう言って明玖さんはまた部屋を漁り始めた。多分材料を見繕ってるんだと思うんだけど何で機械部品みたいのも並べてるんだろうか。……きっと材料とか関係ないんだろうな。

 あ、そうだ。

 

「明玖さん、この姿の時はアヤって呼んでください!」

「あ、確かに折角見た目変えてるのに名前とかそのままだったらダメだもんね。喋り方も演技?」

「はいっ! こういう感じでいこうかなって!」

「良いね。私は元気っ娘も大好きだよ」

 

 滞斗と会った時に俺が天与彩葉だってバレちゃいけないからな。名前や喋り方の偽装も大事だ。アヤって名前は安直な気もするが、風花ならともかく滞斗は気付かない。絶対に。

 そしてこの姿でも滞斗からの信頼は欲しいから元気な性格で距離を詰めて信頼関係を気付く。完璧だ……

 

「あ、アヤちゃん一つ頼み事していい?」

「はい。何ですか?」

「服作る上でサイズ確認したいのと目の保養と私が見たいから一旦服脱いで貰える?」

「うわ、碌でもねぇ……」




桜瑠 明玖
 異能力はありとあらゆる物の製造。ただし作る物に対する本人の相応の熱量が必要。その為基本は変な物しか作らない。
 オタク気質で享楽主義。色々考えてるように見えて実際は幼馴染の為に勢いだけで行動している彩葉とは相性が良い。
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