岩沢雅美の幼馴染   作:南春樹

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第七話「初食堂&初会議」

「太一、もうすぐ食堂だからおろして……」

 

「もう歩けるようになった?」

 

「うん、もう歩けるよ。それに……」

 

「それに?」

 

「周りの視線も気になるからさ」

 

 

雅美に言われて初めて気づいた。現在時刻は朝7時45分。朝ごはんのピークの時間帯で周りにはNPCたちがたくさんいる。昨日の関根の話によるとガルデモは校内でも絶大な人気を誇るバンドで、そのギターとボーカルを務める雅美の人気は恐ろしいものらしい。そんな超人気人物がお姫様抱っこされているのを見れば誰だって視線を送ってくるだろう。

 

 

「おっと、ごめんごめん」

 

「ん、ありがと、太一」

 

「どういたしまして」

 

「あれ?岩沢と太一じゃん。お前らも今飯?」

 

 

偶然通りかかったひさ子が話しかけてきた。なんかにやけてんなこんにゃろう。

 

 

「そうだよ。ひさ子は?」

 

「私もこれからなんだけど、一緒に食べる相手がいなくてさ〜」

 

「一緒に食べる?」

 

「えぇー!?良いのかー!?篠宮〜!」

 

 

ひさ子が手で口を押さえながら非常にわざとらしく確認をしてくる。若干うざい。

 

 

「ジョークだよ、ジョーク。私はそんなことマジでやるキャラじゃねーよ」

 

 

俺の心の声に気づいたのか自らフォローを入れてきた。

 

 

「んで、話を本題に戻すけど、私も一緒に食べていいんだな?」

 

「ああ、もちろん。俺は構わないぞ」

 

「私も全然オッケーだよ」

 

「よっしゃ!」

 

 

 

 

 

と、ひさ子と雅美と一緒に飯を食べることになったのだが、周りからの視線が痛い痛い。そりゃあガルデモのツートップと一緒に飯を食うなんてNPC達からしたら羨ましいだろうな。

 

 

「どうした?そんなキョロキョロして」

 

「いや、なんでもないよ」

 

「そう?ならいいんだけど」

 

 

二人は慣れているのかNPC達からの視線は全く気にしていないようだ。

 

 

「ほら、どれ食う?」

 

 

雅美が大量の食券を目の前に出した。

 

 

「お前、どれ食う?ってうどんしかねーじゃん」

 

「なっ!?うどんはうどんでも種類が違うだろ!ここの食堂にはそんな地方のうどんは無いにしても色んな種類がある!肉うどんに月見うどん、ざるうどん山菜うどんきつねうどんたぬきうどん素うどんとかほかにも……」

 

「ストップストップ!わかったよ」

 

「本当にわかったのか?」

 

「ああ、お前のうどんに対する情熱がわかったさ」

 

 

ひさ子面倒くさくなったな。回答が回答になってない。

 

 

「わかればよろしい」

 

 

あ、それで良かったんですか。

 

 

「さて話を戻して、太一はどれ食べる?」

 

「おすすめは?」

 

「肉うどんだな」

 

「じゃあそれにする」

 

「オーケー、注文してくるから待っててくれ」

 

「あ、私のも頼む」

 

「ひさ子もか?まあいいけどさ」

 

 

雅美が注文に行っている間、俺はひさ子と二人きりになる。

 

 

「なんか岩沢のやつが妙に機嫌がよさそうなんだけど、昨日はどこまでいったんだ〜?」

 

 

悪い笑みを浮かべながら聞いてきやがった。

 

 

「別に。雅美はずっと寝ていたし、特になんにもなかったよ」

 

「本当か〜?」

 

「うん」

 

「ちぇ」

 

 

なんの舌打ちだよ。まあいい、面倒くさいからこの話はさっさと変えよう。

 

 

「ところで今日って練習あるんでしょ?」

 

「ん?ああ、あるぞ」

 

「何時から?」

 

「9時からだ」

 

 

9時からか。聞いといてよかったな。

 

 

「ちょっと俺ゆりに呼ばれててさ。行くの遅れるよ」

 

「ゆりに……?ああ、制服とかまだだもんな」

 

「制服?」

 

「戦線には独自の制服があるんだよ。お前の着てるのはこの学園の制服」

 

「ああ〜……」

 

 

そういえば日向とか音無とか違う服を着ていた気がする。

 

 

「じゃあひさ子が着てるのも戦線の服?」

 

「そうだよ」

 

「おまたせ〜」

 

 

ここで雅美が帰ってきた。やけに早いな。

 

 

「いまちょっと混み合ってるから後で届けるだってさ。ほらこれ、番号札」

 

「まあまだ8時だし時間に余裕があるから大丈夫だよね」

 

「それはそうと、太一とひさ子は何話してたんだ?」

 

「篠宮が「岩沢の寝顔かわいい!」って熱く語ってただけだよ」

 

「なっ!?」

 

「た、太一が!?私の!?」

 

 

おいひさ子、周りの視線が一気に集まったぞ。

 

 

「なーんてな。嘘だよ」

 

 

意外と周りの様子には敏感なのかすぐに訂正をした。

 

 

「なんだ嘘か……」

 

「なんでそんながっかりした顔してんだよ」

 

「えっ?いや、がっかりした顔なんてしてないぞ」

 

「嘘つけ。顔にハッキリ書いてあるぞ」

 

 

そうひさ子に言われた瞬間雅美は自分の顔を触り始めた。

 

 

「「いやそうじゃねえよ」」

 

 

俺とひさ子がハモった。それに対して雅美はキョトンとした顔をしている。思い返してみれば雅美は昔から少し抜けているところがあって、音楽とうどん以外には基本無頓着なのだ。

 

 

「えっ……じゃあ……どういう……」

 

「岩沢、もういい。顔はなんとももない」

 

「太一……私の顔、なにか書いてあるか……?」

 

「なんにも書いてないよ」

 

 

書いてあるわけあるか。

 

 

「よかった〜。私なんか書いてあるまま食券を出しに行ったかと思って焦ったよ」

 

 

どんな心配してるんだよ。

 

 

「どんな心配してんだよ」

 

 

ひさ子がほぼ同じツッコミを入れた。と、その瞬間

 

 

「は〜い、お待たせ。肉うどん三つね」

 

 

肉うどんが運ばれてきた。まあ、腹ごしらえといきますか。

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

 

「ごちそうさん」

 

「ごちそうさまでした」

 

 

10分でうどんを完食した。

 

 

「いや〜、この食堂は中々美味いね」

 

「そうだろ〜?」

 

「なんでひさ子が得意気になってるんだよ」

 

「いいじゃん」

 

「まあいいけどさ……」

 

 

いいんだけどさ……。

 

 

「よし、じゃあ飯も食べたし練習行くか」

 

「あ、ごめん。俺ゆりに呼ばれてるから行くの遅れる」

 

「ん、了解」

 

「あれ?あっさりオッケー出すんだな」

 

「どういう意味だよ」

 

「岩沢のことだから『ゆ、ゆりのところ!?な、何しに行くんだよ!?まさか……』とかなるんじゃないかと思って」

 

「ならねえよ。なんでなるんだよ」

 

「だって昨日篠宮が部屋に来る前に篠宮のこ…むぐっ!?」

 

 

雅美が凄い形相になりながらひさ子の口を押さえている。ひさ子もあんな顔の雅美を見たことがないのか少し目を見開いている。

 

 

「なんだって?」

 

 

その形相のままひさ子に顔を近づける。こえ〜。

 

 

「な……なんでもない……です」

 

「よろしい」

 

 

心無しかひさ子が若干震えているように見える。まああんなのされたらそりゃあ震えるわ。

ひさ子の方の要件が済んだのかこちらの方を向いた。

 

 

「よし、それじゃあまた後でな」

 

「うん。また後でね」

 

 

まだちょっと震えてるひさ子を横目に俺は校長室へと向かった。ひさ子、南無。

 

 

 

 

 

現在時刻は8時45分。俺は今校長室前にいる。少し道に迷ってしまったので時間がかかったが、無事に時間内に着くことができた。

ドアノブに手を運び、ドアを開けようとしたその瞬間、突然巨大なハンマーが俺を襲った。

 

 

「うおっ!?」

 

 

俺は咄嗟にハンマーを殴った。

 

バゴオォォォン!

 

ハンマーは10mほど飛んでいってしまった。

 

 

「な、なに!?なにごと!?」

 

「なんだ!?なんかすげー音がしたぞ!」

 

 

ゆりと藤巻が慌てながら様子を見に来た。

 

 

「篠宮くん……?」

 

「突然ハンマーが出てきたからつい……」

 

「す、すげぇ……」

 

「トラップのことはまた作り直せばいいからいいのよ。それより怪我はない?」

 

「特に無いよ」

 

「そう、よかったわ」

 

 

ハンマートラップを壊したのを責めるどころか心配をしてくれるなんて……。

 

 

「それよりも早く中に入って頂戴。色々しなきゃいけないことがあるんだから」

 

「あ、はいはい。お邪魔しまーす」

 

 

中に入ると日向、音無、大山、椎名、松下五段、TK、それと眼鏡をかけたインテリっぽい男がいた。

 

 

「ゆりっぺ!さっきの音はなんだ!?まさか天使の仕業か!?」

 

「落ち着いて日向くん。今の音は篠宮くんがハンマートラップを壊した音よ」

 

「なーんだ。安心した……って、ええ!?あのトラップを壊した!?」

 

「そうよ」

 

「そ、それって俺が飛ばされたやつか?」

 

「ええ、それよ」

 

 

部屋にいる全員が驚愕の表情で俺を見る。

 

 

「疑うなら見てくればいいじゃない」

 

 

ゆりがそう言うと日向は扉の外を見に行った。

 

 

「………マジだ……」

 

「だからそう言ったじゃない」

 

「あれ3トンぐらいあるんじゃなかった?」

 

 

大山の言葉にみんなの顔が引きつる。

 

 

「はいはい、この話はここまで。本題に入るわよ」

 

 

ゆりがぱんぱんと手を叩いてこの話を終わらせる。

 

 

「これ、篠宮くんの制服」

 

「おおそうだ。篠宮はまだ学園の制服だったな」

 

「これは私たちの仲間になった証よ。是非着て頂戴」

 

「うん。ありがとう」

 

「早速着替えてみろよ」

 

「うん。わかった」

 

 

ゆりから制服を受け取って着替えの準備をする。ズボンに手をかけようとすると、

 

 

「お、おい…篠宮……」

 

「ん?どうした?」

 

 

日向が急に話しかけてくる。

 

 

「ちょっと待って。私と椎名さんは外で待ってるから」

 

 

あっ……そういうことか。

 

 

「……ごめん……」

 

「いいわよ。なるべく早く着替えてね。さ、行きましょ、椎名さん」

 

 

ゆりと椎名が校長室を出る。パッと着替えたのでものの2分程で終わった。

 

 

「はい、着替え終わったよ」

 

「おぉ〜…結構似合ってるわね」

 

「そ、そう?ありがとう」

 

 

褒められたので素直にお礼を言おう。

 

 

「はーい、篠宮くんの着替えも終わったことだし今日のメインの話をするわよ。昨日武器庫から報告があったのだけど、そろそろ武器の貯蓄が切れるらしいの。だから今日はギルドに降りるわよ」

 

「ギルド?」

 

「ギルドってなんだ?」

 

「あー、そっか。音無くんと篠宮くんはまだギルドに行ったことなかったね」

 

「ギルドっていうのは私たちが使っている武器とか制服とかその他諸々を作ってる施設のことよ」

 

「ああ、そういえば昨日言ってたね」

 

 

うん、思い出した思い出した。

 

 

「いつギルドに行くの?」

 

「そうねぇ……夕方に行きましょ」

 

 

夕方か。それまでは雅美たちと練習だな。

 

 

「よーし、みんないいわね?ギルド降下作戦は本日午後4時より開始。集合場所は体育館」

 

 

体育館……?体育館からギルドに行けるのか?

まあそれは追々わかるからいいか。

 

 

「午後4時までは各自自由行動でいいわ。それじゃあ、解散!」

 

 

ゆりから解散の号令がかかると場の緊張が一気に解れた。

 

 

「うっし、音無、篠宮。この後時間あるか?」

 

 

日向が話しかけてきた。

 

 

「ごめん!この後ガルデモの練習行かなきゃいけないんだ」

 

「ガルデモの練習?マネージャーかなんかになったのか?」

 

「いや、ガルデモのメンバーに入れて貰ったんだよ」

 

「えっ!?お前ガルデモに入ったのか!?」

 

 

めっちゃ驚かれた。

 

 

「篠宮くんには陽動と第一線の両方で活動してもらうことになってるわ」

 

「掛け持ちってやつか……体持つのか?」

 

「んー、持つと思うよ」

 

 

まあこんな体だしな。体力の方もいくらでもあるさ。

 

 

「そっか……まあ体壊さない程度に頑張れよ」

 

「うん、ありがとう」

 

 

そういいながら俺は校長室を出る。そして昨日の空き教室へと向かう。

 

よ〜し、初練習、頑張るか!

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