レンタル彼氏のバイトをしてたら学校の美少女三姉妹に目をつけられた   作:ku216

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2話

ビューッ。

 

……あ、まじか。風が吹いたせいで、大事なところがよく聞こえなかった。

 

ん〜、なんか「寝取ってくれ」とか聞こえた気がしたけど――さすがに聞き間違いだろ。うん。そうだ。

 

でも、この子が勇気出して言ったっぽいのに聞き返すのもな……。

 

よし、ここはノリでいこう。ノリで。

 

「あ、ありがとう。人に好きって言われたの初めてで、ちょっと恥ずかしいな」

 

「は? 耳腐ってるんですか? 耳鼻科行った方がいいですよ」

 

「めっちゃ辛辣じゃん……」

 

「いいですか? 私は――姉さん達を寝取ってくださいって言ったんです」

 

 聞き間違いじゃないのかよ……!!

 

さも当然みたいに言い切る彼女を見て、笑いそうになる。

 

いや、違う。これは笑っちゃいけないタイプのやつだ。

 

 だとしたら――

 

(……ぜってぇ、こいつと関わっちゃいけない……)

 

絶対ろくな目に合わない。適当にあしらって、さっさとあいつらのところに行こう。

 

「ごめんなさい。俺、好きな人いるんで。他を当たってください」

 

 よし、完璧。これで角も立たないな。 さっさと逃げるぞ。

 

俺はバサッと頭を下げ、全力でその場から立ち去ろうとした―― が、彼女は思いっきり俺の制服を引っ張り、引き留めてきた。

 

「乙女の秘密聞いておいて、どこ行くんですか!」

 

「お前が勝手に暴露しただけだろうが!」

 

「聞いたんだから責任取ってください!」

 

「寝取ってくださいって聞いて、『はい、わかりました!』って言うやついるか!」

 

「姉さん達を自分の好き勝手にできるんですよ!」

 

「そもそも誰から寝取るんだよ!!」

 

「私からです!」

 

「全然意味わかんねえよ!!」

 

「私が大好きな姉さん達が、先輩みたいな女の子遊びが酷い人に奪われるシチュが一番クるんじゃないですか!」

 

「女遊びって……お前、人をなんだと思ってんだ!」

 

「私、見ましたよ。先輩が色んな女の子とデートしてるところ」

 

「……え」

 

その言葉に、思わず喉が詰まった。

 

「な、なに言って――」

 

「しらばっくれても無駄です。証拠、あるので」

 

「しょ、証拠……?」

 

彼女はスマホを取り出して、画面を俺の鼻先に突きつけてきた。

 

「ここ。写ってる“トシ”って人……先輩ですよね?」

 

「あ、あ……」

 

映っていたのは――俺がバイトしているレンタル彼氏の公式サイト。

 

しかも、バイトのときだけ見せる“オシャレモード”の俺の写真付き。

 

「髪型も服装も違いますけど。この顔、間違いないですよね」

 

……終わった。

 

同じ学校の、しかも女の子にバレた。

 

恥ずかしいだけならまだ笑える。だけど――

 

「ねえ。うちの学校、アルバイト禁止でしたよね?」

 

彼女はにこにこしてる。してるのに、目が笑ってない。

 

「バレたら、どうなるんでしたっけ。停学とか?」

 

「…………」

 

「それに、レンタル彼氏って……高校生、できないはずですよね」

 

「……っ」

 

「先輩がやれてるってことは……年齢、偽ってるってことになりますよね?」

 

「……くぅ」

 

「それ、まずくないですか? 学校にも、バイト先にも」

 

スマホの画面が、逃げ道を塞ぐみたいに光っていた。

 

――学校の奴らに、バレたくなかった一番の理由。

 

そう。俺が年齢を偽ってレンタル彼氏をしていることだ。

 

あの手この手で、やっとやることが出来たバイト。

だからこそ、バレたら終わる。学校にも、バイト先にも。

 

 

仮に停学程度で済んだとしても、クラスの連中に何を言われるか。

きっと笑いものだ。居心地の悪い教室で、毎日を過ごす羽目になる。

 

それに、バイト先だって「辞めさせられて終わり」で済むとは限らない。

未成年を偽って雇っていたなんて話になれば、信用問題だ。

最悪、違約金だの何だの――全部こっちに押し付けられる。

 

そして何より――母さんに迷惑がかかる。

 

楽をさせたくて始めたのに、逆に足を引っ張ったら意味がない。

母さんのことだ。「気にしないで」なんて笑って、結局ぜんぶ自分に背負い込む。

 

そんなの、絶対に嫌だ。

俺のせいで母さんが苦しむなんて……。

 

「……ねぇ、先輩」

 

「……っ」

 

 彼女に声をかけられて、はっと我に返る。

彼女はニッコリと微笑んでいた。

 

一見すれば、ただの愛らしい笑顔。

けれど――なぜだろう。

その笑顔が、妙に怖い。

 

背中を伝う汗が冷えて、じわりと鳥肌が立つ。

まるで「逃げ道なんて最初からない」と告げられているみたいで――。

 

「もう一度、訊ねますが……」

 

「……」

 

「私の姉さんたち、寝取ってください」

 

「……は、はい」

 

 

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