俺は夢を見ていた。
ただただ暗い空間に一人立っている夢だ。
(……暗くね?)
嫌に冷静だった。
こう言うのはもっと慌てそうなものなんだが……
それはそれとして、止まってるのも何だから適当に歩く事にした。
嫌に現実味があって、もしかしたら自分は死んだのかという考えが頭を過った。
(まあ、転移したとはいえ高所から落下してたからn……ん?なんだあれ)
俺はふと何かの光を見つけた。
近付いてみると、それは人だった。
その人の周りだけ異様に明るかった。
「あのー……」
「光」
「……えっ?」
そこに居たのは、事故で死んだ母さんだった。
まさか本当に死んだのか……俺。
「母さn」
「こっちに来ちゃダメよ」
「えっ?何で……」
「光はまだ死んでないの。こっちに来たら……本当に死んでしまう」
「母さん……」
「光、強く生きてね。それと、お守りは大切にね」
「まっ」
次の瞬間、俺を光が包んで…………
気付いたら俺の目は覚めていた。
どこかのベッドの上らしい……フカフカだ。
「お守りを大切に……か」
俺は懐から石を取り出す。
俺が行方不明の状態から保護された時、持ってた物だ。
こいつを持ってると、不思議と危機回避が出来てる気がした。
まあ、本当に危機回避が出来るならあんな事にはなってないか。
俺は自分の身体を見てみた。
身体には包帯が巻かれている。
「……誰かが手当してくれたのか。にしても、ここどこだ?」
俺は立ち上がって窓の側に行った。
外を見てみたが、一面霧だらけで風景どころじゃなかった。
「マジで何なんだ?ここ」
そんな事を考えていると、ドアが開く音が聞こえた。
おそらく、手当してくれた人だろう。
「あっ、起きていらっしゃったんですね」
「あの……手当してもらって」
「それなら大丈夫ですよ。怪我人を放っておけませんし」
「ありがとうございます」
入ってきたのはメイドさんだった。
それも……物凄く綺麗な人。
心臓がバクバク言ってるのが聞こえた。
一目惚れってこう言うのを言うんだなって思った。
「怪我は治りきってないので……もう少し安静にしてもらっても良いですか?」
「あ、は、はい」
俺が返事をすると、メイドさんは扉を閉めた。
……名前、聞いてなかったな。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「スヤァ……」
「……………」
紅魔館の門前で、二人の人物が立っていた。
片方は門番の紅美鈴。
もう片方は、現在無茶した罰として博麗神社に居候中の十六夜誠斗だ。
誠斗は、定期的には顔を出すか的なノリで1週間ぶりに紅魔館に戻ってきていた。
そして、毎度恒例の美鈴の居眠りを目撃しているだけである。
「……おい」
「zzz……」
「美鈴…」
「グゥ……」
「…………」チャキ
「わわっ!?待ってください
「……」
「居眠りしてたのは謝りますからぁ」
「……ハァ」
二人の関係は、一応同僚。
先輩は当然美鈴である。
立場が逆転しているが……
「せ、誠斗くん。お久しぶりですね」
「いうて1週間だろ?俺が博麗神社に居候し始めて」
「まあ……誠斗くんがいなかった6年に比べれば断然短いですね」
「俺には妖怪の感覚がわかんないよ。6年が短いのか長いのか」
「確かに妖怪から見ると6年は短いですが……家族がいない時期って、それだけ長く感じるんですよ」
そんな和やかな会話をしていると、突如として門の前に人が現れた。
「お兄ちゃん!久しぶり!」
「ワッ、咲夜……1週間しか経ってないぞ」
「私にとっては1か月だもん」
「エエ……」
「アハハ……咲夜さんは本当に誠斗くんが好きですね」
「今更なんだけど美鈴。お兄ちゃんの事、まだくん付けなの?」
「ああ……もう癖ですね」
「まあそれは良いとして、レミリア様いるか?」
「お嬢様はいますよ。妹様もです」
「フランに変わりは?」
「ないですね。平穏そのものです」
そんな感じの世間話が続く中、咲夜が思い出したかのように言った。
「あっ、お兄ちゃん」
「どうかしたか?」
「昨日、霧の湖で怪我人拾ったの?」
「怪我人?里の人間か?」
「ううん……服装からして多分外来人」
「外来人か……」
若干興味が湧いたのか、誠斗は考え事をしながら紅魔館に入って行った。
咲夜はそれを見て、慌てて付いて行った。
美鈴は二人がいなくなってすぐに居眠りに入った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ここだよ」
「俺の部屋かよ……」
「駄目だった?」
「いや……他にもあったろ空き部屋。とやかく言う気ないがなぁ」
誠斗がそんな事を言っている中、咲夜はそこまで重大じゃないと判断してドアを開けた。
「入りますね」
「あ、ああ」
咲夜がそう言って入ると、光は辿々しくも返事を返した。
「メイドさん何か用d……………」
「?」
「だ、誰?」
「それはこっちのセリフだが?」
光は咲夜の後ろにいた誠斗に驚いているようだった。
彼には、誠斗がとても大きく見えていた。
余談だが、誠斗の身長は咲夜と同じ程度である。
「で、名前は?」
「河野…光」
「十六夜誠斗だ」
「そう言えば私も自己紹介してませんでしたね。十六夜咲夜です」
「苗字が同じ……兄妹ですか?」
「それがどうかしたか?」
「いえ……何でも」
「それと敬語は外して構わない。敬う程上等な人間じゃねえし」
「いや……一応助けてもらったから」
「それは咲夜だろうに」
「……じゃあ誠斗で」
光は口調を(タメ口方面に)和らげた。
誠斗はそれを確認すると、光の服を脱がした。
「!?!?」
「大人しくしてろ。傷を見るだけだ」
「は、はい」
誠斗は光に巻かれた包帯を解いていく。
すると、光の背中の切り傷が顕になった。
「浅いな。これなら2日で治るだろ」
「分かるのか?」
「一応、母親が医療関係だったもんで」
「それ、理由になってるか?」
「だから家にクソ程あった本を適当に読み返してたら勝手に覚えた。これで満足か?」
「あ、ああ」
誠斗の言葉に相槌を返した光。
誠斗は、光の事情を聞く事にした。
「んで、何でこんな傷を負ったんだ?」
「それは……」
「言いたくないのか?」
「…………」
「そうかい、言いたくなったら言えよ。安心しろ、訳を聞いた瞬間、掌返して邪険に扱うような小さい奴はここにはいねえよ」
事情を話そうとしない光への、誠斗なりのフォローだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
外の世界・地球連邦軍リビア基地
「10……これが今回の俺のキル数だぜ」
「良くやれたな。大体隊長が殺っちまうのに」
「今回は相手が相手だぜ?」
「そうだったな。相手は解放戦線か」
「本当、ゴキブリかっての。一体何人いるんだよ」
「減らせば減らす程、連中は子どもを使うようになるかな」
「ハァ……これだから脳のない害獣は」
「別に宗教を禁じた訳じゃないのにな」
「下らんプライドだろ」
基地の待機室にて、数人の兵士が談笑していた。
全員黒と紫基調の装甲服。公安兵だ。
彼らが談笑を続けていると、一人の男性が部屋に入ってきた。
「随分と暇そうだな」
「「「「「!?!?」」」」」
「ハーバー、俺が待機しろと言った分隊は?」
「第四、第五分隊です。彼らは第三分隊ですね」
「だそうだぞ。さっさと仕事に戻れ、やる事がないなら装備の手入れくらいしとけ」
「「「「「は、はい!」」」」」
兵士達の上官らしき男性が若干圧をかけながら言うと、兵士達は慌てて持ち場に戻って行った。
「全く、休むなとは言わんがな」
「まだ任務は終わってませんからね」
「ハァ……ハーバー、お前が思う一番退屈な事は?」
「暇ですね。特に、私としては狙撃中が一番充実しているので余計にそう思います。今回みたいにあなたや柊少尉が殆ど片付けてしまう時とか」
「そうか」
「そう言う隊長は?」
「俺か?害虫退治の時だ」
「意外ですね。一番充実してそうなのですが」
「お前は、ゴキブリやらハエやら蚊やらを相手にする毎日が充実してると思ってるのか?」
「すいません失言でした。ですが一つ撤回を求めます」
「なんだ?」
「ゴキブリやハエ、蚊が可哀想です。あれらと一緒にするのは流石に」
「……まあそうか」
そんな会話が続いている中で、待機室に一人の青年が入ってきた。
「隊長、こちらにいらしたんですね」
「柊か、どうした?」
「本部から通信です。隊長宛に」
「わかったすぐに出る。柊はハーバーと報告書を纏めておけ」
「分かりました」
隊長はそう言って、一人通信室に向かって行った。
基地内の通信室にて
『水野大佐、久しぶりだね』
「中将……相変わらずですね」
通信室で隊長……水野蓮介は自分達の上官である公安部中将と通信をしていた。
蓮介もそうだが、二人とも階級に反してかなり若い。
「それで、一体どう言った要件で」
『せっかちだね。君はもう少しアイスブレイクというものを……』
「今の状況が何かわかっておいでで?」
『おっと、そうだったね。単刀直入に言おう。合同作戦だ』
「合同?どことですか」
『それは後でリストを送るよ』
「了解しました。任務内容は?」
『先日のワルシャワの一件は覚えているだろう?』
「ええ、たった一人取り逃した挙句他の二人も逃したと聞いてますが」
『その一人、河野光はどこかに転移した。時空間の歪みがあったからね』
「探知が終わったんですか?」
『最近の科学部門は仕事が早くて助かるよ。それで座標なんだけど……これがまた面倒で』
「面倒?」
『場所は日本。中部地方の山奥だ。一度部隊を派遣したんだけど、同じ道を行ったり来たりで』
「で、その手の連中も使ったけど成果なしと」
『成果はあったさ。該当地点には結界があった。しかもうんと強力で強大な』
「…………」
『未確認領域だ。何がいるのかも分からない。だから過剰と言われようと部隊を用意したんだ』
「指揮官は自分ですか?」
『that's right。君の任務は河野光の生死確認並びに未確認領域の調査だ』
「……」
『河野光については、生きてたら捕縛、抵抗するようなら処分して構わない。それと調査の方なんだけど、なるべき穏便にね。もし向こう側から襲ってきたら交戦を許可する。それでも自衛に留めてね』
「随分と無茶な」
『その無茶を通すのが……公安部だろ?』
中将はそう言って意地悪く笑った。
蓮介も不敵な笑みを返した。
「了解です。水野蓮介、その任務を受領しました」
『OK、君の後釜はもうそっちに向かってるから、君は安心して日本に行って良いからね』
『それじゃ』と言って中将は通信を切った。
残った蓮介は不敵に笑い、部下達の元へ向かった。
出国の通達のために。
設定解説
水野蓮介
地球連邦軍公安部所属の軍人。階級は大佐。
冷酷無慈悲で通っている公安の若手エース。
部下には厳しいものの労いも忘れないため、彼に不満を持つ者はいない。
前作の最後にちょろっと出てきた隊長が蓮介。
柊
蓮介の部下。階級は少尉。
前作でも蓮介と一緒にちょろっと出てた。
ハーバー
蓮介の部下。階級は中尉。
狙撃手で、狙撃の時に充足感を感じている。
中将
公安部の中将。まだ若いらしいが実力は確か。