東方葬想録 第二部   作:KUS

3 / 3
紅魔館散策

「で、お前はこれからどうする」

「どうするって?」

「お前の今後のことだよ」

 

誠斗がふとそんな事を言った。

光の今後……そのまま幻想郷にとどまるか外の世界に戻るかである。

 

「いや今後のことって……どういうことだ?」

 

だが、幻想郷のことを知らない光からすれば質問の意図を理解することは無理だった。

 

「そこからか。まあ……そりゃそうか。

なら、まずここがどこかの説明から必要だな」

 

そして誠斗は光に幻想郷について説明した。

ここが外界とは結界で隔絶された場所だということ。

光のように外からの来た人間を外来人と呼ぶこと。

その他諸々、幻想郷についてある程度説明をした。

 

「理解できたか?」

「な、なんとなく」

 

少々困惑しながらも光は答えた。

いきなり妖怪だのなんだの言われたのだから無理もないが。

 

「OK、じゃあ話を戻すぞ。お前が今後どうするか……

幻想郷(ここ)にそのまま住むか、それか外に帰るか」

「……」

 

光は黙り込んだ。

誠斗はそれを見て訳ありかと判断する。

実際は、両親がいないため外の世界に未練はないが、

脱走を共にした二人の安否を気にしただけである。

だが、誠斗は当然心は読めない。

 

「まぁ、ゆっくり考えろ。時間はあるんだろ?」

「まあ……一応」

「ならいい。まずは安静にして傷を直せ。その間に考えればいい」

 

そう言って誠斗は部屋から出ていった。

咲夜も光に軽く会釈すると部屋を出た。

 

「ゆっくり……か」

 

光は横になりながら考え始めた。

両親はとっくの昔に事故で他界。親戚もいない。

外の世界にこれと言って未練はない。

一番気にしているのはやはり一緒に脱出した二人。

無事に逃げ切れたのだろうか。

 

「……信じるしかないか。」

 

光はそう呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「大丈夫かな。あの人」

「何がだ? 怪我なら……」

「違う違う。なんか、誰かを心配してるような気もしたから」

 

廊下を歩いていると、咲夜が突然そんな事を言い出した。

確かに表情はお世辞にも明るいとは言えなかったが……

 

「暗い表情だけでよくそこまで推察できるな」

「お兄ちゃんが重傷だった時のお嬢様やパチュリー様も似たような表情だったから」

「あぁ、なるほど」

 

妙に納得してしまった。

二人は俺に対して過保護気味だからかね。

 

「お兄ちゃんは今日どうするの?」

「ん? 今日はこっちに泊まる気だったんだが……」

「なら私の部屋に来てよ」

「咲夜の部屋、一人部屋だろ? ベッドもシングルだし」

「頑張れば入る」

 

咲夜が胸を張る。

ドヤ顔のところ悪いが、解決法が力業だぞ。

 

「光さんはどうするの?」

「あいつ次第だろ。俺らに決める権利はない」

「そう……」

「最悪、「紫がどうにかするだろ」って楽観論で行くか」

「お兄ちゃん……」

「なんだ?」

 

咲夜の目が若干ジトッとしてるが……

 

「お兄ちゃんに頼って欲しいとは皆も紫も思ってるだろうけど……

 

 

押し付けは違うんじゃない?」

「? 実際に俺らに何ができるんだ」

「ああもう! いつでも会える管理者が身近にいるじゃん!」

「身近……」

 

俺は身近にいる管理者と聞いて思考を巡らせ……ることもなくすぐに気付いた。

 

「霊夢か」

「そう、霊夢。忘れてたの?」

「忘れてたかもなぁ」

 

俺は頭を搔きながら、心の中で霊夢に少し詫びた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

誠斗と話した次の日。

俺は屋敷の中を歩いていた。

内装は所々赤い……さっき通ったエントランスと思わしき広場も赤かった。

さっき羽の生えたメイドさんに会ったから屋敷の名前を聞いてみたら、

「紅魔館」とそのまんまな名前が帰ってきた。

にしても本当に赤い。

 

俺が何で普通に歩いてるかって?

軽傷らしいから歩くくらい大丈夫って誠斗に言われたからだ。

初めは誠斗が屋敷の案内をかって出てくれたんだが……

美鈴と呼ばれてた中華風の人に「買い物に付き合ってください」と引っ張られてった。

じゃあ咲夜さんに案内してもらおうと頼んだら……「仕事があるから」と謝罪付きで断られた。

仕方ないと一人で探索を始めたわけだが……

 

「もしかしなくても迷ったか?」

 

内装は殆ど変わらない上、この屋敷……かなり広い。

つまり……屋内で遭難である。

 

「メイドさんも見当たらんし……」

 

ここがどこらへんか教えて貰おうにも周りには人っ子一人いない。

ここは一か八か……そこら辺の部屋に入った方がいいのでは?

もしやらかしたら……誠心誠意謝ろう。

 

そう考えながら俺はすぐ近くのドアを開けた。

 

「すいませ~ん。だr!?」

 

俺がドアを開けて見たものは、広大な図書館だった。

複数の階層に、大量の本棚。

そこに隙間なく並べられた本。

中には入り切らなかったのか、本棚の傍に積み上げられているものもある。

まさに圧巻。

その言葉がよく合っていた。

 

「あれ? お客さんですか?」

「!?」

 

俺は咄嗟に飛び退いてしまった。

そこにいたのは赤い髪の少女だった。

だが、頭と背中に羽が生えている。

その羽も鳥のようなものではなくコウモリに近い。

 

「あっ……、驚かせちゃいましたか?」

「えっと……ごめんなさい」

「あ、謝るのはこちらです……いきなり真後ろから声をかけちゃって」

 

お互いに謝罪を口にしながら、俺は臨戦態勢を解いた。

 

「初めまして、ここの司書をしている小悪魔と言います。

あなたは……光さんでしたっけ」

「知ってるんですか?」

「昨日、咲夜さんが話してたので」

 

どうやら咲夜さんは俺のことを共有していたらしい。

そうなると自己紹介は……いやした方がいいか。

 

「初めまして、河野光です」

「よろしくお願いしますね。そう言えば光さんはなぜ大図書館に?」

「紅魔館を散策してたら迷子になったんです」

「ああ……」

 

小悪魔さんは納得したよな声を出した。

その後話してくれたが、どうやらこの屋敷、妖精メイドですら迷子になるらしい。

どんだけ広いんだ……

 

「それで……小悪魔さん」

「コアでいいですよ」

「コアさん。ここの案内をしてもらっても……」

「わかりました。着いてきて下さい」

 

コアさんは快く応じてくれた。

それから、コアさんの案内の下、大図書館を歩いて周った。

コアさんから聞いた限り、ここの蔵書の殆どは魔導書らしい。

魔法があるのか。

 

「そろそろパチュリー様のところに着きますね」

「パチュリー?」

「ここの管理人って言った方がいいですね」

 

偉い人って覚えておこう。

 

しばらくして、パチュリーさんがいる場所に着いた。

そこには紫髪の女性と彼女に何かしてもらってる誠斗だった。

良く見れば女性の方は誠斗に触れていない。

本当に魔法を使ってるのか……

 

「パチュリー様~」

「あらコア。どうかしたの?」

「お客様を連れてきたんですが……取り込み中でした?」

「大丈夫よ、今終わったところだから」

 

そう言って女性……パチュリーさんは誠斗から手を離した。

誠斗もまくっていた袖を戻どしている。

 

「客って……光だったのか」

「どうも……」

「誠斗、彼に何かしたの?」

「何もしてませんが?!」

「誠斗くん……多分冗談だと思いますよ」

 

なんか漫才みたいなやり取りが始まった。

若干蚊帳の外に感じる。

 

「取り敢えず……光、どうしたんだ?」

「ていうか誠斗。いつ戻ったんだ?」

「さっき。そこから図書館に直行してきた」

 

どうやら帰ってきたばかりらしい。

 

……そう言えば

 

「何してたんですか?」

「さっきのこと?内傷を治す魔法の実験」

「魔法って何でもあるなイメージがあるんですが……」

「魔法を使えない人からすれば何でもありに見えるわね。

でもね、出来ないこともあるの」

 

パチュリーさんはそう言って、持っている本を開いた。

 

「……自己紹介したらどうですか?」

「そうだったわね、パチュリー・ノーレッジ。ここの管理人よ」

「河野光です。よろしくお願いします」

 

なんか……素っ気ないような。

 

「今集中してるから……あんま邪魔はしないでやってくれ」

「なるほど了解」

 

誠斗が小声で言って来たので、同じように小声で了承した。

 

その後、軽く雑談をしてコアさんと図書館を出た。

コアさんがこのまま屋敷を案内すると言ってくれたからだ。

 

「そう言えばコアさん」

「? 何ですか?」

「咲夜さんはさん付けなのに誠斗はくん付けなんですね」

「ああ……誠斗くんが子どもだった頃の呼び方が抜けてないだけですね」

 

そこまで特別な理由じゃなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうですか?進捗は」

「まだね。理論はまだ完全じゃないし……」

「出来たら言ってください」

「失敗したらあなたの腕が悪化する可能性があるから嫌なんだけど」

「じゃあ他に誰がいるんですかね」

「あなたの腕は治るんだから、治るもので無理に実験する気はにわよ。

今回だってやる気はなかったのに」

「じゃあ誰で?」

「はぁ……これからはレミィで試すわ」

「了承するんですか?」

「するわよ。貴方のことだもの」

 

大図書館で誠斗とパチュリーが話しているのは、先ほどまでの内傷用回復魔法の話だ。

誠斗の腕……いずれはは脳を治す。

これがパチュリーの目標だ。

 

「先は長そうですね」

「長いわよ。でも、貴方の寿命までには必ず」

「気長に待ちます」

 

そう言って誠斗は立ち上がった。

 

「帰るの?」

「一回霊夢の様子を見に行くんですよ」

「夕ご飯までには帰ってきなさい」

「わかってます」

 

誠斗はそのまま図書館から出ていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

連邦軍の軍用機内で、水野蓮介は端末を見ていた。

そこには中将から送られてきた合同作戦にアサインされた隊長陣のリストが映っていた。

 

「今回のメンバーですか?」

「ん? ああ」

「見せて下さい」

 

蓮介に話しかけたのは、副官のイーディス・ハーバー中尉だった。

イーディスは蓮介の隣に座って端末を覗き込む。

 

「……見知った名前ばかりですね」

「ああ、もっとベテランもいるかと思ったんだが……」

「全員隊長の同期か後輩」

「偏りすぎだと思うんだが……」

「連携性を重視したんでしょうか……」

 

二人の疑問は隊長陣が若手で占められていることだった。

イーディスの言うように連携を重視したのか、組織からの信頼ゆえか、

二人にはわからなかった。

 

「まあ、下手に暴れるやつはいないだろう。そこは信用できる」

「お知り合いがいるからか気が楽そうですね」

「少なくとも全員に目を光らせる必要がないからな」

 

蓮介はそう言った。

幼い時からの親友の名前がリストにあったからだ。

 

「勇介が来るよりマシだな」

「お二人は仲がいいですからね」

「毎回いがみ合っているんだが?」

「喧嘩するほど仲がいいと言いますし」

「……その点、咲斗はいいな。あいつは公私を混同しがちだが、仕事はする」

「話を逸らしましたね」

 

全然会話が繋がっていない蓮介の話題逸らしをよそに、

イーディスは再び端末に視線を落とした。

端末には、作戦に参加する8人の隊長の名前。

 

水野蓮介大佐

南條悟少佐

イリア・ロックハート特務少佐

神威由良大尉

水野玲夜大尉

十六夜咲斗大尉

黒岩葵大尉

椿奏多大尉

 

日本出身者で固められたのは、作戦地点が日本だろうか。

ロックハート少佐がいるのは、取り逃した本人だからだろう。

 

「荒れますね」

 

そう思いながらイーディスは再び立ち上がった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。