続東方葬想録   作:KUS

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動き出し

「霊夢~?」

 

俺は霊夢の様子を見に、ついでに光のことも話そうと思っていたのだが……

 

「いないのか?」

 

返事がない。

呼べば大体出てくるのに……まさかこの時間まで寝てるわけじゃないだろうに。

 

「あれ、誠斗さん?」

「ん?ああ、あうんか」

「どうしたんですか?しばらく紅魔館の方に居るって言ってたのに」

「霊夢に用事があってな」

 

話しかけてきたのは高麗野あうん。

この神社の狛犬……守り神の方が正しいか?

 

「丁度いい、霊夢はどこ行ったんだ?」

「霊夢さんなら紫様に呼ばれて出かけましたよ」

「ああ……なるほど」

 

紫に呼ばれたのか。

そりゃ返事がないわけだ。

 

「何か用事でも?」

「ああ、霊夢の様子とか、新しい外来人の事とか、霊夢の様子とか、霊夢の様子とか……」

「あ、はい……霊夢さんが心配なのは分かりました」

「まあ、居ないならしょうがない」

「伝言を伝えましょうか?」

「いや、いいよ。また明日来る」

「そうですか。いつ頃帰ってくる予定ですか?」

「それなんだが……外来人を紅魔館で保護しててな、だから……」

「しばらくは帰ってこれなさそうですね」

「まあ、明日もう一回来るから」

「はい、ではまた明日」

「じゃあな、あうん」

 

あうんに別れを告げると、俺は紅魔館に戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方の霊夢はと云うと、スキマの中にいた。

 

「どうしてここなのよ。あんたの屋敷でいいじゃない」

「盗聴防止、かしら」

「誰があんたの屋敷から盗み聞くのよ」

「こっちにもこっちの事情があるの」

「はぁ……それで、用件は?」

「共有しておきたい情報があるの」

 

紫はいつもの飄々とした表情から一転して真剣な表情になる。

霊夢もそれを見てただ事じゃないなと感じた。

普段情報を持ってくる時でもこんな表情はしない。

 

「まず、幻想郷に侵入を試みている者がいるわ」

「?!結界を認知したの?」

「そのようね。最初は結界に阻まれてるだけだったのだけれど……

次に来た集団、陰陽師かしらね。強い霊力を感じた」

「……そいつらはなんなの?」

「あなたも遭遇したわよ。一週間ちょっと前にね」

「一週間ちょっと……」

 

霊夢はその言葉を聞いて自分の記憶を辿る。

そして辿り着いたのは、Ghost。

 

「地球連邦……」

「正解」

「でも……何が目的なの」

「連邦は地球の管理者。外の世界だと幻想郷の位置は単なる山にしか見えない……筈なんだけど」

「何らかの理由で察知されたのね」

「その理由が分からないのよ。目的はここの調査なんだろうけど」

 

紫もなぜ発見されたのかが分からなかった。

目的は調査だろうと当たりは付けられる。

 

「……私はどうすればいい?」

「あら?いやに積極的ね」

「当然でしょ?いきなり攻撃されたらかなわないし、それに……」

「それに?」

「向こう側に、Ghostを差し向けたやつがいるかもしれない。もう、あいつが理不尽に傷付くのは見てられないの」

 

霊夢はきっぱりと言い切った。

彼女の中には、また誠斗が命を狙われるのではないかという懸念があった。

 

「あなたも、過保護ね」

「なに?悪い?」

「一応年上よ?彼」

「見えないのよ。大人ぶってるようにしか」

「そう……用件はこれだけ、私は見つかった訳を探ってみるわ」

 

紫はそう言うと、霊夢をスキマから出した。

 

「にしても……お互い心配性ね」

 

先ほどこっそり盗み聞きしていた誠斗とあうんの会話を思い出しながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日の夜

 

「今日は久しぶりに腕を振るわせて頂きました」

「おお、中華」

「美鈴の料理は久しぶりね。普段は咲夜が作ってるし」

 

紅魔館では夕食会が開かれていた。

なんでかって?

誠斗が居るから美鈴が張り切って作り過ぎたのだ。

結果、いつものメンバーで食べ切るには……という量が出てきたので妖精メイドも参加している。

 

「にしても……多いな」

「あはは……作り過ぎちゃいました」

「まあ美味しいからいいんだが」

 

そう言いながら、誠斗は餃子を口に入れた。

 

一方の光はと云うと……

 

「どう?美鈴の料理は?」

「美味しいですね」

「そう、良かった」

 

レミリアに絡まれていた。

なお、コアにずっと案内されていたため、彼女が吸血鬼ということは知っている。

なので特に驚きもない。

本当に羽が生えてる。くらいしか考えていない。

 

「……」

「どうかしました?」

「いえ……なんでもないわ」

「そうですか」

 

その後、レミリアは他の場所に歩いて行った。

 

「なんだったんだろ」

「何がだ?」

「いや……」

「そうかい」

 

次に隣に来たのは誠斗だった。

 

「食ってるか?」

「ああ、誠斗は?」

「もう食った」

「早いな」

 

どうやら食事は終えたらしい。

少しの沈黙の後、誠斗は光に質問を飛ばした。

 

「光。お前、身を守る術はあるか?」

「身を守る術?」

「その辺を歩いてたら、野良の人食いに襲われることもあるからな」

「怖いな幻想郷」

「だから、最低限の護身術くらいでも持ってれば安心なんだが……」

 

誠斗がチラッと光を見る。

光は必要なら面倒見てやると言いたいように見えた。

 

「まぁ……スポーツで武術を少し……」

「何やってたんだ?」

「剣」

「今は使えるのか?」

「ブランクあるかもだし……」

 

やってたのは剣。

ただスポーツという範疇から出ない。

チャンバラとかそっちだ。

 

「……明日だ」

「はい?」

「明日見てやるから、剣はこっちで用意しとく」

「あ、ああ頼む」

 

いきなり過ぎるが、ありがたいことにはありがたいので、そのまま返事をした光だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……」

「どうかしましたか隊長?」

「別に、どうもしない」

 

仮設された軍用拠点にて、南條悟は言い様にもない不安に襲われていた。

この不安は……

 

「Hi、悟くん。元気してた?」

「やはりお前かロックハート」

「うげ、特務隊」

「皆して辛辣だなぁ」

 

悟の前に出てきたのはイリアだ。

同期で付き合いが長いからか、こういうことがよくある。

イリアの後ろからも白一色の兵士たちが出てくる。

 

悟の部下達は「今日は厄日か」と一斉に思った。

特務隊は悪い噂の絶えない部隊だ。

テロリストに与していたとはいえ、民間人を嬉々として殺す異常者が多いとか

シリアルキラー予備軍の溜まり場だとか

 

「どうやらアサインされたようだな」

「アハハ!Just as I said, didn’t I?」

「ここでは日本の言葉で話せ」

「僕の言った通りでしょ?」

「はぁ……」

 

悟のため息には、苦労がにじみ出ていた。

 

「楽しそうだねぇ二人とも」

「神威……」

「Hey there!由良くん」

「イリアはいつにも増して母国語多めだねぇ」

 

話に入ってきたのは神威由良。

この二人とは腐れ縁の同期。

 

「さてとぉ……指揮官は誰?」

「水野だ」

「ああ、蓮介かぁ。あの首席マン」

「別に成績を自慢するタイプじゃないでしょ蓮介くんは」

「知ってる知ってる。馬鹿の妬みだよぉ」

 

部下達そっちのけで、三人の世間話?は続いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「大尉、そろそろ仮設拠点です」

「そう……」

「流石に起きていて下さい。どやされるのは私です」

「ごめんてヴィル……ふぁぁぁ」

「隊長なんですかシャッキっとして下さい。あとヴィルは辞めて下さい」

 

仮設拠点近くの舗装された山道。

そこに一つの車列がいた。

作戦に参加する水野玲夜の部隊だ。

 

「おはよう……」

「おはようございます。早く髪を整えて下さい」

「飛んでる?」

「派手には飛んでませんよ。逆に気になるレベルで微妙な跳ね方をしてます」

「水~」

「ヘアブラシがあるでしょう。ここは基地じゃないですよ」

 

まだ寝起きの隊長を仕方なく世話する副官。

周りの隊員達にとっては見慣れた光景だ。

 

「女性なんですから、もうちょっと気を遣っては?」

「何?差別?」

「一々そんな下らないことに差別なんて言わないでください」

「じゃあセクハラ?」

「Halt die Klappe.Wenn du noch ein Wort sagst, nähe ich dir den Mund zu.」

「ご、ごめんて」

 

副官の男──ヴィルヘルムがドイツ語で喋る。

玲夜は何を言ってるのかさっぱりだが、こういう時は大抵キレているので一先ず謝った。

因みに何を言ったのかというと、

「黙れ。もう一言でも言ったら、口を縫い付けてやる」

である。

 

「本当、中尉は過保護だよなぁ」

「オトンって、ああいう人の事を言うんだろうな」

「俺もあんな親父が欲しかったなぁ」

「しれっと闇を出さないでくれ」

 

隊員達からしたら単なる日常風景だが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

仮設拠点・屋上

そこで蓮介は一人風景を眺めていた。

そこに、一人の青年がやってきた。

 

「よう蓮介。久しぶり」

「咲斗か」

「一人で黄昏てどうした」

「別に」

 

咲斗も蓮介の隣に立つ。

そこから見えたのは綺麗に木々が連なる山だった。

 

「綺麗だな」

「管理された結果だろ」

「それでもだ。人の手が入ったとしても、自然はこうも美しくあれる。人と自然は共生できるって思えるだろ?」

「さて、俺には分からん」

「蓮介さぁ……お前はもうちょっと、こう」

 

咲斗は呆れながらも、その顔は笑っている。

何があっても変わらない親友への安堵だろうか。

 

「吸うか?」

「いらん。お前こそ辞めておけ。母親にどやされるぞ」

「あー……悪い悪い。冗談だ」

「全く……」

「なあ蓮介、ここも燃えたんかな」

 

咲斗が突然そんな事を言い出した。

周辺での山火事の記録はここ最近ないはず……

だが、蓮介にはそれが何を指しているのかが分かった。

 

「燃えてない筈だ。中国軍は日本海で全て沈めたらしいからな」

「あと沖縄とか?」

「そこはミサイルは?と聞くんじゃないのか」

「そう簡単にミサイルを許すほど軟じゃないだろ?日本は」

「なら燃えたのかとか聞くな」

 

蓮介の容赦のないツッコミが咲斗を襲う。

だが、その声色は穏やかなものだ。

 

「なあ蓮介」

「今度はなんだ」

「今回の作戦……賭けてんだよ」

「何をだ」

「2人の消息」

 

一瞬、2人の間に沈黙が訪れた。

2人の消息──咲斗の弟と妹のことだ。

 

「世界中を探しても何処にもいない。諦めかけてたとこに、今回の未確認領域……神様は俺たち家族を見放してなかったんだなって」

「毎年神頼みしたかいがあったか?」

「おう!」

「元気がよろしいことで」

「そう言われてもぉ……」

「褒めてない。それと、玲夜は?」

「そろそろ着くって」

「そうか。俺はブリーフィングの準備をしてくる。お前も準備しろ」

「了解、大佐殿」

「ふざけてるのか?」

「規律を守れって言ってんのはお前だろうがよ!」

 

その言葉に蓮介は口角を上げながら屋上から降りた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて……全員集まったな」

「では、ブリーフィングを始めます」

 

仮設拠点内の会議室。

そこに8名の隊長の姿があった。

今回の作戦に参加する部隊の隊長だ。

司会役としてイーディスもいる。

 

「まず、今回の作戦目標は未確認領域の調査並びに、ここに逃亡したと見られている脱走犯、河野光。彼の確保ないしは殺害です」

「は~い。死んでたらどうすればいい?」

「血でもなんでもいいので、死亡の証拠を持ち帰ってきてください」

 

イリアから飛んできた質問にイーディスは答える。

確保とは言うが、そもそも脱走した人間が投降する可能性は皆無とこの場の全員が考えていた。

つまり何でもいいから死体を持ち帰れである。

 

「未確認領域とされる座標を綺麗にくり抜く形で結界が張られている。まずはそれを突破するのが目標だ」

「突破後は?」

「本命は脱走犯だが、調査もしっかりやれとのことだ。最低限、ルートの構築は行う必要がある」

「なるほど……」

「他に質問は?」

 

蓮介の言葉に誰も手を挙げない。

そんな中で、一人手を挙げた。

この中で最年少の椿奏多だ。

 

「なんだ?」

「えっと……最初はどうやって行くんですか?」

「それに関しては問題ない。科学部門が転移装置をよこしてきた」

「科学の力ってすごいですね」

「他は?」

「はいはい!」

「はいは一回」

 

次に手を挙げたのは黒岩葵だ。

彼女の目はやる気に満ち溢れていた。

だが……

 

「暴れていいですか?」

「ダメだ。害獣の巣で暴れるのが仕事じゃないんだぞ」

「でもその光?って人と協力してるかも……」

「確認が取れるまでダメだ」

 

どうしようもない戦闘狂なのだ。

普段は暴れるのが仕事だが、こういう戦闘以外の仕事には向かない。

特務隊の方が舵取りできる分マシである。

 

「この人は置いておいて、他に質問は?」

「「「「「「……」」」」」」

「ないな。開始は翌朝。最初に先遣隊を送る。一部隊はビーコンの設置。他で調査と捜索だ」

「どの部隊が行くんだ?」

「ロックハート、十六夜、水野(妹)、椿の隊だ。特に椿大尉、ビーコンの設置をやれ」

「えっ!?俺がですか!?」

「どんな危険があるかわからない以上、経験の浅いお前らを前に出せるか。それとビーコン設置も重要任務だぞ?お前らの生命線だ」

「は、はい!」

「以上だ。解散」

 

蓮介がそう言うと、会議室にいた全員が退室した。




ちょこっと解説

十六夜咲斗
地球連邦軍公安部大尉。
公私混同しがちだが、任務はきっちり遂行するタイプ。
大体勘付いているだろうが、あの二人の兄。

水野玲夜
地球連邦軍公安部大尉。
蓮介とは義兄妹。
部隊内での上下関係をあまり意識しないタイプ。

神威由良
地球連邦軍公安部大尉。
自称馬鹿。だが立案能力は一級品。

黒岩葵
地球連邦軍公安部大尉。
戦闘狂であり、戦闘狂過ぎてどうして隊長になれたのか不思議がられる子。

椿奏多
地球連邦軍公安部大尉。
まだ軍学校を卒業して2年も経っていないのに隊長になった。
本人はこのスピード出世を聞いたとき天を仰いだらしい(もっとゆっくり出世したかった)。

ヴィルヘルム
玲夜の副官。階級は中尉。
元々は正規軍で戦車隊指揮官をしていた。当時の階級は大佐。
その後、その手腕を評価されて公安部に引き抜かれ、しばらく公安部戦車隊の指揮。
その後、玲夜の隊に配備された。
階級が下がっているが、これはやらかしたとかではなく指揮系統の混乱を避けるため(隊長より上の階級の部下なんていないので)。
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