続東方葬想録   作:KUS

5 / 6
侵入

翌朝・霧の湖の畔

俺は誠斗と一緒にこの場に来ていた。

それはいいんだけど……

 

「どうして美鈴さんまで?」

「付いてきた」

「いやぁ……徒手空拳も教えて損はないと思いましてぇ」

「だそうだ」

「はあ……」

 

取り敢えず、美鈴さんも誠斗と目的は同じと……

困るどころか寧ろありがたいからいいんだけど。

 

「仕事は大丈夫なんですか?門番って言ってましたけど」

「……」

「美鈴、パチュリーさんに感謝しとけよ。わざわざ召喚魔法使ってくれたんだから」

「はいぃ」

 

何というか……

イメージとは逆だな。

美鈴さんの方が年上らしいし、くん付けもしてるのに……

 

「さて、ほれ」

「お、おい!?」

 

唐突に刀を投げ渡された。

それを慌てキャッチする。

 

「この刀は……」

「俺に剣を教えてくれた人から貰った」

「いいのか?」

「俺に二刀流は合わん」

 

らしい。

そんなこんなで誠斗は刀を抜けと言ってきた。

いきなりかよ……

 

「で、何すればいいんだ」

「振ってみろ。竹刀と真剣は違うからな。まずは慣れだ」

 

言われたので素振りをしてみる。

おお……これが真剣の重さか……

 

「……振り回されるよりはマシか」

「まあ、スポーツとはいえやっていたらしいですし」

「何やってたんだっけか」

「スポーツチャンバラ」

「なら、慣れればある程度は実戦投で使えるか」

「じゃあ、しばらく素振りか?」

「素振りだ」

 

そんな感じでひたすら素振りをする時間が続いた。

誠斗に回数指定され始めてからが地獄だったが……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は今、人里に来ていた。

理由?買い出し。

誠斗から「俺がいない間もまともなもん食っとけよ」とお金を渡されながら言われたので、こうやって買い出しに来ている。

 

「おっ、レイムッチじゃん」

「菫子?何やってんのよこんな所で」

「何って、お団子食べに来ただけだよ」

「そう……」

 

出くわしたのは宇佐見菫子。

外の世界で暮らす人間。

昔色々やらかしたが……もうすっかり幻想郷に馴染んでいた。

因みにここにいる菫子は本人ではなく遊離したドッペルゲンガーだ。

一応……記憶は繋がっているらしいのだが……

 

「ちょうどいいや。神社に遊びに行っていい?」

「なんでよ」

「暇だから」

「はぁ……好きにすれば」

「よっしゃ」

 

菫子は小さくガッツポーズをしていた。

そんなに嬉しいのか。

 

「じゃあ私も混ぜさせてもらうぜ」

「よっ、マリサッチ」

「よっす、菫子」

 

今度は魔理沙が来た。

ていうかこいつも来るの?

 

「霊夢、お茶あるよな?」

「今さっき買ったばかりよ。はぁ……」

「よーし、行くか菫子」

「おー」

「はぁ……」

 

嫌ではないが……面倒。

そんな言葉が、今の私にはピッタリだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ブォン

 

『転移成功……これよりビーコン設置作業に移ります』

『こちら十六夜隊。同じく成功。これより任務に移る』

『水野隊も同じ、イリア、変に暴れないでよ?』

「あはは、暴れませんよ」

 

転移陣と共に現れたのは、イリア率いる白の集団。

特務隊だ。

他の隊も転移に成功したらしく、各々任務に移っていた。

 

「さてと……僕たちも始めましょうか」

「「「「「「Yes, sir.」」」」」」

「うんうん、良い返事」

 

そしてイリアたちも、行動を開始した。

 

「!?」

「霊夢?どうした?」

「結界が僅かに歪んだ……侵入者よ」

「はっ!?」

「えっ……それって」

「一先ず神社に急ぐわよ」

 

神社に向かっていた霊夢は、その異変に気付いていた。

そして、博麗神社に猛スピードで向かう。

 

一方、スキマ空間

 

「!?」

「紫、どうやら」

「ええ、侵入者よ」

「外の連中め」

 

同じ賢者である摩多羅隠岐奈と会っていた紫も、それに気付いた。

当然、隠岐奈良もだ。

 

「で、どうする」

「待って……この気配は……」

「……おかしい、あいつは死んだ筈だ」

「生きてる筈がない……あれほどの暴走で……」

 

2人の中には、その人物が生きていることへの喜びと、焦りが同居していた。

可愛がってはいたが、大罪を犯してしまい、幻想郷の敵となってしまった彼女。

 

「どうしているの?霊夜……」

 

その名を呟いて。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「お疲れ、少し休もう」

「zzz」

 

疲労で息切れをしている光に誠斗は水を渡す。

美鈴はいつの間にか寝ていた。

 

「休憩終わったら、実践練習だ」

「へーい」

「あと美鈴、起きろ」

 

誠斗が美鈴を叩き起こす。

もう先輩の威厳なぞ皆無である。

 

「形は出来てるから、教える側は楽でいいな」

「教わる側は楽じゃないんですが?」

「それが修行ってやつじゃないのか?」

「まあ……そうかも」

 

光は特に言い返せずに終わった。

実際修行が楽だったら意味ないなと思ったのだ。

 

「さて、そろそろ再開するか」

「もうちょい休ませて?」

「却下」

 

休憩の延長という光の要求は秒で却下された。

なお、誠斗は自分がやった修行をそのまま光にやらせてるだけである。

それを見ていた美鈴は「無月さんに似てきましたね」と温かい目で見ていた。

 

ガサッ

 

「?」

「どうかしたか?」

「いや、今何か音が……」

 

光の言葉を聞いて誠斗は彼が見ているほうへ顔を向ける。

叩き起こされた美鈴も釣られてそちらを向いた。

 

「動物か……それとも誠斗が言ってた野良妖怪かな?」

「いや……人だ」

「え?」

「それも複数人いますね」

 

誠斗と美鈴が警戒を上げた……次の瞬間

 

ガキッ

 

「!?」

「美鈴さん!?」

 

美鈴が光の前に出て攻撃を防御した。

防御された相手は即座に飛び退いて木の上に立つ。

 

「How stiff... It’s not human.(なんて硬さ……人間じゃないみたい。)」

「なんて?」

(白い制服……まさか?!)

 

英語で喋っている為、何を言っているのかが上手く理解出来ていない美鈴。

一方で誠斗は、白い制服で相手の正体に辿り着いていた。

 

「I haven't seen you for yonks.(本当に久しぶりだね)光くん?」

「!?」

「いやぁ……運がいいね!こんな簡単に再会できるなんて」

 

突然、光の真後ろから声が聞こえた。

先ほどの女とは違う声。

光はその声に聞き覚えがあった。

脱走した日に、自分を崖際まで追い詰めた、あの声……

 

「じゃあさ、今度こそ斬らせてよ」

「お前……は」

 

イリア・ロックハートだった。

 

次の瞬間、光に刃が振られたが……

 

ガキン!

 

「おっと」

「……」

 

その刃を、誠斗が受け止めていた。

 

「邪魔しないでよ。部外者さん?」

「悪いが、部外者じゃないんだよ、虐殺部隊」

「あれ?僕らのこと知ってるんだ」

「地球連邦軍公安部特務隊。通称虐殺部隊。それとも、動くギロチンの方がいいか?」

「どっちでもいいよ」

 

森の中から白い強化外骨格の兵士達が出てくる。

誠斗は冷や汗を流した。

一人でも厄介なのに部隊単位で動いているのだ。

 

「……」

「なんだ?」

「いやぁ……ねえ君たち。そこの光くん。渡してくれない」

「断る」

「早いよ答えが」

 

誠斗の即答にイリアが苦笑する。

美鈴も渡す気は毛頭ないが。

 

「いいの?僕たちが命を狙ってる。特務隊を知ってるならこの意味がわかるでしょ?」

「最初に交渉だったら……考えてやったかもだが、初手で攻撃してきたやつに考えてやる義理はないしなぁ」

「あはは、ご尤も」

 

光は誠斗とイリアの会話をただ聞いていた。

自分に出来ることはなかったから。

だが、不意に誠斗の手が目に移った。

指文字だ。

"逃げろ。紅魔館へ"

その意味を理解した瞬間、光は走り出した。

 

「⁉ Stop!」

「行かせません!」

 

美鈴が光に銃を向けた兵士を殴り飛ばす。

それに対して一人の女性兵が反応した。

 

「くっ」

「残念ですが、私がお相手してあげます」

 

その兵士は空を滑空しながら美鈴を攻撃し始めた。

 

「シャーリーが始めちゃったかぁ」

「What should I do?」

「そうだなぁ、マイアは他の皆を連れて追って」

「Yes, sir.」

 

マイアと呼ばれた女性兵は、他の兵士を連れて光の追跡を開始した。

 

「さてと……僕の相手は君かな」

「そうなるな」

 

誠斗は刀を構える。

永琳から激しく動かすなと言われているが……そんなこと言ってられる状況ではない。

 

「じゃっ」

(くる)

「始めようか」

 

イリアの剣と誠斗の剣がぶつかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここは……神社か?」

「転移して歩いたら神社だった件」

「そんなラノベみたいな」

 

一方こちらは水野隊。

転移して辺りを探索していたら、博麗神社に辿り着いた模様。

 

「朽ちてはない。それに生活感がありますね」

「でも人の気配はない」

「ですね中尉。隊長……隊長?」

 

ヴィルヘルムが玲夜に話しかけるが、反応がなかった。

当の玲夜は神社の拝殿の柱に触れていた。

 

「……」

「隊長、無視は辞めて下さい」

「ん?ああ、ごめんごめん」

「何か琴線に触れましたか?」

「ちょっとね」

 

玲夜はいつものように微笑みながら答えた。

一方、ヴィルヘルムには、目に僅かな哀愁を感じた。

 

「取り敢えず、ここに人はいないようなので」

「うん」

「別の場所……一面森だな」

「どうやって参拝してるんでしょうね」

 

隊員達はそんな世間話をしながらも、どうにか道を探そうと見回す。

だが、階段の先には道すらない。

いや、木で見えないのか。

 

そこへ……

 

「あなた方、そこで何やってるんですか!」

 

玲夜達に話しかける人物?がいた。

あうんだ。

 

「女の子?」

「いや、よく見ろ。角生えてるぞ」

「シーサー?」

「おいおい、いくら擬人化が得意なジャパニーズとて……マジでシーサー?」

「シーサーじゃありません!狛犬です!」

 

シーサーと勘違いする隊員達にあうんから抗議の声が飛ぶ。

そこに、玲夜があうんに寄った。

 

「ごめんね。私たち迷っちゃったの。良ければ、人里がどの方角にあるか教えて欲しいな」

「ああ、外来人の方でしたか、それなら、霊夢さんに頼めば外の世界に戻れますよ」

 

あうんは単に迷い込んだ外来人だと理解し、霊夢に頼めば帰れると教えた。

 

「そうなの、その霊夢って子は……」

「ここよ」

 

玲夜があうんに霊夢がいつ頃戻るか聞こうとしたところ、上空から声が聞こえた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は警戒しながら神社に降り立った。

 

「あっ、霊夢さん」

「あうん、こっちに来て」

 

私はあうんを呼び寄せて、後ろに隠すように前に立った。

 

相手の女を観察する。

長い髪。

色はまるで抜け落ちたかのように白い。

心なしか、顔も若干青白い。

知らなければ病人にしか見えない。

 

「霊夢、大丈夫……」

「うげ、なーんで軍隊がいるのよ」

 

一緒だった魔理沙と菫子も降りてきた。

菫子は声色から面倒くさいという気持ちが丸わかりだ。

 

「……」

「……あなたが霊夢?」

「そうだけど?」

「そう……丁度良かった。私たち、人を探してるの」

「だから?」

「手伝ってほしいなぁって」

「却下」

 

私の言葉に魔理沙と菫子とあうんが驚愕の顔になっていた。

菫子なんてやめとけやめとけと顔で訴えて来ている。

 

「……なんで?」

「単純、あんたらにそんな義理なんてないだけ。それに……」

「?」

「侵入者の言う事に、誰が耳を貸すと思ってるの?」

 

「その言葉と同時に、私はお祓い棒を相手に向けた。

それを見た後ろの連中も銃を構えだした。

 

「ちょっ!?レイムッチ?!」

「ははーん?つまり敵だな?」

「マリサッチ?!」

 

菫子からは完全に辞めろ念が出てるが、魔理沙も私もやる気だ。

 

「こっちの要求は一つだけ、さっさと帰りなさい」

「……はぁ。仕方ない」

 

そう女が言った次の瞬間、あいつの姿が消え……腹部に強烈な衝撃を受けた。

 

「ガハッ!?」

 

痛みを我慢しながら顔を上げると、拳を構えた女が立っていた。

見えなかった……

 

「霊夢!?」

「ああもう!」

 

魔理沙と菫子が攻撃を仕掛けようとした……

だけど、兵士たちの銃撃を回避するのに精一杯だ。

援護は望めない。

 

「一騎討ちってわけね」

「そういうこと。悪いけど、容赦する気はないから」

「上等よ」

 

私は強気に笑った。

けど……さっきのダメージが思ったより深い……

 

「何か考え事?」

「しまっ」

 

攻撃を寸前で回避し、私は飛び上がる。

だが、相手も飛んできた。

 

そのまま、空中戦になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

幻想郷、結界面付近

 

「よおし、突破ぁ!」

「あまりはしゃぐな」

「おいおい、漸く戻ってこれたんだぞ?もうちょいテンション上げろよ」

「お前の暑苦しさには付いて行けん」

 

2人の人物は、どうやら結界を超えてきたらしい。

 

「皆元気かねぇ」

「元気だろ」

「パチュリー様が心配」

「それには同意する」

「そもそも……あたしらって生きてる事になってるのか?」

「あの潰れ方は死んだ扱いでもおかしくはない。寸前で転移に成功したからいいものを」

「まっ、気軽に行こうぜ」

「泣いて抱き着かれるのが目に見える」

「美鈴とかそういうタイプだよなぁ」

 

そう談笑しながら、二人は森の中を歩いて行った。




ちょこっと解説

シャーリー・アンジェリーナ
イリアの副官。階級は中尉。
割と狂人だったり常識がぶっ壊れていたりする特務隊の中では良識的な方。
そんな彼女も色々ぶっ飛んでいるが。
生まれつき羽が生えており、それで空を飛んでいる。
異能ではない。

マイア・アンジェリーナ
イリアの部下。階級は少尉。
シャーリーの妹。姉に比べて短気で血が上りやすい。
なので、暴走癖がある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。