「隊長、そろそろ設置が完了します」
「よし、整備班以外は周囲の警戒に当たれ」
森の中において、奏多率いる部隊は転移ビーコンの設置を行っていた。
これはこの地と仮設拠点の行き来を容易にする為の物だ。
「そろそろ俺らの役割は終わりですかね」
「まだだ。作戦終了までこいつを守る任務がある」
「あっ、そうでした」
「はぁ……」
「苦労させられてるな奏多」
「お前もその一人だからな?」
奏多の部隊は全員同期だ。
訓練生時代、実践演習中にテロリストの襲撃に遭い、引率の教官が戦死。
その場で指揮の成績が一番良かった奏多が臨時で隊長をし、
教官以外の戦死者ゼロでその場を乗り切るどころか、
襲撃してきたテロリストを罠を使って壊滅させた。
その結果、卒業後も連携重視で当時のメンバーが同じ部隊に配備された訳だ。
いきなり部隊長になって大尉になった奏多からすればたまったもんじゃなかったが。
一方……
「ここら辺か?」
「多分そうだと思いますけど……」
奏多達の方へ2人の人影が向かっていた。
妹紅と鈴仙だ。
2人は偶々一緒に森の中を散歩していたら、奥の方に人影を見たのだ。
迷った人里の人間か、それとも外来人か。
どっちにしろ夜になる前に保護する目的で探していたのだ。
そして……
「あっ」
「えっ」
両者は出くわした。
妹紅達から見ると全身を覆ったスーツを着ている兵士達が物々しい様子で辺りを警戒している。
単なる外来人には見えなかった。
奏多からすると人一人とうさ耳がある人間?が一人。
お互い硬直して動かない。
「あのー……あなた方は?」
「それはこちらのセリフだ。こんな所で何やってるんだ?」
「……」
奏多は黙り込む。
ビーコンの存在は普通に機密情報だからだ。
現地人に話すわけにもいかない。
「話す気はないんだな」
「こっちにも守秘義務ってのがあってだな」
「なら吐かせる」
「はい!?」
「妹紅さん!?」
流れで軽く尋問宣言をする妹紅。
それに奏多はおろか鈴仙も驚きの声を上げてしまった。
「さて、何してたか言ってもらうぞ」
「お前ら!隊長を守れ!」
それを見ていた兵士の一人が発砲を周囲に叫ぶ。
一斉に銃弾が妹紅に向かって発砲された。
鈴仙と奏多が咄嗟に身を隠す中で、妹紅は堂々と立っていた。
「う、噓だろ?」
確かに銃弾は当たった。
あの数なら普通は死ぬ。
だが妹紅の銃創は瞬く間に塞がった。
「っ……!?お前らはうさ耳を相手しろ!こいつは俺がやる!」
「わ、わかった!!」
奏多は咄嗟の判断で目の前の化け物を相手することを決めた。
この中で一番強いのは自分。
うさ耳は銃撃の際に隠れていたので部下達でも相手できると判断したのもある。
「こっちだ不死身女!」
突然妹紅の側で爆発が起きる。
少しよろめくが、傷は直ぐに再生する。
奏多はそのまま妹紅から離れるように走り出していた。
妹紅もそれを追いかける。
兵士達も鈴仙と交戦を始めた。
奏多の走り出した方向はビーコンの設置場所と真逆の方向だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んー、どこを見回しても森、森。一応、近くにバカ高い山はありました。というかこの森自体が山の一部っすね」
「山、下りたほうがいいんじゃない」
「社っぽいのが見えたんで神社かなにかはありますよ」
「どうする隊長」
「どうするかなー」
一方こちらは咲斗の部隊。
転移した先は森。
場所の確認の為に部下の鎌田悠里が能力で見回した所、ここが山だというのが分かっていた。
問題は登るか下るかだ。
「「登り(下り)ましょう」」
「「はっ?」」
悠里と先ほどから喋っている女性兵士──スヨンが全く真逆の案を出した。
そしてガンを飛ばし合う。
もはやお約束であり、周りの一般兵達からしたら見慣れた光景だ。
この二人、水と油レベルで意見が合わない。
どっちかがわざと逆のことを言っている……という訳でもなく、
先ほどのように同時に言って真反対の意見であるのだ。
そこを咲斗が最終決定するのである。
「降りるか」
「フッ」
「なんだその表情」
「別に」
なお、咲斗が決めた後で選ばれなかった方を鼻で笑うまでがお約束である。
「ほらほら喧嘩するな」
「ほら、隊長もそう言ってるじゃない」
「あ?お前だって普段から同じこと言われてるじゃねえか」
「ほらやめなさい」
それを見ていた部隊員達は……
「隊長って……」
「何というか、二人のあやし方がお兄ちゃんのそれなんだよな」
「というかあの人実際に長男だぞ」
「マジで?」
「ちょうど二人と同じくらいの弟ともう少し下の妹がいたらしい」
「なんで過去形?」
「お前、知らないのか?」
「俺新入りだし」
「行方不明なんだよ」
隊員達の会話は咲斗の耳には入っていなかった。
二人をあやすので精一杯だったからだ。
「……!?」
「隊長?」
「全員伏せろ!」
咲斗の突然の叫びに困惑しながらも、そこは訓練を受けた軍人。
全員がその場に伏せた。
そして、すぐ頭上を多数の弾幕が通り過ぎた。
「ほう……よく反応したな、人間風情が」
咲斗らの周りに現れたのは狼のような尻尾と耳を持った兵士と、烏帽子を被った山伏のような集団。
烏天狗と白狼天狗である。
「行き成り攻撃か……そこは警告からじゃないのか?」
「ふん、侵入者に、しかも人間にそこまで優しくしてやる義理はない」
「そいつは悪かったな」
咲斗は会話をしながら辺りを見回す。
数は自部隊の数倍。
連れてきているのはざっと15名程度だ。
つまり相手は数十人規模。
余裕がある様子の咲斗を見て、咲斗の前に立っている烏天狗は気に入らなさそうに鼻を鳴らした。
「随分と余裕そうだな?」
「まあ、そうだな」
次の瞬間、烏天狗は風を感じた。
目の前には、咲斗の姿はなかった。
「!? どこに?!」
「後ろだ。それと……」
烏天狗は咄嗟に振り向く。
そこには刀を抜いてく立つ咲斗がいた。
「貴様!」
「お前はもう、死んでるから」
「は?」
その言葉に烏天狗は動きを止めた。
自分はまだ生きている。
何を言っているんだと。
だがそこで、
武器を構えていた自分の腕が血塗れになっているのに気付いた。
血が出ているのは、頸部……
それに気付いた瞬間、彼女の視界は暗転した。
「これに反応出来ない時点で、なぁ」
「お前!」
隊長が死亡したのを見て、周囲の天狗たちが一斉に動き出す。
「준비!(構え!)」
だが、スヨンの号令と共に咲斗の部下達も一斉に動き出す。
天狗達と連邦軍が本格的に交戦を始めた中で、自身に向かってくる天狗達を見ながら咲斗は呟いた。
「お前らに付き合ってる時間はないんだよ。家族を探したいんでね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「くっ」
「……」
私は目の前の女に苦戦を強いられていた。
四肢に霊力を纏わせているらしく、一撃が重い。
流石に飛行に関しては私の方が上手だから、優位には立ててる。
でも火力は向こうが上。
「霊符「夢想封印」!」
「……」
相手にスペルを放つ。
着弾はした。
だけど……
「そのすまし顔、腹立つわね」
さっきっから避けようともしない。
防御はしてるけど全部その身で受けてる。
ダメージは通ってる筈……
「あんた、避ける気ないの?」
「? 避ける必要がないだけよ」
「へぇ……」
絶妙にイラつく物言いだ。
だけど、効かないから避けないというニュアンスには聞こえなかった。
「いい加減に、諦めたら?」
「なんで?私は劣勢でもないのに」
「じゃあ、その体はいつまで持つのかしら?」
そう言った瞬間、私は相手に封魔針を投げた。
針は女の頬を掠る。
血がツーっと流れるのが見えた。
でも……
「!?」
「……」
その血が止まった瞬間、傷口も塞がった。
再生持ちって……
「あんた、なんかの能力者?」
「あーあ……また治った。塞がらなくていいのに」
女は頬に触れながらそう呟いた。
「あんた、不老不死なの?」
「どうしてそう思ったの?」
「傷が一瞬で治ったのとさっきの発言」
「……まあ、似たような物かな……そうだよ。私は死ねない。ああ、でも数百年とか生きてるわけじゃないよ?」
「じゃあ、なんで」
「はは……私みたいな
「えっ……」
私が言葉に詰まった瞬間、相手は再び拳を振るってきた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……」
「ねえねえ、受けてばっかじゃつまんないよ?」
「こっちにだって事情はあんだよ」
俺は目の前の男に、少々苦戦していた。
相手は特務隊、しかも制服組だ。
苦戦は予想していた。
両腕使えば何とかなるくらいの甘い予想だが……
だが……こいつ小柄な癖に大剣を二本平気で振り回してくる。
しかもその体躯からは予想出来ないくらい重い。
「さっきから、片手で刀使ってるけど、振り回されてるよ?Why?」
「だから、こっちにも事情はあるんだ」
マジで怒られる覚悟をした方がいいな。
時間稼ぎ目的だから片腕で耐えてたが、そんなことしてたら俺が死ぬ。
「考え事かな?」
「はっや?!」
さっきまでより上のスピードで剣が振るわれる。
刀で受け止めることは出来たが……
衝撃で吹っ飛ばされた。
「ぐっ……」
「終わりかな?まあ、本気の君なら斬りがいはあったんだろうなって思うよ?」
「はは……斬れるもんなら斬ってみろよシリアルキラー」
強気に返してみるが……さっきの一撃で左腕がうんともすんとも言わない。
ヤバい……永琳にどやされる。
いやそんなことより目の前の状況を切り抜けないと……
「おっ、まだ立つんだ」
「死ぬ気はねえからな」
「根性はすごいね。でもね、僕にも仕事があるから……もう終わりかな」
次の瞬間、さらに上のスピードで迫ってきた。
やっべ……
「Goodbye♪」
片手でなんとか刀を上げるが……防げるか?
迫りくる相手を見て、俺は目を瞑ってしまった。
ガキン
金属同士がぶつかる音が聞こえた。
だが……俺に衝撃は来ていない。
「誰、君?」
「名乗るつもりはない」
聴き馴染みのある声だった。
それは、あの時いなくなった……
「無月……さん?」
「目を瞑るとは、まだ未熟だな」
俺に剣を教えてくれた人が……攻撃を受け止めていた。
無月さんが剣を弾くと、相手は一気に後ろへ退いた。
「大丈夫か?」
「ええ、まあ」
「目を瞑るなと、何度も言った筈だが?」
「すいません。それより何で?」
「生きてるかか?瓦礫に押し潰されそうになった際、転移術を使った。まあ咄嗟の物だから外に飛ばされたが」
「そう……ですか」
「幻想郷の位置を探すのに苦労した」
「はぁ……」
「ファングは美鈴の方へ行った。俺たちでこいつをやるぞ」
「あの……」
「なんだ?」
俺は恐る恐る、その言葉を口にした。
「医者から左腕を動かすなって言われてたんですが……使った結果動きません」
「馬鹿かお前は」
シンプルな罵倒が返ってきた。
正論なんだが……俺の体にグサリとその言葉は刺さった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「オラオラオラァ!」
「わぁ……」
なんなのこいつ。
それが私、シャーリー・アンジェリーナの今の心境だ。
中華風の女と交戦中、唐突に割り込んできた女。
SMGを2丁構えて、こっちに向かって撃ってきた。
飛んでいた私は余裕でそれを躱して、魔法をお見舞いしてあげた。
そしたらなんということでしょう。
SMGで全部撃ち落としたじゃありませんか。
もう一度言う。
なんなのこいつ。
ほら、中華の方も口が開きっぱなしじゃない。
乙女がしていい顔じゃない。
「おい美鈴!私が牽制するからその内に一撃叩き込め!」
「はっ、わかりました」
SMG女の声に中華も我に返った。
でも……敵の前で堂々言うことなの?
「さっさと降りてこい有翼人。それとも?降りるのが怖いのか?」
「そんな見え透いた挑発に乗るとでも?それに、なぜ私が有翼人だと?」
「おいおい、人間に異能持ちはいても動物的特徴持ちはいねえんだよ。ならお前は亜人だろ?」
「……」
「魔女狩りに巻き込まれて滅んだと思ってたんだが……生き残りがいたか」
「悪いけど、私はハーピィと人間の混血なの。生き残りじゃないわ」
「あれま、お仲間だと思ったんだがな……」
「なに?」
お仲間?
こいつ一体……
「なんなの?」
「あれ、まあこれじゃわからんか。ほれ」
そう言うと、女は腕を変化させた。
毛深い……逆立った薄青色の毛。
「わかったか?」
「ええ……人狼の生き残りとは」
「話は終わりだ。行くぞ」
人狼は途轍もない跳躍力で私の目の前に来て……
私を叩き落とした。
「チッ」
「ははは、てめえ名前は?」
「あら、あなたから名乗っては?」
「そうだな……私はファング・ヴェアヴォルフ。紅い悪魔、レミリア・スカーレットの従者だ。で、てめえは?」
「シャーリー・アンジェリーナ。地球連邦軍公安部特務隊、ロックハート隊副隊長」
「はは……じゃあやろうか?」
そう言って突っ込んできた人狼の女を魔法で迎撃し始めた。
「あの、私のこと忘れてませんか?」
ちょこっと解説
鎌田悠里
咲斗の部下で階級は少尉。21歳。
実は奏多とは同期で腐れ縁。
異能は自分の魂を身体と分離して動く事ができる、「
これで安全地帯からの偵察を行う。
ソン・スヨン
咲斗の部下。階級は少尉。23歳。
悠里とは水と油の仲。
しょっちゅう意見対立をしている。
無愛想で笑うことが殆どない。
出身国は朝鮮統一人民共和国。
夜中無月
第一部で名前だけ出てた紅魔四天王の一人。二つ名は鎌鼬。
日本出身の妖怪だが、貿易船に紛れて琉球経由で中国→ヨーロッパと一人旅をしていた。
ある日レミリアの父と出会い、生まれたばかりのレミリアの護衛となった。
紅魔館に来た頃の誠斗に剣術を教えていた。
ファング・ヴェアヴォルフ
無月同様第一部で名前だけ出てた紅魔四天王の一人。二つ名は狂狼。
魔女狩りによって虐殺された亜人の生き残りの一人。種族は人狼。
一人寂しく逃亡生活を送っていた中で、レミリアに拾われた。
当時はメイドをやっており、それなりに家事が出来る。
2丁のSMGを使っている。実はトリガーハッピー。