ゆうしゃ様とまおう様~勇者と魔王の再国譚~「えっ?社畜の俺が魔王の国を復興させる!?無理無理っ!」 作:「団栗珈琲。」
「なんだかさ。私って君のことを「君」って呼ぶじゃん」
うん。で?
「なんか、呼びにくいというか」
そうか?
……そうか?そんなことないと思うが。
「親しみがないというか」
「だから?」
あまりに本題に入るのに時間がかかっているので俺から訊くことにした。
「あなたに名前を授けたいと思います」
「は?」
意味が分からなくて思いのほか素で聞き返してしまった。
もう、本当に意味が分からない。
君の言っていること、わけわかんないよ……。
「ていうか、俺名前もう貰ってるんだが?」
そう、俺には「中山 翔琉」という親から授けられた立派な名前があるのだ。
わざわざ、ルナに名前を授けられるいわれはない。
「そうはいっても、君たち日本人の名前はこの世界では、奇特で異色で独特だから」
まあ、どうでもいいんだけど「奇特」も「異色」も「独特」も意味ほとんど同じなんだよ?……。
そんなにいくつも並べる必要あった?
「一応君には外交官的な仕事もやってもらいたいと思っているから……。」
ルナみたいな名前が普通だったら、俺みたいな名前は違和感しかないだろうが、それが多様性ってもんじゃないのか?
世界が違うから許されないのか?
名前ぐらい自由にさせてくれよ。
「で、君。名前なんて言うの?」
文脈を意識しようよ。文脈を。
全く前後の会話と関係なかっただろ。
いや、一応名前の話はしていたから全くって訳じゃないけどさぁ……。
でも、文脈がおかしいのは確かだ。
だが、なんだ?と聞かれたら。
教えてあげるが世の情け。
「中山翔琉《なかやまかける》だけど……」
盛大前ぶりとは裏腹に、しょぼしょぼした声が出る。
「翔琉……。かける……。×……。あっ!「クロス」とかどう?それで、姓は私のからとって……。「クロス=シャーロット」これでいいじゃん!」
あ~もうついていけない
「もういいよ。それで」
俺が投げやりにそういうとルナは顔を輝かさせる。
もちろん、実際に光っているわけではない。
「よしじゃあ。決まりだね」
まあ、いいか。
「ねえ~クロス~」
クロス?誰?そいつ。
ああ。俺か。
全っ然、慣れないな。
やっぱり急に呼ばれる名前が変わると、誰その男?ってなってしまう。
「なんだ?」
「ん~?なにもな~い。呼んでみたかっただけ。」
こいつ!。
でもまさか俺の人生で名前が変わるとは思っていませんでした。
親の中も良好だったし。
ていうか「クロス=シャーロット」なんて全然日本人名じゃないしな。
苗字変わるどころの騒ぎじゃない。
こうして俺の新しい名前が決定しました。
英語だとニューネームと言います。
✕ ✕ ✕ ✕
「そういえばクロスってこの国周辺のこと何も知らないでしょ」
クロス?誰?
ああ、俺のことか。
名前変わるの本当に慣れないな。
ていうか、なにも知らないだろって、逆に知っていたら怖いんだが?
俺、ここがどこかも知らないし。
「ここはサルジニルグ。大災害によって滅んだ国」
大災害ってなんだ?
そんな俺の疑問に答えるようにか、ルナは言葉を継ぐむ。
「まあ、大災害については、私にとっても、あまり気持ちのいいものではないからね。決心がついたら私のほうから話すよ」
そうか。
「よし、切り替えて行こ―。サルジニルグの北西に位置する「シュバルカラ」はサルジニルグで起きた大災害の影響を受けて、シュバルカラの南西は壊滅的な被害を受け、その跡地は今も出入り禁止となっているんだ」
周辺国もサルジニルグの大災害の影響を被っているんだな。
「そして、サルジニルグの南に位置する「パミーフクス」ここは年がら年中観光客で賑わっていて、その中でもパミーフクスの都市部にある「パミフクランド」はいつも人が絶えないね」
東京って書いてあるのに千葉にあるどっかのテーマパークみたいな名前だな。
いや、一文字も被っていないんだが、ランドがつくだけでどうしてもその某テーマパークを思い浮かべてしまう。
「というか、なんでお前がそんなこと知っているんだよ」
そう、まるで行ったことがあるような口振りだ。
「それは、サルジニルグ復興の経費を使って遊びに行ったからだよ」
ルナはそういい「ははは」と乾いた笑いを漏らし、作り笑いを浮かべる。
あまりにも不自然な作り笑いだ。
まるで何かを覆っているような。
何かを隠しているような。
経費の使い込みって何やってんだよお前。という言葉が喉まで出かかったが口には出さかった。
いや、出さなかったというよりは出せなかったというほうが表現として、正しいのかもしれない。
「……。」
何か気の利いたことでも言おうとしたが、思いつかず沈黙を生んでしまった。
「それで、南西に位置するのが「チェリス」この国は行ったことないからわかんないなあ……」
え?なにチュロス?
ちなみに俺が好きなチュロスはミスドのチュロスです。
「最後に東に位置するのが「アントイエナ」この国は巨大国家で新米国家だから魔王のことを屁とも思っていないから、唯一サルジニルグと貿易をしてくれる国だよ」
まあ、とりあえず周辺国は頭に入った。
で、重要なのは使えるお金がどのくらいあるかなんだが。
「国家予算ってどの程度あるんだ?」
俺がそう聞くとルナきょとんとした顔をし。
「国家予算?ナニソレ」
こいつ。まじかよ!
この魔王と一緒に国を立て直すことができるのか、不安で仕方なくなる俺だった。