カフェSchaleの管理人になった先生の友達   作:松花 陽気

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キヴォトスに現れた先生の友達

ここは、数千の学園が集まる巨大都市と呼ばれる学園都市キヴォトス。約一ヶ月以上前のこと。連邦生徒会長と呼ばれる超人的なこのキヴォトスのトップと呼ばれた存在が失踪した。その結果、瞬く間にキヴォトスの治安は荒れに荒れたとか。

 

なんと、その連邦生徒会長が呼び出した外の世界の大人が現れた。その大人は、大きな力と活動の自由を持つ、連邦捜査部Schaleの顧問。数多くの自治区の問題や生徒の依頼を解決する『先生』になった。

 

さて、話は変わるが。そんな連邦捜査部Schaleの建物には、先生が管轄する生徒の為の憩いのカフェがある。

 

今僕は、そのカフェの管理責任者として働いています。えーーっと……なんでこうなったんだ??

僕は頭を抱えながら流れる動きでカップにジュースを注ぐ。

 

“あはは…ごめんね次郎。でも、私一人じゃここの管理をするのは難しくて”

 

そんなことをぼやく目の前の僕の友達であり、今はこのキヴォトスの『先生』は苦笑していた。……あははっじゃねぇんだよ。

 

「まあ、理由は納得したよ。お前も結構大変だったんだな」

 

同情の言葉を言って、先生の目の前にジュースを置く。聞けば、毎日大量の書類に追われ、不備があれば指摘され一緒に直したり、各学園からの依頼を解決に出張をし、戻って来たら溜まった書類を処理する。その繰り返しだと聞いた。これを聞いた時は、思わずその仕事量に天を仰いだ。……仰ぎたいのは先生の方だろうな、すまんな先生。

 

「聞いた時はマジで言葉を失ったよ。いくら大人とはいえ、あの量は一人でやる仕事量じゃねえよ」

 

“私もそう思うよ。でも、私はみんなの先生だからね。なんとしてでもやらないと。それにね、当番に来てくれる生徒のお陰で結構助かってるんだよ?”

 

「だが、毎日ってわけでもないだろう」

 

“うん。そうなんだ……それに他にも色々としないといけないこともあるから。大変なんだよね”

 

「……たしか、このカフェもその一つなんだっけ?」

 

先生の提案により連邦生徒会が作った憩いの場所。それがカフェSchale。僕はそのカフェの管理人として先生に抜擢された者だった。

 

“そうそう。本当は私が管理するはずだったんだけどさ。そんな暇が取れなくて……本当は色々と家具を準備したりしたかったんだけど”

 

先生と僕は部屋の内装を見回して。

 

「キッチンと少しの椅子以外、なんもねえ……」

 

“……そういうわけなんだよね。最初のうちは集まってたんだけど。あまりにも変わり映えしなくて来る人も減っちゃって……だから、君が来てくれて本当に良かったって思ってるんだ!”

 

「たまたまだけどな」

 

そう。僕がここで働くことになったのは本当に偶然だった。

 

□□□数日前

 

その日、僕はアイツが今いるというキヴォトスに遊びに来ていた。目的はもちろん、先生になった友達に会う為。高校卒業から約6年と少し、こんなに長期間会わないことなど無かった為に、久しぶりに会いたくなりどこにいるか聞いてみるとここにいると聞いたので特に何も考えず来た。因みに、その時の僕は無職だった。理由は、会社の倒産。元々小さい企業でこれといった売り上げも成果も上げられなかったためそうなるのは必然だった。

 

というわけでキヴォトスに来たわけだが、シャーレってとこに着くまでの間、色んなことに驚かされた。

やっぱり、生徒や住民が当然のように銃を所持していること。そして、この世界に住んでる奴らは皆頑丈で手榴弾をくらっても死なないことなど、本当にいろんなことで驚いたし、人型のロボを見た時は心が躍った。アイツもこういうSF好きだったな。とか考えながら、シャーレに入ろうとして――。

 

「しまった……入れねえ」

 

建物に入りたいが権利が必要らしく立ち往生となってしまった。さて、どうしようかなと頭を悩ませていると……。

 

「……あの」

 

「うわぁ!!???」

 

突然背後から声をかけられそんな情けない声が飛び出してしまう。少し距離をとって振り向くと、そこには菫色の髪をツインテールに結び、黒のスーツのような制服と白の上着を肩からズラして着ている女の子だった。

 

「ここになにか御用で?何者ですか……」

 

なにやら怪しまれている。そりゃ当然かもな。なんせ、アイツ以外に見る輪っかの無いそれも外から来た人間の男なんて、警戒して当たり前なのだ。とりあえず、変に刺激しないようにしなければ。

 

「えっと、私の名前は影島次郎と言います。すみません。友達がここで働いていると聞きまして、会いに来たんですけど。建物に入ることができなくて途方に暮れていたんです」

 

「友達……にって?」

 

「多分ご存知かと思うのですが、ここで先生をしている大島健さんという方です」

 

「えっ!大島先生のですか」

 

その名前を呼ぶと、目の前の少女は一瞬驚いた顔をしたが、納得したのかすぐに元に戻った。

 

「先生のお知り合いの方でしたか。失礼な真似をしてしまい、申し訳ございません」

 

「別に良いよ。警戒するのは当然だ、それより君は?」

 

「あ、申し遅れました。私はミレニアムサイエンススクールの早瀬ユウカです」

 

「早瀬さんね。ご丁寧にありがとう、それで早速なんだけど早瀬さん。ちょっとその先生に会うのを手伝ってくれないかな?」

 

「まあ、先生の友達だそうですし……わかりました。では、案内しますので私について来てください」

 

早瀬さんに快くシャーレに入れてもらい、僕はようやく奴の職場へと足を踏み入れた。そうして、しばらく歩いてエレベーターに乗ると。早瀬が少しもじもじしながら質問をしてきた。

 

「その……影島さんは、先生とは結構付き合いが長いのですか?」

 

「へ?……まあ、うん。幼馴染だからな……まあ、今日一年ぶりの再会になるわけだけど」

 

「そうなんですか。……因みに、彼女とか今は?」

 

「ん?いや、いないよ。アイツなら多分真っ先に僕に伝えると思うから絶対にいないって言い切れる」

 

「そ、そうなんですね!」

 

なにやら嬉しそうだな、と少し考え込んでいると。

チーンッとエレベーターが止まったので、僕たちは出る。それから少しまた歩いたがそんなかかることなく、その部屋に辿り着く。

 

「ここが、先生がいる場所になります。多分、今日も書類仕事に励んでいるかと」

 

「はぇ〜」

 

ガラス越しから見えるアイツの後ろ姿が見える。だがその先の机の上に積まれた山を見て絶句し思わず苦い顔が浮かんだ。

 

「す、すごい山だな……これ」

 

「この前に比べたら全然マシですよ。昨日なんてあの山が後三つくらいありましたから」

 

エグい。軽く一メートルありそうなあの高さの山が三つって……今は一つしか見えないけど、どう考えてもワンオペには常軌を逸しているとしか見えない。

 

「見てらんねぇな」

 

「えっ?」

 

僕の呟きに早瀬さんが反応する。

そんなにびっくりしたのだろうかと思うが、どうでもいいのでそのままアイツがいる執務室の部屋を開けた。

 

“あ!ユウカいらっしゃい!待ってたよ……ってえぇ!!!”

 

「よっすー!」

 

軽い挨拶で返すと、大島は口を開けて放心した。そんなびっくりすることなのだろうか?

 

“あれ!?なんで次郎くんがここに!というか、ユウカも一緒だったんだ”

 

「ここの前で立ち往生してたら声かけられたんでね。お前に会う為に頼ったら連れて来てくれたんだ」

 

“そうだったんだ。わざわざありがとうユウカ”

 

「いえ、私がやりたくてやったことですので。それに、昔の友達との再会を手伝えて、良かったです」

 

「世話になったな早瀬さん」

 

「いえ、どういたしまして」

 

「ところで、お前いつもそんな量の仕事を捌いてんのか?」

 

“うん”

 

「キツくないか?一年会社員やってた自分でもかなり辛いと思うぞこれ」

 

“まあ、そうなんだけど。……これも生徒の為だからさ。それに、生徒の笑顔を見ると元気が湧いてくるから、やりがいもあって楽しいよ!”

 

「……その癖。まだ治ってなかったのか」

 

“へっ??”

 

いつもの悪い癖はいつまで経っても抜けていないなと、内心で呆れる。

 

「なんでもねえよ…………よし決めた!」

 

そこで僕は、いい名案を思いつく。

 

「あの、何がですか?」

 

「んなもん――――」

 

と、一拍を置いて宣言する。

 

――僕もここで働くんだよ

 

その日、シャーレの部室に一際大きな声が響いたのだった。

その後、先生から色々と話を聞いた後、大元となる上層組織の連邦生徒会に行き、そこのトップ代行を務める七神リンさんという方に話を通し、無事承認。

キヴォトスに来て早速、僕は職場を手にすることができたのだった。

 

□□□

 

“いやぁ、あの時は本当に驚いたね”

 

「だな。働けるかは掛けだったけど……ま、結果オーライつーことで」

 

だが、僕にはどうしても疑問なことがあった。それは……。

 

「一応僕も、シャーレの先生のはずなんだけどな〜」

 

一応、先生としての業務――主に事務にあたることはやっている。だが、それとは他にこのカフェの管理もしてほしいと言われた。うん。なんで?いやまあ、ここを生徒の憩いの場として作られたのはわかっている。でも、これって本当に先生としての業務なのだろうか?甚だ疑問である。

 

「まあいいか。他ならないお前からの頼みでもあるし。やってやろうじゃん、先生もカフェシャーレも両方こなしてやるよ」

 

“頼もしいことこのうえないよ。それじゃあ、任せるね”

 

そう言うと、大島先生は立ち上がる。

 

「なんだ、これから出張か?」

 

“うん。入ったばかりでわからないことがまだ多いと思うんだけど。前からあった依頼でね。行かなきゃ行けないんだ”

 

「たしか、トリニティだっけか?」

 

キヴォトス三大校と呼ばれる今一番大きく力を持つ学校。その一つとされるトリニティ総合学園。そこからの依頼。なんでも、天使に近い見た目の子が通うお嬢様学校で建物のほとんどが美しく上品な淑女の街なのだとか。

僕も先生になったのでその辺の情報は共有されている。ただ、依頼内容まではよく知らない。流石に、入ったばかりなのもあり、上層部との信頼関係もない今の自分が関わるのは厳しい。なにより、所属したばかりの大人を信用しろというのは無理な話でもあった。

だから、今回は居残りだ。

 

“うん。当分出張になるから。その間まかせていい?”

 

「任しとけ。安心して行って来い」

 

“それじゃあ、影島先生。行ってくるよ”

 

そう言って、大島はカフェを後にしたのだった。

 

「さて……久しぶりの一人業務か。何が起こるかね〜」

 

これからの新しい仕事、人生にワクワクしながら自分をカフェを後にする。

ふと、思い出した。そういえば、連邦生徒会がシャーレの新しい役員が来たことを会見を開くらしいので、後程来てくださいということだった。そういえば、なったけどそういうことはしていなかったなと思い出す。

 

「めんどくせえけど。行かないとだよな〜」

 

と、呟きながら大人しく行くのだった。

 

□□□

 

会見は難なく終われた。クロノスという人達に色々質問されたりもしたが。まあ概ね上手くいった。自分の第一印象に関しても、「大島先生と似てて関わりやすそう」とか。「大島先生よりは頼りなさそう」だの良い声や不安の声がまちまちとあった。

 

「ふぅ〜。やっと帰ってこれたぜ」

 

執務室に戻って来ると、リンから送られて来たであろう書類が目に入る。一メートルほどの山が二つ。この前より少し多いな。それに、書類の中には生徒が見れないものや、先生しか処理できないものもある。会見の後、リンから正式なシャーレの先生としての権限を得たのもあり、先生の承認が必要なものも、今の僕なら処理することができるので、良かったと胸を撫で下ろした。

 

「さて、やるとしますか!」

 

では、と仕事に取り掛かろうとした時だった。

 

「失礼します」

 

二人分の足音と共に、聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、そっちに視線を向ける。

 

「あっ、お久しぶりです。影島さん……いえ、今は先生でしたね」

 

「早瀬さんか。あの日以来だね、久しぶり」

 

来たのは、今日の当番だった早瀬だった。たしか、もう一人いたような?と思い周りを見て、早瀬さんの隣にいる白髪の少女がいるのに目が付いた。

 

「初めまして、影島先生。生塩ノアです、よろしくお願いしますね」

 

「うん。よろしく生塩さん」

 

「あら、ノアでいいですよ先生」

 

「そういうわけには行かないよ。大島は距離感が近い奴だから、名前で呼ぶけど。僕はあいつより真面目なんでね」

「……まあ、もうちょっと親しくなったら呼ぶかもね〜」

 

「では、頑張って関係を作ることにしましょうか」

 

「ほどほどにね〜」

 

因みに、生塩さんは早瀬さんと同じミレニアムの生徒だそう。それと、この二人はその学校の生徒会で早瀬は会計、生塩は書記だそうだ。

しばらく仕事を続けて、書類の6割とデジタルの仕事半分を終わらせた。集中してやっていたからか、時刻はすでに13時だった。流石に腹が減った。

 

「ふぅ〜…この辺で一度休憩にしよう」

 

「そうですね。お腹も空いてきましたし」

 

「では、何か食べに行きますか?影島先生に聞きたいこともありますし。ね?ユウカちゃん」

 

「えっ?……まあ、ないことないけど」

 

「大島先生のこと、知りたいですもんね」

 

「ちょ、もぉ〜ノアー!」

 

「大島のことか?聞きたいならなんでも聞いていいぞ」

 

「ふふふ。では、聞かせてもらいましょうか」

 

その後、食事に出掛けた僕たちは、大島のことでとにかく盛り上がった。度々、早瀬さんの反応が可愛らしくて面白かった。生塩さんは、どうやらからかい上手なようだ。できれば弄られたくないな……とほんの少しだけ警戒するのだった。

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