海は、不気味なほどに静まり返っていた。
風の一吹きすらなくいつもは狂暴に波打つ新世界の海面が、鏡のように平坦に均されている。
その硝子細工めいた水面を滑るように進むロックス海賊団の船団。
静寂を支配するのは、船体が波を分ける微かな軋み音だけだった。
だがその張り詰めた静寂を鋭く引き裂いたのは、水平線の彼方から突如として現れたいくつもの白い影だった。
一つではない。二つ、三つ──いや、五つ。
海軍軍艦が、一切の迷いもなくこちらの本船をその照準に捉えていた。
次の瞬間、海軍の軍艦から放たれた一斉砲撃が轟音と共に火を噴いた。
ドゴォン!! と周囲の海面が爆ぜ、巨大な水柱が何本も立ち上がっては視界を塗り潰していく。
そして、海軍船は凄まじい練度で一気に距離を詰めてきた。
激しい衝撃と共に、巨躯を誇る軍艦がロックス海賊団本船の横腹へと激突する。
船体が悲鳴を上げるのと同時に、静かだった甲板は一瞬にして血生臭い戦場へと変貌した。
飛び交う怒号、肉を裂く金属音、爆炎の匂いが一息に弾ける。
その海軍側の混戦の中心に君臨していたのは、海軍本部中将つるであった。
「第三小隊は左のカバーに回りなさい。無理に突っ込んでは駄目、面で抑えるのよ」
彼女の冷徹かつ的確極まりない指示が戦場に響くたび、海兵たちの動きが見事な歯車のように噛み合っていく。
血気に逸る海賊たちの無駄な突撃はことごとく無力化され、崩れかけた海軍の隊列がまるで生き物のように自然と立て直されていく。
前に躍り出た海賊の一撃が防がれたかと思えば、即座にその隙を埋めるように横から別の海兵の援護が差し込まれる。
一切の無駄を削ぎ落とした、緻密な連携。
互いの隙を完璧に補い合う鉄の防御。
個の力では圧倒しているはずの海賊たちが、気づけばじわりじわりと前線を押し返され、海軍の張り巡らせた見えない網に絡め取られていた。
その戦況の中心で、つるは静かに一歩だけ前へ踏み出す。
その鋭い双眸の先にいるのは、息を切らせたグロリオーサ。
次の瞬間、爆発的な踏み込みによって互いの距離が消失した。
グロリオーサが放つ、大気を切り裂くような鋭い一撃。
しかしつるはその攻撃を最小限の動きで、恐ろしいほどの精密さで真正面から受け流す。
そこから先、二人が織り成す超一流の攻防は、周囲の兵たちの怒号と立ち込める硝煙の喧騒の中へと深く飲み込まれていった。
一方、その頃──。
激動する戦場の一角で、ガセルの前には一人の海軍少将が立ち塞がっていた。
「……雷禍のガセルだな。ここで貴様を止める!」
少将は短く言い放つや否や、一陣の風となって踏み込んできた。
その踏み込みには一切の無駄がなく流れるような剣筋からは、海軍本部で地獄のような修羅場を潜り抜けてきたであろう高い練度が窺えた。
だが、ガセルはその場から微動だにしない。
振り下ろされた鋭利な刃が己の鼻先をかすめる直前、ガセルは首をわずかに傾け半身をずらした。
ただそれだけの最小の動作で、少将の必殺の軌道は虚しく空を裂いて逸れる。
流れるように一歩、ガセルがその懐へと深く踏み込んだ。
「……遅ぇ、話にならねぇよ」
低く落とされた声音。
次の瞬間、ガセルの全身から爆発的な蒼い雷霆が弾け飛んだ。
鼓膜を震わせる凄まじい轟音。
それだけで、勝負の決着は一瞬にしてついた。
直撃を受けた少将の体は激しい電撃に焼かれながら宙を高く舞い、そのまま人形のように甲板へと叩きつけられた。
ピクリとも動かない。
「……この程度か。海軍の将官も、随分と層が薄くなったもんだな」
ガセルは興味を完全に失ったように、冷ややかに呟いた。
今のガセルから見れば凡百の少将程度では、もう退屈な前座にすらなり得ない。
ガセルは首を回しながら、乱戦の続く戦場全体を冷徹に見渡した。
海軍の兵力はまだ残っている。
だがロックス海賊団の船員たちの圧倒的な個の暴力の前に、その強固だった隊列も確実に崩壊し始めていた。
勝敗の天秤は、すでにロックス海賊団の方へと大きく傾いている。
その確信の中で。
ガセルの網膜が、ある一点の光景を捉えてピタリと止まった。
「ぐッ……、あ……ッ!」
激しい打撃を受け、甲板に膝をついて倒れ伏しているグロリオーサ。
そしてそのすぐ傍らに、冷徹な眼差しで見下ろすつるの姿。
二人の勝敗は、素人目にも明白だった。
つるが静かに手を伸ばし、グロリオーサの細い手首を掴みにかかる。
(チッ、あいつ何負けてんだッ!)
そう脳内で毒づいた瞬間には、ガセルの身体は本能的に動いていた。
瞬時に距離を詰め、倒れているグロリオーサの傍らへと瞬時に割り込む。
彼女を救い出そうと、その細い腕に向かってガセルが手を伸ばした、その刹那。
カチャリ、と。
不吉なほど乾いた、金属同士の噛み合う音が鼓膜に響いた。
「貴方なら、そういう行動をすると思っていたわ、ガセル」
冷徹なまでに静かな声。
つるは視線すらブレさせることなく、ゆっくりと己の手元を持ち上げた。
そこにあったのはガセルの両手首を完璧に捉えた、鈍い光を放つ海楼石の手錠だった。
「身を挺して仲間を助けに来る悪党なんて、そうそういないもの。あらかじめ準備しておいて正解だったわね」
「……用意がいいな」
ガセルは吐き捨てるように、苦々しく呟いた。
手首にはめられた黒い鉱石の圧倒的な重みと同時に、全身の芯からすべての力が物理的に抜け落ちていく。
それまで当たり前のように全身を巡っていた縦横無尽な雷の感覚が急速に、そして無残に遠のいていく。
身体が鉛のように重く鈍り、ただ立っているだけで世界がわずかにグラグラと揺れた。
悪魔の実の能力者にとって、それは死にも等しい絶対的な枷。
だが、まだ終わっていない。
ガセルは奥歯が砕けんばかりに歯を食いしばった。
意識が朦朧とする中、体内に残された最後の力を執念だけで無理やり掻き集める。
海楼石の呪縛に抗いながら腕を伸ばし、倒れているグロリオーサの衣服の襟元を力任せに掴んだ。
普段なら羽毛のように軽いはずの彼女の身体が、今のガセルには山のように重く感じられた。
それでも魂の底から引き絞るようにして、彼女の身体を強引に引き上げる。
「ニューゲート──ッ!!!」
喉が裂けんばかりの、絞り出すような絶叫。
ガセルは渾身の力を振り絞り、グロリオーサの身体を戦場の中心へと向かって全力で放り投げた。
宙を裂いて、放物線を描きながらグロリオーサの身体が飛んでいく。
その軌道の先に立っていたのは──。
「──ッ!?」
その叫びに応じるように、咄嗟に巨大な腕を伸ばし上空から落ちてきた体を見事に受け止めた男、エドワード・ニューゲート。
不意の衝撃にその頑強な足を踏みしめながら、彼は即座にガセルがいるはずの方向へと鋭い視線を跳ね上げた。
「……ッ、おい! ガセル、お前何をしてやがるッ!!」
地鳴りのような叫びが戦場に木霊する。
だが、ガセルからの返事はない。
ニューゲートの眼に映ったのは、海楼石の手錠をかけられたままその場から一歩も動けなくなっているガセルの姿だった。
一瞬、ニューゲートの顔が怒りと驚愕で歪み、激しく歯を食いしばる。
そして、ガセルの膝が完全に限界を迎えたようにわずかに沈んだ。
全身の力が抜け落ち、意識の光が薄れていくように。
「……この、アホンダラがァッ!!」
ニューゲートは吐き捨てるように怒鳴り散らした。
次の瞬間、彼は腕に抱えたままのグロリオーサの身体を近くにいた船員の胸へと乱暴に放り投げた。
「お前ら、邪魔だ! こいつを持ってさっさと後ろへ下がってろ!」
それだけを言い捨てるや否や、ニューゲートは爆発的な勢いで地を蹴った。
一直線に、つるに連行されかけているガセルの元へと突進する。
だがその渾身の一歩は、届かない。
つるの動きは、恐ろしいほどに無駄がなかった。
ニューゲートの接近を察知した瞬間、彼女は迷いのない動きで後方へと大きく跳んで距離を取り、手錠の鎖を引いてガセルの身体を自身の側へと強引に引き寄せた。
そのまま淀みのない足取りで、後方に控えていたまだ無傷の海軍の軍艦へと素早く移っていく。
「全軍、撤退するわよ! 目的は達したわ!」
鋭く、短い撤退の号令。
それだけで、海兵たちの動きが一斉に統率されたものへと変化した。
残っていた兵たちが即座に殿の陣形を敷き、見事な隊列を維持したままガセルを乗せた軍艦を守るように距離を取る。
船が速やかに岸壁を離れ波を割り、白波を立てて速度を上げていく。
「待て……ッ!! 待ちやがれッ!!」
激しい叫びと共に、波打ち際まで踏み込むニューゲート。
だが、間に合わない。
軍艦との距離は、すでに攻撃が届く限界を超えて開いていた。
ニューゲートは、大気を叩き割るために凄まじい覇気を拳に纏わせ手を振り上げたが、その瞬間動きをピタリと思い止まらざるを得なかった。
あの距離だ。
今からニューゲートの能力を使えば、離れていく軍艦を周囲の海ごと完全に粉砕し、深海へ沈めることは容易い。
だがガセルは悪魔の実の能力者であり、今は海楼石で力を完全に封じられている。
先程の激戦で荒れ狂い渦巻く新世界の海へと投げ出されれば、カナヅチとなったガセルをこの広い海から生きて見つけ出すことは、まず不可能に近い。
「……クソがッ……!!」
ニューゲートは激しい悔恨の念に駆られながら、振り上げた拳を虚しく下ろさざるを得なかった。
ただ遠ざかっていく海軍の白帆を、血の滲むような眼で見つめることしかできなかった。
♢
海軍船の最深部、日の光すら届かない鉄格子に囲まれた狭く薄暗い檻の中。
カビ臭く、湿った冷たい空気がガセルの肌にじっとりとまとわりついていた。
船体が波に揺れるたび、ガセルの身体を拘束している鉄の鎖がジャラ……と微かに寂しげな音を立てる。
ガセルは冷たい鉄の壁に背中をもたれ掛けさせたまま、浅く苦しげな息を吐き出していた。
手首を締め付ける海楼石の手錠が、底なしの沼のようにじわじわと体内のエネルギーを奪い続けている。
身体の最奥にあったはずのあの縦横無尽に駆け巡る雷の感覚が完全に抜け落ち、魂がスカスカになったかのような奇妙な喪失感。
全身が鉛のように重く、鈍い。
思うように指先一つすら動かせない最悪のコンディションの中、ガセルは重い瞼を開け動く目だけで周囲を探った。
コツ、コツ、と静かな足音が一つ暗闇の奥から近づいてきて、檻の前でピタリと止まる。
鉄格子の向こう側の僅かなランタンの光の中に立っていたのは、つるだった。
「気分はどうかしら?」
その声音には、愉快そうな響きが含まれていた。
ガセルは首に力を込め、少しだけ顔を上げて彼女を睨み据える。
「……見ての通りだ。あんま良くはねぇな」
それが偽らざる正直な感想だった。
この期に及んで見苦しく強がる気にもなれない。
ただ、淡々と言葉を返す。
つるは満足そうに、小さく深く頷いた。
「そう。それは気の毒ね。でも、私は最高の気分よ」
「そりゃよかったな」
皮肉をたっぷりと込めた言葉だったが、つるはそれをまるで気にした様子もなかった。
本当に機嫌が良いのか、わずかに薄い口元を緩めただけでガセルの毒舌すらも心地よい風のように受け流してしまう。
その余裕に満ちた態度に、ガセルはわずかに眉を寄せた。
「……で、何しに来たんだ、お前。わざわざ囚人の生存確認か?」
「そうね」
つるは少し考えるように指先を顎に当て、短い間を置いてから。
「あんたがどれほど絶望して、悔しそうな顔をしているかを拝んでやろうと思って、わざわざ足を運んであげたのよ」
さらりと、何でもないことのように言ってのける。
ガセルは呆れたように小さく息を吐き出した。
「……そりゃ、よっぽど暇なんだな」
「暇なわけないでしょ、毎日書類と海賊の山に追われてるわよ」
即答だった。
そのあまりにも日常的なやり取りに、檻の中へ妙な間と弛緩した空気が落ちる。
しばらくしてガセルは視線を彼女から外し、冷たい床を見つめたまま再び口を開いた。
「まあ、お前の目的が何でもいいけどさ」
ふう、と間を置いて。
「とりあえず、飯くれよ。さっきから腹が減って死にそうなんだ」
あまりにも緊張感の欠片もない、脈絡のない要求だった。
つるは一瞬だけ完璧に虚を突かれたように、その美しい眉をぴくりと動かした。
「……随分と、自分が置かれた状況の割には余裕ね」
「……まあな」
ガセルは肩を壁に預け直したまま、気の抜けた諦め混じりの声で続ける。
「捕まったところで、俺程度なら別にすぐに死刑になるわけじゃねぇだろ?」
その確信に満ちた一言に、つるの目が冷徹に細められる。
「甘いわね。世界政府の威信にかけて、見せしめに普通に即時処刑される場合もあるけれど?」
一瞬の、痛烈な沈黙。
「おい嘘だろふざけんな!! 俺を今すぐ此処から出せ! 死にたくねぇ! 助けてくれ!」
間髪入れず、檻の中に絶叫が響き渡った。
その必死さと勢いだけは、さっきまでの超然とした態度とは完全に別人のそれだった。
「……急に態度が変わるのね、あんた」
つるは心の底から呆れ果てたように吐き捨て、小さく溜息をついた。
「安心しなさい。まあ、あんたほどの危険度なら、世界最大の監獄インペルダウンの最深部に収容されるでしょうね」
淡々とした、決定事項の宣告。
ガセルは一瞬だけ沈黙し、すぐに「なんだ、ならいいや」と言わんばかりの、力の抜けた元の顔に戻った。
「やっぱ死なねぇんじゃねえか。脅かすなよ」
さっきまでの世も末のような必死さが、嘘みたいに霧散している。
「話が終わったんら早く飯よこせ。腹が減っては脱獄もできん」
「……本当に、なんなのよあんたは」
つるは頭を悩ませるように一言だけ残し、今度こそ呆れ顔で踵を返し暗闇の向こうへと去っていった。
その後、ガセルの生意気な要求が真面目に聞き入れられたのか、あるいは最初から海軍の規定で決まっていたことなのかは分からないが、食事は一定の間隔でしっかりと運ばれてくるようになった。
味は粗末で塩辛いものだったが、量はガセルの体格に見合うだけの十分なものが与えられていた。
政府が自分をまだ生かしておくつもりなのは間違いなかった。
船はひたすら、暗い新世界の海を進み続ける。
檻の中に閉じ込められているガセルには外の景色はほとんど見えなかったが、船体の独特な揺れと波を切る音の周期で進行状況は何となく理解できた。
進路が変わるたびに、床から伝わる重力の感覚もわずかに変化する。
その暗闇の中で、ガセルは幾度となく同じ思考を繰り返していた。
どうやって、この状況から脱出するか。
だが何度脳内でシミュレーションを重ねても、行き着く結論は冷酷なまでに変わらなかった。
手首にはめられた海楼石の手錠。
これがある限り、悪魔の実の能力者である自分には物理的にどうすることもできない。
能力は一ミリも発動しない。
それどころか肉体の根源的な筋力すらも著しく制限され、覇気を練ろうとしてもそもそも精神を集中させて踏ん張るだけの土台の力が足りないのだ。
集中力も長く続かず、すぐに疲労感が襲ってくる。
鉄格子をへし折ることも、鎖を引きちぎることも、今の状態では絶対に不可能だった。
完全に、詰んでいた。
そんな絶望的な膠着状態のまま、何日もの時間が虚しく流れていった。
その状況に明確な変化が訪れたのは、ある日のことだった。
いつもより乱暴に、重厚な鉄の扉がガシャァンと開く音が地下室に響き渡った。
こちらへ近づいてくる足音。
一つではない。
複数、それもとてつもなく重い足取りだ。
「おう! 久しぶりだな、雷禍! 元気にしていたか!」
檻の前に響き渡ったのは、やたらと声量が大きく信じられないほど覇気に満ちた聞き覚えのある男の声だった。
ガセルは重い首を持ち上げ、薄く息を吐き出した。
「……元気なわけねぇだろ。ガープ」
鉄格子の向こう側で腕を組んで豪快に笑いながら立っていたのは、海軍本部中将モンキー・D・ガープだった。
そしてその後ろにはいつも通りの冷徹な表情のつると、さらにもう一人。
ガセルの記憶にはない、しかし圧倒的な存在感を放つ見慣れない大柄な男が佇んでいた。
短く綺麗に刈り込まれた紫色の髪に、鋭く全てを見透かすような理知的な目つき。
特段、覇気を剥き出しにしているわけではないのに、ただそこに立っているだけで周囲の空間が静まり返るような尋常ではない武人の圧。
その男は檻の中のガセルをじっと値踏みするように見下ろし、低い声で口を開いた。
「お前がロックス海賊団の雷禍か。手配書や噂では聞いていたが……なるほど、思っていたよりもずいぶんと若いな。まだ少年の面影が残っている」
「誰だ、お前」
ガセルは警戒心を滲ませながら、間髪入れずに低く問い返す。
男はガセルのその不遜な態度に嫌悪を示すどころか、わずかに満足そうに口元を歪めた。
「俺は海軍本部中将、ゼファーだ」
その名を聞いた瞬間、ガセルの脳裏に電撃が走りわずかに目を細めた。
ゼファー。
後に『黒腕のゼファー』と呼ばれ、海軍の全ての英雄たちを育て上げることになる、あの伝説の男。
「この2人が、インペルダウンに入れる前にどうしてもあんたに会いたいってうるさいから、特別に連れてきてあげたのよ」
つるが横から、心底面倒くさそうに口を挟む。
しかし、その目はしっかりとガセルの衰弱具合を見極めていた。
「おい、雷禍」
ゼファーを押し退けるようにして、ガープが一歩前に躍り出た。
彼は檻越しに、真っ直ぐにガセルの漆黒の瞳を見据える。
そして一切の躊躇いも世界の常識への考慮もなく、満面の笑みでこう言い放った。
「お前、インペルダウンに行くのなんかやめて、今すぐ海兵になれ!」
ガセルは一瞬だけ、世界が停止したかのような深い沈黙に陥り。
「……は?」
これ以上ないほどに、間の抜けた声を暗い檻の中に響かせた。