異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~怪盗ネズミキッド~

バナナ組ではラスカル先生の指揮のもと生徒が別れの歌を合唱する。

「くくく…今年もまた、卒業のシーズンがやってきた」

むせび泣くラスカル先生を見てチャチャが不思議そうな顔をしつつ質問する。

「先生、質問!あのー、卒業って誰がするんですか?」

その質問にラスカル先生が大号泣。

「教え子よ…それは…お前たちだー!」

『えー!?』

バナナ組全員が声をハモらせて絶叫した。

 

(いや、史実通りだけどさ!)

(半年で卒業は早すぎるでしょ!)

(そもそもまともに授業をしたの、数回くらいしかないんだけど)

号泣するラスカル先生を見つめながら冷静な突っ込みを入れたくなるが、何とか堪えるアーリンたち。

 

ラスカル先生が涙を流しながら教え子に半ば強引に抱き着きながらそれぞれに声を掛け、最後はクラス全員も同じように涙を流しながらラスカル先生を抱き返す。

(いい話…ナノカナー)

(まぁ青春を堪能してるからいいんじゃないの)

(とか言ってるとほら、あそこ)

 

リナがこっそり指を差した場所を見るとオッスくんが何故か2人居た。

その片割れが口を開く。

「はっはっはっはっ!そう簡単に卒業出来るかな?」

「誰だ!」

高笑いを浮かべる偽オッスくんに声を荒げるラスカル先生。

そして偽オッスくんを見て全員飛びのく。

 

「お前たちが卒業する為には、合格印が必要だという事を忘れるな…!」

そして偽オッスくんの変装を解き、中から出てきたのは…

「私は、怪盗ネズミキッド!」

マントが翻り、影が教室の壁に大きく映る。

「曲者!」

お鈴ちゃんの鎖鎌を躱し、返す刀で教室にミサイルを放つネズミキッド。

それは教室の中央で破裂し――中からネズミのおもちゃが甲高い声を上げていた。

「今晩12時、合格印を頂きに怪盗ネズミキッド参上いたしまーちゅ!」

そのまま空中に飛び立つネズミキッドと歯噛みするラスカル先生。

 

学園長室でそのおもちゃを持っていくラスカル先生とチャチャたち。

「もしも…この合格印を盗まれたら…皆さん卒業出来なくなってしまうんですよ…」

卒業印を彼らに見せながら、万が一盗まれた場合を想像して涙をだばだば流すうらら学園長。

お鈴ちゃんが「新しく作り直せば良いのでは?」と言うが「世界に一つしかない由緒正しい合格印、なーのよ」とやんわり返される。

 

「よし、この合格印…!『みんなで守りましょう!』

チャチャたちが勢い良く拳を突き上げ、他の面々もシュプレヒコールを上げる。

それを喜び鞭でみんなを絡めとりうらら学園長に見せつけるラスカル先生。

 

「改めて見ると…シュールよね」

「傍観者で良かったと心から思うわ」

アーリンとリナは苦笑いを隠すこともしない。

 

「だけどネズミキッドとは何者なんでしょうね?」としいねちゃんが言えば「ネズミのキッドでしょ?」とピントが外れた答えを返すチャチャ。

その説明に窓から通りすがりの名探偵と助手―どう見てもセラヴィーとエリザベスである―が登場。

セラヴィーは卒業アルバムをうらら学園長に開かせると―あるページを見せるよう指示を出す。

「彼は私の同期ですよ。変装対決で負けて以来、姿を消しましたが」

用意してあったパイプを吸いながら、言葉を続ける。

「その後は魔界に入り、変装術に磨きを掛けたそうです。油断のならない相手ですよ」

 

(学園に来なくなったのに卒業は出来たのね…)

冷静な突っ込みを入れようとするが、流石にそれを言うのは野暮よね、と心の中で思うだけのアーリン。

 

そして夜の11時半。

全員がこの時間までしっかりと合格印を見張り、一挙手一投足も見逃さないといった表情で凝視している。

「ちょっと何してんの!あたしも―」

扉が勢いよく開かれ、現れたのはマリン。

しかし彼女が言葉を言い切る前に全員がマリンに襲い掛かり、ボコボコにした挙句「何だマリンちゃんか」「紛らわしいわね」「びっくりしちゃった」と好き放題言って扉を閉める所業を見せる。

 

犯行5分前。

「こうしてみんなで見張っているんです、ネズミキッドだって手は出せませんよ」

しいねちゃんが力強い言葉を放つ。

「いえいえそれは甘い」

ただの通りすがりの名探偵が背後からチャチャたちに声を掛ける。

その後に本物の名探偵も窓から侵入して、チャチャたちの目の前には本物と偽物の名探偵の姿が。

「どちらかがネズミキッドの変装だ!」

ラスカル先生が身構える。

 

(口元のネズミ髭見たら偽物って分かるでしょ…)

(ああ、口に出せないのがもどかしい)

偽物を見抜いているのに天界の制約で答えが言えないアーリンたち。

 

しかしそんな彼女たちの苦悩をよそに、チャチャが見事に偽物を当てる。

「だって、ただの通りすがりの助手を連れてないわ!」

自信たっぷりに指を突き付けるチャチャに本性を現すネズミキッド。

そして次の瞬間に部屋の電気が消え、チャチャたちは大パニックに。

数秒ののち、再び電気が付くが…。

 

「あー!」

「ない、合格印がない!」

「安心しろ、合格印はここだ!」

慌てふためくチャチャたちをなだめるのは合格印を持ったラスカル先生。

安心したうらら学園長の後ろにもラスカル先生が。

それを見た彼女はあっさり気絶、チャチャたちも動揺する。

偽物を見抜くには決め手に欠けると呟くしいねちゃんの言葉に本物のラスカル先生が「私は優しい先生だぞー!」といつもはしない笑顔をチャチャたちに見せる。

 

(ラスカルー!それは悪手だぞ!)

(『優しい先生』なんて言った時点でアウトよ!)

心の中で激しい突っ込みを入れるアリーナとリナ。

ネズミキッドはラスカル先生らしい態度を見せ、チャチャたちを騙してしまう。

なおやっこちゃんだけは偽物を当てていたが、チャチャ、しいねちゃん、リーヤ、お鈴ちゃんが本物に指を差しているのを見てこっそり修正していた。

 

そして合格印を持って逃亡するネズミキッドを追いかける4人とアーリンたち。

しかしネズミキッドの妨害術によりお鈴ちゃんが戦線離脱してしまう。

やっこちゃんは火薬玉を投げようとするが転んでしまい、自分が花火状態となる羽目に。

 

そのまま逃亡出来るかと思ったネズミキッドだが、通りすがりの名探偵が魔法で大きくした手を目の前に突き出されて動きを止められた隙にチャチャたちが追いつく。

 

「合格印は渡さないっちゅ!」

ネズミキッドが空中に合格印を放り投げると、上空で待機していたヘリコプターが傍まで寄り、窓の外からソーゲスがそれをキャッチして逃亡しようとする。

しいねちゃんの召喚した大砲がヘリコプターの後ろに命中するが…

 

「速度が落ちない!?」

本来煙を噴いて速度が落ちるはずのヘリコプターのスピードが全く落ちない。

爆煙を突き抜けていく赤い機体。

「アーリン、ヘリコプターの色を見て!」

リナが上空を飛ぶヘリコプターを指差す。

よく見ると、機体側面に刻まれた紋様が脈打っている。

まるで生き物の心臓のように、不規則な動きを見せていた。

「歪みが組み込まれてる!?」

アーリンの背筋に冷たいものが走る。

「ヤバい、あの速さだと飛翔バッヂや翔封界じゃ追いつかない!」

「このままだとソーゲスが逃げ切っちゃうわ!」

予想外の出来事に慌てふためくアーリンたち。

 

「リナ、ボクにいい考えがある! リナの『翔封界』をボクにぶつけて!」

アリーナの突飛な提案に、アーリンとルナが目を丸くした。

「いつもは考えるより先に手が出るあんたが…なるほど、衝撃波の二重加速ね!」

「理屈はいいから、早く! ソーゲスに逃げられる!」

焦るアリーナの言葉にリナが即座に魔力を練り上げる。

「行くわよ!『翔封界(レイ・ウイング)』!」

極限まで圧縮された風の結界を纏い、リナ自身がアリーナへ体当たりを敢行。

その激突の瞬間、アリーナは『飛翔バッヂ』を最大出力で起動した。

ドォォォォン!

空気を引き裂く衝撃波を残し、アリーナが砲弾となって夜空を駆ける。

 

「大魔王様、やりました!ついに合格印を手に入れました!」

喜びに溢れるソーゲス、その背後から飛んでくる人影には気付かない様子。

「追いついた!」

骨が軋む。

視界がぶれる。

それでも彼女は、はやぶさの剣を荒れ狂う風の中で握りしめ、ヘリコプターの後部、テールローター部分に向けて振り下ろす。

「素直に、落ちろぉぉぉぉ!」

見事にその部分を斬り飛ばし、バランスを崩したヘリコプターは失速して森の中に墜落。

「よしっ!そして…」

飛翔バッヂの向きを急転回させて一気に急ブレーキを掛けるアリーナ。

(あ、止まらない)

このままだと明後日の方向に飛んでいく、そう本能的に感じ取った彼女は。

「ふんぬぅぅぅぅ!止まれぇぇぇぇ!」

叫びながらコントロールするも、当然バランスを崩してヘリの近くに同じように墜落していく。

そして地面に叩きつけられる直前に見えたヘリコプターの紋様が、まるで最初から無かったかのように消えていた。

 

 

「あの脳筋姫…誰が連れて帰るの?」

ネズミキッドが出したネズミ算ロボットをチャチャのビューティ・セレインアローによって消し飛んだ様子を見ながらアーリンは他の2人に視線を向ける。

「……」

「……」

そっと目を逸らす2人。

 

(まぁ、物語の修正は多分大丈夫でしょ…次は温泉地かぁ。久しぶりに身体を休められるわね)

この後のお話を思い出しながらちょっとだけ嬉しそうな表情を浮かべるアーリンなのであった。

 

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