異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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第3章:卒業試験編
~合格印探し~


一刻も早く―合格印を取り戻さなければならない。

そんな思いを胸にチャチャたちはヘリコプターの飛んで行った方向へと駆け出す。

その小さな背中を見ながら、アーリンたち3人も飛んで行ったアリーナを探しに彼女らの後ろを付いていく。

「アリーナが合格印をついでに敵から奪い取ってくれれば良いんだけど…」

アーリンが息を弾ませながら呟く。

「高速でぶっ飛んでいったからねぇ…足止め出来れば御の字じゃない?」

ルナが冷静にアリーナのこの後の状況を判断しながら返す。

「あの脳筋姫のやる事って毎回計算が狂うのよね…」

リナだけが少し苛立った表情で呟く。

(まぁアリーナだから大丈夫だろうと信じたいけどね…猪突猛進を地で行くから下手したら大怪我するかもしれないのよねぇ)

それでもあの速度で飛んで行った姿を思い出して心配な気持ちが出てくる。

「まぁアリーナのことだから、ヘリを叩き落として合格印を奪い取るに一票よ」

「わたしは森の中で迷子になってるパターンかな」

「どっちにしろ面倒くさいのは変わらないわね!」

 

そして山の麓で煙を上げているヘリコプターの残骸を発見するチャチャたち一行。

まだ煙が立ち込めている鉄屑。

折れた木々とえぐれた地面が激しい衝撃に見舞われた事を物語る。

しかし人の姿はなく、当然合格印も見当たらない。

「敵も合格印も消えた…」

ラスカル先生の呟きが風に乗って消える。

「アリーナも見当たらないわね…」

「それに歪みの紋様が消えているわ。その部分は全くの無傷なのに」

「アーリン、これ見て!」

リナが探索中のアーリンとルナの腕を引っ張って向かった先は―

「これは…酷いわね」

付いていった先には先程のヘリコプターの墜落現場より凄惨な状態の木や地面の姿があった。

何本もの青々と茂っていた木がズタズタに裂かれ、折れた枝が散乱している。

地面は多分アリーナが叩きつけられたであろう人の形をした跡が生々しく残っていた。

「それにこれは…アリーナの帽子」

散乱した枝に紛れて彼女が被っている青の三角帽子が泥まみれで転がっている。

(あの衝撃で…本当に、生きているの?)

三角帽子を拾い上げた瞬間、ほんの一瞬だけ胸が締め付けられる。

(アリーナ、お願いだから無事でいて…)

 

彼女が帽子を拾い上げた先には人が引き摺られた痕跡が不自然なほどに一直線に残っており、それを見たルナが眉をひそめる。

「引き摺った跡があるわ…誰かが運んで行ったのかしら」

ヘリコプターの残骸跡でリーヤが合格印の臭いを嗅ぎつけたらしく、引き摺られた跡の横を走り抜けていく。

「まさかソーゲスに捕まったとか…あの脳筋姫を捕まえるとか無理だろうけども」

「とにかく行ってみましょ」

そして3人は静かに頷き、チャチャたちの後を再び追いかけるのだった。

 

~同時刻、ゴクラクラ温泉にて~

「あ~生き返るわぁ~」

あちこち包帯塗れの姿、だが水着を着て湯船に浸かるアリーナ。

全身の痛みが、温泉の温かさに溶けていく。

(正直、死ぬかと思ったよ)

両手でお湯を掬い、顔に掛けながらあの時の状況を思い返す。

リナの魔力の衝撃を背後から受け、空気が一変する。

高速で飛ばされる自分の身体、その中で歪みを止め、制御を失い。

木々に叩きつけられた瞬間の痛みと白に染まる景色。

(ボクが死んだら、あの3人はどうするんだろうね)

そんな考えがよぎり、自分で苦笑する。

「らしくないな」

 

カポーン…とどこかで鹿威し(ししおどし)の音が響く。

「でもまさかここの主人に助けられるなんて…一応敵なんだけどなぁ」

「湯加減はどうでプー?」

温泉の中からにゅいっ、と現れたのはゴクラクラ温泉宿の主人、ベップ―だ。

見た目は温泉水で出来た幽霊であり、頭にはシャンプーハットを被り、これまた温泉水で出来た法被を羽織っている。

温泉の精霊、という種族だそうだ。

「最高だよ…、怪我もほどんど治りそう」

「ありがとうございますプー、ここの温泉は打ち身・捻挫・切り傷・刺し傷と何でも効果ありますからプー」

そう言って彼女の打ち身の部分にお湯を優しく掛ける。

「まさかこのボクが半死半生の目に遭うなんてねぇ…流石にリナの魔法との重ね掛けは流石にヤバかったよ」

ソーゲスの乗ったヘリコプターのテールローターを斬り飛ばし、暴れる身体を制御しようと反転してスピードを相殺させたは良かったものの、そのまま失速して木々に叩きつけられてしまった彼女。

衝撃の凄まじさはアーリンたちが見た通り、並みの人間なら物言わぬ肉塊になっていただろう。

英雄と呼ばれるレベルのアリーナでも全身を激しく打ち付け、その場で身動きひとつ取れない状態だったのだが…。

「当宿の入り口で死人が出たら評判に関わりますからプー。ゆっくり養生して下さいっプ」

その笑顔の奥に、一瞬だけ底知れない色が混じる。

「ふぅ、そろそろのぼせそうだから上がるね。この調子だと明日にでも完全回復してそう」

「湯上りに当温泉水で作った冷たいお茶や近くの牧場で絞った牛乳や当宿自慢のコーヒー牛乳、フルーツ牛乳もあるっプ。是非お飲みくださいっプ」

「はーい」

アリーナは湯から上がり、浴衣に袖を通す。

物語の敵とは言え、その時が来るまでは宿の主人と客、好意に素直に甘えるとする。

 

数時間後、温泉宿に到着するチャチャたち。

道中で商店街のくじ引きで当たった温泉の無料招待券を使う為にここまでやってきたセラヴィーとどろしーも合流し、総勢11名プラス1体がゴクラクラ温泉に入っていく。

到着した宿を見て遠回しにボロい温泉宿と揶揄するやっこちゃんとどろしー。

そこに地面から登場したベップーがどろしーをヨイショして褒め殺しするとあっさり宿に入っていく彼女、それについていく他の面々。

「…アーリンさんたちも、来ましたか」

こっそりと彼女に耳打ちするセラヴィー。

「大魔王の手下も多分ここに居ると思いますが、我々は知らないフリをしておきましょう。貴女の言う『物語』を崩したくない」

その言葉に頷くアーリン。

 

混浴という事でしいねちゃんがエッチな妄想をしてリーヤに突っ込まれたり、どろしーが石鹸を飛ばしてセラヴィーを転倒させようとするも見事にスケーターのように滑り、泡を撒き散らして消えたり(なおどろしーの後ろに座っていた)。

身体の洗いっこをしよう、と言ったどろしーに反応して女性陣―チャチャ、やっこちゃん、お鈴ちゃんが立ち上がるとリーヤとしいねちゃんが指で目を隠して慌てたり。

…全員水着姿であったが。

 

一瞬の沈黙の後。

「このマセガキどもが…」

一緒に風呂に入っていたアーリンたちが舌打ちをする隣でルナが恍惚の表情を浮かべて自分の頬を撫でる。

「しかし気持ちいいわねー、若いお肌がますます若返るわー」

「…姉ちゃん、すごくオバサン発言だから…イエナンデモナイデス」

彼女の言葉にリナが情けない声で突っ込もうとするが、絶対零度のルナの表情を見て速攻で撤回する。

なお3人とも水着姿なのは言うまでもない。

 

ちょうどその時にソーゲスが『ひとっ風呂浴びるでゲス!』と言いながら堂々と入ってくる。

そしてチャチャたちとばったりと目が合い、慌てて他人のフリをして誤魔化そうとする。

しかし、しいねちゃんの冷静な分析(やっこちゃんが温泉の効能を調べ、それを聞いて『墜落したヘリコプターに乗っていた敵もひょっとしたら温泉に来ているのかも』と分析)に危うくバレそうになったその時。

「リーヤくん…あたし、もう、ダメ…」

一緒に入浴していたマリンがのぼせて貝殻のボートの上で力尽きるのを見てチャチャたちは介抱の為に温泉から出ていき、何とか事なきを得たソーゲス。

 

「先生の回復魔法で何とかならないの?」

客間の布団の上でまだ目を回しているマリンをうちわで扇ぎながらチャチャがアーリンに問いかける。

「うーん、湯あたりは怪我とか病気じゃないからなぁ…まぁダメ元で掛けてみるけど」

二日酔いならぬ温泉酔い扱いになるのかなぁ、とハテナマークを浮かべながら真っ赤な顔をしてぐったりしているマリンに魔法を掛ける。

「戦の神よ、この弱りし者の体内を蝕むものを浄化せん…『キュアポイズン』」

淡い光がマリンを包み込み、しばらくすると顔色が元に戻っていく。

本来は毒を消す魔法なのだが、案外湯あたりにも効果があった現況に少し驚く。

「湯あたりにも効くんだ…これ、覚えとこ」

そして不敵に笑いながら手ぬぐいを持って外に出ようとするアーリン。

「よし、もう1回浸かりに行こう!」

「行きましょ行きましょ~!つるつる肌になるわよ~」

「アーリン、意外と温泉好きね…」

きゃいきゃいはしゃぐ2人を遠い目で見るリナなのであった。

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