異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
「こちらが宴会場でカラオケもあるでプー」
「宴会を頼んだ覚えは無いんですけど」
「サービスでプー」
ベップーが案内した先は大広間、そして目の前に広がるごちそうと…。
「アリーナ先生!」
「やっほー」
先に部屋に入ってごちそうを食べているアリーナの姿があった。
口をもぐもぐさせながらチャチャたちの姿に手を振る。
そして真っ先にアリーナの周りに駆け寄るアーリンたち。
「アリーナ、無事だったのね!」
「いやー、流石のボクも今回は参ったよ」
「あんな状況でまぁ怪我もなく…って訳じゃないわよね」
「でもここの温泉で大分良くなったよ、ほら」
アリーナの腕の腫れも殆ど引いている。
「はぁ~…。全く、あの裂けた木とかえぐれた地面を見て心配したのに」
「そうそう、引き摺られてた跡があったから自力で動けない状態だったんでしょ?」
「最悪の事も予想してたわ」
「あはは…ごめんごめん、ここの主人に助けられて…いや本当に運が良かった」
仲間に心配されて反省するアリーナ。
「という事で…ここの温泉の宿代はアリーナが全部持ちね♪」
「はぁ!?」
「わたしたちを心配させたんだから当然でしょ?」
「なのに当の本人は温泉に浸かってご飯食べて…」
酷い言われようである。
「その割にはアーリンたちも温泉を満喫してたんじゃないの?ボクと同じ浴衣姿だし」
「成り行きよ成り行き、どっちにしても迷惑掛けたお詫びは必要よね」
言ってる事が無茶苦茶だが、結局は数の暴力で押し切られてしまう。
「主人、お酒どんどん持ってきて!」
「このお魚美味しいわねー」
「アリーナさま、ごちになります!」
「うう~、ボクの給料が吸い取られていく~」
肩を落として3人の豪遊を見つめるアリーナだった。
(確か…そろそろ吊り天井が落ちてくるんじゃないかしら)
(セラヴィーが声を掛けるからさりげなく行くわよ)
山海の珍味を満喫しながらも物語の進行はしっかり確認する4人。
「あ!あんなところに合格印」
セラヴィーの言葉にチャチャたちが窓側の通路に向かう。
当然アーリンたちも不自然さが無いようにセラヴィーの元へ。
「のようなまん丸のお月様ですね」
と言った瞬間に―
ドン!
空気を押し潰すような衝撃音を立てて、チャチャたちの背後で天井が落下する。
その天井は1階に居るソーゲスの部屋も巻き込み、彼をペシャンコにしてしまう。
(天井の下敷きになっても生きてるソーゲスも凄いわね)
(まぁ…腐っても中級クラスの魔族だからねぇ…)
大きくぽっかりと穴が開いた大広間を見ながら子どもたちを怯えさせないように誘導するアーリンとリナ。
翌日。
ベップーがお詫びにとチャチャたちをバンジージャンプならぬカゴカゴジャンプで楽しませる。
しかしその隙を狙って川の水を瞬間湯沸かし器の術で熱湯にしてしまい、そのカゴが熱湯の川に浸かりそうになる。
慌てふためくチャチャたちを尻目にリーヤが馬鹿力でカゴを吊り上げようとするが途中で綱が切れ、再び落下。
魔法使いの3人は箒で脱出。
お鈴ちゃんは自力で。
マリンはリーヤに抱かれて岩場に着地。
しかし物陰から現れたベップーがお鈴ちゃんとマリンをさらい、チャチャをおびき寄せる。
その罠に掛かったチャチャは時間が来ると噴き出す間欠泉を浴びそうになるが、態勢を取り戻したやっこちゃんの自家製ドライアイスで間欠泉を凍らせる。
しかし間欠泉の勢いは止まらず、リーヤとしいねちゃんも駆けつけて全員が集まったところで熱湯で逃げ道を塞ぎ、灼熱の温泉水で沈めようとするが、チャチャが全員を逃がす為に召喚魔法を唱える。
「出でよ、ボート!」
しかし出てきたのはボートではなく棒が刺さった大きな扉だった。
「いやー、流石チャチャさん!棒が刺さった扉、つまりボートですね!」
しいねちゃんのフォローになってないフォローに涙するチャチャ。
それでも全員が扉の上に乗った瞬間に間欠泉が足元から噴き出して、間一髪熱湯を浴びるのを回避するのを見て、自分の思うようにいかないベップーは激怒した。
「こうなったらと変身っプ!」
自らに変身魔法を掛け、巨大な土偶と化したベップー、自称『ダイベップー』がチャチャに熱湯の温泉水をぶちまける。
「派手にやるわねー」
「通りすがりの洗濯屋に変装したセラヴィーの泡バリアーで何とか防いでるけども」
「今回は歪みは無さそうね…」
「黒幕もタイミングを選んで狙ってるのかしら」
飛んでくる温泉の熱湯をリナの氷結弾(フリーズ・ブリッド)で凍らせて安全地帯からチャチャたちの戦いを見る4人。
結局チャチャのホーリーアップにより変身したマジカルプリンセスのビューティ・セレインアローで大ベップーは消滅、その衝撃でゴクラクラ温泉の地下水が暴発し、隣の火山が大噴火。
轟音とともにマグマが噴き上がる。
「あち!あちち!」
湯治中に温泉を熱湯にされて避難していたソーゲスにマグマの欠片が飛び、包帯に燃え移る。
それを外そうとして頭の包帯を取った瞬間に隠していた合格印が地面に落ち、転がっていく。
慌てて取ろうとするソーゲス、しかし流れるマグマが合格印を押しやり、地面の揺れでソーゲス自身も麓まで転がっていってしまう。
岩に引っかかった合格印をチャチャが見つけて取ろうとするが、その目の前でマグマが噴火、合格印はそのまま山の向こうまで飛んで行ってしまった。
「合格印が~!」
「チャチャ、こっちの道がまだ大丈夫だ!」
リーヤが見つけた安全地帯を駆け抜けるチャチャたち。
「さて…アリーナくん、君に使命を授けよう」
「へ?使命?」
「実は学園から戻るように魔法通信が届いてて…」
そう言ってアーリンはアリーナの肩をぽん、と叩く。
「取りあえずは1人だけチャチャのサポートを続けて後のメンバーはとっとと学園に戻ってきなさい、って連絡が来たのよ」
「で、何でボクなのさ!?」
「温泉街で一人だけサボってたでしょ?」
「サボってないって!怪我してたんだよ、け・が!」
「その怪我も完治したでしょ?なら大丈夫大丈夫」
問答無用とばかりにアリーナに面倒ごとを押し付ける3人。
「くうぅぅぅ!3対1は卑怯だぁ!」
「はいはい、行ってらっしゃーい」
「分かったよ!…絶対、取り返してくる!ちくしょう、合格印を手に入れたら追加報酬の交渉してやるうぅぅ!」
そう言って荷物を掴み、トレードマークの青い三角帽子を被り直してチャチャたちの後を追う。
「おっと忘れてた、合格印を取り戻したらこの宝石に話しかけて!一瞬で学園に戻れるから!」
リナがせっせと夜なべして作った転移のタリスマンをアリーナに投げる。
「了解!なるべく早く帰るね!」
キャッチしながらそのまま駆け出していくアリーナの姿をアーリンたちは見送る。
(頼んだわよ、アリーナ。マイリー神よ、彼女に加護を…)
英雄としての顔に戻ったアーリンの祈りは、誰にも届かぬまま風に溶けていった。