異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~臨時講師昇給試験~

無事にうらら学園に戻ってきたアリーナを出迎える他の3人。

「ただいま!」

「無事に合格印も手に入れたみたい…ってその傷跡は何!?」

アーリンが驚きの声を上げる。

送り出した時に比べてボロボロになった服、全身には切り傷。

何より―脇腹に、抉り取られたような深い傷跡が残っていることだった。

「いやー、ちょっと歪みと踊ってきちゃった(はあと)」

(…死ぬかと思ったけどね)

その軽さとは裏腹に、命を賭けた死闘だった事を脇腹の傷跡が生々しく物語っていた。

「『踊ってきた』じゃないでしょ!」

リナの突っ込みが容赦なく飛ぶ。

「流石にちょっと痛いからやめてね…」

そしてルナは―

「…本当に心配したのよ!」

涙声で、強く―逃がすまいとするように彼女を抱き締めた。

「そうそう、流石に何かあったら大問題でしょ、と今日の朝にバチバチやり合ってたのよ」

「珍しいものを見たわ~。アーリンがあんなに啖呵切って睨みつける姿」

「えーっと、『私の大切な仲間を放っておいて試験問題なんて作れるか!』だっけ」

「あとは『明日になっても彼女の帰還が無かったら学園長が何と言おうが私たちは応援に行くぞ!』も言ってたわね」

「いやー、熱血漢だねぇ」

ルナとリナに囃し立てられ、アーリンの顔が真っ赤になる。

「あ~ん~た~ら~!!」

 

そんなやり取りを見ながらアリーナは目頭が熱くなるのを感じた。

(こんなに心配してくれたんだ…)

「アリーナ!別に恩義を返そうとか思わなくて良いわよ?合格印を手に入れたんだからそれが一番の報酬よ!」

心の中を読まれたのだろうか、アーリンが笑顔で彼女を見つめて、親指をグッ、と立てる。

つられてアリーナも同じような指のポーズを見せるのだった。

 

「あらあらあら~、仲間同士の友情って素晴らしいわね~。私も学園の事ばかり気になってたからあんな命令を出したけども今となっては反省してるわ~」

後ろでうらら学園長がにゅいっ、と顔を出して申し訳なさそうな表情を浮かべる。

いつもの顔なのだが、ちょっとオーラが弱々しい。

「いや、私も言いすぎました。ただ私たちにも本来の使命というのがありまして…詳しくは言えないのがもどかしいんですけども」

「いいのよ~。人には言えない秘密はいくつもあるわ~」

そこまで言って一息。

と、学園長を中心に空気が一瞬で凍り付き、先程までの柔らかな雰囲気が霧散した。

「この話はここでおしまい、早速だけども卒業試験問題製作に取り掛かって貰うわよ~?ラスカル先生に教えて貰いなさいな」

ああ、やっぱり学園長は学園長だな…と全員心の中で一致するのだった。

 

「バナナ組の試験問題はもう出来上がったからな、お前たちにはりんご組の試験問題を手伝って貰う」

「助かるよ~、私だけだとどうしても偏りが出来るからね」

りんご組の担任、バラバラマン先生と一緒に試験問題を作る4人。

「この試験問題…過去のものとか見たけど、これはぽっと出の新任じゃ無理だわ」

アーリンがため息を付きながら筆を動かす。

「生徒ひとりひとりの特性を見極めて、能力を伸ばせる内容の試験問題をそれぞれ個別に作ってるのよね…それも担任が殆ど手掛けてる。おっと、この子は魔力制御が甘いわね、基礎理論をこうやって…」

「今回はわたしたちが手伝ってるけども、この量を作るのは大変よ。しかも基本的には『必ず合格する』ようにした上で、生徒たちの特性を伸ばす事が条件とか難易度が高すぎないかしら?…この子は貴族の子ね、なら王宮レベルのマナーを重視しましょう」

リナとルナも資料に目を走らせながら、手を止めずに問題を作っていく。

「うわ~ん、ボクはこういうの本当に無理なんだよ~!頭が痛くなる~!」

「そう言いながら戦闘分野関連の問題はすらすらと作れるのよね、この子」

泣き言をいいながらも何とか手を動かすアリーナと合間を見て隣でその流れを見るアーリンの姿。

 

「やっと…終わった…」

真っ白な灰になりながら最後の一枚をバラバラマン先生に渡すアリーナを見たラスカル先生は、納得の表情で頷きながらテーブルの上に用紙の束を置く。

「お前ら、無事に終わらせたようだな!流石臨時講師に選ばれただけの事はある」

「うらら学園の教師の離職率が高い理由が分かった気がする…」

「その分ここの学園を卒業した者は高い地位や重要なポジションを占める率が高いんだ。何せ魔法の国の中で一番の進学校だからな」

そう言いながらアーリンたちの前にテスト用紙を置いていくのだ。

「ラスカル先生?これは何?」

ルナの言葉に彼が胸を張る。

「というわけで―今からお前たちも試験だ」

『…は?』

4人が同時にハモる。

「臨時講師は毎年昇給試験がある!受かれば給料アップ、もちろん落ちたらダウンだ!しっかり頑張れ!」

『き、聞いてないよー!!』

 

ペーパーテストを終え、全員疲労の色が隠せない。

「地味に採用試験より難しくなかった?」

「異世界の人間にこの国の歴史、しかもゴシップ的なニュースを出題とかふざけてるわよね…」

「それでも解けるところは全部解答したわ…あーしんど」

「後半ほとんど直感で書いたけど…これ無理だよね、だよね?」

4人の嘆きを無視してラスカル先生が本を広げる。

「最後は私と1対1の面接で問題を出すからな、ちなみに加点は30点だ」

「点数多っ!」

「何この一発逆転問題みたいなノリは!?」

アーリンとリナが突っ込みを入れるが、気にせず本を広げて手招きするラスカル先生。

「仕方ないわねぇ…私がまず行ってくるわ」

そう言いながら教壇まで歩みを見せるアーリン。

 

アーリン、アリーナ、ルナが問題を終え、次はリナの番。

「だいたい専門分野の問題みたいね…。アリーナでもちゃんと解答出来てるくらいだし、あたしなら楽勝でしょ」

そう言ってラスカル先生の前に立つ彼女。

「よし、最後はリナか!お前は頭が良いからちょっと難しくするぞ!」

「しなくていいから…」

肩を落とすリナに向かってラスカル先生の口が開く。

「じゃあ問題だ、制限時間は10秒!」

(10秒!?短すぎない!?)

リナの驚きには目もくれず彼は問題を読み上げる。

「ラドゥサとラドゥサを足すとアリステラになる。その時、サリアはいくつだ?なおサリアは400以下の数字で、サは0では無いものとする。複数ある場合はひとつだけで良いぞ」

(桁数一致、繰り上がり前提、ラドゥサ×2=アリステラ…)

 

「……321」

 

ラスカル先生の言葉が終わって一呼吸の間にリナが解答する。

一瞬の緊張感が2人の間を抜ける。

「正解だ!リナなら一瞬で解ける問題だったからな、簡単すぎたかな?」

「(専門外、即答必須、しかも上位算術!?頭おかしいでしょ、この試験!)…先生、生徒によって難易度を大幅に上げないで下さいね?」

ジト目でラスカル先生を見つめるリナ。

「大丈夫だ!そんな理不尽な事はしない!多分!ハッハッハッハッ!」

(信用出来るかぁぁぁぁ!)

ラスカル先生が大威張りで高笑いをする姿に心の中で叫ぶリナなのであった。

 

~解答~

※覆面算:ラドゥサ=6453、アリステラ=12906、解はサリア=321

 

「よし、今からバナナ組の卒業試験だ!みんな準備しとけよ!」

高笑いを続けながら教室を出ていくラスカル先生の背中を見ながら、椅子に凭れるアーリンたち。

「つ、疲れた~」

「さらにこの後卒業試験とか、わたしたちの体力をまるっきり無視してるわね…」

「まだ頭がブスブスしてる~」

「はいはい、とっとと行きましょ。チャチャたちの『物語』が始まるわよ?…今回は多分、大きな歪みは無いはずだけどね」

4人はゆっくりと立ち上がり、重い足取りでラスカル先生の後を付いていくのであった。

 

 

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