異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~卒業試験~

「おはよー!」

「おはよう!」

卒業試験を受けに来た生徒たちを、教室の窓辺から静かに見下ろすアーリンたち。

ガラス越しに聞こえる賑やかな声は、どこか遠い出来事のようでもあり―それでいて確かに、彼女たちの守るべき現在でもあった。

「いよいよ試験か…」

「そのわりに、みんなずいぶん呑気よね。ほら、あれ」

ルナが指を差した先にはチャチャたち―リーヤ、しいねちゃん、マリン、しいねちゃんに囁いて一瞬で通り過ぎたお鈴ちゃん、そしてやっこちゃん。

半ば漫才じみたやり取りをしながらもその姿は姦しい。

「相変わらずあの面々は…緊張感の欠片も無いというか何と言うか」

 

「あれ?卒業試験の問題変わってない?」

「さっき『全世界学校卒業試験請負人』のソーゲスとやらが今まで作った問題は甘すぎる、という事でこの問題になった!」

(それでいいのかラスカル先生…)

自分の作った試験を止めて正体不明の請負人に任せるのもどうかと思う。

(ここで止めても流れは変わらない…物語の強制力、か)

そう思いながら、アーリンは答案用紙を用意する。

ソーゲスの自己紹介が済み、彼が指を鳴らすと激しい揺れが教室全体を襲い、驚くバナナ組の生徒たち。

(始まったわね…)

アーリンはちらりと窓の外を見る。

何もなかった地面が隆起し、大きな岩山が出来上がっていくのがよく分かる。

揺れが収まり、生徒たちが窓の外を見ながら驚きと歓声の声を上げていた。

ソーゲスは何事も無かったかのようにアーリンから答案用紙を受け取り、彼の部下の同じ中級魔族のヨーダスとハイデヤンス(親族らしい)が何やら怪しげな機械を床に置く。

「卒業試験はふたつあるでゲス、あの岩山の頂上までたどり着いた者が合格でゲス」

『ええ~!?』という声が重なり、ざわめく教室。

「まず筆記試験に合格しないとダメでゲス」

「よっしゃあぁ!」

「どうしたのやっこちゃん?」

ソーゲスの言葉が終わらないうちに拳を握りしめて叫び声をあげるやっこちゃん、それを見て不思議な表情で質問するチャチャ。

(あー、やっこちゃんが何かやらかすわね)

(絶対チャチャ絡みよね…)

あからさまな彼女の仕草に苦笑いをするアーリンとアリーナ。

 

ヨーダスとハイデヤンス、そして4人が答案用紙を配る。

チャチャたちの席にハイデヤンスが配るとわざとらしく「おお、1枚足りないでヤンス!」とチャチャにだけ用紙を渡さない。

そこにヨーダスが「1枚だけ残ったダス!」と明らかに色がおかしい答案用紙を彼女に渡すのだ。

(そこで「ほっ」とか言わない!おかしいでしょうが!)

物語の進行を妨げられないと分かっていても、突っ込みを入れたくて仕方ないリナが目力を強めてチャチャを見る。

あの答案用紙は、時間が経つと○と×が反転する呪い付きの代物だ。

(本気でタチの悪い趣味してるわね…)

答案用紙を見ながら呆れ顔になる彼女。

 

そして判定機で合否を判定するとソーゲスが言ったと同時に試験が始まる。

やっこちゃんが自分のマジックアイテム(時間が経つと〇と×が変わる『スベッテラー2B』という魔法の鉛筆)をチャチャに握らせるためにわざと彼女の鉛筆を折り、予備を正拳突きで粉砕させる不審な動き。

 

試験が終わり、判定機に問題を通すクラスの面々。

どちらか片方だけなら最悪だった。

だがソーゲスの細工とやっこちゃんの悪知恵が、妙な形で噛み合ってしまった。

当然ながらチャチャも合格。

 

打ちひしがれるソーゲスとやっこちゃん。

「ソーゲスさん?全員合格したから良かったんじゃないの?」

分かっていて肩をぽんぽんと叩くルナ。

(うわ~、追い打ち掛けてるわ、姉ちゃん)

(見て、ソーゲスの顔!こんなはずじゃなかった、って顔してる)

笑いを嚙み殺しながらリナたちが落ち込むソーゲスを見る。

 

場所は変わって裏山のほとり。

山に行くにはまず湖を渡らないといけないのだが、ここでもソーゲスたちが邪魔をする。

タコ型マシンで泳ぐチャチャの足を引っ張ろうとするのだが、先に動いたのはマリン。

シャコガイを召喚し、ビート板(チャチャが召喚した)で泳ぐチャチャを引っ張り込む。

水中でもがく彼女は召喚術で何とかしようとするが、水を飲んでしまい詠唱が滅茶苦茶に。

泡だけがぶくぶくと浮かび上がり、言葉は水に溶けて消えていく。

それでも無理矢理召喚した、棘の生えた大ナマズがシャコガイに襲い掛かりチャチャはその隙に殻から抜け出す。

次はやっこちゃん、チャチャの周りだけを凍らせようと『やっこ印のコオリマンネンG(ゴールド)』を用意するも手を滑らせて湖ごと凍らせる。

身動きが取れないバナナ組の生徒たちだが、お鈴ちゃんが刀で全員を拘束する氷を斬り、事なきを得る。

氷上を進むバナナ組の生徒たち、その水面下でようやくタコ型マシンが起動…も凍ってしまって動けない。

「何してる!次はうまくやるでゲスよ!」

先に頂上付近で待っていたソーゲスが失敗した報告を受け、ヨーダスとハイデヤンスを叱責する。

「ソーゲスは文句ばかりダス」

「自分でやればいいでヤンス」

どうやらこの3人の関係はお世辞にも良いとは言えないみたいだ。

 

(とりあえず今のところは歪みはないわね、多分だけども)

(この後は…山頂付近で鉄球転がしか)

「そこ!早く転がすでゲス」

「はいはい…人使い荒いわね」

アーリンたちはソーゲスの指示で鉄球を麓に転がす。

「まぁ重量はあるから見た目は本物っぽいんだけど、生き物に当たるとその部分が途端にクッション化する魔法の鉄球なのよね、これ」

「本物の鉄球なんて使わないよーだ」

リナとアリーナはソーゲスに聞こえない程度の小声で呟き、すり替えておいた鉄球モドキをさも本物っぽく押して転がす。

まともに見れば、魔導士のリナが押せるはずもない。

だがソーゲスの視界は常に『チャチャを妨害する事』で埋め尽くされている。

そんな余裕は最初からないのだ。

 

それでも途中まで本物と遜色ない鉄球が転がってくるのは恐怖以外の何物でもない。

お鈴ちゃんが刀で鉄球を斬るも、数が多すぎて捌ききれない。

そのうち、刀が欠け、防戦一方に。

当然、残った鉄球はバナナ組の生徒に直撃しそうになる。

マリンが大量のテトラポッドで防ぐも鉄球がそれ以上の量で押しつぶし、大量の鉄球が彼女たちを襲うが、今度はやっこちゃんが『マグネモピッタリF(特許出願中)』を使って磁石にして一気に固めていく。

 

とうとう痺れを切らしたソーゲス、ヨーダスとハイデヤンスを材料に鉄球に魂を入れる魔術で鉄球モンスターを作成。

お鈴ちゃんが、リーヤが攻撃するもバラバラになった瞬間にまた磁力でくっつくのだ。

「またくっついた!」

「嬉しそうに言わないでよ!」

チャチャが喜び、やっこちゃんが突っ込み。

「誰のせいなのよ誰の!」

「お、おほほのほ~」

マリンが怒りの声を上げ、誤魔化すやっこちゃん。

 

この後チャチャたちを追い詰めるが、ホーリーアップを行ったチャチャのビューティ・セレインアローで鉄球を消滅させるのだった。

 

「おのれ、覚えてるでゲス!」

ソーゲスは鉄球を消滅させた為に元に戻ったヨーダスとハイデヤンスを引き連れてこの場から逃亡する。

「まぁあの程度じゃチャチャたちは倒せないわよねぇ」

逃げ帰るソーゲスを見送りながらアーリンが呟く。

「本来ならね…。でも歪みが入るとその限りじゃなくなる」

「大丈夫だよ、ボクたちもここまで歪みを倒せてるし、黒幕を見つけるのも時間の問題だって」

「なら良いんだけどねぇ」

アリーナの言葉にリナが眉を顰める。

(そんな一筋縄では行かないわよね…いや、アリーナの言う通りであって欲しいんだけども)

リナは山頂を見上げた。

青空はどこまでも澄んでいる…それが逆に、不気味なほどだった。

 

頂上にたどり着いたバナナ組の生徒を讃えるラスカル先生、そしてお雪先生。

感情を爆発させると猛吹雪を出すお雪先生に逃げ纏う生徒たちであった。

 

 

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