異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
~チャチャの正体が明かされる~
雲一つない青空、さわやかな春の風。
それでもどこか、空気の奥にざらつく気配があった。
アーリンたちはこれから始まる出来事を確認するためにもちもち山へ向かう。
「さて、そろそろセラヴィーの家ね」
「チャチャたちは何をしてるんだろ…」
セラヴィーの家の前で一行は立ち尽くす。
クイズ番組のセットが置かれ、そこに居る回答者はやっこちゃん。
そして顔を引きつらせるチャチャと、亀の変装をしたセラヴィーたち。
「私の完璧な変装を見破るとは…やっこちゃん、やりますね…」
「なにあの茶番劇」
「どうやらやっこちゃんがセラヴィーの弟子になりたくて押しかけてきたみたい」
「チャチャは打ちひしがれているし」
アーリン、アリーナ、ルナがそれぞれ呆れ顔で呟く横でリナが口を開く。
「というかやっこちゃんはあたしの弟子でしょ?半年限定だけど」
「え!?いつの間に…?」
驚きの声を上げるのはアーリン。
「あの子の薬学知識と魔力制御に興味があってね。弟子という扱いだけど技術協力者みたいなもんよ。まぁ、あの子は『でも本当の師匠はセラヴィー先生なんです…(はあと)』とか言ってるけどね、はは…」
「それくらい理解しときなさいよ」
リナの言葉にルナが突っ込む。
そんな話をしていると空から魔力を帯びた箒が地面に墜落する。
制御を失った箒は地面を転がり、跳ね飛ばされた人物がチャチャたちの目の前で倒れ込む。
「へんなおじさ~ん!?」
(いや、ソーゲスだから…いつになったら覚えるんだろうか)
疲労で魔力制御を乱したのか、ソーゲスは無様に墜ちてきた。
彼の衣服は焼け焦げ、魔力は乱れ切っている。
ついでに衝撃で亀の変装をしていたセラヴィーたちも転倒していた。
「私は大魔王の腹心だったソーゲスでゲス、大魔王に殺される、助けてゲス!」
(おやおや、意外に物騒な話になってきた)
アーリンたちも話に参加する。
そして後を追ってきたハイデヤンスが恐竜に変身して着地。
「チャチャも居るとは好都合!命を頂戴するでヤンス!」
「えー!またわたし~!?」
嘆くチャチャの横で大魔王の命令でチャチャを狙っていた事を白状するソーゲス。
「アクセスという男が帰ってくるでゲス、私は邪魔になったんでゲス」
「…アクセス!?」
セラヴィーはその男の名前を知っているのか、眉をひそめて呟く。
なおまだ亀の変装のままだった。
「やっこ印の『モンスターも小さくなればただのトカゲよエーックス』!チャチャ、最後のテストはこいつをやっつけるというのはどう?」
不敵な笑みを浮かべ懐から魔法薬を出し、恐竜に立ち向かうやっこちゃん。
「あ、一応うらら学園長から弟子のお願いもされたんだよね」
「うらら学園長から依頼?何で?」
その後ろで彼女たちのやり取りを見ながらリナが説明する。
「それはね…アレよ」
「これでセラヴィーさまはあたしのものー!ほーっほっほっほっ!」
高笑いを上げながら魔法薬を投げ、恐竜に命中させる。
恐竜は驚いた声を出しながら全身を輝かせ―巨大化する。
「あ~!薬間違えた!あれは『大きい事は良い事だG』だった~!」
やっこちゃんの絶叫がいつの間にかアーリン以外全員逃亡してしまった、人の気配が薄い草原に響く。
「あのドジっ子属性…あれ、魔法使いには結構致命的なのよね」
「それでリナにお鉢が回ってきた、と」
「まぁあたしもこの世界の魔法体系とか錬金術系にはかなり興味あるからね」
そんな会話をしているうちにやっこちゃんは気絶、チャチャたちに恐竜が向かってくる。
チャチャはホーリーアップを始め、マジカルプリンセスに変身。
「ビューティ・セレインアロー!マジカルシュート!」
突っ込んでくる恐竜に向けて魔法の矢の一撃。
あっさりと恐竜は消滅し、ズタボロのハイデヤンスが宙を舞いながら『覚えておれでヤンス~』と捨て台詞を残して逃亡していった。
「ありがとうございますでゲス、王女様。あなたこそ、魔法の国の王家の血を引く王女様でゲス」
ソーゲスの言葉にセラヴィーが「今こそ、真実を明かす時が来たのです」と変装メガネ姿で真面目に言う。
勿論周囲はドン引きするわ、どろしーに「早く変装解きなさいよ!」と突っ込まれる始末であった。
この後、セラヴィーの家に上がり込むチャチャたち。
アーリンたちも一緒に付いていく。
大昔に戦う事が好きな魔族が国を支配する為に戦争を起こし、人間を中心とした反魔族軍が抵抗するも蹂躙されてしまう。
その中で魔法使いの一族から救世主、《マジカルクイーン》ジョアン1世が神から与えられた武器を手に魔族の将軍を倒し、北の島に結界を張って魔族たちを封印、魔法の国の初代女王になったという歴史があったのだ。
彼女が振るった剣は光をまとい、そのひと振りは邪悪な魔族の心を浄化する程の威力を持っていた。
その魔法の国の血を引くのがチャチャ。
マジカルプリンセスに変身出来たのもその血筋によるものだったのだ。
「同じプリンセスだからボクも変身出来るかな?」
「あんたの場合は身の丈5メートルくらいのオーガに変身じゃない?」
アリーナの願望をものの見事に叩き潰すリナ。
なおその後物理で叩き潰されそうになったのは言うまでもない。
建物の外でヨーダスが盗み聞きをしていたのをリーヤが発見、逃げるヨーダスをチャチャたちが追いかける。
命を狙われているという事実にクッションを頭から被り、恐怖で震えが止まらないソーゲスを尻目にセラヴィーとどろしーはお茶の準備。
もちろんアーリンたちもご馳走して貰う。
ヨーダスの罠(チャチャの水着ブロマイド…いつの間に撮ったんだ?)に引っ掛かってしまったしいねちゃんは催眠術で悪堕ちしてしまう。
師匠のどろしーを『厚化粧女』と罵る姿に彼女は全身から滝のような汗を流しながら「せ、セラヴィー…話の続きを、やって…!」とセラヴィーにしがみつく。
「反抗期ですかねぇ?」
とぼけるセラヴィー。
今度は人形劇風にして歴史の続きを語るセラヴィー。
ジョアン1世の統治の元、平和な時代が続いた魔法の国だったが、その結界を壊す程の強い力を持った魔族が現れ、自らを大魔王と名乗り魔法の国に攻め入ったのだ。
そして国王と王妃は石に。
「わ、わしは見たでゲスよ!その石像!」
冷や汗を流しながら石像の人形を指差すソーゲス。
「ちょっと待って、王様は大魔王に王位を譲ったんじゃなかったの?」
「それは大魔王が流したデマです」
どろしーの疑問にセラヴィーが答える。
そこへ『セラヴィーだって近衛隊長の癖に国王を守れなかったんだろ』とやさぐれるしいねちゃんの言葉に半ギレ。
「先生がめずらしく怒ってる」
何とか怒りを封じこめながら、話を続けるセラヴィー。
先代の国王のジーニアスも大魔王と戦い、敗北してしまったという事。
何かあった時はセラヴィーがチャチャを育てる事。
大魔王によって宝石に変えられた時に城の周りに結界を張った事。
そしてその宝石はチャチャのプリンセスメダリオンにはめ込まれている事。
「え~、この中におじいちゃんが…おじいちゃ~ん」
泣きながらメダリオンに言葉を掛けるチャチャ。
(実は聞こえてるのよね…微弱だけど、チャチャの問いかけに魔力が反応しているもの)
リナが笑みを浮かべる。
国王と王妃、先代の国王(つまりチャチャの父母と祖父)を元に戻すには大魔王を倒すしかない。
「セラヴィー先生…よろしくお願いします」
「チャチャがやるんですよ…?」
(こら主人公!そんな後ろ向きでどうすんのよ!)
(あ~叱りたい、叱りたいわぁ…)
講師でもあるアーリンたちの心の叫び。
ソーゲスを見送ろうとするチャチャとリーヤの向こうからやって来るのはオートバイ箒に乗ってボンタン学ラン姿のしいねちゃん。
自分の事を『しいね様』と呼べ、とか『お前ら俺の事を馬鹿にしてるだろ』とか不良少年(洗脳)の様相を見せる彼はチャチャにも手を上げ、リーヤと取っ組み合いの喧嘩に。
そこに現れたのがヨーダス、マジカルプリンセスに変身出来ない限り、チャチャは赤子も同然と言い放ち、変身魔法で蟹に変化して襲い掛かる。
甲羅の硬さにリーヤが弾き飛ばされ、それを見たチャチャが召喚魔法を唱える。
「出でよ!アツアツの鍋!」
鍋に入れられたヨーダス蟹、しかし火力不足でいい湯加減に。
「いや~いい湯ダス」
「そんな~」
涙目のチャチャ。
結局足止めすら出来ず、チャチャはヨーダス蟹に襲われる。
しかし真っすぐ歩けないという弱点を見破られ、リーナの押し倒しで無様にひっくり返ってしまった。
「なんたるざまでヤンスか?ここは一時協力するでヤンス」
ハイデヤンスはそう言うと自らを海老(というかザリガニ)に変身させ、合体すると、脱兎の如く逃げまとうチャチャをあっさりと捕らえてしまうのだ。
何とかホーリーアップを発動させるも悪堕ちしたしいねちゃんが同意せず、一転して大ピンチに。
(とりあえず、しいねちゃんを一発しばいて正気に戻しておかない?)
(こらこら、気持ちは分かるけど手出ししないの。見ててごらん)
アリーナが飛び出そうとするがアーリンがその腕を持って止める。
リーヤが『三人一緒に戦ってきたじゃんか…!』と涙をこぼしながらしいねちゃんの服の襟をつかんで揺さぶる度に、しいねちゃんの洗脳が解けていく。
そしてリーヤがパンチを繰り出そうとした時に完全に洗脳が解け、いつものしいねちゃんに戻るのだった。
(ほらね、ここは物語通りよ)
(そうだとしても一番ボクの嫌いなやつじゃないか~)
ひねくれた考えとか仲間のいがみ合いを嫌うアリーナはまだ不満げだが、それでもチャチャたちはホーリーアップを発動、マジカルプリンセスに変身してビューティ・セレインアローで蟹と海老を消滅させる。
「王女様!その弓矢であの2人の悪の心も直して欲しいでゲス!」
ソーゲスの言葉にチャチャは再びビューティ・セレインアローを放ったその時だった。
馬蹄の音が空気を震わせ、その瞬間に草原のざわめきが止まる。
「はぁぁぁぁぁ!!」
馬に乗った人影がヨーダスとハイデヤンスの前に飛び出し、振るった剣でアローを叩き落とす。
驚くチャチャ、しかしならば再びともう一度アローを放つが今度は前に突き出した手で握りつぶされる。
「アローが…効かない…!」
顔面蒼白のチャチャ、そして彼女を守るリーヤとしいねちゃんだが、絶望に近い表情を見せる。
「ふふふ…死ね、マジカルプリンセス!」
アクセスはそう言うと馬で彼女たちに向かって突進して、剣を振りかぶる―
ガキィン!
「危ない危ない、貴方の相手は私たちよ!」
剣を受け止めた衝撃が腕を震わせる。
それでも、退かなかった。
「アーリン先生!」
「大丈夫?」
心配そうに見つめるチャチャの頭を優しく撫でるアーリン。
「安全な場所で待ちなさい、もうすぐセラヴィーも来るわ」
「わ、分かった!」
そう言って少し離れた木の影で待機するチャチャたち。
「ほう…貴様らが『あのお方』の言ってた人間どもか」
「アクセスじゃない。あんたの本体は、その鎧の方でしょ?…あんたの目的は何なの?」
「さぁな、私が受けた命令は『人間どもを殺せ』だ」
馬から降り、剣を構えたアクセスの気が一気に膨らむ。
鎧の中心に埋め込まれている漆黒の宝珠から溢れた瘴気は抜いた剣の刃先に絡みつく。
「ちっ…!今までの相手とは様子が違うわよ!」
「あの鎧が歪みよ!アクセス自身を取り込んでるわ、不味いわね…」
今までの歪みとは違う。
アクセス自身の技量もアーリンたちと遜色ないレベルと肌で感じ取れる上に歪みがその能力を増強している。
(今までの、敵とは違う)
アークスレイヤーの柄を握る力が、さらに強まった。