異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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残酷表現あります。
流血表現あります。


第5章:英雄たちの落日、そして再起
~英雄たちの死闘~


「とりあえず拳で説得してみる!」

言うなりアリーナが地を蹴る。

距離を一瞬で縮め、アクセスの懐に潜り込む。

「甘い」

拳をその脇腹に叩きこもうとして―消えた。

「!?」

「遅い」

感情の無い声が耳元で囁かれ、逆にアクセスの剣がアリーナを襲う。

バックステップで回避し、今度は彼女のはやぶさの剣による連撃。

「これでどう!?」

「まだ荒い、これでは私は倒せまい」

「まだまだ!」

アリーナが叫ぶと再び高速の矢のように駆け出す。

再びはやぶさの剣が閃く。

剣での一撃、続けざまに拳の二撃、蹴りの三撃。

常人では目で追えない連撃。

だが―全て受け止められている。

金属音と火花は散る、拳や蹴りの衝撃音は大きい。

だが―見切られている。

 

「援護するわ!」

リナの声が響く。

「『炎の矢(フレア・アロー)』!」

何十本の炎の矢がアクセスに降り注ぐが、まるで片手間のように剣で弾いていく。

「ならば、『氷の矢(フリーズ・アロー)!』」

今度は氷の矢、触れれば良くて凍傷、悪ければ氷漬けだ。

今の歪みに取り込まれたアクセスなら動きでも止めれるはず。

だが―

「こんなものが効くとでも思っているのか」

素手で何本もくわえ込んで、一気に叩き折る。

「じゃあ、これなら―」

いつぞやの脳筋姫を止めた、あの連携魔法。

明かり(ライティング)からの影縛り(シャドウ・ステップ)。

これなら確実に足を止めれる。

そして懐のナイフを取り出し一歩を踏み出した、その瞬間。

 

足元の地面が抉れる。

ついさっきまで自分が立っていた場所に走る斬撃の跡。

遅れてつぅ、と生暖かい何かが頬から流れる。

そっと自分の手でそれを拭いとる。

 

血。

 

(もし、今ナイフを抜いていたら…)

動けない、動いてはいけない。

「リナ、どうしたの!?」

アーリンがこれまたアリーナの鍔迫り合いの傍らで飛んでくる衝撃波を斬り飛ばしながら叫ぶ。

「やめて、今はそれは無理よ!」

ルナの悲鳴。

 

「くっ…!」

いつしか防戦に回っている自分の姿に歯を食いしばるアリーナ。

それでも、何とか隙を見つけては連撃を放つのだが―

「軽い」

アクセスが一言だけ呟く。

その瞬間、彼の剣が一閃する。

 

ビキィィィ…!

「なっ!」

受け止めた彼女のはやぶさの剣が、砕けた。

乾いた音と共に刃が飛ぶ。

「ならばっ!」

アリーナは拳を握りしめ、強引に踏み込み、拳に全体重を乗せた一撃を放とうとする。

(中心を叩けば、割れる!そうすれば歪みも!)

漆黒の宝珠―歪みの核へ、渾身の一撃を放つ彼女。

「うおぉぉぉぉ!」

歪みに拳が触れ、核が波打つ。

空気が歪む。

「効いた!」

続けざまに連撃を放とうとした瞬間に、アクセスの表情を見てしまった。

 

愉悦。

 

その表情にアリーナの背筋が凍る。

(効いて…いない!?)

「甘いと言ったはずだ」

一瞬の静寂。

次の瞬間―

 

ボゴォ!

 

鈍い音を立てて腹部に衝撃が走る。

肋骨が軋み、骨が砕ける音が彼女の耳の中に入る。

呼吸が止まる、肺に空気が入らない。

(え…あれ…)

自分の身体がいう事を聞かない。

「か、は…っ」

口から言葉が出ない代わりに吐き出されたのは、血。

少なくない赤が大地を染める。

それでも彼女は膝を付こうとしない。

拳を地面に叩きつけ、何とか強引に立ち上がろうとする。

(動け、動け動けうごけうごけ)

意識が飛びそうになる自身の身体を鼓舞する。

 

「こんなものか」

アクセスが一瞬で近くに寄り、今度は剣の腹で彼女の背中から叩きつける。

「ぐがっ!」

地面に叩きつけられ、その意識が一瞬にして刈り取られる。

視界が闇に覆われ、最後に見た光景はアーリンとルナが飛び掛かる姿だった。

 

「アリーナ!」

叫び声を上げながらアーリンとルナがアクセスに飛び掛かる。

「もう手加減はしないわ…!『赤竜神の魂よ!出し惜しみは無しよ!』」

ルナの詠唱が響き、彼女の手が紅く光る。

その瞬間、森の木々がざわめいた。

風が逆巻き、地面の砂が浮かび上がる。

彼女の握りしめた剣の柄から光が溢れ、刃が赤熱するが、それはただの炎ではない。

彼女自身に封印された『魂』そのもの。

(神の力…これが、ルナの本当の実力か)

アーリンが彼女を見ながら自身もアクセスに向かう。

空気が焦げる臭い。

ルナは自分の、紅く光った刀身をそのままにアクセスに斬りかかる。

「ほう…神の力か」

アクセスの声が一段上がる。

「今更許しを乞うても無駄よ!」

ルナの怒りの叫びと同時に剣が振り下ろされる。

 

同じようにアーリンも己の相棒を握りしめ、アクセスにその光の刃を振るう。

青白く輝く刀身、並みの大男では振るう事すら出来ない大剣を彼女は軽々と振り下ろす。

剣を受け止めるアクセスは口元を歪ませる。

「こちらは神殺しの力を有するか…人間如きが」

2人の攻撃を剣で弾き飛ばし、アクセスの豪剣が唸る。

「くっ、重い!」

いつぞやの暴走したアリーナの剣とはまた違う、純粋な重力がアーリンを襲う。

体格差を利用した剣の重さ。

本来筋力ではアーリンの方が上なのだが、歪みの力がアクセスを後押ししているのか押され気味だ。

「隙あり!」

ルナが赤竜神の魂を込めた剣を振るう。

が、アクセスは最小の動きでその紅い光を回避する。

地面を大きくえぐらせ、避けた空間が灼ける。

アーリンも同時にアクセスの剣を刃で滑らせ、横に薙ぐ。

「遅い!」

アクセスは叫ぶと同時に一歩だけ後ろに下がる。

そこに放たれる轟音と衝撃波、しかし拳半分程度の隙間ほど届かない刃。

「まだまだ!」

横からルナがアクセスに再び斬りかかる、その二撃目を振るった瞬間だった。

何もしていないのに、刃が震える。

その異変に気付いた時にはもう遅かった。

 

刀身に、亀裂が走る。

 

「…!?」

光が分散していく。

「その剣では、持つわけがない。神の力はそんなに甘いものではないのだ」

アクセスはルナの懐に一歩踏み込み、自分の得物を振り下ろす。

紅の光と黒が交差する。

激しい爆音が響き、次の瞬間、ルナの剣も粉砕されていた。

「嘘…!」

「邪魔だ」

その衝撃破でルナは吹き飛ばされ、近くの木の幹に叩きつけられ、動かなくなる。

 

「ルナ!?」

それでも冷静になろうとするアーリンは再び剣をアクセスに向ける。

その時、アーリンの背後から聞きなれた声が飛んできた。

「『烈閃槍(エルメキア・ランス)』!」

リナの詠唱と共にアクセスに向かって相手の精神を衰弱させる効果を持つ槍が放たれる。

「…小賢しい」

鬱陶しい表情を浮かべたアクセスは先程チャチャのビューティ・セレインアローを片手で封じたように、その光の槍も同じく消し飛ばす。

さらにリナにも剣による素早い衝撃波を飛ばすが、それはアーリンが何とか防ぐ。

(くっ…!アクセスには傷をつけられない、さらに歪みだけを何とかしないといけない…!それに動きが速すぎてあたしは目で追うのが精いっぱい…)

威力の高い広範囲魔法が唱えられないリナはどうしても足止めに徹するしかないのだ。

自分の手札の歪さに歯がゆさが広がるが、そんな状況でも彼女は詠唱を止めない。

(それでも!もう仲間が倒れるのは嫌!)

 

地面に倒れるアリーナとルナを見た瞬間に心臓が止まりそうになった。

あの英雄、特に自分の憧れでもあり遠い存在でもある姉のルナが一撃で倒されている。

この信じられない状況に心が乱れそうになる。

「ならば!『烈閃咆(エルメキア・フレイム)』!」

歪みを一撃で滅ぼした強烈な光の柱がアクセスに向かって飛んでいくが―

「そんな程度か…はぁぁ!」

アクセスが自分の剣でその柱を一刀のもとに切り裂く。

(この程度だと足止めにもならない…!ならば何とか最小限の損害で済む黒魔術で一気にケリをつけるしか)

しかし詠唱をしようとして躊躇いが生まれる。

(もしアクセスを傷つけたら?彼は…しいねちゃんの父親なのよ)

 

そう、アクセスは元々、魔法の国の王国騎士だった。

しかし大魔王が人質を取り、そのせいで邪悪な支配を受けて配下と成り下がる。

今はこうして大魔王の手足となって動いているのだ。

そして何より、彼は―しいねちゃんの父親だった。

その父をあくまでも物語の修正者の立場を取るアーリンたちが傷つける事はあってはならない。

本当に相手の命を奪い取るならもっと遠慮なく攻撃を加えているはず。

 

アーリンも、アリーナも、ルナも。

あくまでも狙いは『歪み』。

力は拮抗している。

だが、戦い方が違う。

この結果はある意味必然なのかもしれない。

 

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