異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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第6章:不死鳥の剣編
~ボーボー山~


チャチャたち一行は不死鳥の剣を探す旅に出かける。

「日帰りで見つかるのかしら…。物語の流れじゃそうなんでしょうけど」

物語を知っているルナだが、アーリンたちの容態との勝負もある。

「まぁ、セラヴィーの家に戻って様子を逐一見れるのはありがたいわね」

街道の木陰で休憩を取るチャチャたちは不死鳥について喋っている。

「不死鳥の事なら…確か社会科で…そうだ、ボーボー山ですよ!」

しいねちゃんが思い出したかのようにチャチャたちに語る。

「ボーボー山には不死鳥が住んでるって伝説が…」

なおチャチャとリーヤはその授業の時に居眠りをしていたので全く記憶に無かった模様。

兎にも角にも、彼女たちはボーボー山へ向かう事となった。

 

ボーボー山は、普通の山とは違っていた。

辺りは可燃物で出来た木々が鬱蒼と茂っており、石油の臭いが漂っている。

「うわ~気分が悪いよ~、早く不死鳥見つけて帰ろうぜ~」

嗅覚に優れるリーヤは早速この臭いで参ってしまってるみたいだ。

「おらおら不死鳥~!居たら出てこいよ~!」

そう言って足元の小石を蹴飛ばすと…。

「火!?」

まるで火打石の様に近くの木を擦り、そのまま燃え出す。

可燃物だらけの周囲があっという間に炎の赤に包まれる。

「火を消さないとこのまま登るのも危険ですよー!」

しいねちゃんの焦りにチャチャが胸を張ってずいっ、と前に出る。

「出でよ、水!」

だが出てきたのは…地図。

そしてあっという間に燃え移る。

リーヤが狼に変身して後ろ脚で地面を蹴りながら火を消すも自身の尻尾に燃え移り、慌てて転がる。

「どどどどーしよう、ルナ先生!」

「と言っても…わたしは氷属性の魔法なんて使えないし…。せめて竜神結界で火を防ぐくらいしか出来ないわよ?」

眉をひそめながらとりあえず結界を張ろうとした時だった。

防火服を着た人間が彼女たちの前に飛び出し、放水を始めると、高々と燃え上がっていた炎は一瞬のうちに消える。

「ありがとう!」

「あのー、あなたは…」

「わたしはー」

その声と間の取り方だけで、誰なのか分かってしまう。

「そして私が通りすがりの消防隊の隊長よ!」

「まだ何も言ってませんよ…」

その隊長も誰なのか分かる。

 

そして始まる消火訓練。

きゃいきゃいと訓練を始めるチャチャたちを尻目に、ルナはこっそりセラヴィーを引っ張り物陰に連れ込む。

 

「セラヴィー…あんた何してるのよ!」

襟首を掴んで怒りの表情を浮かべるルナ。

しかしセラヴィーは飄々とした表情で―防火服越しなのでいまいち分かりにくいが―ゆっくりと彼女の手を離す。

「大丈夫ですよ。進行を止める薬は用意してますし、侵食は抑えています…今はまだ、命までは取られません」

「『まだ』?まだって何よ!」

ルナは納得出来ないかの如く激昂する。

「その『まだ』の間に死んだらどうするのよ!」

そんな険しい表情のルナの手を、セラヴィーはゆっくりと握りしめて離していく。

「仲間をそれだけ思えるルナさんなら、大丈夫です。それに…リナさんとその弟子が看病してます。だからわたしたちもこうやってチャチャを見守れるんです」

ルナはその言葉に一瞬目を見開き―「はぁ~」と大きなため息を付きながら肩を落とす。

「弟子って…やっこちゃん?」

「そうです。あの子も意外に要領が良いみたいですよ?…わたしは苦手ですけど」

そこまで言って再びチャチャたちの元に向かうセラヴィー。

「…信じなさい。今は、チャチャが『不死鳥の剣』を手にする過程こそが、彼女たちを救う唯一の道なのですから」

「分かってるわよ!」

自分の言葉に、いつの間にか肩の力が抜けている事に気付く。

「…ちょっと焦ってたのかもね、わたし」

 

同時刻、セラヴィー宅。

「はい、薬飲ませたわよ。これでいいのかしら」

「上出来よ、後はこのまま寝かせるだけ」

セラヴィーが出掛けたと思ったら入れ替わりでやってきたのは短期間ではあるが、自分の弟子であるやっこちゃん。

セラヴィー様はどこー!といつもの強引な家探しを行った後、『セラヴィーさまに頼まれて、先生の手伝いに来たのよ』と言う彼女。

「全く、師匠のくせに全然師匠らしくない顔して…」

やっこちゃんはアーリンたちの介護を済ませ、近くにあった椅子に座ってリナの顔を見る。

「悪かったわね…」

「あたしは…あの後、馬に乗った変な奴を見て逃げ出しちゃったけど」

そこまで言ってリナの肩をそっと触れる。

「先生たちはその変な奴と戦って大怪我しちゃったんでしょ、セラヴィーさまから聞いたわ」

「……」

リナは何も言わない。

「こうやってセラヴィーさまの作った薬を飲ませる事くらいしか出来ないけども…はい、これ」

やっこちゃんはリナの手に魔法薬の瓶を数本握らせる。

「全然寝てないでしょ、顔がすごい事になってるわよ?師匠が困ってる時は弟子に頼ってよ」

「やっこちゃん…」

リナがぽそり、と呟く。

(全く…あたしが守る側だったのに…今は守られてる)

唇を噛みしめる彼女にやっこちゃんが薬の説明をしている。

「これはやっこ印特製『どんな疲れでもポンと吹っ飛ぶH』と『ココロミタサレールM』よ。これ飲んで元気出しなさいよ」

彼女の不器用な優しさに、最強の魔道士と呼ばれたリナの目から、一粒の涙が零れた。

守るべき対象だと思っていた「教え子」に、今は魂を救われている。

「…ありがとう。大切に、使うわね」

窓の外、夕闇が迫る。

だがリナの心には、小さな灯火が戻っていた。

「もう、師匠なんだからそんなしおらしくしないで!いつものリナ先生に戻ってよね!」

そして一呼吸置いて、目を輝かせる。

「でも本当の師匠はセラヴィーさま…ああ、早く戻らないかしら…」

 

(いつものやっこちゃんね、でも少し救われた気がする)

リナは瞳をキラキラさせて窓の外を見つめる彼女の姿に笑みを浮かべるのであった。

 

チャチャたちは消火訓練を終えてセラヴィー…もとい消防隊の人からもらった纏いを振りながらボーボー山の奥地へ進んでいく。

「不死鳥ー!出てこーい!」と叫ぶリーヤだが全くその気配はなく。

道中川の水を飲もうとするが、水ではなく油。

「うえぇ…」

「ここに火が付いたら大火事になってしまいますよね」

飲んでしまった油を吐き戻すリーヤと神妙な表情で現状を分析するしいねちゃん。

その横では―

「…花火やりたい」

地面にたくさん生えている花火を抜いて見つめるチャチャの姿に慌てふためく2人。

「それ捨てた方が良いですよ!」

「チャチャあぶねーぞ!」

「わたし、花火好きなのにー」

そしてチャチャが花火を捨てた瞬間、足元で声が聞こえた。

「おいおい、食べ物を粗末にするんじゃねーぞ」

岩の上で鎮座しているのは緑色の芋虫。

ただ友好的ではないみたいで、不死鳥の居場所を聞いても「ふん、知らねーな」と一蹴。

その態度に噛み付くリーヤに炎を吐きだしたりとどう見ても味方とは言えない。

 

あちこち探しまくるが、結局は不死鳥の姿は見当たらず。

「不死鳥をおびき出しましょう。それには不死鳥の好きなものを出せば良いんです」

しいねちゃんがドヤ顔で作戦を練るが。

「不死鳥の好きなものって?」

「えっと…そう、不死鳥だから『フシ』が好きなんですよ」

チャチャの突っ込みに苦し紛れの答えを返すしいねちゃんだが。

「『フシ』ってなんだ?」

リーヤにまで疑問を投げかけられる始末。

…結局誰も分からなかった、という事だけ言っておこう。

 

「この山は違―」

ルナが声に出そうとした瞬間、慌てて口を噤む。

山に入った時に物語の詳細を思い出したルナ。

だが、それを言うのは天界の禁則事項。

そして先程の芋虫が近くに寄り、あちこちに炎を吐きまくる。

(ああ…こんな寄り道をしている間に、アーリンの呼吸が止まったら?)

嫌だ、想像もしたくない。

「早く…このふざけた茶番を終わらせて…」

そんな焦りを再び見せるルナを尻目にチャチャたちが必死に炎を消そうと消火活動をするが、とうとう芋虫は油の川にまで火を吐きかけ、山全体が火事になってしまうのだ。

芋虫は自分の身を守る為に繭になり、そのまま炎に飲まれていく。

慌てて上空に逃げるチャチャたち、しかし炎の勢いに巻かれ、箒に火が燃え移ってそのまま不時着してしまう。

「ああ、もう!最悪わたしが何とかするしかないのかしら!」

ルナは苛立ちの言葉を吐きながら彼女たちの後を追う。

 

芋虫の正体は千年も万年も生きる不死身の蝶々だった。

蝶はチャチャに向かって炎を吐きだし、周囲を炎で包んで蒸し焼きにしようとする。

しかし、その瞬間ホーリーアップが発動し、マジカルプリンセスに変身。

チャチャのビューティ・セレインアローによってあっさりと消滅してしまったのだ。

(不死身とか言う割には名前負けしてるわよね…。時間の無駄だったのが辛い…)

蝶の羽根の紋様が歪みに近い黒だったが、その魔力の気配は歪みとは全く異なるものだった。

それもあって、半ば傍観者と化するルナ。

チャチャによって蝶が消滅したことで目の前に広がる光景は先程まで燃え盛っていた炎の山ではなく、緑に包まれたどこにでもある山の風景に戻るボーボー山の姿。

肩を落として夕焼けを見る3人にルナが肩を叩く。

「よくやったわね、チャチャ…大丈夫よ、ここ以外にも候補はたくさんあるんでしょ?諦めないで頑張って」

心の中では嵐のように渦巻く本心を押し殺し、チャチャを慰めるルナの姿。

彼女の言葉にチャチャたちは頷き、彼女たちは手を取り合う。

「絶対に見つけるわ。だってアーリン先生が、待ってるもの」

彼女は強い意志を持った瞳でルナを見つめるのであった。

 

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