異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~仲間の目覚め~

「アーリン先生…アリーナ先生…」

不死鳥の剣を手に入れたチャチャたちはすぐにセラヴィーの元へ戻る。

傷は塞がっているものの袈裟斬りにされた部分の周囲は黒い紋様が浮き出ており、時折うめき声を上げるアーリン。

「…アーリン先生とアリーナ先生の中に悪しき心が澱んでいます。チャチャ、不死鳥の剣を黒くなった部分に当てて下さい」

セラヴィーの言葉にマジカルプリンセスの姿になっているチャチャはそっと剣の腹を当てる。

「どうか…治って!」

チャチャの祈り。

(きっと…治るはず)

ルナの願い。

(もう、失いたくない)

リナの渇望。

後ろではリーヤとしいねちゃんも祈るように彼女たちを見つめる。

 

不死鳥の剣が淡く光る。

そしてその光はアーリンが傷を受けた部分に沿って伸び、温かさを持った薄桃色の膜となって、黒い紋様を包み込む。

その黒い紋様は膜に触れるとひときわ濃く脈打ち、拒むように光を弾こうとする。

だが、光が触れた瞬間、黒は消えた。

最後に残っていた肩口の紋様が消えた時には、アーリンの受けた傷は完全に塞がっていた。

「やった…!」

チャチャが拳を握りしめる。

「よく出来ました。次はアリーナ先生にも」

「はい!」

今度はアリーナの脇腹、服の上からでも分かる程のどす黒い紋様に剣を当てる。

同じように光がその傷を包み―そして紋様を消し去った。

 

(ああ、これは…温かい)

暗闇の底で、かすかに誰かの声が届く。

アーリンの意識は上昇していき、その閉じた目をゆっくり開け、周囲を見回して身体を起こす。

「ここは…私は…」

「アーリンっ!」

リナがその胸の中に飛び込んでいく。

「ああ、そうか…私は、あの時」

「バカ…心配かけんじゃないわよ…!」

大粒の涙をこぼしながら泣きじゃくるリナの背中をそっと触る。

 

そしてこちらも。

「本当に…心配、したん、だからっ…」

あの理知的でパーティの中で『大人』だったルナが。

同時に目覚めたアリーナを抱きしめて人目もはばからず号泣している。

「ルナ…そうか、ボクたちを死の淵から蘇らせてくれたのはキミたちだったんだね」

肩を震わせ、ぽろぽろと珠のような涙を流しながらその身体を離すことはしない。

そんなルナを抱きしめ返してまるで幼子をあやすみたいに彼女の頭を撫でる。

「よかったぁ…よかったぁ…」

いつの間にか変身は解いていたのだろう、目をうるうるさせて(まるでうらら学園長みたいだ)、滂沱の涙を流すチャチャたち。

そんな姿を微笑ましく見つめながら、チャチャたちを部屋の外に連れて行く。

 

ようやく落ち着いたのか、まだ鼻をすする音は聞こえるものの、今までの出来事をアーリンたちに報告するルナ。

「不死鳥の剣が見つかったのね…物語通り、ってわけだ」

「しかしアクセスはまだ大魔王の支配下からは逃れていないのも事実だよね」

アーリンとアリーナがお互いの顔を見る。

「それと…これを見て」

ルナはフシノチョウタロウから貰った古びた地図をテーブルの上に置く。

「アーヤハがわたしたちを助けるように夢を通してここの世界の住人に伝えたみたいで。それで貰ったのがこの地図よ」

一旦言葉を切って、地図に示された洞窟を指差す。

「大昔に封印された魔剣と魔力を秘めた宝珠が眠ってるそうよ」

「封印、ね…」

アーリンが呟いたその言葉にリナが続く。

「あたしたち…この世界や歪みに対抗するだけの力が絶対的に不足しているのよ。アーリンの剣をはじめとする武器は折れたし、あたしも歪みに対抗するだけの力があるか、というと絶対ではない」

「確かに。この状態で歪みに立ち向かうのは無謀以外の何物でもないよね」

アリーナが腕を組みながら頷く。

「歪みを見つけて叩き、物語の流れを元に戻す、が本来の目的だけども…このままじゃその使命を果たす前に確実に命を落とすわ。そんなに甘くない世界なのよ、ここは」

リナの言葉に沈黙が走る。

「…少しでも、今を抗うのならばこの洞窟に行くのは必須よね」

「ええ。少なくとも魔剣と魔力を上乗せ出来るならわたしたちの誰かとリナの底上げにはなるから行かない、という選択肢は無いわ」

「決まりね。ただ私もアリーナもまだ体力が戻り切ってないから、数日の時間は欲しい。それで鈍った身体を元に戻さなきゃ」

アーリンがそう口にした瞬間だった。

 

「ふ、ふたりとも逃げてー!」

外から聞こえたチャチャの声。

慌てて4人が外に出ると、マジカルプリンセスに変身したチャチャがセラヴィーの出した風船ドラゴンにバーニングフラッシュを当てようとして魔力が暴走したのか、リーヤとしいねちゃんに向かって赤い光が飛んでいた。

それを全力で避けて逃げる2人、ついでに巻き添えを喰らったセラヴィーとどろしー。

だが、セラヴィーは自分だけ魔法障壁を掛けて無事、どろしーは黒焦げに。

「おやおやどろしーちゃんがおこげに」

『せっかくの厚メイクが台無しね』

「早く止めなさいって言ってんのー!!」

セラヴィーとエリザベスの辛辣な言葉にどろしーが怒りの声を上げる。

 

その間にもチャチャが持つ不死鳥の剣―ウイングクリスの暴走は止まらない。

「助けてー!」

チャチャが悲鳴を上げるも、止まらない光の衝撃波がリーヤとしいねちゃんに襲い掛かる。

まるで剣が、持ち主の焦りに呼応するかのように脈打つ。

「チャチャー!もうおしまいー!おしまいー!」

リーヤの絶叫にチャチャはこれ以上仲間を傷つけないように、何とかその剣を手放し―ようやく魔力の暴走が収まった。

 

「ああ~疲れたぁ~」

大の字になって仰向けに寝転がってしまうチャチャ。

そんな姿を見てた4人は―

 

「そりゃ、そうよねぇ」

「チャチャって剣術の技量あったっけ」

「無いわよ?そもそも魔法使いだし」

「あの時はある意味偶然制御出来ただけ…ええ…」

その時の事を思い出して背筋が震えるルナ。

 

「どうやら、剣の特訓が必要みたいですね」

「ええ~!特訓ってどうやって?」

セラヴィーの言葉に困惑の表情を浮かべるチャチャ。

「さぁ?私は特訓なんてしなくても、だいたい何でも出来ましたから」

とぼけた様子を見せるセラヴィーを見ながらアーリンたちは小声で呟く。

(それはある意味自慢か?自慢なのか?)

(自分を鍛えないと天賦の才も頭打ちになるんだけどなぁ)

(そういえばここにも居たわ、何でも出来るパーフェクトな人が)

(あら、わたしはリナみたいな魔法の才は無いわよ?)

 

その後セラヴィーはどろしーと一緒に冷たいものを食べに箒で空を飛んでいく。

後に残されたのは黄昏るチャチャと慰めるリーヤとしいねちゃんのみ。

 

「仕方ないわねぇ…チャチャ、剣の特訓したいんでしょ?私たちが付き合ってあげるよ」

「え、良いの!?」

「どっちにしろ、ボクたちも今は身体が鈍ってるんだよね。だから一緒に特訓しよう」

「わーい!」

アーリンとアリーナの差し伸べた手を握り、大喜びをするチャチャ。

 

その後、特訓特訓特訓~♪と歌いながら踊るチャチャたちを見て『大丈夫かなぁ…』と一抹の不安がよぎるアーリンたちだった。

 

「まずは剣術に必要なのはぶれない重心と『型』!はいこれ持って」

アーリンがチャチャたちに木の棒を渡す。

「はーい、っておおおお!」

「重い…」

「ただの木の棒じゃないのか?」

木の棒を地面に落とすチャチャ、持ちはするも先が持ち上がらないしいねちゃん、両手で何とか持つリーヤ。

「これは木の棒の中に鉄の芯が入ってるのよ。そしてこれを…こうやって振る!」

アーリンはそう言って木の棒―先端に等間隔で鉄輪がいくつも付いているが―を持って頭上まで持ち上げて、一気に振り下ろす。

だが、棒は地面に叩きつける事なく、アーリンの膝くらいでピタリと止まる。

そして再度持ち上げて勢いよく振り下ろす。

この繰り返しを何度もやってみせる。

「はい、みんなもやる!初心者様に細い鉄芯にしてあるから軽いわよ?まずは私と同じ様に振って止める!」

彼女の言葉にチャチャたちは見よう見まねでやってみるが…。

「剣はただ振れば良いって訳じゃないのよ。芯がぶれない様に」

「おもいぃぃぃ、腕がぷるぷるするぅぅぅ」

チャチャの悲鳴。

「腕だけで動かさないの、腰で、呼吸で、意志で動かすのよ」

「僕たち魔法使いなのに、こんな肉体労働とか無理ですって絶対…ふんぬぅぅ」

不満を口にしながらも何とか棒を振るうしいねちゃん。

「動きがブレてる!自分の膝の高さに棒の先が止まるようにするのよ」

「うおおおお!」

三者三様の阿鼻叫喚っぷりを見ながらアーリンは自分の鍛錬を続けたまま声を荒げる。

「こら、ちゃんと真面目にやりなさい!リーヤはまだマシだけど、チャチャとしいねちゃん!やる気あるの!?」

「だって、これ、重くて…あっ」

チャチャが手を滑らせて木の棒を落としてしまう。

その落とした先は―しいねちゃんの手。

木の棒の重さが2倍になった瞬間、しいねちゃんは腕ごと持っていかれて地面に手を叩きつけられる。

「ぎゃあああああ!」

哀れしいねちゃん。

 

「ふん!ふん!」

その隣ではアリーナが片腕だけで自分の身体を支え、逆さ状態になって腕立て伏せをしていた。

スカートは捲り下がっているが、中に穿いているのはスパッツなので問題はない。

だが、思春期始まりかけのリーヤとしいねちゃんには刺激が強すぎたのだろう、動揺して顔を赤くする。

そして、リーヤの持っていた木の棒がすっぽ抜け―またもやしいねちゃんの足元に突き刺さる。

「この馬鹿犬!頭に当たったらどうすんだ!」

「そこに居るのが悪いんだろ!」

「もう腕…あがんない…」

 

(私はずっと、出来ることが前提の相手としか剣を教えたことが無かったのね、勉強になったわ…。まだまだ未熟ね、私)

アーリンは自分の指導の仕方がある程度剣を扱える者しか出来ない事に気付きながら、自らの鍛錬を続けるのであった。

 

「はい、次はボクの番だよー」

アリーナが軽く屈伸運動をしながら木剣を3人に渡す。

今度は比較的軽めのため、リーヤは片手で、あとの2人は両手で持つことが出来た。

「剣を振るう時は常に二手三手先を読みながら振るう!相手がどんな動きをするのかを瞬時に判断するのが一流の剣使いだよ」

いや、剣の特訓であって剣士になりたい訳ではないのだが…。

「じゃあボクに向かって剣を振るってみて、1発でも当てられれば免許皆伝だよ」

そう言って軽くステップを踏むアリーナ。

「どりゃあああ!」

リーヤが飛び掛かるが、それを右に一歩だけ動いて避け、その手に一撃。

「動きが直線的!そんな動きじゃ相手に読まれるわよ」

「ならば!」

チャチャとしいねちゃんが2人掛かりで飛び掛かる。

「遅い遅い、牛の散歩より遅いよ!」

剣先がアリーナに届く前に素早くチャチャたちの剣を弾き飛ばす。

「まだまだ!ぐげっ」

「隙あり!ぎゃっ」

「今よ!ぐはっ」

何とか一撃を喰らわせようと木剣を振るうがアリーナの身体にかすりもせず、逆にカウンターを貰ってしまう。

…気が付けば彼女の足元でぜーはー、と荒い息を吐いてうずくまるチャチャたちの姿が。

 

(教えるって、難しいな…ボクはただ、強くなればいいと思ってきただけだから)

アリーナも自身の天賦の才を鍛える事だけに目を向けていた自分を少し反省する。

 

「まぁ…少しは、出来るようになったんじゃないかしら」

「剣に必要なのは心・技・体。その技と体はボクたちが教えたからね」

満身創痍で地面に這いつくばってるチャチャたちに向かってアーリンとアリーナが言葉を掛ける。

「後は剣を持つのに必要な心だけども…これはボクたちが教えてどうこう出来るものじゃない。ただ、ひとつ覚えて欲しいのは―強い剣を持つ資格は、力だけじゃない」

 

風が一瞬、止まる。

「そう、何を斬るのかじゃなくて―何を守るのか、よ」

「今はまだ心の片隅に置いといて。チャチャたちが自分自身で考えて、色々動いて学んでいきなさい」

「あ、ありがとうございましたぁ…」

 

そのまま目を回してひっくり返るチャチャたち。

 

(本来の物語とはちょっと違うけど、せっかく本人たちが特訓をしたいというのだから、手は差し伸べても大丈夫よね)

そう思いながら疲労困憊の3人を抱きかかえてセラヴィーの家に連れて行くアーリンたちだった。

 

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