異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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第7章:封印の洞窟編
~封印の洞窟、歪みの胎動~


「ここが、封印された武器が眠る洞窟…」

セラヴィーの家から歩いて数日、山の奥に眠る洞穴がアーリンたちの目の前にそびえ立っていた。

「見た目はただの洞窟よね…」

「でも魔力の痕跡があるわ。よほど優れた魔導士じゃないと感知できないわよ、これ」

「当たりかもしれないわね。とにかく、入ってみましょう」

 

そしてアーリンたちが洞窟の入り口に足を踏み入れた時だった。

『…資格なき者は、入る事すら叶わず』

「!?」

アーリンとルナの足が止まる。

「どうしたの!?」

「前に…見えない壁がある」

アーリンが手を空中にかざすと、まるで壁があるかの如く行く手を阻んでいた。

同じようにルナも前に進めない。

アリーナとリナだけが、洞窟の奥に足を踏み入れる事が出来たのだ。

「資格なき者…私とルナはこの魔剣と宝珠を持つ資格がないのね」

肩を落としながら目の前の見えない壁をコツコツと手で叩くアーリン。

「仕方ないわね、戦力が半減になるのは仕方ないけどここで待ってても仕方ないわ」

「ある意味結界だから、もし敵が侵入しようとしても弾かれるんじゃないかしら?」

ルナの言葉にアーリンはアリーナたちに声を掛ける。

「私たちはチャチャの元に戻っておくわ!どんな罠があるか分からないけども、貴女たちならきっと手に入れる事が出来るって信じてるから」

「リナー!あんたはわたしの自慢の妹なんだから、しっかりやりなさい!ヘマしたら承知しないわよ?」

「ひぇぇ…言われなくても頑張るわよ、だから姉ちゃんたちもチャチャを守ってね!」

「ボクたちも武器を手に入れたらすぐに戻るよ!」

 

「じゃあ、行こうか」

アーリンとルナの姿が見えなくなったのを見計らってアリーナたちは前に進む。

洞窟の中は途中までは手で掘られたような簡易的な洞穴だったのが、あるところを境に遺跡のような雰囲気に変貌していく。

「見て…あの骨の群れ」

アリーナが指を差した先。

通路上に横たわる白骨死体が所せましと無造作に散らばっていた。

朽ちた身体、ボロボロの衣服に錆びた剣。

「これがルナが言ってた『誰ひとり帰ってこなかった』の正体ね…」

「…見て、アリーナ。あの天井」

今度はリナが天井を指差す。

人が数人程度並んでようやく届きそうな天井。

見たことのない石の板が敷き詰められ、見た感じ何もなさそうに見えるが…。

「多分アリーナじゃ分からないと思うけど、あの天井の板は魔力で出来ているわ。何も知らずに歩いたら天井から魔力の矢が一斉に降り注ぐ罠よ」

「どうするの?このままじゃ進めないよ?」

「まぁ任せて。この程度なら…『青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)』!」

リナが詠唱すると、彼女の手の先から青く光る衝撃波が放たれる。

それは並んでいる天井の板の真ん中部分に命中すると、その板を霧散させ、その奥に設置してあった銀色の宝珠を砕く。

その瞬間に他の天井の板が消え、むき出しの土壁が残っているだけだった。

「さっきの宝珠が反応して歩いてる連中に魔力の矢が降り注いだって事よ。ここを通り過ぎた奴らは仲間の死体を盾にして通り過ぎたんだと思う」

「言葉だけでゾッとする罠だねぇ…ボクでもこの距離を走って通過するのに数発は喰らいそう」

「まぁ無傷に越したことはないわ、行きましょ」

そして2人は奥へ歩みを進める。

 

「今度は石のゴーレム、しかも人間型か」

通路を進んで少し広めの部屋に入ると、奥の通路を塞ぐかのように人間型の魔法生物―ゴーレムが2体、立ちはだかっていた。

その足元にはこれまた白骨死体が散らばっている。

「…今度はボクがやるよ、多分並みの戦士じゃ勝てない」

そう言ってアリーナが前に出る。

「頼むわね、流石に魔導士じゃあのゴーレムは無理よ。魔法を反射する鉱石で出来てるもの」

リナは彼女の肩を叩くと戦闘の邪魔にならないように部屋の入り口で待機する。

 

「じゃあ…行くよ!」

猛ダッシュで一気に距離をゼロにしてゴーレムの片割れに正拳突き。

あまりの威力によろめくゴーレム、もう片方のゴーレムがアリーナに剣を振るうが、それを一歩横にずれて回避。

そのがら空きの胴体に蹴りを一閃、壁に叩きつける。

「アクセスのあの避け方を真似してみたんだ、無駄のない回避方法ってやつだね」

戦闘中にもかかわらず、軽口を叩くアリーナに対して「よくもまぁあの短期間でモノにしたわね」と感嘆の口笛を吹くリナ。

さらに素早く背後に回り、拳による連撃。

一撃、二撃、さらに三撃。

可動部分が耐えきれなくなったのか、ゴーレムの持つ剣側の腕が折れて落ちる。

 

「うわぁ…アリーナだから余裕に見えるけど、いっぱしの剣士程度じゃ瞬殺されてるわね」

その一連の動きをかろうじて目で追いかけれるが、自分が同じ立場に立たされていたら足元の白骨死体と枕を並べる事になるだろう、と思うとぶるり、と両手で自分の身体を抱きかかえるリナ。

「ほらほら遅い遅い、アクセスの方が何十倍も速いよ!」

振り下ろされた剣をあっさり躱し、地面に刺さった剣を引き抜こうとする瞬間を見逃さずかかと落としでその腕を叩き折る。

さらにその足を軸にして後頭部に飛び蹴りを放つとゴーレムの首が吹き飛んだ。

力なく倒れるゴーレムの片割れ。

「さっさと済ませて先に行こうよ!」

壁に叩きつけた側のゴーレムが何とか体勢を立て直してアリーナに向かうも、再びダッシュからのゼロ距離に持って行った彼女の拳がゴーレムの胸板を打ち、その衝撃で再び飛ばされるゴーレム。

またもや壁に叩きつけられ、そのまま力なく砕けていく。

「あれとまともに手合わせするアーリンや姉ちゃんも十分に化け物だわ…」

冷や汗をかきながら心の中でゴーレムに合掌する。

 

さらに進むと、魔力が無いアリーナでも分かるレベルの魔に染まった瘴気が纏わりつく。

「…随分と、強さを欲張ったみたいだね」

「力に飲まれた連中の成れの果て、か」

先程より数はかなり少なくなっているものの、生ある存在は何一つない、骨と微かに残った肉の欠片だらけの足元の上に、そのふたつはあった。

台座に置かれた、黒塗りの鞘と鍔(つば)、茶色に近い黒の柄。

長さはアリーナの胸辺りまであり、いつぞや見た『日本刀』と呼ばれる異国の剣と同じ形をしている。

もうひとつの台座に置かれているのは血のように赤く染まった宝珠が3つ。

周囲に銀の飾りがついており、魔法陣の上に置かれている。

「これ…魔血玉(デモン・ブラッド)じゃないの!?」

「知ってるの?」

リナの叫びにアリーナが問いただす。

「あたしの世界で、胡散臭い神官…強大な力を持つ魔族の部下なんだけども、ソイツから買った魔力増幅のタリスマンとそっくりなのよ。まさか、似たようなものがこの世界にもあるなんて…」

そこまで言って台座に刻まれた文字を見つける2人。

「なになに…『この世界の人間では使いこなせない魔の刀―村正。同じくこの世界の人間では存在すら消え去る宝珠―魔血玉。決して触れるべからず、見つけた者はただちにこの地を封印せよ』」

「だから封印された洞窟、って訳か…。でもボクたちは多分、この刀と宝珠に選ばれた」

アリーナの言葉に続いてリナも口を開く。

「この世界の人間では使えない刀、そして宝珠。でも、異世界からやってきたあたしたちなら、行けるかもしれない」

そこまで言ってアリーナに身体を向ける。

「これは妖刀よ。以前乗っ取られた刀とは比べ物にならないくらいどす黒い妖気を放ってるわ。ひょっとしたら、あんたでもただじゃ済まないかもしれない。それでも―持つ?」

リナの言葉に間髪を入れず答えるアリーナ。

「当然。今のボクじゃ―この世界の歪みに対抗出来ない。ならば…どんな目に遭っても、この刀をボクのものにする。チャチャたちだけじゃなくて…アーリンやルナ、そしてリナ。みんなを守る為に、ボクはこれを握りしめるよ」

アリーナはそのまま刀の前に立ち、その柄をゆっくり握りしめた。

「…あんたらしいわ。猪突猛進だけども、その熱い気持ちがあるのなら、ひょっとしたら使いこなせるかもね。あたしも負けていられない、もう、誰も失いたくないの」

リナも宝珠を手に取り、胸にひとつ、腕にひとつ、そして腰にひとつ装着する。

血の色よりも濃い、赤い光が灯る。

アリーナも鞘に手を掛け、その刀身を抜き取る。

銀色に光る刃の周囲に纏わりつく漆黒のオーラ。

刀が、脈打つ。

 

「!!」

「!?」

突如、彼女たちにその瘴気が纏わりついた。

目の前が、闇に覆われる。

 

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