異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
アーリンの場合。
「む、無理よ…!戦うなんて怖いわ」
鏡の中のアーリンは剣を抱きしめたまましゃがみ込んでいる。
「危ない事はやめましょうよ…土下座とか、逃げるとか!」
全身を震わせて涙を流す姿を見て、「誰だよこのぷるぷるしてる奴は!」と突っ込むアーリン。
他の面々は大爆笑。
アリーナの場合。
「まぁ…戦うなんて、とてもはしたないことですわ」
鏡の中のアリーナは上品に口元へ手を当てる。
「そんな乱暴な事、ボクにはできませんの」
その時、鏡の中で虫が飛んできた。
ぶーん、という音に鏡の中のアリーナが悲鳴を上げる。
「きゃあああ!だ、誰か取ってくださいませぇぇぇ!」
「虫くらい自分で取れ!…むしろコイツぶん殴りたい」
本物のアリーナが拳を握りしめて突っ込む。
他の面々はもう腹筋崩壊。
ルナの場合。
「友情?そんなものより金貨よ」
鏡の中のルナは袋から金貨を取り出して歪んだ笑みを浮かべながら頬ずりをしていた。
「依頼人が困ってる?知らないわ。先に報酬よ」
金貨を頭上にばらまく。
「もちろん前払いよ。割り増しね、利子も付けるわよ」
「ちょっと待ちなさいよこの守銭奴!いくらわたしでもここまで酷くないわよ!?」
ブチ切れるルナ。
「…リナならやりかねないかしら」とアーリン。
「ここまで守銭奴じゃないわぁぁぁ!」
彼女の頭をリナは懐のスリッパでしばいた。
リナの場合。
「争いは良くありませんわ」
鏡の中のリナは、涙を浮かべながら両手を胸の前で組んでいた。
「暴力など悲しみしか生みません…話し合いで解決しましょう。言葉で説得すればきっと分かってくれるはずです」
「誰よコイツ!めちゃくちゃ虫唾が走るんだけど!」
リナが本気で顔をしかめる。
「真逆ってことは…」
アーリンが腕を組む。
「素のリナはいったいどれだけ暴力で解決したがるの?」
その言葉に思いっきり反応するリナ。
「うるさいわね!!」
「否定しないのね」
「否定できないね」
「そこ!頷くな!」
ルナとアリーナの追い打ちにさらに怒り心頭なリナだった。
「あははは…みんな真逆だねぇ」
(笑えるけど…これ、放置したら危険ね)
心の中で警告を発するのはルナ。
「でもこの鏡がウソツキってのは分かるわ」
そこまで言ってアーリンは鏡に指を差す。
「この鏡、誰一人私たち以外の仲間の事を言ってないのよ。大なり小なりそういう事を言ってないとおかしいのよね」
「まぁ成り行きとはいえ、いっぱしのパーティ組んでるんだから、本当なら自分以外の仲間の言葉が無いといけないのに、この鏡はそれに答えない」
ルナが鏡に呆れた表情を見せる。
「あっちも愉快な事になってるみたいよ」
そしてチャチャたちの方を見れば。
途中から参加してきたマリン、やっこちゃん、お鈴ちゃん、それぞれがチャチャたちに絡む。
やっこちゃんは「やっぱりセラヴィーさまを狙ってるんでしょー!」と首根っこを掴み。
マリンは「リーヤくんはやっぱりあたしの事が好きなのね~!」と抱きしめ。(なお途中で狼に変身して投げ飛ばされた)
お鈴ちゃんは恥ずかしそうにしいねちゃんの足をつんつんしながら、しいねちゃん人形とお鈴ちゃん人形をプレゼントする。
そこに颯爽と現れるミラード。
悪しき光の剣、ミラーブレードを手にチャチャたちに電撃を飛ばす。
チャチャたちもホーリーアップを始めるが―
「あれ?変身しない」
本来ならここでマジカルプリンセスに変身するはずなのに、その身体はチャチャのままだ。
「ホーリーアップは出来ない、出来ないのだ」
不敵な笑みを浮かべ電撃を再び飛ばすミラード。
そう、3人の心がバラバラになった結果、変身が出来なくなっていた。
そんなミラードがさらに攻撃を加える。
チャチャたちの危機が迫った時、ミラードの足元に1枚のカードが。
見ると、大量のテトラポッドタワーの上でポーズを取りながら力強く言うマリンとやっこちゃんが居た。
「我ら星をも霞まん、美少女コンビ!」
そして決め台詞を放つ。
「魔女っ子ラブラブペア改め…『爆発!かしまし娘!』『マーメイドプリンセスとお付き!』」
当然全く息の合わない2人、たちまち言い争いに発展する。
周囲は唖然とした表情、ミラードに至っては後ろに居たヨーダスとハイデヤンスに問いかける始末。
「知らんダス」
「我々は失礼するでヤンス」
付き合ってられない、とばかりに瞬間移動で消える2人。
残されたのはミラードだけ。
「ええい鬱陶しい!みんな消えろ!」
衝撃波でテトラポッドを崩し、言い争いを続けていたマリンとやっこちゃんを吹っ飛ばす。
「たぁぁぁ!!」
その隙を狙って飛び出したのはお鈴ちゃん。
「桃ん賀忍者お鈴、行きます!」
ミラードを中心に円を描くように素早い動きを見せる彼女。
「我が忍法、受けてみよ!『桃ん賀忍法、桃分身』!」
素早い動きとともに、何十人のお鈴ちゃんがミラードを取り囲む。
「おお…!」
「凄すぎる…」
感嘆の声を上げるのはチャチャ。
「素晴らしきかな、少女の技…なら我も、分身っ!」
ミラードも数十体の自分の分身を出す。
「ミラーソード、光の舞!」
数十体の剣からほとばしる電撃でお鈴ちゃんの分身を消し、彼女も吹っ飛ばされる。
受け身を取り、マリンとやっこちゃんに注意を促そうとするが…。
「これが真実の鏡…!」
目を輝かせて鏡をみつめる2人に思わず突っ伏すお鈴ちゃん。
当然ながら、真実の鏡は真逆になる訳で。
「セラヴィーなんかおじんよ!」
鏡の中のやっこちゃんの言葉で「そんなぁ~!」と号泣する本人。
「リーヤなんて大っ嫌い!」
今度はマリンが涙を流す。
そしてお鈴ちゃんが鏡を見ると―
「しいねちゃんなんて大っ嫌い、しいねもチャチャもリーヤもやっこもマリンも、みんなみんな大嫌い!」
鏡の中のお鈴ちゃんが言う、本物のお鈴ちゃんでは絶対に口にしない言葉。
それを聞いた彼女はショックを受けて蹲り、泣いてしまう。
「私、嘘つきじゃない…私、みんなの事、大好きなのに…」
号泣する彼女に集まった一同、ようやくこの鏡がウソツキという事に気付くのであった。
「物語通りになったわね…」
「鏡のチャチャたちは正直、全く魅力も無かったよね」
「言い換えれば本物は魅力的、ってことかしら」
「さて、後はチャチャたちの心が戻れば…」
4人の言葉の後、ミラードがチャチャたちに襲い掛かるが―
「わたし、リーヤもしいねちゃんも大好き!」
「俺も!」
「僕も!」
『だーいすき!』
3人の心が再びひとつになり、チャチャはマジカルプリンセスに変身する。
(…この程度で崩れる絆じゃない。だからこの子たちは、強いのよ)
アーリンがチャチャたちを温かい目で見守っていた。
「あなたも光の戦士なら、邪悪な心を捨てなさい!」
剣を構えて説得をするチャチャだが、ミラードはそれを一笑する。
「我は魔族…我は鏡、我は光なり!」
ミラードの体内から映し出された鏡が光を放つ。
チャチャがひるんだ隙に高速移動で接近するミラード。
「チャチャ!目をつぶるんだ!」
「音です!音で反応するんです!」
リーヤとしいねちゃんの助言にチャチャは迷いなく頷き、目を閉じる。
「遅い!」
ミラードが剣を振るうが、紙一重で躱すチャチャ。
「チャチャ!一撃だけ躱して安心しちゃ駄目よ!」
アーリンの声に遅れてやって来る連撃。
さらに連撃。
しかし全ての攻撃は躱され、逆に空中に飛び、ミラードに対して影を作る。
「貴方に光は使わせない!ウイングクリス!バーニングフラッシュ!!」
赤き光がミラードを貫く。
「今こそ目覚めよ、真の光よ。聖なる光で彼を包め」
その言葉にウイングクリスが反応する。
同時にミラードがその光に飲み込まれ、そのまま消え去り―1枚のコインとなって地面に落ちる。
元の姿を取り戻した真実の鏡。
しかしどこからか声が聞こえる。
「真実の鏡をくぐるがよい、ゲームは今始まったばかりだ」
大魔王の声が聞こえると同時に鏡が光り出す。
鏡の奥に一瞬だけ黒い揺らぎが見えるが、チャチャたちは臆せずにその中に入っていく。
(さて、物語はまだ続くわ…歪みもいつ出てくるか分からないけども、少しずつ…チャチャたちも成長している)
アーリンが彼女の背中を見つめる。
最初の頃に比べると、心身ともに成長しつつある彼女が少しだけ、頼もしく見えた。