異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
「ははは、チャチャ覚悟!」
ハーピーの手から衝撃波が放たれ、生徒たちに襲い掛かる。
「させない!」
アリーナが前に飛び出し、その衝撃波を村正で弾き飛ばす。
「逆に弾き返す!」
その1発がハーピーに直撃するが―
「え、効いていない?」
確かに強烈な衝撃波だったのだが、表面を覆っただけでハーピーはびくともしない。
「なら、あたしが!『氷の槍(アイシクル・ランス)』!」
リナの氷の精霊魔法がこれまた直撃するが、ハーピーは全く意に介していない。
「どういう事!?」
「魔力耐性が滅茶苦茶高いのかしら…」
ルナも戸惑いながら竜神結界を張り、ハーピーの衝撃波を防ぐ。
「うわぁ、わたしの神力が混じってるせいでいつもより魂を込めないと防げない…!」
流石に疲労が溜まるのか、ルナの額に汗が浮かぶ。
避難を済ませ、チャチャたちは校庭に出る。
ハーピーは赤い瘴気を纏いながら立ちはだかるのだ。
「リーヤ!しいねちゃん!」
チャチャの言葉に彼らは頷き、ブレスレットと指輪を掲げる。
プリンセスメダリオンがチャチャの胸で光り、全身を包み込む。
「愛と、勇気と、希望の名のもとに!マジカルプリンセス、ホーリーアップ!」
マジカルプリンセスに変身したチャチャはビューティ・セレインアローを空に向けて放つ。
「セイントフェアリー、ナビゲーション!」
光り輝く矢が放たれると、不死鳥がその身体を輝かせ、ハーピーの横を掠める。
高速でチャチャの前にたどり着くと、彼女の掌に乗り、その形を変えていく。
「ライトニングフェザー・スキルアップ!」
不死鳥の剣に形を変え、ハーピーに向かって剣を振るうチャチャ。
「おのれチャチャ!貴様の血も途絶えさせてやろう!喰らえ!」
ハーピーが飛び立つと、鋭い爪をチャチャに向けて振り下ろす。
その爪を不死鳥の剣―ウイングクリスで弾き返し、返す刀でハーピーを斬り付ける。
「ぐぬっ!」
体勢を崩したハーピーにチャチャが必殺技を叩きこむ。
「ウイングクリス、バーニングフラッシュ!」
「いけません!」
セラヴィーの声が重なる。
真紅の輝きを持った光がハーピーを包み―その瞬間だった。
「ふふふ…!」
彼女の含み笑いと共に、その身体が巨大化していくのだ。
「ハーピーには、相手の魔力を吸い取る能力があるんです!」
「えー!そんなことは先に言いなさいよ!」
セラヴィーの説明にどろしーが問い詰め、都合が悪くなったセラヴィーは変装セットの恐竜の顔で自分を隠す。
「厄介な…!」
「さっきの投げたナイフ、ルナの神力が宿ってたよね…!」
アリーナが舌打ちをする。
「という事は…あのハーピー、姉ちゃんの神力とあたしの魔力を吸収しちゃってるの!?」
リナの焦り声。
「不味いわ、その能力を加わった状態でチャチャはあの魔物に立ち向かわないといけないって事よ!」
アーリンも動揺の言葉を隠せない。
「しかもわたしたちの攻撃の殆どが魔力持ち!ハーピーには逆効果!」
「頼れるのはアリーナだけども…ああ、ナックルガードと膝当て外さないといけないのね!」
まさか、全ての武器や魔法がハーピーにとって吸収され、強化されるとなってパーティに動揺が走る。
「とりあえず、すぐに外してボクが―」
アリーナはそこまで言って手を動かそうとするが。
その隣からセラヴィーが一瞬躊躇いながら―それでもアリーナの腕を掴み、その動きを止めさせる。
「セラヴィー!?何してるの、このままじゃチャチャが!」
怒りで声を荒げるアリーナに対してセラヴィーが首を横に振る。
「駄目よ!あの子たちがどこまで戦えるか、心を鬼にして見守るのよ!」
隣でどろしーが彼女に声を掛け、この戦いの意図を伝えるのだ。
「物語の能力なら、チャチャの力で何とかなるのに…」
「私たちのミスね…!物語の本筋しか見えてなかったツケがここに来て…!」
アーリンが歯噛みする。
ハーピーの衝撃波がチャチャを直撃し、倒れ伏す彼女。
そんな彼女を羽毛の触手で捕らえ、ハーピーの目の前に吊るすのだ。
「チャチャー!」
「チャチャさーん!」
助けに入るリーヤとしいねちゃんもあっさりと触手に捕まってしまう。
「あたしのリーヤくんに何をするの!」
「そうよ!か弱い一般人に乱暴狼藉は許さない!」
そこに勇ましく現れ、ハーピーの前に立つのは何とマリンとやっこちゃん。
やっこちゃんは(決まったわ…セラヴィー様、うふっ)と下心丸出しであったが。
「我ら、二人の美少女!『レディースチーム・激走ギャルズ!』『うらら学園OB・ドドンパ娘!』」
「……」
ハーピーだけでなく周囲の面々も呆然としている。
「なによその下品な名前は!」
「そっちこそダサダサよ!」
いつものチーム名の食い違いで言い争いを始める2人。
「あ・な・た・の・弟・子・よ~?」
ニマニマ顔でリナを突っつくルナに当の本人は顔を赤くしてその場に蹲る。
「セラヴィー…弟子に取ってあげなよ…」
「嫌です、というか師匠は貴女なんですから。弟子の責任は師匠が取るものですよ?」
セラヴィーもリナの肩をぽんぽん叩いて慰めにもならない慰めの言葉を放つ。
言い争いで対応が遅れたハーピーの隙を狙ってマリンの召喚術が発動する。
「マリン、マリリン、マリマリン・リン!出でよ、サザエの大群攻撃!」
同時にやっこちゃんもマントの中から取り出した魔法薬を放り投げる。
「やっこ印の『ウルトラパワー・ナンデモヤッツケルR』!」
だが、ハーピーは躱そうともせず、その攻撃を受け―サザエも魔法薬も消え去った。
「魔力吸収タイプだからその攻撃も駄目なんだって…」
リナが頭を抱える。
ハーピーの高笑いと、いつの間に召喚したのか、サザエ型シェルターに逃げ込もうとするマリン。
それに一緒に入ろうとするやっこちゃん。
「ふふふ…王家最後の生き残りに手を下せるとは、なんという喜び…!」
ハーピーの触手が光を帯び、その締め付ける力を増大させる。
チャチャのうめき声、ハーピーの愉悦。
「お待ちなさい~」
「ええい、今度は何だ!?」
今度は足元から聞こえてくる声に苛立ちを隠さないハーピー。
「うるうる目のうらら!」
「ビシバシ鞭のラスカル!」
「とげとげ肌のバラバラマン!」
『3人揃ってうらら学園ミラクルティーチャーズ!』
「お鈴も助太刀します!」
今度は先生たちとお鈴ちゃんが相手になる、が…
「邪魔だ!」
ハーピーの足で踏みつけられ、慌てて回避するも衝撃で全員吹っ飛んでしまう。
「あ、先生!」
お鈴ちゃんが叫ぶも、目の前にはハーピーの触手が。
「お鈴ちゃん、危ない!」
しいねちゃんの慌てる声にようやく気付くものの、回避しきれずに直撃してしまい、そのまま地面に猛スピードで叩きつけられ―はしなかった。
代わりに聞こえる、ぐしゃり、という嫌な音。
「間一髪、セーフ…」
アリーナが素早い動きでお鈴ちゃんが受ける衝撃を全部身体で受け止め、彼女は頬の擦り傷程度で済む。
その代償として、アリーナがその場で崩れ落ちてしまうが。
「アリーナ先生、大丈夫ですか!?」
心配そうなお鈴ちゃんの表情を安心させるためにぐっ、と親指を立てて何ともないアピールをするアリーナ。
「大丈夫よ?ここはボクたちが何とかするから、離れて避難してなさい」
そしてゆっくり立ち上がり、彼女を安全な場所へ誘導させる。
「くっ…」
「滅茶苦茶酷い音が鳴ったわよ、骨にヒビ入ったんじゃないの?回復魔法掛けるからじっとしてて」
呻くアリーナの身体をアーリンが触れ、傷んだ身体に回復魔法を掛ける。
これでは唯一の物理攻撃役も参加出来そうにない。
一番危惧していた、チャチャ単独で立ち向かうことしか出来なくなったのだ。
「人の心配をしている暇があったら、自分たちの心配をしたらどうだ?」
ハーピーが触手の力をさらに強め、チャチャたちを締め付ける。
「うぐぅ…!」
口から漏れる苦痛に満ちた声。
骨が軋み、肺に息が入らない。
(息が出来ねぇ…)
(目が…霞む…)
リーヤとしいねちゃんはもはや声すら出せない状態。
彼女たちの命の炎が尽きかけようとしている姿にハーピーは喜びを隠そうともしない。
「ほーっほっほっほっ!何と心地よい眺めだ!憎い王家の生き残りが苦しんでいる」
歓喜、そう言い表す程の笑みを浮かべハーピーの口は滑らかに動く。
「冥途の土産に良い事を教えてやろう。お前を倒せば、大魔王様は石になった国王と王妃を私に下さる」
そしてチャチャを睨みつけながら言葉を続ける。
「憎い憎いあの2人を私はこの手で粉々に破壊してやるのだ!」
(お父さんと…お母さんを…)
意識が朦朧としながらもハーピーの言葉が耳の中に入っていくチャチャ。
「王家の血は全て絶える。この世界は、完全に我ら魔族のものになるのだ!…覚悟はよいか、チャチャ?」
トドメとばかりに両手を前に突き出し、吸収した魔力を自らの手に溢れさせ、チャチャに向かってその全てを放とうとしているのだ。
「死ねぇ!マジカルプリンセス!」
とどめとばかりに、ハーピーが高笑いをしながら高濃度の魔力弾をほぼゼロ距離で放つ。
(お父さん…お母さん…みんな…!)
何とか抵抗しようと、最後の力を振り絞るチャチャ。
その左腕の腕輪が紅く輝く。
しかし、体力がそこまで持たないのか、視界が音もなく閉じていく。
何も聞こえない。
何も、感じない。
―終わりだ。
そう思った、その瞬間。
「チャチャー!」
「チャチャさーん!」
リーヤとしいねちゃんの魂の叫び。
それがチャチャのマジカルプリンセスとしての力に変換されて、ひときわ大きな輝きを見せる。
「嫌ぁぁぁぁぁ!!!」
チャチャの絶叫とともに、バードシールドが自動的にビルドアップされ、ハーピーの拘束を剥がしていく。
目の前に現れたバードシールド。
今まで以上の激しい輝きが魔力弾と接し、プラズマを撒き散らして拮抗する。
バチバチバチバチ!
「何!?」
ハーピーの驚き、しかしすぐに表情を変える。
「悪あがきをしおって!こんなもの!」
さらに追撃の魔力弾を放つハーピー。
「私は…負けない!お父さん、お母さん、みんなの為にも!絶対に!」
チャチャの聖なる力がひと際輝く。
「!?」
拮抗していたバードシールドのバリアとハーピーの魔力弾だったが、その勢いが変わっていく。
前に進もうとしていた魔力弾の動きが止まり―そして弾き返されるのだ。
「ふっ、甘いわ!何度でも吸収してやる…!?」
(甘いのはそっちの方よ、何せあのバードシールドは私が居た世界の神様入りなのよ)
アーリンが目線をハーピーに向ける。
バードシールドに篭められたアーリンの神聖な魔力。
それが盾の防御をさらに高め、さらに魔族にとっては猛毒でもあるホーリープロテクションの効果を加えた為に、ハーピーが再び吸収しようとした魔力弾は彼女にとって致命的なものとなっていたのだ。
「身体が…崩れる!何だこの力は…吸収が、出来ない…うぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
大爆発とともにハーピーの全身が塵となって消え去る。
爆風が収まり、そこにひとり、立っていたチャチャ。
しかしその身体は力なく崩れ落ち、地面に倒れる。
「チャチャ!」
「しいねちゃん!リーヤ!」
セラヴィーとどろしーが駆け寄る。
変身が解け、ボロボロになったチャチャをセラヴィーが抱きかかえる。
同じようにどろしーがしいねちゃんとリーヤを。
「チャチャ…よくやりましたね」
安堵の声を漏らすセラヴィーに弱いながらも笑みを浮かべるチャチャ。
その頬に水滴が一粒、落ちる。
「え…?」
チャチャが見上げるもちょうど太陽の位置が邪魔して、セラヴィーの顔がよく見えない。
少し、セラヴィーの肩が震えていた気がした。
「先生…?」
「さぁ、新たな旅立ちの時ですね」
優しい声が、チャチャの身体に染み渡るのだ。
「物語のイレギュラーを、チャチャ自身が破った…」
アーリンも驚きの声を隠そうともしない。
「本来ならこんなことはあり得ないんだけども…。それだけ、チャチャのマジカルプリンセスとしての能力が急激に成長したって事なのかしら」
ルナも同じように声を震わせる。
「何はともあれ物語を破綻させずに済んだわ。そして…チャチャの成長も本来の物語より―強くなっている」
クラスメイトたちに囲まれているチャチャの姿を見ながら、リナは感心したかのような表情を浮かべていた。