異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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第10章:大魔王城への旅
~スライムの王、モドキング~


チャチャたちの大魔王城への旅が再び始まる。

地図を片手に向かう先に見えるのは、大きな岩山。

そしてその中に小さく見える入口。

「ここが、名にし負う暗黒のダンジョンです!」

『へぇ~』

チャチャとリーヤが相槌を打つのを見てさらに説明を続けるしいねちゃん。

「そうです!深い地の底に広がる謎の迷宮…危険な敵の罠…想像しただけで身体が震えてきちゃいますね~!」

(その割には滅茶苦茶楽しそうなんだけど)

(しいねちゃんってひょっとしてダンジョンマニア?)

眉を顰めながらぼそぼそと後ろで呟くアーリンたち。

「わー、名主の男女!名主の男女~!…何それ」

チャチャには難しい言葉だったのか、全く違う意味で捉えていた。

「名にし負う…有名な、って意味よ?ダンジョンは迷宮とも言うわね。こういった山の麓を使って地下に通路や部屋を作るのよ」

「へぇ~」

「ダンジョン!ダンジョン!」

「流石リナ先生…本当は僕が説明したかったんだけどなぁ」

3人が目をキラキラ…しいねちゃんだけちょっと残念そうにリナを見つめる。

「はいはい、とっとと中に入るわよ?早く明かりの準備をする!」

そう言って彼女たちは洞穴の中に入っていった。

 

―迷宮の奥にあるこの迷宮の主の部屋。

そこに広がるのは、照り付ける太陽、白い雲、青い海。

ヤシの木をバックにハンモックに寝そべる迷宮の主―の絵。

それを眺めながら、はぁ、とため息。

「このダンジョンに籠ってはや幾年月…いつになったら日の光の当たる地上に出られるのやら」

肩を落とす迷宮の主、スライムの王モドキング。

その背後でヨーダスとハイデヤンスの魔族コンビが冷めた目を向けていた。

「おい、何をボーっとしてるでヤンスか?」

声を掛けられ、モドキングは慌ててもみ手をしながら出迎える。

どうやら魔族コンビの直属部下のようである。

「おお、これはヨーダス様とハイデヤンス様!ところで…私の配置部署の移動願い、大魔王様は聞き入れてくれましたかの~?」

その言葉に困ったような表情を浮かべる2人。

部下の戯言と、完全に忘れていた。

「分かったダス、チャチャを始末すれば希望の場所に配属してやるダス!」

ヨーダスの言葉にモドキングは満面の笑みで喜びを露わにする。

「おー!お日様キラキラ~!南の海~♪カモメだの~♪ヨットだの~♪綺麗なねーちゃんだの~♪」

「…似合わないダス」

「とりあえずチャチャをやっつける事でヤンス」

「分かっただの~!!」

ハイデヤンスの言葉にモドキングは邪悪な表情を浮かべて縮み―消える。

「こらー!モドキングー!偉そうなことを言って逃げたダスか…ん!?」

文句を言うヨーダスの足元。

踏んづけたスライムの破片が―動いた。

その瞬間、信じられない出来事が起こる。

踏みつけられたスライムが変形し、人の形を取ったのだ。

そして目の前に現れたのは―ヨーダスと全く同じ姿かたちの魔族。

「ふははは…なるほど、チャチャの情報は確かに受け取ったでの~」

「お、お前はモドキングでヤンスか!?」

愕然とするヨーダスとハイデヤンスの前でヨーダスの形をしたモドキングが不敵な笑みを浮かべる。

モド一族に伝わる変化の術。

踏ませることによって相手の姿かたちや力をコピー出来る能力。

「ワシに任せるだのー!」」

そう言ってモドキングは自分の分身―コモドキ―をネズミ型にして走らせ、迷宮内を駆け巡らせる。

「ふははは…敵を知り、己を知れば百戦危うからず!あとは吉報をお待ちください」

モドキングの言葉を受け取った魔族コンビはその場から瞬間移動して消える。

「これでこのジメジメしたダンジョンともおさらばだの~!」

表情は邪悪そのものなのに、言ってることは俗世的なモドキングであった。

 

「中は意外と明るいね」

入口は狭い。

だが中に入ると、空間は大きく開けていた。

松明が無くても、周囲は十分見渡せる。

「見て下さいチャチャさん…ヒカリゴケです」

しいねちゃんが岩壁からコケを掬い取る。

岩壁にはヒカリゴケが張り付いている。

それは淡く発光し、周囲を照らしていた。

「それ食えるのか?腹減ったぞ、こんな陰気臭いところ早く出ようぜ、メシ~」

リーヤが空腹を訴えてヒカリゴケを持ちながら「これ喰えるのかな…?」と言ってると…。

彼の真横で顔だけが浮かぶ女の子の姿が。

「うわー!!」

驚きの声を上げるリーヤ、それを見たチャチャたちが彼の元に駆け寄る。

「何!?」

「魔物です!」

「お、お化け~!」

三者三様に驚きながら目の前の顔を見ると―

「だーれーがお化けだー!」

そこに現れたのは何とやっこちゃん。

「あたしのどこが妖怪だって?」

「そんな事言ってねぇぞ…」

「僕もです…」

じりじり近寄る不機嫌なやっこちゃんにリーヤとしいねちゃんはたじたじ。

(まぁ、あんな登場の仕方したらお化けよね…)

アーリンが苦笑する。

「やっこちゃん、どうしてこんな場所まで…?」

リナが質問すると、やっこちゃんは籠に入った薬草を見せて返事をする。

「この洞窟には貴重な薬草がいっぱいあるのよ。リナ先生も知ってるでしょ?竜鱗草とかペドロクリーンとか」

「へぇ…結構珍しいやつじゃない」

「リナ先生ー、何ですかその薬草はー」

チャチャが手を上げて質問する。

「竜鱗草はあらゆる魔法薬を強化する草、ペドロクリーンは軽い石化の治癒作用があるわ。流石にチャチャのご両親を回復させるレベルじゃないけどね」

「はぇ~、先生すごーい」

「成程、勉強になります…」

「それ喰えるのか?」

「食べてもいいけど不味いわよ」

リナの言葉にリーヤががっかりする。

「貴重な薬草っていう事は、セラヴィー様も欲しがってるって事よね!ああ、危険なダンジョンの奥底にセラヴィー様の為に足を踏み入れる可憐な美少女…」

やっこちゃんのセラヴィー熱は相変わらずである。

「こんな妄想超特急な子が弟子…頭が痛いわ…」

セラヴィーとの蜜月を妄想しながらくねくねと身体を捩らせる姿にリナが頭を抱える。

「カレイ?魚?」

「カレーだよカレー」

「しっ、放っときましょう」

チャチャたちも半ばドン引きしながら遠巻きに距離を離そうとするが。

「待たんかーい!こんなか弱い美少女を見捨てていく気かー!」

妄想の世界から戻ってきたやっこちゃんがチャチャの肩を掴みながら怒鳴りつける。

(どこがか弱いんだ!?)

アリーナが心の中で突っ込みを入れつつ、その様子を見る。

「ふふーん、本当はやっこちゃんもこれ以上奥に進むのが怖いんだ…」

チャチャの言葉が正解だったのか、ドキリ、と動揺する彼女だったが、気を取り直してマントの中から大量の魔法薬を出していく。

「用意万端!やっこ印の魔法薬百選!これだけあればどんなモンスターも恐れるに足らずよー!」

「どこからこんな量仕舞ってたんだ…」

リーヤが呟くように、彼女の様子にますますドン引きするチャチャたち。

だが、やっこちゃんの立っている隣の岩壁が崩れ、中からギラリと光る眼が彼女と会う。

「ぎゃー!モンスター!」

その魔法薬を担ぎながらやっこちゃんが脱兎の如く逃亡する。

「なんだ、ただのネズミですよ」

物陰から出てきた灰色の小動物の姿にしいねちゃんが呆れたように言う。

「ネズミさんかーあははは…」

3人とも笑い声を上げるが、ふとチャチャの動きが止まる。

その表情がどんどん青ざめていき、そして―

「いやー!!わたし、ネズミ大っ嫌いぃぃぃ!」

チャチャもネズミが大の苦手だった事を思い出し、やっこちゃんの後を追うかのように逃げ出したのだ。

「チャチャさーん!」

「チャチャー!」

慌てて追いかける2人、そしてアーリンたちも。

「全く、こんな迷宮で大騒ぎしてたら命がいくつあっても足りないわよ?」

サバイバル術は大減点ね、と講師時代の癖を出しながら後を付いていくが…。

「!?」

リーヤとしいねちゃんが通り過ぎた後、突如天井から岩の壁が落ちてくる。

「どういう事!?」

さらに背後にも壁が落ち、気付けば袋小路に立たされている状態。

「チャチャたちに気を取られすぎたかしら…迂闊だったわ」

「どうする?彼女らとはぐれてしまったたけども」

アリーナが周囲の状況を確認しながらアーリンに問いかける。

「まずは開いている道を進みましょう、ヒカリゴケも少なくなってるから明かりを点けたいところだけども」

「敵が多分手ぐすねを引いて待ってるだろうから、必要最小限の明かりに留めておきましょう」

ルナが松明に火を付ける。

 

チャチャが逃亡している間に足元のスイッチを踏み、ベルトコンベアのように壁の奥に連れて行かれ、その後をリーヤとしいねちゃんが追いかけている時。

アーリンもまた、真っ暗な道を進んでいた。

「ここら辺はヒカリゴケも無い上に道が細いから、敵に遭っても対処しにくいわね…」

「本当なら『明かり(ライティング)』で前を照らした方が良いんだろうけども」

道の悪さに辟易しながらルナとリナが呟く。

「敵に見つかる可能性の方が高いからそれは悪手ね。多少不便だけどもゆっくり進みましょう」

アーリンの言葉に一同黙って前を進む。

暫く歩いた時に、各々の足元に違和感を感じる。

「何か踏んだ!?」

「ぐにゅっ、って感触がしたよ?」

「変ねぇ…足場は石に近いものしか無いはずなのに…」

そう、彼女たちは岩場に潜んでいたコモドキを踏んでしまっていた。

「とにかく足元も照らしましょう、歩みが遅くなるのは仕方ないわね…」

アーリンがげんなりとした表情で松明を足元に寄せて進み始める。

 

彼女たちが進んで暫く後で―

『ふふふ…この4人の能力は素晴らしい』

『早くモドキング様のところへ向かわなければ』

『我々が加わればチャチャなぞ一ひねり』

『では向かおうか』

邪悪な表情の偽アーリンたちが暗闇の中で微笑んでいた。

 

リーヤとしいねちゃんがモドキングの罠で離ればなれになり、チャチャひとりで迷宮を彷徨っている時。

頭上の水滴に怯えながら恐る恐る歩くチャチャの背後に立つのはモドキング。

「ふははは、ダンジョンは暗いだろう怖いだろう」

「だ、誰!?」

「ワシはスライムの中のスライム、モドキングだの!」

おどろおどろしい声でチャチャに声を掛けるが、当の本人は安心そうな表情だ。

「なーんだ、スライムさんか。良かった」

「へ?何が良かっただの?」

「だって、モンスターの中で一番弱いんでしょ、スライムさんって」

「…可愛い顔してなかなか言うのー!怒っただのー!」

容赦のない少女の言葉にモドキングのプライドはズタズタにされたのか、怒りの表情で背中の触手を出す。

「ひぇ~!ぬるぬる~!ねばねば~!」

このままじゃ不味い、チャチャは召喚魔法を唱える。

「ぬるぬるねばねばならこちらが上よ!出でよ、納豆!」

召喚されたのはテーブルの上に鎮座された納豆定食。

それを食べてしまうモドキング。(生卵のリクエストまでしていた)

「リーヤ…しいねちゃん…」

絶体絶命のチャチャ。

その時、彼女の声に呼びかける2人の声が。

「チャチャ、待たせたな!」

「お待たせ、チャチャさん!」

リーヤとしいねちゃんの姿がそこにあった。

そして揃った3人は早速ホーリーアップを始めるのだ。

「愛よ!」

「愉快よ!」

「キンキラキンよ!」

「マジカルプリンセス・ホーリーアップ!」

意外にチャチャはリーヤとしいねちゃんの言葉を聞いていない事が判明した瞬間でもある。

光の中から出てきた彼女のいで立ちは、折り紙で出来た兜に剣道着、手には定規で出来た弓に鉛筆の矢。

そう、合流したリーヤとしいねちゃんは離ればなれになった時に2人が踏んだコモドキだったのだ。

 

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