異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~リーヤの祖父と橋守ガロック~

「危ない所じゃったな」

「じーちゃん、何でこんなところに居るんだ?」

「何で丸太なんて持ってるんですか?」

「あ、いや、その…」

リーヤとしいねちゃんの質問にたじたじになるリーヤの祖父。

彼の後ろには大量の丸太がぎっしりと積まれていた。

 

「わざわざ僕たちの為に来てくれたんですか?」

「ありがとう、お爺ちゃん!」

「いや、そういう訳でもなくもないんじゃが…」

煮え切らない態度と動揺を隠さない祖父にアーリンたちが眉を顰める。

(思い出した、確かあの丸太は…)

 

そんな事を思っているアーリンを尻目に、チャチャたちと祖父は壊れた橋の隅に立つ。

「ここも昔は美しい谷だったんじゃが…」

寂し気な表情を浮かべる祖父の隣で。

「きっと立派な橋もあったんでしょうね!」

「誰が壊したのかしら!」

「とんでもねー悪い奴が居るもんだぜ!」

「きっと大魔王の仕業よ!大魔王のバカーっ!」

チャチャたちが怒りの声を上げるたびに祖父の顔が青ざめていく。

(いや~、『知ってる』身からすると自分にダメージ突き刺さってるのが分かるわ~)

(見てよあの顔…。『この橋を壊したのがワシとバレたらどんな目に遭わされるか』って顔してるわ…)

この壊れた橋の物語を知っているアーリンたちは、もちろん橋を壊した人物を知っている。

その張本人の苦しそうな表情を見ながらそれでも傍観者に徹するのだ。

 

ズシーン…ズシーン…。

「何?地震!?」

地面が揺れ、慌てるチャチャと顔を険しくして地響きが鳴る方向に身体を向ける祖父。

そこには全身鎧を身に纏った初老の男が立っていた。

「ガロック…」

「ようやく来おったなぁ、ジジイ!待ちくたびれたぞ!」

その表情は怒りに満ち溢れており、時々殺意も吹き出る。

目の下には紋様が浮き出ており、大魔王に操られているとはっきり分かる。

「お前たちは向こうに行ってなさい、アーリン殿たちも…」

「分かったわ」

「え、何でだよじーちゃん?」

「ほらほら、言う事聞いて」

疑問の声を出すリーヤの身体を持って安全な場所に誘導させるアーリンたち。

 

「貴様…ワシが今どんな気持ちでいるか分かるかぁ!」

ガロックの言葉にリーヤの祖父は唇を噛みしめながら俯く。

「ワシは今日の今日まで、貴様への復讐だけを考えていた!喰らえ!」

威力を持った拳が祖父の肩を叩き、彼はその重さで倒れ込んでしまう。

「じーちゃん!?」

リーヤが駆け寄ろうとするが、「来るんじゃない!」と静止させられてしまうチャチャたち。

「ガロックよ…それで気が済むなら何度でもやってくれ…」

「綺麗ごとを!」

ガロックの拳が振り下ろされる。

一度、二度―三度目で、祖父の身体が地面に沈んだ。

彼らの過去に何があったのかはチャチャたちは知らないのだろう、しかしあまりの仕打ちにリーヤがたまらず飛び出す。

「じーちゃんを離せこの野郎!」

ガロックの足にしがみつき、祖父を持ち上げて谷底に叩き落とそうとするガロックを岸の方に押し出そうとするが、パワーが違いすぎるのかびくともしない。

「孫が助太刀とは泣かせるわい!」

「やめろガロック!」

「ふん、うざったいガキだ!先に始末してやる!」

そう言って掴んでいる足を持ち上げ、谷底に伸ばそうとした。

「リーヤ!」

体勢を変えてそのまま倒れ込むようにして、3人とも岸側に大きな音を立てて倒れ込む。

しかし超重量級の祖父とガロックが暴れていたのだ、残っていた橋の部分が崩れ、その先に居たリーヤとの間にヒビが入っていく。

「リーヤ、はよ逃げんかい!」

「じいちゃん!」

崩れ落ちる橋、祖父は橋の残骸に手を掛け、片方でガロックを掴もうとするが届かず。

その残骸も崩れ、祖父も落ちてしまうが、間一髪リーヤが手を掴み、持ち前の馬鹿力で持ち上げようとするも―

「重い…支えるだけで手一杯だ…」

体勢も悪いのか、いつものリーヤの力には及ばず、現状維持が精いっぱい。

「リーヤ、手を離せ!お前も一緒に落ちるぞ!」

祖父の言葉が終わると同時にリーヤの居た場所も崩れ落ちて、2人はそのまま落下していく。

「チャチャさん!」

「うん!出でよ、錨!」

「出でよ、ロープ!」

火事場の何とやらというか、彼女たちは錨付きロープの滑車を見事に召喚、落ちていくリーヤたちの背中に錨を引っ掛けてそのまま上にあげていく。

リナが小さく息をついた。

(切羽詰まった時はチャチャたちの魔法が成功するのよね…平時との差が激しすぎるわ)

そして万が一のために用意した魔風の詠唱を止めて、その様子を見る。

 

「ガロックー!!」

地底に落下していったガロックを想い、涙するリーヤの祖父。

「じいちゃん、あいつは何者だよ?」

「すごく狂暴なやつですよね」

リーヤとしいねちゃんの言葉に涙を流しながら力なく口を開く。

「友達じゃよ…」

「友達!?いきなり襲い掛かる友達なんか居るかよ」

その言葉にさらにむせび泣く祖父。

「一体どういう事なんですか?」

しいねちゃんが疑問の声を上げる。

「ワシが悪いんじゃ…。ワシは人の心を踏みにじる事は今までして来なかった…ただ一度、あの時を除いてはな…」

「あの時?」

リーヤが言葉を返す。

 

リーヤの祖父が言うには、ガロックが中心となり、この谷に橋を架けたそうだ。

城の要となったこの橋の完成に国中が大いに沸く。

その当時、リーヤの祖父は国の将軍、ガロックは橋守。

役目は違えど、深い友情で結ばれた親友だった。

しかし、大魔王が魔法の国の城を襲い、セラヴィーがチャチャを連れて逃走した時。

後ろから追ってくる大魔王の手下を喰い止めるために祖父はこの橋を壊したのだった。

 

「大魔王の手下どもめ、この橋を渡らせるわけにはいかん!」

そして獣化した祖父は手にした斧槍(ハルバード)で橋を破壊していく。

しかしその姿を見たガロックは―

「何をする、やめろー!」

「ガロック…許せ!」

「この橋は…ワシの子ども同然なんじゃ!」

「すまんガロック…すまん!」

謝りながらもその手を緩めることはなく、橋は全て壊される。

「おのれ…おのれー!」

ガロックの悲痛な絶叫が、崩れ落ちた橋の轟音に消えていった。

 

「橋を壊したおかげで大魔王の手下はそれ以上進むことは出来なくなった。じゃが、大魔王は悲しみに暮れるガロックの心に付け込み、同じように手下になってしもうたんじゃ」

そう言って橋の下から落ちていったガロックの心配をする。

 

その頃橋の下では、岩場に引っ掛かり倒れ伏していたガロックが居た。

彼の脳内で悪しき声が聞こえる。

(目を開けろガロック…憎め、もっと憎むのだ。それがお前のパワーとなるのだ)

虚空から魔界の瘴気に包まれた大斧が現れる。

(武器を取れ…チャチャを倒せ、倒すのだ!)

柄を握ったガロックの目が光る。

 

「そういう訳だったんですね」

「悲しいお話…」

辛そうな声で祖父を慰めるチャチャ。

「ワシに出来ることはもう一度橋を作ってガロックに許して貰うことじゃ…」

「それで丸太を持ってきたのか」

ようやく大量の丸太が積まれていた理由が判明した。

「ガロックは…本当は悪い奴ではない。ワシは信じている」

そう言って橋を組み立てようとした時だった。

地底から禍々しい瘴気が溢れ返る。

「な!?」

アーリンたちは剣を抜き、チャチャたちも身構える。

「貴様をこの可愛い橋と同様に、この谷に叩き落とすまでは死ねんのじゃ!」

魔族の力で跳躍し、祖父たちに向かい合うガロックの姿に無事を喜ぶリーヤの祖父。

しかしガロックはそんな彼を一瞥し、大斧を振るう。

「危ない!」

アーリンのアークスレイヤーがその衝撃波を弾き飛ばす。

「違うの、誤解なの!」

「おじいさんは、橋を直しに来たんです!」

「丸太も用意してるんだ!」

チャチャたちの必死の弁明もガロックには届かない。

「やかましい!」

そして大斧の一撃はチャチャたちが立っていた橋の残骸の上を斬り飛ばし、彼女たちはそのまま落下していく。

「うわあぁぁぁ」

涙目で瓦礫の上に乗ったまま地底に落ちていくチャチャたち。

「あーもう、危機回避能力が全く足りてない!」

アーリンたちも飛翔バッヂを起動させ、落ちていくチャチャたちの後を追う。

「今行く!うおおおお!」

リーヤの祖父も飛び降り、アーリンたちのスピードより速く駆け抜け、瓦礫を掴み、そのまま地底の岩に激突。

その威力を殺しながら大ジャンプした先は―

「なんと!?」

地底を流れる真っ赤なマグマ。

そう、谷底はマグマの大河となっており、リーヤの祖父はそこから飛び出た岩場に両足を引っ掛けていたのだ。

「くっ、予想よりも酷い有様ね…!」

遅れてやってきたアーリンたちも激しい高熱と飛び散るマグマで思うように彼たちに近寄れない。

「アーリン!あそこ見て!」

アリーナが指を差した場所を見ると、岩の先に頭巾が引っ掛かって宙づり状態になっているチャチャの姿が。

「わたしはここよーここなのよー…」

うらら目になりながら助けを求めるチャチャ。

「不味いわね…足場が無い上に少しの風でも頭巾が外れちゃう可能性がある」

「じゃあボクたちが接近したら…」

「風の結界を身に纏ってるあたしたちじゃ、下手するとそのままドボン、よ」

「くそっ!」

仲間たちの言葉にアリーナが歯噛みする。

そこに立ちはだかるのは何と地底に落ちたはずのガロック。

溶岩の上に点々と浮かぶ岩場、その一つに祖父たち、離れた岩にガロック。

そしてその隣にチャチャが吊るされている状態だった。

「なかなかしぶとい奴じゃ、だがそれでは身動きできまい。そこでチャチャの最期を見届けろ!」

「やめろ!子どもに手を出すな!」

リーヤの祖父が絶叫する。

しかしガロックはお構いなしに大斧を振り上げ、チャチャが吊るされている岩場の根元を叩き切る。

「ガロック…心まで魔族に支配されてしまったのか…」

悔し涙を流し、叩き切られた岩場が溶岩に向かっていくのを見る。

「リーヤ!しいねちゃん!力を貸してー!」

「チャチャ!」

「チャチャさん!」

あと少しで溶岩に落ちる、その前にリーヤとしいねちゃんがブレスレットと指輪を掲げ、チャチャのプリンセスメダリオンが強く輝く。

聖なる光に包まれ、彼女はマジカルプリンセスに変身して素早く足場に飛び移った。

「ふぅ、間に合った…」

「チャチャ、あんな奴やっつけちまえよな」

瓦礫の上で座り込んで安堵のため息を漏らす2人。

アーリンたちもほっと一安心。

 

「ん!?ならば!」

ガロックが得物を回転させたと思うと、そこから暗黒の霧が発生し、チャチャの視界を一気に遮る。

遠巻きに見ていたアーリンたちも、チャチャとガロックの周囲が真っ黒な霧に包まれるのを見て慌てて浄化魔法を詠唱する。

「くっ、範囲が広すぎる上に大魔王の邪悪な瘴気が濃い!連続で掛けないと消えない!」

アーリンの焦り。

 

「ふはは…。どうだ、ワシの姿は見えまい。しかしこちらからはよく見える、見えるぞおぉぉ!」

ガロックが叫ぶと大斧がチャチャ目掛けて振り下ろされる。

「バードシールド・ビルドアップ!」

光り輝く盾のバリアが大斧の一撃を受け止め、弾き返す。

が、その手応えが一気に無くなり、思わず体勢を崩すチャチャ。

「見事だ、しかし次はどうかな?」

完全な無音の世界、視界も無く、いつガロックの大斧が飛んでくるか分からない状態。

しかしその時、チャチャの耳に付けているイヤリングが微かな音を鳴らして光る。

「こっち!」

ガキィン!

間一髪、鋭い大斧の一撃を受け止める。

今度は両耳のイヤリングから音と光が。

「そこっ!」

両サイドから来る連撃を剣と盾でそれぞれ受け止める。

「くそっ、何だこの音は、その光は!?」

攻撃が全く当たらないガロックの声に焦りの色が浮かぶ。

「分かった、そこだわ!」

イヤリングが光る先、その闇に向けてチャチャが不死鳥の剣を前方に突き出す。

「ウイングクリス・バーニングフラッシュ!」

剣の先から飛び出した真紅の聖なる光が、寸分違わずガロックの胸板に命中する。

「な、なにぃぃぃ!」

聖なる光はガロックの暗黒の鎧を砕き、悪しき心を消滅させた。

そのまま吹っ飛び、溶岩の真ん中の岩場に叩きつけられる。

同時に今まで手に入れたコインと同じ形のコインがチャチャ目掛けて飛来し、彼女はそれをキャッチした。

 

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