異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~アークスレイヤー、目覚める~

「あれぇぇぇぇぇ!」

変身が解け、普段の姿に戻ったチャチャ。

当然足場は無く、溶岩へ真っ逆さまに落ちていくのだ。

「どりゃああああ!」

岩場からジャンプし、瓦礫でチャチャを受け止めるリーヤの祖父。

そして向こう岸の岩場に着くと叫ぶ。

「しっかり岩場に捕まっておれ!」

そう言うや否や、思いっきりその瓦礫を空中に放り投げる。

軽い放物線を描いた瓦礫は対岸に落ち、チャチャたちは目を回しながら草原の上を転がるのだった。

 

「ぐはっ…」

力を使い果たした祖父が倒れる。

「じーちゃん!」

「リーヤ、待て!」

しいねちゃんの静止も聞かず、リーヤが再び崖下を駆け下がっていく。

 

「ガロック…あの時、ワシはお前の事をまるで考えていなかった…」

溶岩の真ん中の岩場で辛うじて身体を支えているガロックに祖父が懺悔する。

「ただ、姫を守りたい一心で…」

「ひ、姫を?」

驚きの表情を浮かべるガロック。

「あの時、近衛隊長のセラヴィーが赤子の姫を抱いてワシの前を逃げて行ったんじゃ」

「それで…橋を壊したのか…」

ようやく理由を知ったガロックの言葉に祖父が頷く。

「理由がどうであれ、もう少しワシに思いやりがあれば、お前に悲しい思いをさせずに済んだ…」

邪悪な心が消え、わだかまりも溶け、ガロックは納得した顔で目をつぶる。

「あの時、お前の絶望する顔を見た時、ワシは…」

少しの間、沈黙が続く。

「そうだったのか…それを知らずにワシはお前を憎むだけだった…」

そこまで言うと、力が抜けたのか、身体を滑らせ溶岩に足が触れそうになる。

「ワシはもう駄目だ、力が入らん。お前を信用出来んかった報いじゃな」

 

「じーちゃーん!」

「リーヤ!?」

岩場から飛び降りたリーヤが祖父の隣に立つ。

「馬鹿者、危ないから上で待っておれと…!」

「じーちゃんの危機を放っておけねーよ!」

「ったく、向こう見ずなのは相変わらずなんだから…」

「アーリン先生!?他のみんなは?」

リーヤが叫ぶ。

「チャチャたちの傍に行ったわ。大魔王の庭で2人ぼっちは良くないからね」

アーリンはガロックが居た岩場の上に立ち、彼を引き上げる。

「リーヤ、あんたはおじいさんを担いで上がって。私はガロックさんを持ち上げるわ」

そしてその場から移動しようとした時である。

 

ボゴォ!

 

派手なせめぎ合いで地底のバランスが崩れたのか、マグマが一気に噴出する。

「いかん、リーヤ、お前だけでも逃げろ!」

「馬鹿言うなじーちゃん!絶対助ける!」

リーヤが祖父を担いで、よろよろと崖を登ろうとする。

しかしそのスピードは遅く、いつマグマが降りかかっても不思議ではない状態だ。

そしてアーリン側も―

「人を持った状態で浮遊するとこんなに遅くなるのか!」

今までは自分だけで移動していたのでその異変に気付くことはなかったのだが、大の大人1人分の重量だけで速度が大幅に落ちるとは全く思っていなかったことを痛感する。

「このままだと…全員マグマに飲み込まれる!」

噴き出したマグマがまるで津波のように高く盛り上がり、こちらに向けて襲い掛かってくるのだ。

アーリンは取りあえずガロックも向こう岸の岩場に置き、崖をよじ登ろうとして力尽きてしまったリーヤと祖父の3人を安全な場所に寝かせる。

「ホーリープロテクション…魔力の限界まで唱えてワンチャン行けるか…」

他の仲間が助けようにも激しい熱気でもはや近づけない状態。

リーヤ、リーヤの祖父、ガロック。

この3人を救えるのは自分だけという重圧がのしかかってくる。

(やるしかない…でも、本当にこれで守れるの?失敗したら全員…)

一瞬の迷い。

しかし、その迷いを振り払うかのようにアーリンは覚悟を決めた表情で呪文を詠唱する。

(違う!守るのよ、私は―!例え、この身に何かあっても、この物語の人物を誰一人欠けさせるわけにはいかない!)

 

その刹那。

背中のアークスレイヤーが、熱を発しながらアーリンに何かを訴えかけようとしていた。

「一体…!?」

慌てて剣を抜くと、神秘的な光が刃を煌々と照らしていた。

「アークスレイヤー…貴方も、守りたいの?」

アーリンの言葉に微かに光が反応する。

刃が、肯定するように震えた。

(偽物の自分と対峙した時と同じ…)

あの時もそうだった。

仲間を、世界を、チャチャたちを守る。

その思いが自分の中に駆け巡った時、剣が共鳴した。

 

目の前に大きなマグマの波が襲い掛かってくる。

「アークスレイヤー、目覚めなさい!」

アーリンの言葉に刃が明るく光る。

「私たちは―この世界の、守護者なのよ!」

その光はアーリンの前を大きく照らし、後ろの3人を覆い包むように広がった。

光が、爆ぜるように広がり、マグマがその光にぶつかる。

激しい爆発音と飛び散るマグマ。

あっという間にアーリンたちを飲み込んでいく。

 

「アーリン!!!」

遠くで、仲間の叫び声が聞こえる。

 

白く輝くバリアの中で、アーリンは立っていた。

マグマが物凄い勢いで通過していくのが見える。

しかし熱さは全く感じられず、バリアの中は先程と同じ岩場がそのままの状態を保っているのだ。

そして白い光は静かに、だが確実にマグマを押し返していた。

「ん…あれ、アーリン先生…」

リーヤが目覚め、アーリンの後ろに近寄る。

「おはよう、リーヤ。君たちは、無事だよ」

「おお、すげぇ…流れてるの、マグマだよな?俺たち、この白いピカピカの中に居るんだ…」

遅れて気がついたリーヤの祖父とガロックも。

「アーリン先生がこのバリアを…?」

祖父の言葉に頷くアーリン。

「貴方たちのおかげで、この剣も目覚めてくれました」

彼女は光り輝くアークスレイヤーを持ちながら、徐々に落ち着いていくマグマを見る。

暫くの時間を経て、マグマは落ち着きを取り戻し、まだ危険なのは間違いないが先程の窮地ほどでは無くなっていた。

「じゃあ行きましょうか。リーヤ、行ける?」

「おう!」

頷くリーヤに祖父が起き上がって逆にリーヤを抱っこする。

「じーちゃんはまだ回復してないだろ!」

「大丈夫じゃ、少し休んだからの。…ありがとうな、リーヤ」

その頭を優しく撫でる祖父にリーヤは「子どもじゃねーんだから撫でるな!」と思春期特有のちょっとした反抗を見せるのだった。

 

「リーヤ!」

「アーリン!」

向こう岸にたどり着くなり、全員から安堵の声が出る。

「アーリン…ひょっとして?」

「うん、完全にモノにしたよ。守護の力―この剣は、力ある者を滅ぼすと同時に皆を守る守護の力も得た、新生アークスレイヤーよ」

アーリンはそう言って剣を大魔王城に向ける。

すると、鬱蒼と茂っていた木々が浄化され、一本の道が出来上がる。

「ワシたちはここで橋を作っておこう、お前たちが戻ってくる時には立派な橋が出来てるぞ!」

「姫、ご武運をお祈りしております」

祖父とガロックがチャチャたちを見送る。

「行きましょう…大魔王城は、もうすぐそこよ」

見上げた先に、漆黒のオーラに包まれた城の影が見えていた。

 

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