異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
大魔王の笑い声。
(ロキ…!アーヤハの上司、天界の神!そしてこの物語を壊す黒幕がそいつか!)
「フッ…この人間どもはこちらで足止めしておく。その間にチャチャを始末しろ」
姿は見えないが、声はアーリンたちにも聞こえてくる。
「言われなくても!」
そう言って大魔王はチャチャたちに対峙する。
「フハハハハ…!セラヴィー、お前はそこから王女の最期を見るのだ。その後でお前たちも片付けてやる」
余裕を見せた表情でセラヴィーを嘲笑する大魔王だが、セラヴィーも負けじと嘲笑し返す。
「ふっ、大魔王、あなたはチャチャに勝てませんよ」
「なにぃ?」
その言葉に眉を顰める大魔王。
「お前は真の王家の力を知らない。チャチャが何故マジカルプリンセスと呼ばれるか知らない」
そして大魔王に指を差す。
「お前は絶対にチャチャには勝てない!」
「ほざくな!」
大魔王のオーラがセラヴィーとどろしーを壁まで吹き飛ばし、叩きつける。
「みんな、ひるんじゃだめよ!わたしたちは愛と勇気と希望の聖戦士なのよ!」
マリンの言葉に全員が頷く。
「そうだ!くたばれ大魔王ー!」
リーヤが飛び掛かる。
一撃で叩き落とされる。
マリンの灼熱の砂も、しいねちゃんの魔法も、お鈴ちゃんの砲撃も。
すべて―通じない。
「無駄だ」
その一言で、希望が砕けた。
聖戦士たちが倒れていく姿に大魔王は笑いを堪える事すらしない。
「ククク…チャチャ、儂はこの日を待っていた。王女チャチャを倒す日をな!」
「私、負けないもん!」
大魔王の威圧に負けないように虚勢を張るチャチャだが―
「お前ひとりで何が出来る?」
その言葉にチャチャは後ろを振り返る。
気絶したリーヤとしいねちゃんの姿に、焦りの色が浮かび始める。
(ホーリーアップ出来ない…!)
「お前を倒せば王家の血筋は絶える。もはや誰も儂の地位を脅かすものはいない!」
そう言って前にずい、と踏み出す大魔王。
「私、負けない!出でよ、炎!」
巨大な炎の嵐を浴びせるも効いている様子はなく。
「出でよ、雷!」
激しい落雷が大魔王の背中に当たるが、通じない。
「無駄だ、もはやお前に勝つ術はない」
「出でよ、ブリザード!」
猛吹雪が大魔王を襲うも、足止めにすらならない。
そんな中を逃げるチャチャ、追いかける大魔王。
「このままじゃチャチャが危ない…!」
「割れろー!」
アリーナが渾身の力を込めて正拳突きをするも結界がたわんだだけ。
「剣で斬ってもひっかき傷程度…天界の上位神の結界がこんなに硬いなんて…!」
「ならば!『獣王牙操弾(ゼラス・ブリット)』!」
獣王ゼラス・メタリオムの力を借りた光の帯が結界に当たり、飛び散り、消える。
ルナの剣よりは深めの傷が付くも、割れるまでには至らない。
セラヴィーが遠隔操作でエリザベスを動かし、しいねちゃんを起こす。
そして揺すっても起きないリーヤに大岩を投げつけようとして、それに気付いたリーヤが飛びのく。
すぐさまチャチャの元に向かい、3人が揃ったところでチャチャはマジカルプリンセスに変身。
不死鳥の剣を構え、大魔王に向かい合う。
「大魔王、あなたの思い通りにはさせないわ!」
「面白い!」
大魔王の手に剣が浮かび、それを握り振り下ろす。
素早くジャンプしたチャチャは剣を真横に振るう。
「ウイングクリス、バーニングフラッシュ!」
紅いオーラが大魔王の胸辺りを直撃し、再び爆風と煙が辺りを包む。
「まだです!チャチャ!」
セラヴィーの声と同時に煙の中から出てきたのは無傷の大魔王。
「その程度かチャチャ!」
背中が裂ける音。
黒い翼が、ゆっくりと広がる。
空気が重くなる。
床が沈む。
「わが忠実なる魔族ども、魔界の扉より邪悪な力を我の元へ!」
剣の先に邪悪なオーラが纏わりつき、全身を包み込む。
「ようやく、開いた…魔界の扉!」
柱の影に佇んでいたロキは隠しきれない歓びの表情を浮かべ、大魔王の後ろにある邪悪な紋章が浮かんだ扉を見つめる。
「人間どもは我の結界から出れまい…今が好機の時」
そう言ってロキは大魔王の後ろに向かおうとした。
「アーリン!今ロキの姿が見えた!あいつ、魔界の扉に向かうつもりだわ!」
リナが指を差した先に、ロキは居た。
暗い蒼の長髪に鋭い眼光、頭には飾り模様のターバンを巻きつけた細身の男。
あれが―ロキ。
「このままじゃ逃げられる!」
アーリンが焦りの声を上げる。
「いちかばちかだけど…結界に向けて魔力を増幅した竜破斬をぶっ放す!」
「それしか方法が無いのか…!仕方ない、ルナ!結界を!」
アーリンとルナが自分たちの身を守る為の結界を最大出力で張る。
アリーナは結界が割れた時にロキに飛び掛かれるように気を練り、力を溜める。
黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの
時の流れに埋れし 偉大な汝の名において
我ここに 闇に誓わん
我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに
我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!
「『増幅・竜破斬(ドラグ・スレイブ)』!」
紅黒く輝く破壊エネルギーが結界にぶつかる。
ギャリリリリィィ!!!
ガラスを引っ掻くような音が響き、結界を削り取り、砕き、破壊していく。
当然余波はアーリンたちにも来る。
「くっ!」
アークスレイヤーの守護結界と竜神結界の重ね掛け。
アーリンたちだけを守る大きさの代わりに神力の濃さを上げた、純粋な守り。
それでも、魔血玉でブーストしたリナの魔力の余波ですら、結界がたわみ、ヒビが入る。
「アークスレイヤー!みんなを守って!」
剣が再び輝きを見せる。
ヒビが入った結界が修復されていく。
そして―ロキの作った結界が限界を迎えた。
バッキイィィン!
ガラスが砕けるかの如く、粉々に砕ける結界。
遠くで見ていたロキが驚愕の表情を浮かべる。
「何だと…?人間如きが、我の結界を?」
そして、遠くから聞こえる人間のやや幼めな女性の声。
「ロォキィィィィィ!」
アリーナは叫びながら神速で距離を一気に詰め、村正を両手持ちに切り替え飛び掛かる。
上段からの袈裟斬り。
しかしその半歩後ろにロキは下がる。
「まだまだぁ!」
踏み込んだ地面を軸に宙返りをして相手を蹴り上げようとするが、さらに半歩、後ろに。
普通の人間ではあり得ない風圧がロキを襲う。
「ほう…人間にしてはなかなか…」
アリーナの姿を見て、ニヤリと笑うロキ。
「また後で戦う事になる、それまで大魔王と戯れておけ」
そう言うとロキは紋章の浮かんだ扉に入り、そのまま扉を閉めてしまう。
「待て!」
アリーナが扉に向かおうとした時、扉ごとその姿は消えてしまった。
「くっ…!」
逃げられた。
歯噛みするアリーナ。