異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
「ふぅ…」
元の姿に戻ったチャチャが大きく息を吐く。
「チャチャ…おめでとう、ついに大魔王を倒しましたね」
セラヴィーの優しい言葉にチャチャが振り返る。
「セラヴィー先生…!」
そして駆け寄ろうとした時、音速の速さで2人の間に立ちはだかったのはやっこちゃん。
「セラヴィー様にくっついたら駄目よ!」
さらに突き飛ばして自分はセラヴィーに擦り寄っている。
マリンはリーヤに抱き着こうとして狼に変身したリーヤに気付かず、探し求める。
どろしーに頭を撫でられているしいねちゃんの横でお鈴ちゃんが顔を赤くして喜びを分かち合う。
厳しい戦いを終えたが、いつもと変わらない仲間たちの姿にチャチャの顔に笑みが浮かぶ。
その時、チャチャの胸のプリンセスメダリオンの赤い宝石が外れ、床に落ちる。
それは一瞬輝いたかと思うと次の瞬間煙に包まれ、中から人影が。
「ぎゃ~!!何か出た~!先生~!セラヴィー先生~!」
チャチャが叫びながらその人影―白髪に白髭、鎧姿の老人を見てさらに怯える。
この老人が先の国王、ジーニアスその人である。
「大王様、大魔王はチャチャが倒しました」
セラヴィーがジーニアスに声を掛ける。
「おお、セラヴィー。チャチャが、あの赤子のチャチャが?」
そしてセラヴィーはチャチャに耳打ちをする。
「チャチャ、あなたのお爺さんですよ」
「おじい…ちゃん?」
「チャチャか?おお、すっかり大きくなって!」
チャチャはジーニアスに抱き着き、ジーニアスは愛おしそうに頭を撫でる。
さらに背後―ちょうど石像のある場所が光り輝く。
石像は呪いが解けたかのように人の形に戻り―そして目の前にはチャチャの両親、魔法の国の国王と王妃が立っていた。
自分の父親と母親を見て、目に涙を浮かべるチャチャ。
「チャチャ…私たちは石になっていてもお前の事を全て見ていた。全て聞こえていたよ」
「よく頑張りましたね、チャチャ」
涙をそのままに、母親の元に駆け寄るチャチャ。
「お母さん!」
そしてしがみ付き、その温もりを感じるのだ。
「怖い時もあった、どうしようもなく悲しい時もあった」
顔を上げる。
「でも、セラヴィー先生が、リーヤが、しいねちゃんが」
母親の顔を見つめる。
「どろしーちゃんが、お鈴ちゃんが、やっこちゃんが、マリンちゃんが」
仲間に顔を向けて。
「アーリン先生が、アリーナ先生が、ルナ先生が、リナ先生が」
再び涙を流しながら母親と父親を見つめ。
「みんなが…みんなが、励ましてくれたから」
「チャチャ」
力強い腕で、父親がチャチャを肩に乗せる。
大魔王を倒す為の長いチャチャの旅は、ようやく終わりを告げたのである。
「いや~、滅茶苦茶感動するわ…」
相変わらずこういう話に弱いアリーナとルナがハンカチ片手に涙を拭き取る。
「でも、ロキには逃げられてしまったわね…」
和気あいあいとするチャチャたちを見ながらリナが少し影を持った表情で見つめる。
「魔界の扉…逃げ込んだ先で、アイツは何をする気なのかしら」
「…アーヤハにも報告しなきゃ。そして、今までの言動から見るに…彼女も危ないかもしれない」
(嫌な予感がする…ロキは、これで終わらない)
不穏な未来にアーリンは即座に駆け出す。
「アーリン?」
ルナがアーリンの背中から声を掛けるが、それを無視して、まだ無事だった部屋を開け、そこに置いてあった鏡を覗き込む。
「アーヤハ!気付いて!」
アーリンの姿が映っていた鏡が徐々に水面が波打つように変わり、映し出されたのは天界のアーヤハの部屋。
「アーリンさん!おめでとうございます!」
アーヤハが喜びの表情で鏡に近寄る。
「ただ…歪みの元凶には逃げられた。それで、アーヤハに相談なんだけど」
「はい?」
「神力ってどれくらい戻った?」
「そうですね…物語が史実通りになったことで大分回復しましたよ」
その言葉にアーリンが矢継ぎ早に言う。
「なら聞くけど、こっちの世界に実体化出来る?」
「え、ええ…。ただ調整が難しくて、多分神の力にリミッターが掛かる状態になりますが」
「なら話は早い、すぐこっちに来て!」
「はい?どうしたんですか突然」
「いいから!事態は急を要するの!」
アーリンの焦る表情にアーヤハが何かを察知したのか、すぐに実体化に向けた詠唱を始める。
「合図したら、鏡に手を入れて下さい」
「分かった!あと後ろで何かあっても詠唱は止めないで!」
「?わかりました」
(ロキのやった事を照らし合わせたら…次に起こるのは)
アーリンが思案したと同時に、それは起こった。
アーヤハの背後から扉が叩き割られる音。
背後には白銀の鎧を纏った神官たちの影。
「天界階級第三神、アーヤハ・ナミーン!疑わしい神力の利用を貴殿の痕跡から見つかった!同行を願う!」
「アーリンさん、今です!」
背後から聞こえる男性の声とアーヤハの声が重なる。
「うおおおお!」
アーリンが両手を鏡に突っ込み、そして一気に引き抜く。
「逃亡する気か!神界法に則り、拘束!」
鏡の向こうで、神官の放つ光の鎖がアーヤハの足首に絡みつく。
「行かせん!」
「離しなさい!」
アーリンがその鎖ごとアークスレイヤーで断ち切り、アーヤハの細い腕を力一杯こちら側へ引き寄せた。
アーヤハがチャチャの世界に具現化すると同時に鏡が爆発し、仲良く吹っ飛ばされる2人。
「きゃっ!」
「痛たたた…」
爆発音で駆け寄ってきたアリーナたち、そしてチャチャたちも。
「アーリン先生、その人は…?」
「え、えーっと、大魔王の魔力で石になってた、私の友人!」
(アーリン、その答えは無理があるんじゃないか…?)
リナが心の中で突っ込みを入れる。
「そうなんだ!元の姿に戻って良かったね、えーっと…」
「アーヤハです。アーリンさんとは長年のお付き合いで」
(長年?)
(1年も経ってないわよね)
(そこ、茶々入れない!)
アリーナとルナの指摘に小声で突っ込むリナ。
「とにかく、詳しい話は落ち着いてからにしましょう」
「…分かりました。アーリンさんの様子から見るに、私も関わりがありそうな話ですよね」
アーヤハの言葉に頷くアーリン。
(大魔王は倒したけど…ロキをどうやって見つけるか…)
青空を見上げながら、今後の事を考えるアーリンであった。