異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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第12章:束の間の平和編
~束の間の平和、そして消えた黒幕~


魔法の国に平和が戻ってきた。

暗雲は消え去り、明るい陽射しが白亜のマジカルキャッスルを照らしている。

空には祝砲が打ち上げられ、国民に王宮が開放されていた。

 

大広間にはすでに大勢の招待客でごった返していた。

うらら学園の面々も、こっそりと邪悪な心を消し去り改心した魔族たちも居る。

国王と王妃、先代の国王ジーニアスがバルコニーから顔を出し、国王が手に持ったマイクで招待客に声を掛ける。

「皆の者、今日は大魔王に封印された我々の復活、そして魔法の国に平和が戻ったことを祝うパーティだ!」

その言葉に観客からは歓声と拍手が鳴り響く。

「その前に紹介しよう、我々を救ってくれた、愛と勇気と希望の戦士たちを!」

壇上に上がったリーヤ、しいねちゃん、セラヴィー、どろしー。

そしてマリン、やっこちゃん、お鈴ちゃん。

全員正装姿で立っており、大きい拍手に包まれる。

「どろしーちゃん、私は出たくないって言ったでしょ?」

「あらそうだったかしら?」

セラヴィーの苦言にとぼけるどろしー。

人前の視線が苦手なセラヴィーに対する意趣返しだったりする。

 

アーリンたちは『平和は訪れましたが、何かあるかもしれませんので』と固辞してそれぞれの持ち場に立っている。

もちろん正装だ。

アーリンは騎士スタイルの軍服姿。

アリーナは白を基準としたドレス。(なおあちこちのパーツが取り外し可能)

ルナも動きやすさ重視だがフォーマルなドレス。

リナは魔導士のローブだ。(なお桃色ではなく黒の模様)

 

「何をなさるんですか、父上!」

「ええい、控えておれ!チャチャの紹介はわしがするんじゃ!」

さらに続きを言おうとした国王のマイクを奪い取り、今度はジーニアスが喋り始める。

必死にマイクを取り戻そうとするも結局はジーニアスの手のまま。

「そして、我が孫にして魔法の国の王女、マジカルプリンセス・チャチャー!」

ひときわ大きい歓声と拍手と共に現れたのは真っ赤なロングドレス姿のチャチャ。

きらきら光るティアラが映え、可愛らしさの中に上品さが加わっている。

「チャチャ、恰好いいぞ!」

「綺麗ですよチャチャさん!」

「ま、今日は譲ってやるわ」

素直に褒める者も居ればひねくれながらも褒める者も居たり。

「ん~!わたしの見立てが良いのね~!」

どろしーも満更でもない表情だ。

「見立て、ですか?」

『大丈夫かしら?』

セラヴィーとエリザベスの突っ込みにジト目で睨みつけるどろしー。

 

そしてチャチャが階段を下りていく。

しかし慣れないハイヒールだったため、ドレスの裾を踏んでしまい、そのまま体勢を崩してしまう。

「わぁ~!!」

階段から足を踏み外した瞬間、4つの手がチャチャに向かって伸びる。

『出でよ、クッション!』

セラヴィー、どろしー、しいねちゃん、ジーニアス。

彼らは素早い動きで魔法を唱え、チャチャが落ちた先に大量のクッションを敷きつめる。

クッションの上で弾みながら笑顔を見せるチャチャの姿に皆が安堵のため息を付いた。

「もう、何をやってるんだか…」

『こんなのでよく大魔王に勝てたわね』

いつものドジっ子っぷりを発揮したチャチャの姿に少し呆れ気味のセラヴィーとどろしーだった。

 

こんな中でもアーリンの胸中はまだ不安が残っている。

天界の神、ロキ。

この物語を壊し、魔界の扉をくぐり抜けて逃亡した黒幕。

平和が戻ったはずなのに、アーリンの胸の奥の緊張だけは解けなかった。

 

賑やかな祝宴の熱気が去り、魔法の国がようやく静けさを取り戻した頃。

しばらく無人だったセラヴィーの家に、ようやく明かりが灯った。

しかし、セラヴィーの家では、別の意味で重い空気が満ちていた。

「さて…初めまして、ですかね?」

テーブルを囲んでいるのは、アーリンたち4人にセラヴィー、どろしー、そしてアーヤハである。

「初めまして…天界の神、アーヤハ・ナミーンです」

少しの間。

「あっ、えーっと…よろしくお願いします!」

神の威厳があったのは最初の言葉だけ。

後は威厳もへったくれもない、まるでどこぞの魔法の国の王女様みたいな口調。

(知ってたけど、威厳のいの字も無いわね…)

アーリンははぁ、とため息。

「か、神様!?」

どろしーだけが驚いたリアクションを取る。

「ええ、この人が…『この世界を創った』女神様だそうです」

相変わらずの表情のまま、言葉の揺らぎもないセラヴィー。

「す、スケールが大きすぎてピンと来ないんだけども」

「まぁ、国王より偉い人、くらいのノリでいいと思うよ」

「そんなノリで接しても困るわよ!」

ルナの言葉にどろしーは思わず怒鳴ってしまう。

「そんな事より、どうして女神様がこの世界に降り立ったんです、アーリンさん?」

セラヴィーが少し厳しい視線でアーリンを見つめる。

「少し長い話になるけど、いいかな?」

アーリンの言葉に全員頷く。

 

「…なるほど。天界の上司、つまりアーヤハさんより上の神様が元凶、と」

「そういう事。で、アーヤハに今までやらかした罪を擦り付けて自分は魔界の扉へとんずらしちゃったのよ」

「そして捕まる前にこっちの世界に飛んできた、と」

その言葉にアーリンは頷く。

「魔界の扉って、大魔王城だった時の玉座の間にしか無かったんだよね?」

アリーナの言葉にセラヴィーが返す。

「はい、大魔王を通して魔界の扉―暗黒魔界に通じる扉ですが、そこしかありません」

「あちこちにある訳では無いのよね?」

「あと1ヶ所ありますが、そこを開くには特殊な方法でしか開けません」

リナが出されたお茶を飲みながらセラヴィーに問う。

「ロキが暗黒魔界に行った理由が何なのかも分からないのよねぇ」

「そもそも暗黒魔界って何?」

アリーナの質問にセラヴィーが答える。

「暗黒魔界―魔族たちのホームグラウンドと言っても良いでしょうか。大魔王クラスの能力を持った魔族が多数居る世界ですね」

「少しだけ聞いたことがあるわ、人間と魔族が協力してお互い不可侵の扉を作ったって話を」

どろしーも会話に参加する。

「そうです。話を戻しましょう」

セラヴィーが本題に戻す。

「そのロキが暗黒魔界で何かを探している、という線はどうでしょうか」

「あ、そういえば…上司が以前にぽつりと何か呟いてました。確か…『魔界のエネルギーを天界に持ち込んだらどうなるんだろうね』とかなんとか」

「魔界のエネルギー…今回の件を照らし合わせると、何となく分かってきた気がするわ」

アーヤハが言った内容に対して思考を張り巡らすリナ。

「全部憶測だけれども―ロキは暗黒魔界に行ってそこのエネルギーを吸収、それを天界に持ち込んで何かを起こす。その結果は分からないけども、ロキが有利になる何か、なんでしょうね」

「わたしからも質問良いかしら?」

ルナが手を上げる。

「はいどうぞ」

「暗黒魔界とこの人間界って簡単に行き来出来るの?」

「良い点に気付きましたね。基本的には一方通行です、入ったら簡単には出れません」

セラヴィーはそう言ってルナの頭を撫でる。

「さっき言ってた暗黒魔界に通じる扉を開けない限りは出れないってことね…。つまりロキは暗黒魔界に閉じ込められた状態」

リナの解答にセラヴィーが頷く。

「アーヤハは何か知ってる?」

「いやー…大魔王を倒すところまでは分かってるんですが、その先がどうなるかはあまり覚えてないんですよ」

「使えない女神ねー」

「だって、数百もの銀河の物語を同時並行で管理してるんですよ!? 1ページ1ページの詳細なんて、いちいち覚えてられませんってば!」

逆ギレするアーヤハに、アーリンが冷ややかな視線を送る。

「とにかく、その暗黒魔界の扉を開けさせないことが第一。万が一開いた場合はロキを探して捕らえる、または倒すことが第二」

リナが指を立てながら今後の指標を決める。

「でも相手も神様でしょ?まぁこっちもポンコツだけど神様だから何とかなるか…」

不安そうな表情でアーヤハを見るのはルナ。

「任せて下さい。天界の不始末は私が何とかしなきゃいけないんですから」

先程までのポンコツ気味な様子とは一転、神の威厳が滲み出た表情に変わるアーヤハ。

 

その後、リーヤの祖父から手紙を貰ったセラヴィー。

お城ではチャチャたちが毎日楽しく過ごしてるから何も心配要らない、との内容だった。

笑顔で肩を組む3人の写真を見ながら、セラヴィーは「かなり無理をしてるみたいですねー」とちょっと沈んだ声を上げる。

その様子にアーリンたちも『ああ…』と納得。

(笑っているのに、どこかぎこちないわね)

天真爛漫で形に捉われない彼女たちは王宮での生活は堅苦しいものだろうなぁ、と容易に想像できたのだ。

「ボクもお城の生活はキツかったからなぁ。力試しの旅に出たい、と我儘言って部屋の壁を蹴破ったことを未だに覚えてるよ」

「アンタ…脳筋にも程があるわよ」

アリーナが昔を思い出してしみじみ頷く横でリナが化け物を見るかのような視線を飛ばしていた。

 

数日後、チャチャたちは魔法学校の中等部に入学する旨の手紙が届く。

同時にアーリンたちも中等部の非常勤講師として勤務する旨の魔導メールが届いた。

「結局うらら学園からは離れられない、ってことね」

「歪みは消えたけども、今度はロキを探す使命になってしまったわね」

「ロキかぁ…あの時は躱されたけど、今度は一撃決めてみせるよ」

3人が和気あいあいと喋る中でリナがセラヴィーに言われた言葉を思い起こしていた。

 

「万が一、暗黒魔界の扉が開いてしまった場合―それを封印しなければいけません」

「どうして?」

「魔族の中には好戦的で、人間界を滅ぼそうとする勢力も居るからです」

その言葉にリナが頷く。

「確かに。それにロキ―あいつが戻ってきたら…世界そのものが壊れる」

「そうです、だから絶対に封印しなければならないのです」

そこまで言って、再びリナの目を見つめる。

「リナさんたちには、暗黒魔界に赴いてロキを倒して欲しいのです」

「分かってるわ。ロキの事だから、何とかして外に脱出したいはず。下手したら封印ごと無理矢理突破するかもしれない」

「ただ…封印をすれば、人間界と暗黒魔界は分断されます。つまり―」

「チャチャたちとも離れ離れになる、ってことね」

リナの言葉は―重い。

「チャチャたちには、まだ言わないでくださいね」

セラヴィーの微笑みには、師匠としての慈愛と、守護者としての冷徹な計算が同居していた。

リナはその視線を受け止め、短く「…分かってるわよ」とだけ返す。

 

(ロキのこの後の行動を考えるなら…あたしたちが暗黒魔界に赴くのが一番『効率が良い』のよね…でも)

アーリンたちをちらりと見るリナ。

「チャチャたち、きっと悲しむだろうなぁ」

あの子たちはきっと、笑って送り出してなんてくれない。

それが分かるからこそ、胸の奥が重かった。

 

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