異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~王城にて~

王城に平穏は戻った。

だが―取り戻されていないものがあった。

大魔王襲来の折に失われた、『国王の印』である。

アクセスは国王の命によりそれを探すことになる。

『誰よりも国王の印のことを知っているそなたに頼みたい』と言われ、それに従うアクセス。

 

(当ては…ひとつだけ、あるのだが)

魔法の国の北端、界外との境目。

天に届くとすら言われる山。

荒れ狂う天候は、人を寄せ付けない。

生身の人間は、まず近寄らない場所。

大魔王の部下だった頃、その山を登ろうとしたことがある。

だが、気がつけば麓まで戻されていた。

結界が張られているのか、と今度は魔力を込めたオーラを纏いながら向かうと雷が、意思を持つように落ちてきた。

(あの時もあそこが怪しい、と踏んだのだが、あの結界を通るにはそれこそ大魔王クラスの能力が無いと厳しい)

城の回廊を歩きながら当時のことを思い起こすアクセス。

「…大魔王もジーニアス様の結界で外に出れなかった。わざわざ行けもしない結界のことを言う必要は無かった、それが幸いするとは」

アクセスはひとり呟く。

国王は大魔王の部下だった私を信頼してくれている、その恩に応えなければ。

この身に残る血の記憶ごと、償うためにも。

 

その時、目の前に影が広がる。

振り返るより早く、影が足元に落ちる。

「そなたは…」

顔を上げた先に居たのは黒髪の少女、名前はアーリンといったか。

大魔王の部下に成り下がっていた時に、彼女と一戦交え―深い手傷を負わせてしまった相手。

「しいねちゃんから話は聞きました。国王の印を探す旅に出るそうで」

「うむ…。そなたには多大な迷惑を掛けてしまい、本当に申し訳ない」

そう言ってアクセスは謝罪する。

「その件は気にしなくていいですよ。大魔王に逆らえなかったんでしょうし…それに、もっとたちの悪い相手に操られていましたから」

「…確かに」

自分が剣を振るう時に決して感じなかった愉悦、喜び。

何者かにそんな感情が湧き出るように操られていたなら?

アーリンの言葉に、アクセスの肩の力がわずかに抜ける。

騎士として、己の剣が汚された屈辱。

それを彼女は、責めるのではなく「共に戦うべき敵の仕業」として分かち合ってくれたのだ。

 

そんな思考を遮るかのようにアーリンが口を開く。

「当てはあるのですか?しいねちゃんは『当てもなく出る』と」

「…息子の性格だと当てがある、と言えば自分もついていくと言い出しそうだったのであえて嘘を付いた」

「ということは」

「大魔王の部下時代にどうしても行けなかった場所。結界が張られ、何をしてもたどり着けなかった場所があるのだ」

「多分、悪しき心を持った者が通れないように国王の印が結界を張ってたんでしょうね」

「今なら、行けると思うが…ここが外れならば、魔法の国の国境をしらみつぶしに探さないといけない」

そこまで言ってアーリンを見ると、彼女は懐から何かを取り出した。

真紅の輝く羽根。

「それは…」

「不死鳥の羽根です。チャチャにお願いして貸してもらいました」

「姫様に?」

アクセスの言葉にアーリンが頷く。

「この羽根は本来不死鳥に会いたいと強く願って飛ばすとその場所を教えてくれる、という魔力が込められています」

そこまで言ってアーリンはアクセスにその羽根を渡す。

「王家に関わるものなら、この羽根も応えてくれるかもしれません」

「…分かった。お借りしますぞ」

手に取った羽根を額に当て、心から国王の印を見つけたい、と念じる。

そして空に投げると、その羽根はキラキラと輝きながら宙を舞い、岩山の形を描きながら飛んでいく。

「あの岩山…うむ、やはりあの場所…魔法の国の北側、界外との境目に国王の印が」

「行くんですね?」

アクセスは頷く。

「平和になったとは言え、まだ不穏な魔族は多々居ます。お気をつけて」

その背が廊下の向こうに消えるまで、アーリンはじっと見送っていた。

平和は戻った。

だが―まだ、取り戻すべきものは残っている。

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