異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
さわやかな朝、校庭の噴水でうらら学園長がダンスしながら朝のテーマソングを歌っていると、その噴水から飛び出してきたのは先日南の海でお騒がせな事をしていたマリン。
「勉強がしたいんです!わたしも入学させて下さい!」の言葉であっさり入学へ。
そして次の日、チャチャとアーリンたちが登校しているとそこへマリンが登場。(なお、尾びれを乾かすと人間の足に変化する模様)
「リーヤくーん!」
そのまま飛びつき押し倒し、あまつさえ頬にキスまで。
その様子を見たチャチャがマリンを突き飛ばし、痴話喧嘩が校舎の入口で始まる。
「あー…何というか…三角関係?」
「本人が全く認識してない上にチャチャとリーヤの関係も怪しいもんよね」
「恋愛というより友愛?」
アリーナを除く3人は呆れながらその様子を見ている。
そして恋愛事に1ミリも興味が無いアリーナと言えば。
「おーい、ケンカするならちゃんと受け身取らないと。身体が固いとケガするよー」
あさっての方向からのアプローチをする始末。
「ああ、ここにも恋愛の『れ』の字も知らない女が…」
ルナが残念なものを見るように彼女を見つめる。
その後、リーヤとクラスが違う事を知り、怒りを堪えながら『神様の…いじわるいじわるいじわる~』と可愛らしく怒るマリン。
「へぷしっ!」
天界ではデスクワーク中のアーヤハが思いっきりくしゃみをしていた。
「うう~、風邪かなぁ、ってか誰かに呪われてる気がする」
神様も風邪を引くのか…そしてアーヤハよ、半分当たりだ。
話は戻る。
そんなマリンを物陰から見ていたやっこちゃんが、すっと近づく。
「チャチャが気に入らないのは、あたしも同じよ」
そう囁いて差し出したのは、お手製の惚れ薬だった。
なお、くれると思っていたマリンはまさか売りつけられるとは思いもよらず、しかし目的のために仕方なく購入する。
「わたし…この子嫌い…」
なお飲ませようにも一筋縄では行かず、リーヤが狼少年という事を知らないマリンは狼に変身したリーヤを「何なのこの汚い犬は!」と蹴飛ばし。
次に体育の授業前にドリンクとして飲ませようと画策する。
だが先程の蹴られたことを思い出したリーヤに警戒され、あっさり逃げられてしまう。
結局、やっこちゃんにお願いして給食に惚れ薬を入れてリーヤに食べさせる事になる。(なお雇用費用を支払う羽目に…やっこちゃんはリナ並みの守銭奴でもあった)
「しかし歪みは簡単に見つからないわよねぇ」
「明らかに怪しくても物語を壊さないように搦め手を使わないといけないのもストレスが溜まるわね」
午前中の授業を終えて眉をひそめながら、それでも歪みが無いか神経を張り巡らせる4人。
「まぁ次の時間はお昼だし、少し休憩しましょうか」
「こういう時はよく食べる!それが一番だよね」
アーリンの言葉にアリーナが元気よく返し、それを見ながらリナが苦笑する。
「本当にアンタはお気楽よね…。まぁそこがアリーナらしいっていうか」
「とりあえずは給食の時間だから早く行きましょ」
4人に待ち受けていたものは―リーヤ用によそった惚れ薬入りのスープ。
しかも、ラスカル先生に「量が多い」と言われて寸胴鍋へ逆戻り。
しかもそのまま、ぐるぐるとかき混ぜられてしまったものを食べる羽目に。
アーリンは戦の神の加護を、ルナは赤竜神の魂を持っている為に魔女見習い程度の魔法薬の毒は効果が無いのだが…。
アリーナはいつもの倍の量を食べて自身の魔法薬の耐性を超えてしまい、リナに至っては運の悪い事に―
「ちょっと、この組み合わせは魔力耐性の消失を起こす食材じゃない!」
「え?」
「高位魔術師の耐性を一時的に中和する最悪の相性よ!」
そんなメニューだった為に、この2人は見事に惚れ薬の影響を受けてしまったのだ。
なおバナナ組の全員が惚れ薬入りスープを食べたため、アーリンとルナとやっこちゃん(やっこちゃんは食べなかった)以外は惚れ薬の影響を受けていた。
その後すぐさまマリンを取り合う為にバナナ組の全員が廊下で大乱闘。
そのとばっちりを受け、マリンはあっさり気絶してしまうのだった。
そして惚れ薬の影響を受けた者がここにも…。
「マリン~!好きだ~!」
「生徒に!手を出したら!講師クビよー!!」
錯乱して乱闘騒ぎの方に向かおうとするアリーナの足をアーリンが必死に掴む。
しかし、本来の筋力の違いからか半ば引きずられていく。
辛うじて速度を牛歩の歩みにするだけでも精いっぱいの模様だ。
「アーリン、邪魔!」
「ぐえっ!…何でこんな目に」
アーリンはさらに頭を踏まれ、情けない声を上げつつ廊下を引きずられていく。
リナの方はといえば、錯乱した状態のままルナに簀巻きにされてそのまま近くの空き教室へ連れ込まれていた。
「マリン…まりnへぶしっ!」
惚れ薬の効果でマリンの愛を叫ぶリナの頬を容赦なくビンタ。
「全く…こんなチャチな惚れ薬に引っ掛かるなんて、お姉ちゃんは恥ずかしいわ」
とわざと悲しげな表情で言いながらも蓑虫の様に吊り下げられたリナを何発もしばく。
バナナ組の戦いは続き、チャチャとリーヤを残して全員気絶。
その戦いもチャチャが召喚した『3匹の子豚』もとい『3匹の大豚』による大量の藁攻撃、大量の木を生やした攻撃、空中から巨大レンガを落とす攻撃で校舎を破壊する羽目に。
あまりの混乱っぷりに大魔王の手下の黒板消しが意気消沈する中、大魔王の幹部であるソーゲスが魔力を使った念話で彼に発破を掛ける。
ただの黒板消しだった身体は邪悪な光を帯び、一瞬のうちに本来の姿である『魔界の貴公子ドクガー』に戻り、その毒の羽根でチャチャたちを襲う。
「…間に合った!今の状態なら歪みも出てくる可能性が高い!」
薬の効果が切れ、副作用で全身が敏感な状態になり、足元がふらつき、そのまま崩れ落ちるアリーナを廊下の隅に放置してチャチャたちの元に駆けつけるアーリン。
「2人だけどやるしかないわね!」
こちらも頬をパンパンに腫れさせて気絶したリナをそのままにしてチャチャの近くまで駆け寄り、腰の剣を抜くルナ。
「チャチャ、覚悟しろ!」
いつの間にかドクガーの毒針で四肢を拘束されたチャチャにトドメの太い毒針が放たれる。
「1本じゃなくて10本!?」
「しかも本来の1本以外は禍々しい色をしてる…!あれが歪み…!」
本来の物語には存在しない『歪みの9本』。
それがドクガー自身が放った毒針から少し離れた後ろを追随し、意思を持つ生き物のようにチャチャの急所に殺到する。
「ワォオーン!」
そこにリーヤが吠えながら飛び出し、本来の毒針を咥えてチャチャを救う。
「本来ならこれで万事解決なんだけども、後ろの毒針は私たちが何とかしないと!」
アーリンがすぐさま両手を毒針の群れに向けて呪文を詠唱する。
「邪悪なるもの 我が神の力により 滅せよ!『ホーリープロテクション』!」
本来は単体を包む結界。
それを無理やり広げ、アーリンは大半の漆黒の毒針をまとめて呑み込ませた。
「赤竜神の魂よ!チャチャを護れ!」
ルナの竜神結界がチャチャの前に張られ、毒針が触れた瞬間。
『ぎぃぃぃぃ!』
人のような叫び声が聞こえたと同時に毒針は消滅する。
「手応えあり!歪みを使役する何者かが居るわ…ってアーリン!」
その場にへたり込むアーリンに駆け寄るルナ。
「流石に複数掛けはきつい…魔力が持たない」
ホーリープロテクションは強力だが、そのぶん消耗も激しい。
封じ込めて滅ぼす使い方は、特に魔力を食う。
魔力の使い過ぎで動けなくなったアーリンを介抱する間にチャチャがビューティ・セレインアローでドクガーを消し飛ばしていた。
アーリンは息を荒げながらも、チャチャたちの無事を確認して小さく微笑む。
「でも、守れた…良かった」
息が浅い、指先が震える。
一気に大量の魔力を使った反動だ。
しかしそれでも、アーリンは向こう側で仲間たちと笑っているチャチャをじっと見据える。
(この子たちを絶対に守ってみせる…!この世界の物語が、ちゃんとハッピーエンドになるように)
心の中でそう思いながらルナに背中を預けていた。
「とうとう尻尾を掴んだわよ…!」
「大魔王…その後ろで色々やろうとしている奴が居るのが分かっただけでも大収穫よ」
少し魔力が回復し、よろよろと立ち上がるアーリンが空を見上げる。
ルナも一緒にドクガーが滅びた辺りを見つめ、この先の物語を壊してなるものか、と拳を握りしめるのであった。
その後、特売セールから帰ってきたうらら学園長が見たのは崩壊した校舎、逃げ惑う生徒たち…。
「あらあらあら、まぁまぁまぁ…学園が穴だらけ~」
号泣しながら手に持っていた買い物かごを落とすうららであった。
なお、この騒動の責任を取らされ、バナナ組の担任と副担任の給料は今月50%カットとなった。
「…転移前より貧乏になってない?」
「神様に請求できないかしら」
アーリンとリナの嘆きが悲しく響くだけだった。