異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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終章:暗黒魔界編
~国王の印~


学校での魔法勝負が禁止になり、舞台はセラヴィーの家となる。

今日も今日とて魔法勝負が繰り広げられ―

「勝者、チャチャ!」

セラヴィーが軍配を上げる。

「戦いって、空しい…」

勝ったチャチャの表情は相も変わらず冴えない。

たかが子ども、と舐められているのか面白半分なのかは分からない。

が、セラヴィーの時は挑戦者といえばどろしーくらいだったのがチャチャになってからは挑戦者の数はうなぎ登りに。

「も~嫌っ!こんな生活!」

チャチャはミルクの入ったマグカップをテーブルに叩きつける。

「どうしたんだ、チャチャ?」

「そうよ、せっかくエデンの里代表の魔法使いにも勝ったっていうのに」

「これも魔法使い世界一の試練よ?」

リーヤとどろしーがチャチャを慰め、アーリンが発破を掛けるが。

「だって…だって…」

俯いていたチャチャが顔を上げて自分の近況に文句を言い始める。

「毎日!毎日!毎日毎日毎日…」

息の続く限り毎日を連呼し、肩で荒い息を付きながら、両手をドン!とテーブルを叩き。

「勝負勝負って、嫌になっちゃう!」

そして窓の外を見る。

セラヴィーの家の前から延々と挑戦者を名乗る人々が列をなしている。

その途中では、アリーナが「ボクに勝てなければ世界一に挑むなんて到底無理だよ!」と言いながら嬉々として挑戦者たちに戦いを挑んでボコボコにしたり。

「えー、峠の釜飯はいかがですかー」

「食べると元気が出ますよー」

「味もほっぺが落ちるほど美味しいわよー」

セラヴィー、アーヤハ、ルナは朝から仕込んでいた釜飯を売り捌いていたり。

しいねちゃんに至っては「はーい、今から整理券を配りますよー!」と挑戦者に券を渡していたり、となかなかカオスな状態だった。

「ほんと、すごい数の挑戦者ね」

「お、屋台まで出てるぞ」

「あいつら…ちゃっかり自分の趣味と実益を兼ねて滅茶苦茶やってるわね」

どろしーとリーヤ、そしてアーリンが窓から外の景色を見て呟くが、チャチャはため息。

「はぁ…歌って踊って呑気に暮らしたい…」

「今でも十分呑気じゃない」

「だったらもっと呑気になりたい~」

しくしく涙を流すチャチャに2人は苦笑い。

「しっかりしろチャチャ、そのうち何か良い事あるさ!何たって世界一だぞ世界一」

「そのとおーり!」

『ひぇっ!』

リーヤの慰めにもならない慰めに割って入るのは似合わない伊達メガネを付けたしいねちゃん。

手にはスケジュール表を持って、さながらどこぞのマネージャーみたいな風貌だ。

「しいねちゃん、表の人たちはもういいの?」

そういえば先程までざわついていた外が急に静かになっていた。

「はい、後日発送をもってお知らせ、という事で解散して貰いました」

「へぇ~」

意外にやるじゃん、という顔でしいねちゃんを見つめるリーヤ。

「チャチャさん?」

「はい…」

「いいですか?世界中の人から挑まれるという事は、名誉な事なんです。もっと自覚を持って下さい」

「じかく…?」

リーヤとチャチャが顔を見合わせる。

「引っ掻く?それともトンカツ~?」

ドガッ!

ボケをかますリーヤを問答無用で蹴り飛ばし、壁に叩きつける。

「えー、これからの予定を言います、良いですか」

「はい…」

まるで国王のスケジュール管理みたく時間ごとの予定を言われ、どんどんうんざりとした表情になっていくチャチャ。

そして悲し気な表情で窓の外を見ながらミュージカル風に歌うのだ。

「わーたしは可愛い~籠の鳥なの~♪こ~れから毎日~試合をするの~」

両手を組み、祈るように外の風景を見る。

「鳥さん鳥さん分かって頂戴、わたしの気持ち。誰かわたしを大空に…」

そんなことを言ってると、遠くから一羽の鳥がこっちに向かって羽ばたいてくる。

勢いよく飛び込んでくる鳥の姿にチャチャは大声を上げて騒ぐ。

「み、みんな気を付けて~!」

チャチャが後ろのリーヤたちを見た時―

「ほーら見ろ見ろトーテムポールだぞー」

リーヤが狼の姿に変身して、頭に鷹―アクセスの使い魔でもある―を乗せて楽しんでいる姿にチャチャは脱力してしまう。

「ついに来ましたか…アクセス!」

扉を開け、セラヴィーが滂沱の涙を流しながら立ち尽くす。

「先生!?」

「一体…何が?」

チャチャとしいねちゃんが問いかける。

『釜飯が売れ残ってしまったの…』

「昨日から仕込んでいたのに…」

悲しみに打ちひしがれるセラヴィー。

よく見るとアーヤハとルナも同じ表情だったりする。

「特製釜飯、誰も買ってくれませんでした…」

「整理券渡されてみんな帰っちゃったの~」

その言葉にアーリンたちは頭を抱えてしまう。

(しいねちゃんが有能すぎるのも考えものね…)

 

しかし、アクセスの鷹がこっちに来た意味を知っているのはセラヴィーのみ。

残った釜飯を昼食にしながら、疑問を口にするチャチャたち。

まず口火を切ったのはどろしー。

「セラヴィー、どうしてアクセスの鷹がこっちに来るのよ」

「アクセスは…国王の命令で、『国王の印』を探しているのです」

『国王の印?』

セラヴィーの言葉に既に知っていたアーリンと釜飯に夢中なリーヤ以外の全員がオウム返しをする。

「そうです。またの名を『ホーリーバード』。アクセスの旅の目的は…」

「ええ、聞いてます。確かホーリバードを探しに行く、と言ってました」

しいねちゃんの返答にどろしーが質問をする。

「ホーリーバードって?」

「ホーリーバードは、国王の印とも呼ばれるように、マジカルキャッスルに祀られていた、聖なる彫像なのです」

手に持っていた湯呑みを置いて、言葉を続ける。

「竪琴の形をした金色の鳥で、心正しき者が使えば世界中を花々が咲き、穢れた地を浄化する力を持っています」

そしてセラヴィーが竪琴を弾き、動物たちがその音に耳を傾けている平和な姿絵を見せる。

「しかし、心悪しき者が使うと、世界は醜悪と恐怖に満ちたところへと変わってしまうのです」

今度はどろしーが竪琴を弾き、魔族を引き連れ世界が闇に包まれている姿絵を見せる。

「ちょっと!なんで心正しき者の姿がアンタで、心悪しき者の姿がわたしなのよー!」

(まぁ、セラヴィーの性格ならやるよね)

話を続けるセラヴィーに噛み付くどろしーのやり取りを見ながらリナが苦笑する。

「アーリンさん、あの2人、いつもこんな調子なんですか?」

「いつもよ」

アーヤハの言葉にアーリンが少し呆れ気味に答えていた。

セラヴィーはどろしーを落ち着かせながら再び口を開く。

「大魔王が倒れ、魔法の国にも平和が戻りました。しかし、いつ悪しき者の手にホーリーバードが渡るか、予断を許さないのもまた事実」

そこで真剣な表情でチャチャたちを見る。

「アクセスの使命は…とても、重いのです」

その言葉に、先ほどまでの賑やかさが嘘のように消えた。

チャチャたちの表情も先程と違ったものとなる。

ホーリーバードの存在を知る者が限られている理由も理解できた。

 

なお、釜飯の殆どはリーヤの胃袋の中に納まっていた…。

 

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