異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~ホーリーバード~

魔法の国の北、界外との境目。

岩山に囲まれた山々。

大魔王が倒れたことによって、結界が解かれ、アクセスも普通に侵入できる。

その山のひとつの頂上に、朽ちた神殿が建てられており、微かながら神聖な気配が流れている。

「あそこか…」

アクセスは呟くと、馬を慎重に走らせ、山道を登っていく。

 

神殿の中は暗闇に包まれていたが、ホーリーバードの場所はすぐ判明した。

なぜならそこは祭壇となっており、聖なる力で燃やし続けている焚火の前に鎮座されていたからだ。

慎重に足を進ませ、アクセスは祭壇の前で足を止める。

背後から邪悪な気配が感じ取れたからだ。

「分かっているぞ、さっさと出てこい」

アクセスが口を開いた瞬間、急激な魔力の具現化が起こる。

魔力で作られた鉄球と鞭がアクセスを襲うが、彼は身を翻してそれを避け、剣の一刀で弾き返す。

その時、もう1本の鞭がアクセスの頭上を越え、ホーリーバードを絡め取ってしまう。

「しまった!」

そのまま神殿の外に持ち出されるホーリーバード。

「ほーっほっほっほっ!」

高笑いが聞こえたのを確認すると、素早く神殿の外にテレポートするアクセス。

外に出てみると、神殿の円柱のひとつに2人組の男女が立っていた。

綺麗な顔立ちだが、冷酷さを併せ持つ表情をしており、鞭を持った女の片手には先程のホーリーバードが抱えられている。

「やはりお前たちか、ソプラノ、バリトン!」

アクセスの声に反応する2人。

「そういうお前は誰かと思えば、アクセスじゃないかい」

「確か、魔族を裏切ったと聞いていたが、盗人に成り下がったとは」

ソプラノとバリトンが見下す形でアクセスと対峙する。

「そいつを渡してもらおうか」

「久しぶりに会ったのに、素敵なご挨拶ねぇ」

醜悪な笑みを浮かべてホーリバードをアクセスに見せつける。

「こいつに用とは…」

アクセスがホーリーバードに視線を向けていることに気付いた2人はコソコソと話をする。

「何だか分からないけど、あのアクセスが探してるんだ、きっと何かあるよ」

「こいつはとんだ掘り出し物だね、姉さん!」

彼女たちはホーリーバードの価値を何も知らなかったのだ。

「もし、渡さないと言ったらどうする?」

「斬る!」

即答で返すアクセスにソプラノとバリトンは魔力で作った鞭と鉄球をぶつけようとするが―あっさり斬り飛ばされ、剣で付きつけられる。

素の実力差はアクセスの方が数段上、そんな彼にあっさり降参するソプラノたち。

「さぁ、それを置いてどこへとでも行くがよい」

その言葉にソプラノはホーリーバードをアクセスの前に突き出し―

「はい、あげますよ!」

言うなり、頭上高くに放り投げた。

「何をする!?」

目線がホーリーバードに行く瞬間、ソプラノとバリトンは背中合わせになり、目を光らせて印を結ぶ。

『ソニック・ブラスト!』

凄まじい超音波が形となってアクセスに襲い掛かる。

そのパワーは剣や鎧をボロボロにさせ、本人にもかなりのダメージを与えていた。

「ぬっ、ぐっ!」

それでも臨戦態勢を崩さず、何とか踏みとどまるアクセス。

「ほう…」

「流石アクセス、しかしトドメだ」

「…しいね…!」

立っているのがやっとという感じのアクセスは、我が子の名前を呼んでいた。

 

「…お父さん!」

遠く離れたセラヴィーの家で、しいねちゃんが父親の気配を感じ取り、思わず口にする。

「しいねちゃん?」

「…僕行きます」

「行くって、どこへ?」

チャチャとどろしーの声。

「お父さん…」

「え!?」

「お父さんが、呼んでる!僕、お父さんを助けに…!」

どろしーとセラヴィーに訴えるような目線を送るしいねちゃん。

セラヴィーは黙って頷いてから口を開く。

「行ってらっしゃい。アクセスは、きっとこの時の為に鷹を使いによこしたのでしょうから」

「そうだよ、行こう、しいねちゃん!」

「俺たちも行くぞ!」

「私たちも手伝うわよ!」

チャチャ、リーヤ、アーリン。

3人の言葉にしいねちゃんが大きく頷くと、アクセスの鷹が大きく羽ばたく。

 

双子の魔族に取り押さえられ、意識を刈り取られて捕まってしまったアクセス。

気が付いた時には両手両足を鞭で縛られ身動きが取れない状態で椅子に座らされていた。

背中には魔法で召喚したスピーカー、そして目の前にはソプラノが鞭を持った状態で尋問を始める。

意識を取り戻したアクセスが喰らうのは魔力を宿した音の嵐。

ホーリーバードの正体を吐かせるために尋問をするのだが、本人は一切拒否。

その度に超音波がスピーカーを通してアクセスの身体に向かって浴びせられる。

音が身体を貫く。

内臓が軋み、全身から命そのものが流れ出そうになる。

意識が薄れていくが、その度に脳天に響く音が鳴り、気絶することさえ許されない。

 

そんな拷問の中、なかなか口を割らないアクセスに苛立ちを押さえることもしないソプラノ。

「いい加減に喋ったらどう!こいつは一体何なんだい!?お前は何のためにこいつを取りに来たんだい!?」

「知らんな」

(喋れば終わる…だが、それだけは出来ない)

ヒステリックに叫ぶソプラノとは対照的に冷静な口調で無言を貫くアクセス。

「まだしらを切るのかい?これで何回目だと思ってるのさ!」

「29回目だよ、姉さん」

バリトンが耳打ちをする。

「そうかいそうかい、いくら気の長いあたしでも、流石に我慢の限界が来ようってもんだね!」

「アクセスさんよー、次で30回目だよ?30の大台を笑顔で迎えられるかどうかはお前の心掛け次第なんだよ?」

何とかして心を折らせて吐かせようとするバリトンの言葉を一蹴し、またも無言のアクセス。

「きぃぃ~!!」

「あーあ、姉さんを怒らせちゃった、俺は知らないぜー?」

怒り出したソプラノの状況を思い出したのか、肩をすくめて声を潜める。

「例のやつ行くよ!用意しな!」

とうとう鞭が変化し、金色のマイクになる。

それを持ち替えてアクセスの前に立つソプラノ。

アクセスはその様子を黙って見つめていた。

(しいね…)

 

旅に出る前のことを思い出す。

出立前日、アクセスは川のほとりでしいねと会話を交わしていた。

「しいね、私は旅に出ようと思う」

「…どこに、行かれるのですか?」

「当ては、ない」

「いつ、戻られるのですか?」

しいねちゃんの言葉に沈黙を貫くアクセス。

しかし、自分の兜を持ちながら口を開く。

「私は…今まで、お前に父親らしいことは何一つしてやれなかった。こんな私を、許してくれ」

「そんな…」

「国王の印が見つかれば、世界はずっと平和になる。その時こそ、お前とずっと一緒に居られる。…母を、頼むぞ」

「大丈夫です!お母さんは僕が絶対守ります!」

しいねちゃんが力強く頷き、笑顔でアクセスを見つめる。

自分の妻を人質に取られ、魔族に名を連ね、我が子にも手を掛けようとした過去があった。

それにも関わらず、最愛の家族も国王も、チャチャたちも、アーリンたちも。

そんなことは一切忘れたように接してくれている。

「…ありがとう、しいね。お前は…私の誇りだ」

優しく頭を撫でるアクセスにしいねちゃんが照れる。

アクセスはそんな彼を見ながら、今度の使命の重さを痛いほどに感じていた。

 

 

「しいねちゃん!」

時を同じくして、その時のアクセスの表情を思い出していたしいねちゃんの隣にチャチャが近づいていた。

「あ、チャチャさん…」

「大丈夫、しいねちゃんのお父さん、すごく強いんだもん、きっと無事だよ!」

「そうそう、私も負けちゃうくらいだからね…」

アクセスに斬られたことを思い出しながら、微妙な表情を浮かべるアーリン。

そんなアーリンに同じく空を飛んでいたアリーナがチャチャとは反対側に近づく。

「ボクもやられちゃうくらい強いアクセスさんなんだから!だからしいねちゃんも、信じてあげて」

「…はい!」

落ち込み気味だったしいねちゃんの表情に笑顔が浮かぶ。

(アーリンさんもアリーナさんも、ちゃんと自分が負けた相手に対して敬意を払っている…こういう人間は、強い)

神力でアーリンたちと同じように空を飛ぶアーヤハは彼女らのやり取りを見て軽く微笑む。

「しいねちゃん、そろそろ目的地じゃないか?」

アクセスの鷹に肩を掴まれながら悠々と飛んでいたリーヤが指差す先には、荒れ果てた神殿が。

「この辺は魔法の国と外の世界の境目だからね…わざわざ来る人なんて居ないわよね」

リナが周囲を見回す。

「界外との行き来は大抵は大型箒や僕たちみたいな魔法使いは自分の箒で飛びますからね、人の気配が無いのも頷けます」

そして急降下し、神殿の柱の物陰に隠れる。

「何があるかわからないから、慎重に行くわよ」

アーリンが息を殺しながら辺りを見る。

他の3人も、何が起こっても良いようにそれぞれの得物を持ちながら身構えている。

神殿の中を遠巻きから見るが、暗くてよく分からない。

「おーい、アクセスー!居るかー?」

と、リーヤがまるで遊びに来たかのように大声で呼びかける。

(うわー!!)

(馬鹿リーヤっ!!)

声にならない悲鳴を上げながらしいねちゃんがリーヤの口を塞いで物陰に隠れる。

「アーリン先生が慎重に、って言ったのをもう忘れたのかこの馬鹿犬!」

小声でリーヤに向かって怒号を浴びせるしいねちゃん。

「嫌な雰囲気がするわ…魔力が、歪んでいる」

「『歪み』かしら?」

「いや、多分魔族の魔力よ。油断せずに行きましょう」

リナが魔力検知を行い、慎重に神殿の中に足を進める。

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