異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します 作:hoyohoyo
場所は変わってセラヴィーの家にて。
「ホーリーバードを奪われてしまいましたね」
セラヴィーとどろしーがテーブルの上の水晶玉から、戦いの一部始終を見ていた。
「ホーリーバードって国王の印ってことよね」
どろしーの言葉にセラヴィーが頷く。
「ホーリーバードを手にした者は、世界の支配者になれるのです。そのため、国王の印として代々マジカルキャッスルに祀られていたのです」
水晶玉に映るソプラノの姿を見てどろしーが叫ぶ。
「わたしたちも行かなきゃ!何あの高慢ちきな女!」
『どろしーちゃんそっくりねー』
エリザベスが余計な一言を言い、思わずテーブルを壊してしまうどろしー。
「心配です、ねぇどろしーちゃん?」
「うるさい!」
「お父さん!」
ほぼ壊滅した神殿で、辛うじて柱が数本残っているだけの状態の中、アクセスはその柱に凭れる。
「しいね…私に構うな。ソプラノを追え、国王の印―ホーリーバードを取り戻すのだ」
「で、でも…」
父親の負傷に心配を隠し切れないしいねちゃん。
「私の言う通りにするのだ」
アクセスの言葉と同時にソプラノの行った方向を確認したリーヤが戻ってくる。
「チャチャ!あいつ北の山の方に飛んで行ったぞ」
「や、やはり!」
そう言って傷の痛みに呻くアクセス。
「お父さん、北の山には何があるんですか?」
しいねちゃんの問いに荒い息を付きながら返答する。
「ま、魔界の扉が…」
「魔界の扉?」
チャチャがオウム返しをする。
「そうだ、暗黒魔界に通じる魔界の扉だ」
「暗黒魔界?」
色々な情報が入ってくるが、それでも一字一句逃さないように耳を傾けるチャチャ。
「地上の魔族でさえ恐れる、凶悪な魔物や強力な魔族が住む暗黒魔界だ」
大魔王と同等の強さを持つ魔物や魔族が居座っている姿を想像してごくり、と生唾を飲み込むチャチャたち。
「その魔界への連絡道が、魔界の扉だ。今は封じられているが、恐らく、ソプラノはその魔界の扉の封印を解きに行ったのだ」
漆黒のホーリーバードに乗るソプラノの姿を思い返すアクセス。
「あのホーリーバードがあれば、邪悪な魔物たちの心を支配できる。魔界の扉が開かれた時、魔物たちはこの世界に溢れ出てくるであろう」
「そんな…!」
「ソプラノは魔物を支配し、この世界の制圧を目論むはずだ!再び平和は脅かされる!ソプラノに魔界の扉を開かせてはならん!」
北の山へ向かう一行。
魔法の国と界外の境目、もう山を越えればそこは界外の場所。
そこに暗黒魔界に通じる扉が封印されている。
「魔物が溢れ出てくれば、人々はそちらに手を取られる。ロキがその隙に天界に戻って魔界のエネルギーを開放することも出来る」
空を飛びながらアーリンたちも打ち合わせをする。
「ロキにとってはこの事態は願ったり叶ったりなんでしょうね」
ルナの発言にリナも頷く。
「自身は暗黒魔界に閉じ込められている。…自力で脱出出来るだろうけど当初の目的―天界に魔界のエネルギーを持ち込むことが難しくなる」
「どうして?」
アリーナが質問する。
「魔界の扉の封印を解くのにロキだけの神力じゃ足りないからよ。もし足りていたら既に脱出してる」
「そっか、その他に魔界のエネルギーも封印を解くのに使わなきゃいけないのか」
その言葉に頷くリナ。
「それがソプラノの手で上手く行けば扉が開くかもしれない。ロキの立場なら魔物を先行させて、世界を混乱を撒き散らしてから脱出するでしょうね」
「アーヤハ、もし封印が解かれた場合、ロキを足止めとか出来ないの?あわよくば再封印とか」
「人間界の魔力で作られた封印は勝手が違うので再封印は出来ません。足止めは…ロキ様だけを留める結界は作れますが、非常にコントロールが難しいです。この世界だと神力を開放するだけで精一杯、しかも出力が強すぎると世界が崩壊します」
「…そのコントロールって、私も手伝えないかしら?」
「アーリン?」
アーリンが提案する。
「…人間の身で神の力を制御する?それは無理でしょう、まず身体が持ちません」
そこまで言って、少し考える素振りを見せるアーヤハ。
「でも、アーリンさんは英雄と呼ばれる部類。それに別世界の神の力も持っています。コントロールを分担すれば、万が一の可能性も」
「結界が出来るまで、私の身体が持つかが勝負ね」
「ならわたしも手伝えるわ。一応赤竜の神の魂持ちなのよ」
ルナも会話に加わる。
「ルナさんは、アーリンさんの代わりに皆を守る結界を作って欲しいのです」
「確かに。アーリンやアリーナ、姉ちゃん、マジカルプリンセスに変身したチャチャならまだしも、リーヤやしいねちゃん、それにあたしが暗黒魔界の魔物と肉弾戦やったら一瞬で吹っ飛ばされるわ」
リナが前を見ながら言う。
「アーリンと違って、わたしの結界はそれぞれの身体に張れるからね。意外に戦闘特化型なのよ」
「じゃあ作戦は決まりだね。暗黒魔界の扉が開く前にソプラノを倒す」
アリーナの言葉にアーリンが続く。
「万が一扉が開いたら、アーヤハが結界を張る。私はアーヤハの手伝い兼ボディガード。ルナは脆弱な3人に結界を張る係。アリーナが魔物退治とソプラノ退治の主力よ」
その言葉に皆が頷き、一層北の山へのスピードを上げるのであった。
北の山は、国境の境目にあるだけあって、木々も生えず、土と岩だけが露出しているだけ。
空は薄暗く、生ける者の姿は見受けられない。
「確か、この辺りだったはずだが」
ソプラノは一段高い岩に登り、周囲を見回すが扉らしきものはない。
「…ん?」
ふと奥の方を見ると、僅かに残っていた木々に囲まれるかの如く、家が一軒建っていた。
その家の中では―
「おおーい、食事の支度が出来たでヤンスよー!」
「待ってたゲス!」
「待ちくたびれたダス!」
何とソーゲス、ヨーダス、ハイデヤンスの3人が住んでいた。
大魔王が倒れ、悪しき心を取り除かれた彼らは、この辺鄙な場所で自給自足の生活を送っていたのだ。
「特製チャーハンお待ち!でヤンス」
「またチャーハンダスか…」
文句を言いながらもちゃっかりスプーンを持つ2人。
「これはただのチャーハンとは違うでヤンス、平和をしみじみと味わえるチャーハンでヤンス!」
テーブルの上にチャーハンが置かれ、各々自分の器に盛り付ける。
「大魔王様に仕えている時は心が休まる暇が無かったダス」
「こんな生活がいつまでも続けれるといいでゲス」
ソーゲスはそう言うと、チャーハンを口に入れようとするが―
突然鞭が飛んできて、テーブルをすっぱり斬られてしまう。
平和慣れしていた3人は予想外の出来事に慌てふためく。
そんな中、現れたソプラノがソーゲスたちを見下ろしながら口を開く。
「見覚えのある顔だと思ったら、大魔王のところでウロチョロしてた家来たちね」
『お、お前はソプラノ!』
3人が同時にハモる。
「どうだいお前たち、あたしの片腕になって一緒に世界を征服する気はないかい?」
「偉そうでヤンス」
「何か嫌な奴でゲスな」
そしてソプラノに向かって力強く答える。
「ワシたちはもう争いはやめて、のんびり平和に暮らすことに決めたダス!」
「世界征服は間に合ってるでヤンスよ!」
「もう争いはまっぴらでゲス!」
拒絶するソーゲスたちを見ながら、嘲笑を浮かべるソプラノ。
「ふん、魔族どもも堕ちたものだ。あたしに逆らうなら、この場から消えて貰ってもいいんだよ!」
魔族の中でも上級に位置するソプラノと大魔王に仕えたとはいえ、元々の能力は中級程度の3人では比べ物にならない。
「さぁどうするの?ここで死ぬか、あたしの犬になるか」
拒絶すれば死、そんな雰囲気を漂わせながらソプラノが一歩前に出る。
「こっちは3人居るダスよ、束になって掛かれば…」
ふとソーゲスがソプラノの肩に乗っている鳥に気付く。
「あ、あれはホーリーバード!」
大魔王が探していたこともあり、その存在は既に知っているところ。
「ほう、これを知っていたのかい。なら話は早い、ホーリーバードの力で、あたしの操り人形にしてやろうか?」
もはやなす術がない3人は先程とは一転、ソプラノに土下座をする。
「ソプラノさまのためなら何でもするでゲス」
「手でもおみ足でもどこでもお揉みするダス」
「期待していいでヤンス」
あっさりと傘下に下ったソーゲスたちを見て高笑いをするソプラノであった。
遅れてやってきたチャチャたち。
岩と土しかない山の周囲を見ながら不安そうに呟く。
「すごいところですね…」
「草も木も何もない…」
アーリンたちもソプラノの気配が無いか魔力探知を行うが、どうやら別の場所に居るらしい、目立った感知はなし。
「どうしよう、早く見つけないと魔界の扉が…」
チャチャの呟きにリーヤとしいねちゃんが動き始める。
「僕が目に!」
カラスに変身したしいねちゃんが空を舞い。
「くんくんくん…俺は鼻だ!」
狼に変身したリーヤが地面の臭いを嗅ぐ。
「わたしも負けてられないわ!出でよ、耳!」
チャチャも勢いよく召喚魔法を唱える。
「はーい、息を吸ってー吐いてー」
出てきたのは聴診器。
岩に当てて医者の真似事である。
(一番当てにならないわね…)
ルナががっくりと肩を落とす。