異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~死闘~

紅黒の奔流が、空間ごとロキへと叩き込まれる。

―だが、届かない。

ロキが手を伸ばす、ただ、それだけ。

次の瞬間、竜破斬の赤い光は、まるでキャンバスの絵を消しゴムで消したかのように、魔力の光が『無』に帰した。

「は?」

リナの声が凍る。

魔力が消失したのではなく、『存在そのものが削除された』。

熱も、音も、衝撃すら残らない。

ただ、そこにあったはずの力が、最初から存在しなかったかのように世界から切り取られたのだ。

「つまらんな」

ロキが指を鳴らす。

 

ぱちん。

空間が歪む。

 

気が付けば、アーリンは地面に叩きつけられていた。

(攻撃、された!?)

違う、触れられてすらいない。

 

「距離も、時間も、意味を成さぬ」

ロキの声がどこからか響く。

「神の前ではな」

その言葉を遮るかのようにアリーナが踏み込む。

「だったら…ぶっ飛ばすだけ!」

音が消える。

空気が圧縮され、爆ぜる。

常人では見えないスピードで彼女は村正を振り抜く。

 

止まった。

刃が、ロキの眼前で。

「遅い」

指先を弾く。

それだけで、アリーナの身体が弾き飛ばされる。

「がっ…!」

何とか堪え、体勢を立て直そうとするアリーナ。

 

しかし背後に待ち構えていたロキ。

「所詮は人間」

指を降ろすと、この世のものとは思えない重い一撃が彼女を襲う。

「ぐぅっ…!」

村正で受け止めるが、刃が悲鳴を上げる。

「爺っ!」

『大丈夫だ!しかし厄介な…神の一撃はこれほどまでか!』

アリーナの脳内で響く、村正の声。

「その程度か?」

そんな彼女に、ロキの嘲笑と一緒にもう一撃が飛んでくる。

 

「竜神結界!」

ルナが叫び、結界がアリーナの前に展開される。

紅い障壁とロキの神力がぶつかる。

しかしそれは一瞬で―割れた。

「嘘…!一撃で!?」

ルナが愕然とした表情を浮かべる。

 

「ならば…これはどう!?」

アーリンがアリーナの頭上を飛び越え、ロキに斬りかかる。

同時に発動される守護の力。

「流石のお前も二重の力は防げ―」

空間が、わずかに歪む。

ロキの背中から黒い力の奔流が溢れ、彼女に襲い掛かる。

「ほう…今のは少しは面白い」

ギヂヂヂ…!!

削り取られる音、剣が黒とせめぎ合い、ロキには届かない。

「くっ、この力は…!」

「神だけの力と思っていたのか?」

ロキが嘲笑する。

「『獣王牙操弾(ゼラス・ブリット)』!」

死角から飛んでくるリナの黒魔術。

魔力を帯びた光の帯がロキに直撃―しなかった。

「くっ!」

その帯もまた、ロキの手前で消えて無くなる。

「私にそんな子供騙しは通用せん」

ロキの指がリナに向けられる。

「死ね」

見えない神の力がリナに振り下ろされ―音を立ててその一撃を防ぐ。

「アーヤハ!」

「ロキ、さま…おやめ、ください!」

肩を上下させながらロキの一撃を自らの結界で抑え込む。

しかし上位神と中位神の力量差、それがアーヤハの身体を蝕む。

「ぐっ…うっ」

片膝をついて呻くアーヤハ。

「なんて力の差…でも、これくらいっ…!」

口の端から血を流しながらも、アーヤハの瞳は濁っていない。

彼女がかつて愛した『優しい世界』を、ロキの狂気から守るために。

 

剣を振るい、拳を交え。

それでもロキの身体には届かない。

神の力だけでなく、暗黒魔界のエネルギーを身に纏っている彼には、小さな傷すら通らない。

「がはっ!」

アリーナの身体が吹き飛ぶ。

「アリーナ!」

横を向いたルナの身体にも重圧の衝撃が来る。

「竜神結界!」

慌てて結界を張るルナだが―

紅く光る結界が、何も発動しない。

(結界の概念ごと…!)

防げない重圧をまともに喰らい、地面にめり込む彼女。

「『魔竜烈火咆(ガーヴ・フレア)』!」

リナは何十発目の黒魔術を唱えるが、その直後に足をもつれさせ、倒れそうになる。

何回打っても目の前で消されるロキの力。

さらに暗黒魔界の瘴気が彼女の魔力を損耗させる。

とうとうリナは魔力を使い果たし、詠唱すら出来なくなってその場にへたり込んでしまう。

アーヤハも同様、神力の使い過ぎで嘔きながら何とか立ち上がろうとして…倒れ込む。

 

アーリンは、目の前の異質な存在に恐怖すら覚える。

そして仲間が倒れていく様子を見ながら再びあのアクセス戦のように守れなかった絶望感も。

「また…守れないのか…」

だが、足を止めるわけにはいかない。

それは、この世界を守ることへの放棄なのだから。

 

「こ、のおおお!」

震えそうな手を何とか押し留め、アーリンのアークスレイヤーが再び煌めく。

しかし―

「所詮はこんなものか」

ロキの手前で激しくバチバチ音を立てて受け止められ―弾かれ、吹き飛ばされる。

(…勝てない)

その言葉が、脳裏をよぎる。

心が折れそうになる。

(私たちは…ここで負ける?)

 

「いや、負けるわけにはいかない…私たちが、この世界を、守る」

剣を支えに立つアーリンにゆっくり歩み寄るロキ。

「終わりだ」

その一言が、この戦いの確定を告げる。

黒い力の渦が、アーリンに襲い掛かる。

その瞬間―

 

音が、消えた。

風が止まる。

黒い力の渦が、同じように静止する。

ロキの動きすら、止まった。

 

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